異聞!決号作戦   作:シン・アルビレオ

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19話 第2総軍との会談

 陸将とS、第16方面軍幹部等を乗せたUH-2は吉島飛行場(旧広島空港)に差し掛かるとパイロットはまず旋回し異常がないか目視で確認する。

見た限り異常は見受けられなかったので高度をゆっくりと降ろしロープを地上へ下すと誘導員は降下していく。

到達すると手信号でホバリングから降下、柔らかく着陸した。

そのあと2機のヘリコプターが着陸し全員が揃う。

全員が降り鵠提督は滑走路で野ざらし保管されている2つの機体が目に入った。

(カ号観測機と三式指揮連絡機……あれも特攻として使われるのだろうか)

感傷に浸りたかったが時間もないので軍用乗用車に乗り換えて第2総軍総司令部のある旧騎兵第五聯隊兵営跡へ向かった。

ちなみにその様子を見ていた第2総軍飛行班と志津陸軍飛行学校の教官、飛行場設定隊たちは腰を抜かしそうになる。

空中で留まりつつもゆっくりと着陸するなんて、はるか先に技術が発達しているとひと目でわかってしまう。

本来の志津陸軍飛行学校は千葉市で偵察航空の教育を行っていたが、戦局の変化によって1944年6月から特攻基地となり偵察は二の次となる。

その1年後には本土決戦を見据えて吉島飛行場へ移転しさらなる特攻訓練に明け暮れ、今は特攻隊として組み込まれている。

同じ時期に一緒に移転した志津の女子挺進隊も機体の整備をしていたが、急遽中止となり兵舎で座学に切り替えられた。

窓のカーテンは固く閉ざされなにがあっても開けないよう指導された。

今まで聞いたことない音が聞こえてくるので誰もが気になってなかなか座学に集中できない。

だが教官にそのことがバレたら竹刀や拳がすっ飛んでくるので好奇心を抑えて我慢するしかなかった。

 

 道中にはドーム部分が鉄骨でむき出しになっている見慣れた原爆ドームではなく、広島県産業奨励館として立派に建っている。

また広島城も博物館としてではなく軍事施設として役目を務めている。

資料でしかみたことのない原爆ですべてが破壊される前の広島市内の様子を記録に残したいところだが自重する。

我々は観光に来たのではないのだと言い聞かせてしっかりと目に焼き付けておく。

鵠提督は青葉を連れて行かなくて正解だと内心ほっとしている。

彼女なら空気を読まず車内からカメラを連写しているに違いない。

深災対の基地航空隊1部隊を吉島飛行場に配備する案は一旦妖精さんの調査待ちとなる。

なぜなら深災対で使われる質のいい燃料や弾薬は空送できるがそれを保管する場所がないことが判明。

塹壕があるとはいえ特攻用の陸軍機で満杯だ。

調査のために基地設営隊妖精の妖精さんを懐に忍ばせて、吉島飛行場についたところにこっそりと解き放っていた。

今は妖精さんたちが現地調査している最中だろう。

そんなことを考えているとあっという間に第2総軍司令部へと到着する。

 

 長い廊下を歩き応接室に入った瞬間、視線が一斉にこちらへとむけられ頭のてっぺんからつま先まで品定めされている。

第2総軍司令官畑俊六元帥と参謀長岡崎清三郎中将、参謀副長三好康之少将、中国軍管区司令官内山英太郎中将、参謀長国武三千雄中将がすでに座って待っていた。

数々の大戦を生き抜いた独特の雰囲気が彼らを覆っているのが分かる。

両名とも形式的な挨拶はするが握手はせずに早速本題に入る。

本来ならたくさんの資料を持ち込んで説明したかったが、時間も限られているため最低限のことと今後の行動について関川陸将から順番に説明を始めていく。

艦娘と3名のSは室内の入り口付近で待機しなにがあってもすぐ動けるよう待機している。

 

 20分が経過し畑元帥は帽子を外して汗をぬぐい、目頭を押さえる。

「……つまりお前たちは不慮の災害によって未来からやってきた。で、この未曾有の危機に神々が遣わした者なのか?」

「……何とも言えません。原因を調査している最中ですが現時点では不明、元の世界への帰還方法もわからずじまいです」

最初は怪訝そうな目で見定めていた将校たちも今や言葉が出ず沈黙を貫く。

たった20分だが常識外のことばかり説明され頭がおかしくなりそうだった。

頭の中では否定したかったが彼らの服装、言動、佇まい、所持品までもが根本的に違う。

それに女性が艦娘という艦艇の力が使える兵士となっているのもありえない、というよりは理解ができないオカルトの範囲である。

国民義勇隊や女子挺進隊は強制的に動員されているのもあり、軍ははっきりとした男社会なのだ。

だがデモンストレーションで魔法のように艤装を展開する様子を目の前で見せられると、否応なしに本物だと言わざるえざない。

いっそヒロポンをキメて幻覚を見た方がよほどよかった。

おまけに資料も精細であり紙の質も高いのでとてもじゃないがこちらでは、いや連合国軍ですら作れるものではないだろう。

ただ畑元帥は気になることもある。

「君たちの歴史通りならここと長崎が新型爆弾によって灰燼と化す……独立部隊を立ち上げる見返りとして吉島飛行場(旧広島空港)に調査中とはいえ基地航空隊の設営及び対空の強化をしたい……か」

「はい。陸自が所持している03式中距離地対空誘導弾や11式短距離地対空誘導弾についてはCH-47に吊り下げて空送いたします。本来なら陸送なのですが鉄道の関門トンネルが爆撃によって使用不可なこと、橋も工事中断している。陸自が関門海峡に架橋を設置する手も考えましたが、機雷が多く潮流も速いため難しいと判断しました」

「ふむ……射程が60km前後と10km前後の誘導弾とは凄まじいな。いったいどんな技術を使っているのやら」

畑元帥は関川陸将の説明を聞きつつ03式中距離地対空誘導弾と11式短距離地対空誘導弾の資料を目に通す。

また空自が所持している能力向上型ぺトリオットミサイル(PAC-3 MSE)も使えば隙のない防空網が出来上がることも資料に記載されている。

うまくいけば瀬戸内海で撃ち落とせて第2総軍司令部と市民も守護ることができる素晴らしい案だと誰もが思った。

「元帥殿! こ、こんな非科学的で胡散臭いやつらの言葉なんぞ信じるんですか!? 混乱を貶めるスパイか、そもそもこの資料自体が偽物かもしれません!」

第2総軍参謀長である岡崎清三郎中将が資料を床に叩きつけ声も震わせるが、杉山中将がなだめる。

「私も最初は貴方のような反応だった。だが彼らの話を聞いているとどうも嘘には思えん。それに連合国軍と戦えばどちらも壊滅的打撃を受けることは目に見えている。ならば少しでもこちらが優勢になるよう情報と戦力が欲しい。それが未来から来たものならなおさら、な」

杉山中将は佐世保鎮守府防空指揮所での会談で艦娘の力を間近で体験し思い知らされたため、声が若干震えている。

しかし岡崎中将はわなわなと体を震わせ唇を噛みしめた。

「それはスパイの常套句である洗脳です! 海軍までこのような得体のしれない輩に心を惑わされてはなりません! 大本営にこの事態を報告し徹底的に調べ上げるべきです!」

第2総軍の将校たちは沈黙し表情を変えず、お互いの顔色を伺う。

彼の言っていることはごもっともだが、“未来の軍”と“未来の情報”というあまりにも劇薬すぎる事案に触れてしまいどうすればいいか分からない。

「第一、自衛隊とやらは断りもなく勝手に後方へ撤退をした軟弱な軍隊だ。そのくせに独立総合部隊を立ち上げたいなんぞ横暴である! そうですよね内山中将殿?」

どうするべきか考え事をしていた内山中将は急に話を振れられたので口を濁しあいまいに答えたので、岡崎中将はさらに語調を強くする。

「なにがあっても後退せず前進、攻勢をかけるべきです! 自衛隊の兵器と艦娘の能力、そして我が特攻精神を合わせれば必ずや大日本帝国を勝利に導くことができるでしょう!」

「その通りだ。我が国の栄光のために命をかけて鬼畜米英共を倒すのはまさに武士道にふさわしい精神である」

参謀長国武三千雄中将も同意するが関川陸将たちと鵠提督たちは浮かない顔で話を聞いている。

「なんだその顔は? まるで気に食わないとでも言いたげだな」

「……その通りです」

鵠提督の返答に国武中将が机を叩き怒鳴り散らす。

「我らの気高き武士道を侮辱するのか! ましてや帝国海軍の生まれ変わりであろう者が特攻を批判するとは恥であり風上にも置けない言動である!」

「効果的であるのは理解できるが犠牲を前提とした作戦は邪道な行為です。我々深災対はキスカ島撤退作戦で指揮を執った木村提督殿の精神を心に刻んでおり、生きて帰投こそ価値があるのです」

鵠提督もきっぱりと反論するも彼らの怒りは収まらない。

「なにを言い出すかと思えば……それをいちいち気にしていれば何も成せはしない!」 

「そうだ! 鬼畜米英に蹂躙されてはならないのだぞ!? 我らは大本営からの命令に従い、お国のために命を捧げているのだ!  育ててくれた両親に恥じぬよう命を燃やすのが軍人の本分であろう!」

「両者とも落ち着きたまえ。今は喧嘩をしている場合ではない。広島市と長崎市、小倉、京都、新潟が投下候補地として分かっただけでも儲けだ。脅威度の高い件として大本営にも報告し避難の裁可を仰ぐ。ひとまずはこれでよいかね?」

「……っ、それなら問題ありません。だが敵地に切り込んで道連れにすれば必中必殺の損害を与えることができる。軍人たるもの名誉を重んじて死ぬべきだ。だからこそ特攻隊は今日まで戦果を挙げてきたのだ。それだけは分かってくれ」

畑元帥がなだめたことで岡崎中将はしぶしぶと座るも不審の眼差しは依然として消えていない。

「失礼した。それで……君たちは新型爆弾の動向はつかめているのか?」

「新型爆弾開発の経緯などのおおまかな話は聞きました。テニアン島か硫黄島辺りが怪しいと睨んで無線傍受(シギント)を中心に動向を掴もうとしていますが、現時点では分かっていません」

関川陸将の回答に将校たちは未来の軍隊を以てしても分からないことに残念がる。

実はアメリカ本土の工場から分散して出荷されたばかりであり、しかも輸送機と艦船も暗号変更と無線封鎖をしっかりとしているのでシギントで探し出すのは難しいのだが彼らはまだ知るはずもない。

「失礼を承知するが電探に映りにくく強力な索敵ができるあれで監視するのは難しいのか?」

杉山中将が古間空将に尋ねる。

「F-35Aだけでなく早期警戒機(E-767・E-2)も数が限られてるため、どちらも太平洋上や北マリアナ諸島までカバーするのは燃料事情もあり厳しいです。いざというときに燃料切れで飛べなかったら無用の長物です」

将校たちの頭にはてなマークが浮かんでいるので古間空将が簡単に説明する。

「早期警戒機とは簡単に言えば強力な電探を搭載した航空機といってもいいでしょう。高高度を飛行しているときは800km前後まで探知できます。日本国内の上空に限るならそれほど燃料も消費しないため早めに探知できれば、待ち伏せもできます」

古間空将は早期警戒機の資料を将校たちに見せる。

それは航空機の胴体上に丸い円盤がつけられているという大変奇妙な見た目であった。

「なるほど、円盤が電探の役割を果たしているとはすごい技術だ。早めに探知し我々もB-29が飛んでいる高度で待機しておけば少なくとも位置エネルギーは一緒。奇襲もできますし先手もとれる。さらに地対空誘導弾とやらも配備されたらまさに鉄壁です」

三好康之少将は数々の航空師団長や戦闘飛行集団長にも選任された腕利きの軍人であり、ビルマでも第3航空群第5飛行師団参謀長を務めた経験がある。

ビルマ航空戦において隼戦闘隊はシギントや電波警戒機などを用いた早期警戒体制を構築していたこともあり、そのおかけで連合国軍機と互角にやり合い100機以上は確実に撃墜している。

(これなら大規模な疎開を怪しんで連合国軍がB-29を早めに投入しようが対処できるということか。しかし惜しいな。これほどの強力な航空機なのに数や燃料が少ないとは……)

彼だけがその意図を分かったようで納得している。

 

 「少しよろしいか。自衛隊が撤退した宮崎や川内、国分などは我が軍が配備しても?」

横山中将が関川陸将に尋ねるが、彼は申し訳なさそうな顔をする。

「申し訳ございません。撤退する前に様々な障害物を設置したので危険が伴います」

「具体的にはどこにどのような障害物を?」

横山中将は鉄条網や簡易トーチカでも設置したのではと思ったが、関川陸将の返答は遠隔でも操作できる対人地雷や対戦車地雷などを設置したそうだ。

「なるほど地雷か……ならばそれを利用して連合国軍の動きが低下した隙に攻勢をかける。それで問題ないな?」

「構いませんが、あくまで連合国軍に対して設置したので地雷による負傷者がそちら側に出た場合でも一切の責任は取れません」

「問題ない。四股がもげようが吹っ飛ぼうが鬼畜米英共を道連れにできるなら喜んで兵士と国民義勇隊はお国のために命を捧げるだろう」

将校たちはうんうんと頷いており、あまりの価値観の違いに関川陸将たちはゾッとした。

「私からもいいかね? 艦娘を用いた監視などはできないのか? 資料によれば確か300隻以上もいるのになぜ使わない?」

中国軍管区司令官内山英太郎中将が鵠提督に詰め寄る。

「近海は連合国軍の機雷まみれ、沖には潜水艦もうようよいます。制空権も失っているため今はそんなところに突っ込ませるわけにはいきません」

鵠提督は反論をするが中国軍管区参謀長国武三千雄中将は馬鹿にしたように鼻で笑う。

「ふん、あれは人の皮をかぶっている兵器ではないか。あんなのに愛着が湧いて轟沈を恐れて出撃しないとは帝国海軍として恥ずかしい限りだ。お国のためなら多少なりともの犠牲は仕方がないだろう」

「さっきからなにを……!」

鵠提督と吹雪は額に青筋を浮かべるがあきつ丸は日本刀を抜刀しようと、川内はクナイを投げつけようとしていたので2人で慌てて止めに入る。

因みに杉山中将はあきつ丸の日本刀を見てあのときの記憶がよみがえり、顔面蒼白でそれは禁句だと中国軍管区将校を叱咤する。

「貴様も臆病風に吹かれたか……嘆かわしいな!」

「言うのが遅かったこちらの落ち度だが、彼女はあれで拳銃をバラバラにしたんだ!」

「そんなわけあるか! 剣豪じゃあるまいし……」

海軍同士の一触即発で険悪な雰囲気となる様子を目にして三好康之少将は心の中で盛大な溜息をつく。

こんなプライドが高くて古臭く頭が固い組織をとっとと抜け出し、いっそのこと空自に転職したい気持ちに駆られている。

口を開けばやれ特攻だの一億総攻撃だのと宗教のように唱えている軍部と世間の空気に心底うんざりしていた。

レーダー技術(八木・宇田アンテナ)などをないがしろにしたツケがきている。

そのレーダーを開発した八木秀次は海軍推薦で技術院総裁に就任しクーデターが起こる前の予算委員会で特攻を批判する答弁を行い、蔓延する狂気の空気の中しっかりと言い放ったことに三好康之少将は尊敬しておりあの状況でよく言えたものだと今でも思っている。

 

 「ちょっと待ってほしい! 強制的に第2総軍の指揮下に入り食料や燃料などは我々が管理するべきではないかね?!」

内山中将が怒りを含めた語気で言い放ち、関川陸将たちを睨みつける。

「それは困ります。そもそも燃料や弾薬の規格が異なるため融通が利かないのは資料にもある通りです」

「お前たちの兵器は我々が使うのだ。勝手に撤退した情けなく軟弱な軍隊は後ろで震えて見守るがよい」

「そんな横暴、許すわけがありません」

鵠提督も強い語気で言い返すが内山中将はにやにやと気味の悪い笑みを浮かべる。

「ならばお前たちの駐屯地や鎮守府に押しかけて分捕るまでよ。それが嫌なら第2総軍の傘下に入るのだ。さぁ、どっちにするか今すぐ決めてもらおうか?」

あまりの横暴なやり方に関川陸将たちは言葉を失う。

三好康之少将もこの期に及んで何を言っているのかと問い詰めたいだが、参謀副長の立場で上司に一言でも反対意見を言えば間違いなく目につけられるので静観するしかなかった。

また杉山中将は艦娘の力を体験してしまっているので、それはやめておいたほうがいいという視線を内山中将に投げつけるも彼は気にしていない。

「……持ち帰って検討します」

「そうやって先延ばしにする気か……時間稼ぎは無意味であるぞ。今、ここで、決めろ!」

怒号や脅しが飛び合が自衛隊全てを巻き込む一大事だからこそすぐに結論は出せない。

第2総軍の傘下に下ってしまえば間違いなく南方へ派遣しろなどと無茶な要求をされるのは明白。

自衛隊は専守防衛向けの兵器が多いのでこちらから攻める兵器、例えば大型爆撃機は所持しておらず強襲揚陸艦などの輸送揚陸能力は先進国軍隊に比べ低い。

険悪な空気となりつつある応接室にどう切り抜けようか関川陸将たちが悩んでいると、通信班の大佐が息を切らして入室し電報を読み上げる。

「第16方面軍より緊急電文です。連合国軍の艦艇が展開が完了し攻撃がまもなく始まるとのこと!」

「そうかついに……ひとまず時間がない中こちらまで来てくれて感謝する。本来なら断りもなく基地を放棄し後方へ撤退したことや、無礼かつ侮辱とも取れる発言などはいけ好かないが事が事だけに今回だけは不問に付そう。広島市の防空強化及び独立部隊についても大本営の裁可を仰ぐ」

畑元帥は彼らを見据えて告げると関川陸将が慎重に問う。

「それは……大本営次第では認められないこともありえるのでしょうか」

「ありえるがまぁ、鬼畜米英を地の果てまで返り討ちにするとかの結果次第では私から推薦してやらんこともない」

「……分かりました。1つ伺いたいのですが裁可される前に自衛隊の前線基地であるえびの駐屯地及びその他自衛隊施設へ攻撃が認められた場合、憲法及び自衛法に基づいて自衛のための必要最小限度の反撃を行いますがよろしいでしょうか?」

関川陸将は自衛隊法第81条の2と91条の2についても説明すると、それを聞いた横山中将が額に冷や汗を浮かべる。

なぜなら妨害工作を画策しているため返り討ちにあうことを恐れていた。

破壊を伴う妨害工作となれば“重要な施設その他の物を破壊する行為”にがっつりと該当してしまっているため、横山中将は脳内フル回転でどうするべきか必死に考える。

「好きにしろ。こちらとしては迷惑がかからなければいい」

「畑元帥殿、ありがとうございます」

関川陸将たちはぴっしりと揃うようにお辞儀をする。

「まぁお前たちが動かずとも、我が第2総軍と第16方面軍が鬼畜米英共の侵攻を跳ね返してくれるわ」

「その通り。貴様たちが出る幕はないだろう」

岡崎中将と内山中将は余裕そうな表情を浮かべながら自信満々に言い放つ。

その余裕がどこにあるのか関川陸将たちは不思議でならなかった。

熾烈な空爆に加え機雷による飢餓作戦で輸入が途絶え食糧事情の悪化という過酷な環境に身を置き、武器や防衛陣地も十分に整備ができていない状態で最新鋭装備を保有している連合国軍相手に対抗できるはずがないと。

いや、対抗できるとすれば特攻しかないだろうが多くの命が散るのは明白である。

「さて……今回の会談はこれまでにする。各自連合国軍に備えて行動しろ」

こうして会談は終わりお互いわだかまりを抱えたまま解散することになったが、横山中将が居残り手短に伝えたいことがあるらしく話を聞く。

 

 「……なるほど、防空気球や近隣住民による駐屯地の包囲か」

畑元帥が横山中将の提案を熟考する。

「自衛隊法第81条の2の“重要な施設その他の物を破壊する行為”に該当しない妨害工作です。それなら向こうは手出しができないでしょう」

「法の穴を突く形か。一理はあるが大本営や陸軍、第1総軍だけでなく帝国海軍もあの軍事力を知ればなんとしても取り込もうとするだろうな。いや、すでに弾道ミサイルを撃ち落とした実績がある……争奪戦になるだろう」

「その通りです。双方の軍事力は群を抜いているのは間違いない。故に我々が首輪をつけてコントロールか妨害をしなければ第2総軍の影響力は低下するだけでなく、敗北宣言と捉えかねない。そうならないために我々が獅子奮迅の活躍もして連合国軍を駆逐することで主導権を握るのです」

「大本営が独立部隊としての運用を認めたなら、疲弊した隙に乗っ取るのもいいかもしれません。それならより主導権を握れるかと」

横山中将と岡崎中将の力説にどちらも一長一短であるが畑元帥が待ったをかける。

「主導権を握った後はどうするつもりだ? まさか反旗を翻し賊軍になるつもりか?」

「いえ、それよりも沖縄諸島と硫黄島を鬼畜米英共から取り戻す。そうすれば国民から称賛され第1総軍よりも我々が大東亜共栄圏を復活させることができるでしょう」

「となると金が必要になるから財閥との協力関係を結びたいな。味方につければ少なくとも戦費は賄え今後有利になるが向こうは財閥との癒着が強いし、軍需省もあるため不利だ。どこと味方につける?」

国武中将が発案者である横山中将をじっと睨むように問い詰める。

「……西日本の名家や有力者と接触するしかあるまい。となれば筑豊御三家(麻生・貝島・安川)や阪神財閥、熊本の古荘財閥あたりはどうか?」

「しかしどれも軍需会社に指定されていますし、そもそも財閥や有力者と戦うことになるのは良しとしないのでは? 勢力図が変わるだけでなくいくつかの財閥そのものが吹っ飛ぶかもしれません……」

三好康之少将の懸念に室内が静まり返る。

いくつかの財閥が吹っ飛ぶとなれば大日本帝国全体にも計り知れないダメージを与えてしまう可能性が高く、下手をすれば外国から我が国の財閥が買い占められるリスクが跳ね上がるかもしれない。

「ともあれ念のため早めに接触するに越したことはないが、慎重に動こう。どの軍需会社もあいつらの軍事力を知れば喉から手が出るほど欲しいと思うから交渉の手札として使う。だが全部の駐屯地が動くのは第2総軍では対処できない、という敗北宣言に等しい。よって一部の基地だけ破壊を伴わない妨害を認めようと思う」

「一部だけですか……どこにしましょう?」

畑元帥が本棚から地図を取り出し机に広げると将校たちは地図と睨めっこする。

「まず空自の基地は宮崎は撤退し春日と築城にあると言ってたな……展開がしやすい春日基地を妨害しよう。陸自のほうも福岡や熊本を中心に妨害して海は……まぁ管轄外だし別にいいだろう」

畑元帥が話を〆ると解散し何事もなかったかのように各々を持ち場へと戻っていった。

陰湿な計画を企てていたことを誰かがひっそりと聞いていることも知らずに。

 

 対話を終え軍用乗用車をすっ飛ばされて飛行場へ戻ると、測定と盗聴を終えた妖精さんたちが鵠提督と艦娘にわらわらと集まる。

(なるほど財閥か……確かに味方につければ影響力はでかい。それに妨害工作とはいけ好かないな)

陸将たちも3名の特殊作戦群から話を聞いているようだ。

お互いアイコンタクトで交わすと鵠提督はしゃがんで滑走路を見る。

滑走路の長さは1,300m前後であったがところどころ雑草が生えておまけに中央部分は不整地でデコボコが激しく、離着陸するには少し厳しい滑走路事情だった。

「申し訳ございません。何もかもが不足しているので滑走路整備まで手が回らないのです……」

その様子を見ていた吉島飛行場の設定隊員が申し訳なさそう謝る。

彼に視線の先にはしばらく動かしてないであろう均土機が寂しげに置かれている。

「あれは小松1型均土機か。それが使えない状況ってことですか……貴方のお名前をお聞きしても?」

「吉島飛行場設営隊隊長の沼中少佐です。えぇ、その通りです」

この基地をしっかりと使うには基地設営隊妖精さんが小松1型均土機などで代わりに整備するしかないだろう。

だが輸送機では入らないサイズなので分解するか、艦娘による輸送で小松1型均土機などを運ぶしかないが、広島港周辺ももちろん機雷だらけなのでまずは掃海をしなければならない。

佐世保から広島までの海路を掃海するとなると途方もない時間がかかってしまう。

「物料投下もできなくはないですが、周辺に兵舎があるため厳しいですね」

古間空将が周りをぐるりと見渡す。

この場所は埋め立てられたばかりであり民家はほとんど見られない。

「となれば燃料や保守部品を二式飛行艇に詰め込んで設営隊に整備させるのはどうでしょうか?」

鵠提督の申し出に沼中少佐は驚愕し目を白黒させるが、ハッと我に返り帽子を取り深々と頭を下げて礼を言う。

「仕事ができるだけでもありがたいです。早速上にも報告します」

「わかりました。我々は至急佐世保に戻って必要な物があれば手配しますので連絡先も渡しておきます」

鵠提督は連絡先が書かれたメモ用紙を沼中少佐に渡す。

「助かります……しかしどうやって手配を?」

「工作艦明石と軽巡夕張がいるので、彼女たちに頼めばなんでもできますよ」

沼中少佐は提督の後ろにいる見慣れない服を着こなしている女性3名を見る。

(あれが艦娘……陸だから詳しくは知らないけど色々な艦がいるんだろうな)

深く掘り下げたかったが一刻も争う事態が迫っているため、鵠提督たちはそれぞれのヘリコプターに乗り込んで吉島飛行場(旧広島空港)を後にした。

「日本の滅亡か存続、一体どうなってしまうんだろうか……」

沼中少佐のつぶやきはヘリのダウンウオッシュにかき消され誰の耳にも届かずに散っていく。




夏イベの反撃!第31戦隊の戦いお疲れさまでした。アルペジオイベントから始めた13年の艦これ生活で初の甲勲章をとることができたので良かった。次の目標はオール甲を目指しますか。
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