異聞!決号作戦   作:シン・アルビレオ

5 / 17
秋刀魚祭りは工廠任務だけできんかった……ネジと瑞雲が足らんかったチクショウメッ


5話 情報開示Ⅰ

 杉山中将を先頭に鵠大将と三面海将、そしてその護衛たちは佐世保鎮守府防空指揮所の入口前にやってきた。

鵠大将は秘書艦の吹雪と陸軍に詳しいあきつ丸を護衛として連れ、三面海将は管理部長の関屋 伸(せきや のぼる) 一等海佐と佐世保陸警隊から前川 篤司(まえかわ あつし)副隊長を連れてきている。

門番の海軍兵士の二人は身体検査をしようとしたが後ろにいる人を見て躊躇してしまった。

なぜなら女性が二人、しかも見た目は中学生にしか見えないからだ。

(おいおいまじかよ……)

(うっわめっちゃ美人じゃん。しかし、どうするこれ?)

門番の二人はアイコンタクトで会話していた。

女性がほとんどいない職場に美貌な女性が現れてしまえば反応してしまうのも無理はなく、しかもどちらも発育がいいのだからごくりと唾を飲み込む。

ゆえに身体検査をしようにもできず戸惑っていると、1ついい案を思いつく。

「杉山中将殿、あの、すこしよろしいでしょうか?」とこそりと耳打ちする。

「なるほど……君たちでは躊躇してまうから女子の国民義勇隊を呼んで代わりに身体検査をか……よし、呼んで来い」

「はっ、ありがとうございます」

電話をかけてから数分後、女子の国民義勇隊が2人やってきた。

「えっと、あの方たちを身体検査すればいいんですよね?」

「そうだ、武器やカメラ等怪しいものがないか確認すればいいだけだ。もし見つけたら触らず私たちに報告するように」

「わかりました。すみません失礼しますね」

荻川 洋子(おぎかわ ようこ)はセーラー服を着ている女性の担当となった。

服の上からポンポンと触っていくが、引き締まった体に驚く。

荻川の身長は150cmくらいなのでほぼ同じ目線となる。

お肌はモチモチ、それなのにここまで鍛え上げられた筋肉は羨ましかった。

(すごいなぁ……どうやったらここまでになるんだろう)

 

 私も黒の学ランを着ている女性に身体検査していくが、見ただけでわかる二つのたわわに顔を赤めた。

少し背が高めなので160cmくらいかなと思う。髪も黒くサラサラなのに白く化粧された顔は芸妓みたいで美しかった。

白手袋を外してもらうと予想とは裏腹に手のひらがごつごつと硬くなっている。

(すごい……)

「気になるでありますか?」いきなり話しかけられドキッと心拍数が上がった。

「あ、はい……」

「奴らと戦ったり日本刀で振り回たりしてたら自然とこうなってしまったであります。最初はタコが痛かったけどもう慣れてしまったでありますな」

ケタケタと笑う彼女に私は苦笑いするしかなかった。

「でも向こうの子がすごいであります。何せあの子より大きい敵を素手で屠れるし……おかしいでありますよ。彼女と何度も手合わせ願いましたが連敗中であります」

「そんなに強いんですか」

身長や見た目は私と変わらないのに意外だった。

「えぇ、悔しいですが彼女は最強でしょう。日本刀使っても勝てないってもう訳が分からんであります。彼女に追いつけるよう日々鍛錬してますが、まだまだ先は遠そうであります」

身体検査が終わると、どちらも特に怪しいものはなかった。

「あの……お名前は?」

「あきつ丸であります。そしてセーラー服の彼女が吹雪でありますな。貴方は……?」

「あっ、私は秋葉 舞衣(あきば まい)と申します」

「秋葉 舞衣……ふむ、いい名前でありますな。以後お見知りおきを」

別れ際にあきつ丸さんは屈託のない笑顔を見せ優しく頭を撫でてくれた。

その温もりはとても心地よく感じた。

(またどこかで会えるかな?)

あきつ丸さんの背中を見送りながら私はそんなことを思っていた

荻川 洋子と秋葉 舞衣は何か不思議な体験をしたと後に周りに語り、この出来事を忘れぬよう日記にもつけた。

 

 「あきつ丸さん、先ほどの彼女達って……」

「えぇ、恐らく国民義勇隊でしょうな。時計はまだ狂ってたので精確な日時は分からないでありますがなんだか嫌な予感がするであります」

「まさか戦時中?」

「その可能性は高いでしょうな。提督と三面さんも薄々気づいているようでありますが……」

吹雪とあきつ丸は小声で話していると、頑丈そうな佐世保鎮守府防空指揮所の扉が重い音をたてて開いていく。

中に入るとひんやりとした空気が肌に触れ鳥肌が立つ。

電気は通っており薄暗い照明がコンクリートで覆われた壁をぼんやりと映していた。

カツン、と靴の音が反響する階段を下った先にはまた頑丈そうな扉がある。

扉が開けられると空調室のようで、ゴウンゴウンと大きな音を立てて機械が稼働していた。

杉山中将の説明を聞くとここは各電気設備が発する熱を抑えたり、各室を快適に過ごせるよう冷暖房設備が完備されている。

そして地下1階と2階に別れていて700㎡以上の面積があり、外壁の厚さは1mで天井に至っては3mものコンクリートで覆われているそうで佐世保空襲の時は上や隣にあった建物は焼失したが内部までの被害は皆無だったそうだ。

空調室を抜け長い廊下を通り過ぎた先には地下1階には中央に防空指揮所が構えてあり、それを取り巻くように作戦室や発令所、情報室等が配置されており職員たちが忙しく動き回っている。

杉山中将たちとすれ違った職員は移動の邪魔にならぬよう廊下の端に移動し敬礼で挨拶するも、やはり後ろにいる女性に驚きお手本のような二度見をしていった。

「随分と慌ただしいですね」

関屋一等海佐は職員を見送りながら言うと、杉山中将が当たり前だと言わんばかりに答える。

「そりゃ連合国軍との本土決戦が間近ですからな」

 

彼は今、なんと言った……?

 

さぁっと体温が下がるのと時が止まったような感触に襲われる。

鵠大将と艦娘2人、三面海将らは互いに顔を見回すとどちらも血の気の引いた顔をしていた。

彼が言った言葉をとっさに理解できず頭の中で何度も反復した。

だがそんなことはお構いなしといった様子で杉山中将は歩きながら説明を始めた。

なんでも南九州では連合国軍の艦砲射撃や空爆が激化しているが、日々耐えて本土決戦に備えている。

一億総玉砕の精神で迎え撃てば寄せ集めの連合国軍なぞ恐るるに足らず必ず勝つだろうと鼻息を荒くして語る。

しかし話が頭に入ってこない。

本来なら1945年8月15日にポツダム宣言があり終戦の道が開かれたはずだ。

どういうわけかここは今だ戦争が続いているらしく、しかも南九州ということはオリンピック作戦だろう。

史実では行うことがなかった大規模上陸作戦が目の前に迫っていることにめまいがしてきた。

 

 

 電話交換室の隣にあるラウンジに案内され入室するとそこには長机や革張りの椅子があり、壁際には立派な本棚が幾つもあった。

「私は準備があるので少しそこで待ってくれ。終えたら呼ぶ」

杉山中将が退出し足音が遠ざかったのを確認すると、全員が深い溜息をつく。

なぜ本土決戦が? 日本はどうなる?  我々はどうすればいいのか?

考えれば考えるほど頭の中が真っ白になり思考停止に陥りそうになる。

だがここで立ち止まっては何も解決しない。

三人寄れば文殊の知恵という言葉がある通り、どこまで情報を開示するかお互い確認しあう。

部屋に盗聴器がつけられている可能性があるかもしれないので、鵠大将が提案した筆談をすることにした。

『ひとまず……歴史や自衛隊のことはどこまで説明します?』

関屋1等海佐はそう書きながらちらりと顔を上げる。

『自衛隊の話をする以上、敗戦の事は避けられないがそれがどう影響するか……』

本土決戦前に士気を下げるようなこと言っていいのか三面海将は不安だったのだ。

それに未来から来たというだけでも信じて貰えるかどうか怪しいものだ。

タイムスリップなんてSF小説のようなことが実際にあるわけがないと思われているだろう。

しかし、それはあくまでも可能性だ。

今更、この世界に来た時点であり得ないことだらけなのだから。

『仮に隠したとしてもすぐバレる可能性は高いですよ。なにせこの紙やペンだけでも経済力や技術の高さが分かります』と関屋一等海佐は正直に話したほうがいいと伝える。

『しかし通貨については隠したほうがいいと思われます。銭や厘なんて使っていないことが分かってしまうと大変なことになるかと』

『ハイパーインフレーションか……』

もうその通貨は使用していませんよと教えてしまうと、軍の間で手放す人が増え民間人にもその流れが来るかもしれない。

ここの日本で銭や厘という貨幣の信認が落ちれば一気に暴落する可能性もありえたからだ。

 

いや、すでにインフレは起きてるかもしれない。

世界各国の投資家が本土決戦によって日本は滅びて円はもうなくなるだろうと踏めば円の信認も暴落しているだろう。

その最中に爆弾を放てば風前の灯火である日本経済は跡形もなく吹き飛ぶことも十分に考えられる。

『そもそも1000円札すらここではまだないはずです。買い物するにも昔の貨幣がないと混乱しますよ』

『そうなるとこちらで何かを売って貨幣を手に入れなければ。なにがいいですかね……』

海自側から売れるものはないか思案する。

ぱっと思いついたのは64式7.62mm小銃で沢山保管してあるが、こちらの銃と弾薬の規格が違うので融通が利かなくなるからと却下。

そうなると売るものがあまりないことに気づき、お先真っ暗になる。

こういうのは陸自の一人勝ちになるだろう。昔ほどではないがやはりライバル意識というものはある。

すると深災対の鵠大将が助け舟を出す。

『対空機銃なら腐るほど沢山あります。ここと規格が同じなら7.7mmや12.7mm機銃等はほとんど使っていないので売れると思います』

ふむ、と三面海将は考え込む。

魅力的な案だが、なぜ対空機銃を売ろうとするのだろうか。

一応聞いてみると対空用ではなく対人に使うことを想定しているそうだ。

12.7mmなんて重機関銃クラスであり、人間相手ならひき肉になってしまう。

『ただ、この場で思いついただけなので他の艦娘とも相談しなければなりません。反対が多ければ白紙にします』

『分かった。海自もいったん持ち帰って陸空と検討する』と三面海将はありきたりな返答をし、他の二人も同じ意見らしく首を縦に振る。

 

 『しかし兵器となると全部国産で通すしかないか……詳細な兵器のスペックを出したら向こうは本土決戦のためぜひ協力してほしいと言うだろうな。なにせ未来の軍事力だし猫の手も借りたいだろう』

三面海将は険しい顔でペンを走らせていた。

護衛艦のシステムや武装は米海軍をベースにしているし、繋がりも強い。

そのことが向こうにバレたら面倒なことになるのは目に見えている。

さらに小銃1つだけでもこの世界の小銃よりも凌駕するスペックを持つ。旧日本軍が協力を申し出ることは想像に難くないだろう。

『自衛隊は専守防衛があるとはいえ戦争を放棄しています。戦争に介入せず中立な立場として各国と交渉すべきでは? 政府や軍の上層部には反戦派や良識派がいるかもしれませんし彼らをうまく取り込めばいけるかも』

前川副隊長は持論を書くも、三面海将は難しい顔を浮かべながらペンを走らせる。

『本土決戦目前ということはおそらく彼らは牢屋送りか握りつぶされている可能性が高い。それに我は介入させるざ得ないかもしれん……私たちだけでなくもし熊本以外の九州に存在する陸空海自がここにタイムスリップしていたらどうする? 特に南九州にいる自衛隊員はすでに巻き込まれてもおかしくはない』

二人は分かりやすいほど青ざめた。

鹿屋基地には海自の哨戒機がある。

杉山中将が先ほど言っていたように南九州一帯は連日艦砲射撃や空爆されている。

もし自衛隊の基地が破壊されたら? 自衛隊の兵器が連合国に渡って解析されたら?

『かといって戦線にいる旧日本軍を横目に我だけがそそくさと撤退するのもな……これも陸空と早急に話し合う必要がある』

三面海将が書き終えるのを待ったかのように、鵠大将が手を上げる。

 

 『実は米だけでなく英や仏、豪などの連合国艦娘と枢軸国の独、伊の艦娘もいます。彼女の存在を知られたら向こうは連合国艦娘を敵とみなすかもしれません』

その内容に海自側は目を見開く。

艦娘は日本の娘だけかと思ったが、まさか海外の娘もいるとは予想外だったのだ。

『司令官、あの資料を見せて人間は艦娘に勝てないことを示してはどうでしょう?』

『あれか……確かに見せれば少なくとも制圧は無謀だと伝えられるだろう。しかし今度は自衛隊と同じく艦娘を前線に送れとか言いそうだ』

『かといって秘匿すれば後々面倒なことになります。どう折り合いをつけるか難しいでありますな……』

 

 ああでもない、こうでもないと筆談で会話している内に吹雪とあきつ丸の顔つきが変わった。

海自側からみると彼女たちは見えない何かと小声で会話しているように見える。

彼女は颯爽とペンを走らせると『杉山中将がこちらに向かってきている』という内容が書かれたメモを渡した。

足音も聞こえないのにいったいどうやって分かったのか不明だが、そんなことは後だ。

筆談メモ用紙やペンを急いで鞄に詰め込み何事もなかったように過ごす。

しばらくしてドアが開かれ杉山中将が戻ってくる。

(本当に来た……)

海自の3人は心の中で驚愕するもポーカーフェイスでなんとかやり過ごし、杉山中将に促されラウンジを後にし長官室に案内されると、室内には先客が4人いた。

スッと立ち上がり自己紹介していく。

「参謀長の石井 敬之(いしい けいし)少将である」

歳は52歳で千葉県出身の彼は榛名の艦長を務めたことがあり、その時にはガダルカナルの戦いやヘンダーソン基地艦砲射撃を経験している。

「参謀副長の大江 秀三(おおえ しゅうぞう)大佐です」

富山県出身であり長門や山城、熊野、鳥海など機関長を務めていて、歳は49歳で石井参謀長とは3つ離れている。

「私が護衛を務める佐世保海兵団団長の阿部 孝壮(あべ こうそう)少将と申します。そしてこちらが部下の藤家 和平(ふじいえ わへい)中佐です」

山形県出身の阿部少将はほとんどが白髪でかなり老けているように見えるがまだ53歳である。1940年10月11日の特別観艦式では比叡が御召艦となったときの艦長を務めていた。

佐賀県出身の藤家中佐の見た目は若々しく20代前後に見える。

彼らが彼女を最初に目にしたときはどこか懐かしい気配を感じたが、その正体が分からずモヤモヤしていた。

「どうぞ掛けてください」

杉山中将の言葉に従い椅子へ腰掛け、入り口からあきつ丸、吹雪、鵠大将、三面海将、関屋 一等海佐、前川 副隊長の順に座る。

杉山中将が向かい合うように椅子に腰を掛け、部下たちも椅子に座るとピリッとした緊張感が漂ってくる。

 

 「まず深海棲艦特設災害対策執行組織から話を聞きたい」

杉山中将は詳しく聞きたいと切り出した。

「わかりました。あ、その正式名称は長いので今後は深災対と略しても大丈夫です。まず深海棲艦とはなにかをお話しなければありませんね……吹雪、あきつ丸あの資料を」

二人が鞄から取り出したのは青のファイルで閉じられた資料だった。

「見ても構いませんよ。えぇとですね、2010年ごろから各海域のシーレーンでタンカーや商船、果てには客船までが被害に合う事例が発生。勿論軍も護衛していくようになりましたが時間が経過していくにつれ被害はうなぎ登りになっていきました。各国は敵対国もしくはテロ集団の仕業だろうとピリピリとしていましたが、それはすぐに覆されることになりました」

そう言いノートパソコンが出されると帝国海軍側は興味津々とした様子で見つめていた。

「ちょっと待ってほしい。その機械はなんだ? それにそのようなファイルはみたことのない」

杉山中将は疑問をぶつけると鵠大将はすぐに答える。

「あぁ、これはノートパソコンと呼ばれる持ち運び可能なコンピューターです。民間人のほとんどが持っています。そしてこのファイルは事務用のキングファイルと呼ばれるものでよく普及されているものですよ」

「なんと! そんな便利なものがありふれておるのか……」

「アナログコンピューターというのはあるが未来の日本というのはここまで技術は進歩しておるのか。我が日本は勝利し繁栄しているのだな」

石井少将は驚き、杉山中将は嬉しそうに話す。

少しは未来から来たことを信じてもらえたようで安心したが、内心は複雑な心境である。

 

 説明が再開されニュースや個人で撮られたもの等様々な映像が流れたが、共通していることは黒い何かによっていきなり襲われていることだった。

他の映像はもっとあるが刺激が強すぎるので出すのはやめておいた。

例えば隣にいた救命ボートが砲撃によって跡形もなくなっている映像だったり、戦艦の射撃で酷いことになっている沿岸部や、客船が深海棲艦に襲われ機銃掃射を受けているものもあったりする。

ちらりと帝国海軍側をみると深海棲艦よりも映像の鮮明さの方に驚きの声があがっていた。

「白黒ではなくカラーでここまで鮮明だとは……信じられん」

「しかもカクカクしていないぞ」

「一般人が持っておる板状の機械はなんなんだ?」

食い入るように見て感想を言い合っている。

「まぁこれがスタンダードなんですよ。ちなみに板状の機械はスマートフォンと呼ばれる小型の携帯電話です。分かりやすく言えばトランシーバーに近いですが、通信だけでなくカメラで撮影とかメモをとったり、計算したりと何でもできます」

「そこまで高性能なのか!?」

あんな薄っぺらそうな機械なのにいったいどのように詰め込んでいるのか理解し難い表情を浮かべる。

「値段によって性能は変わったりしますがね。ほとんどの国民、いや全世界のほとんどがスマートフォンを持っているのはもはや当たり前です」

そこまで科学技術が発展していたとは……しかも海自側も同じのを皆持っていると聞いて目玉が飛び出そうだった。

 

 「さて話を戻しまして、多方面に分析した結果深海から湧き出るように現れたことから深海棲艦と名付けられました。イロハ順に分けていますが後になるにつれ見た目が人間に近くなり、知能があがり鬼級や姫級といった言語能力をもつ深海棲艦まで出現しています」

「人間に近い……ということは対艦ミサイルの効果が薄くなる?」

三面海将はハッと気づいたようだ。

対艦ミサイルは慣性誘導やGPSで誘導し最終段階に電波ホーミングで目標を撃破する。

射程は数百キロを超えるのが当たり前なので当然水平線より遠くなりレーダー波は届かなくなる。

そのため観測ヘリなどを飛ばし目標を補足できるようになったが、それでも人間大の大きさを寸分狂いなく狙うには技術的に難し過ぎるだろう。

そもそも対艦ミサイルなのだから人間相手に使用することは想定していない。

「えぇ、海面に人間が立っているようなもんです。そんな小さい目標を対艦ミサイルで狙うのは難しくなります。かといって近づけば戦艦級の砲撃で危険が増す」

ノートパソコンを操作し画面を切り替えると、イロハ順に分けられた深海棲艦の写真一覧表が表示された。

写真越しでも十分威圧感があることが分かる。

しかも全体的に歯がむき出しになっている口もあるからもしかしたら人間を捕食しそこからDNAを接種して人型に近づけた可能性もあるのでは?と杉山中将は考察した。

その考察は正しかった。

とある海岸に流れ着いた深海棲艦を解剖していくと、胃には消化しきれなかった人間の骨や衣料の繊維等が検出された事例もあった。

資源を奪うだけでなく人間を捕食しDNAを得た。だから人型に近いのができあがったのではないか。

当たってほしくなかった予測は真実になり世界は恐れおののいた。

民間人が撮った映像の中には深海棲艦に喰われている映像もあるが先ほどと同様に見せるのは止めておいた。

絶叫と助けを求める声が響き渡る中、バリボリと骨が砕かれグチャグチャと血肉を噛む音は戦場に慣れている艦娘ですらトラウマになるレベルだからだ。

 

 「深海棲艦のせいでシーレーンは破壊され、空も航空力学を無視したような深海戦闘機まで現れ各国の経済は軒並みガタガタになりました。軍もなんとかしようとしましたが年々増してくる深海棲艦の勢いは止められずもはやここまでかと誰もが諦めかけたとき、2013年4月23日に5人の艦娘が現れ日本へ迫りくる深海棲艦を一蹴しました」

映像には機敏な動きで深海棲艦を翻弄する5人の艦娘が映っていた。

「そのうちの一人が私です」はい、と可愛らしく手を挙げたセーラー服の女性。

「とはいってもその映像に映っている方とは別ですがね。特型駆逐艦Ⅰ型1番艦、吹雪です。よろしくお願いいたします」

「そして自分は陸軍の特殊船丙型のあきつ丸であります」

海軍式と陸軍式の敬礼をしてきたので慌てて帝国海軍側も答礼する。

懐かしい気配の正体が分かったのはよかったが、にわかには信じられずお互いどういうことだ?と見合わせる。

そもそも史実ではすでに海の底に沈んでしまっているからだ。

なのに目の前にいるのはその軍艦だというのだが、見た目は女子中学生という有様。

頭がこんがらがってきそうだが、吹雪たちの顔を見るとその目は真剣そのもので嘘や冗談ではないことが伺える。

 

 「まぁ疑心暗鬼になるのも仕方ありません。証拠なら今からお見せするであります。吹雪殿、準備はよろしいですか?」

「はい。よしっ、擬装展開」

ハート型のアクセサリーから光が漏れ、あきつ丸と吹雪の体が光に包まれたかと思うと数秒後には擬装展開を終えた。

吹雪は12.7㎝連装砲と3連装酸素魚雷発射管を装着しキセル型の缶室吸気口を背負い、あきつ丸は飛行甲板が書かれた巻物と走馬灯を手に持っている。

「これが私たちの本来の姿です」

えっへん、とどや顔で吹雪はお披露目した。

だがそんなことを言われても納得できるはずもなく、鵠大将を除いた全員、口をあんぐりと開けて固まっているだけだった。

無理もない。目の前でいきなりこんなものを出されたら誰だってそうなるだろう。

ようやく話を切り出したのは杉山中将だった。

「し、信じられん……50口径3年式12糎7砲が人が持てるサイズになっているのも訳が分からんがどうみても本物の質感ではないか……」

「はい、勿論ちゃんと動きますよ」

吹雪が主砲を操作すると2門の砲身が同時稼働し、太ももにつけられている魚雷発射管もぐるりと回転する。

「やはり……その主砲はA型だ! 間違いない!」

藤家中佐はいきなり大声を上げたので周りもびっくりした。

「す、すみません! 実は私、初雪と磯波の砲術長を務めていたことあるのです。通りで懐かしい気配するなと思ったらそういうことでしたか……」

「えぇっ! それっていつ頃ですか?」

「初雪は1937年12月からですね。あとは転々として磯波が1941年9月からでした。最後は軽巡洋艦天龍の砲術長を務めました」

まさか初雪ちゃんと磯波ちゃん、それに天龍さんの元砲術長がここにいるとは思いもせず吹雪は驚きつつもなんだか嬉しかった。

「それが本物なら仮にここで撃てばどうなる?」

「そうですね。この部屋は確実に吹き飛んであなた方は血肉へと化すでしょう。試してみます?」

吹雪はニコッとした笑顔で言うものだから杉山中将の背筋が凍りつく。

本当にここでやりかねない迫力があったのだ。

海軍のお偉いさんたちも同じようで、冷や汗を流しながら首を横に振った。

 

 

 「まぁ、艦娘が現れた説は色々とありますが、通説によれば船魂信仰が大きく関係しているのではないかと言われています。船は昔から女性として扱うのが慣わしですから、それが影響してこのような姿になったのではないかと」

「船魂……女性……思い出した。重巡洋艦の愛宕であったな。艦内新聞で愛宕と高雄を擬人化したイラストが発刊されていた。それも影響している可能性もあるってことか……」

なるほど、それならば一応説明がつくなと杉山中将は少し納得した。

(ってことは、彼女たちが軍艦だったってことはその時の記憶を持っている……?)

もし本当なら彼女の気分を害してしまうのではないかと思い、関屋一等海佐は別の疑問を口にした。

「船魂信仰があるとしても何故、深海棲艦が現れ人類を襲うようになったのですかね? もしかして地縛霊だったりします?」

「そう言う研究者もいますし、いやあれは軍艦の亡霊の集まりだと言うメディアもいますし、深海棲艦の支配下に置かれた地域で艦娘が戦うも轟沈してしまい深海棲艦となってしまったと言う学者もいます。正直奴らの正体は艦娘と違い今だ不明なのです」

鵠大将は少し困ったように答える。

その他にも9年も戦ってること、不定期で現れる赤色海域(イベント)のこと等資料を交えて教える。

しかし多少の資源で艦娘が建造出来てさらに固有装備付き、補給のための資源は少しかかるが普段の食事は人間と同じものでよし、お風呂に入ればどんな重傷でも完治し戦線復帰できること、しかもバケツをぶっかければあっという間に全回復できること、妖精さんの存在等は伏せておいた。

そこまで開示すれば便利屋としてこき使われる未来が見えたからだ。

 




カタールW杯は予想以上にカオスな展開ですね。

日本がまさかドイツとスペインにジャイアントキリングして首位突破するとは予想外過ぎるぞ。
クロアチア戦はPK戦で負けてしまい8強には行けず世界の壁は高いね……そのクロアチアは優勝候補のブラジルと戦い2連続のPKに引きずり込んで勝つのはえぐい。

それにサウジアラビアがグループリーグでアルゼンチンを破るわモロッコが4強に進むわ、一体何が起こっているのか説明して頂戴!

明日はクロアチアとアルゼンチンの試合ですか。
決勝はアルゼンチンVSフランスと予想するけど、クロアチアも侮れんしなぁ…しかし連続PK戦まで行ってるから疲労面がどうなってるか。
モロッコがフランスを破ったら一番面白い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。