福岡県二日市に司令部を置いている第16方面軍の
住民から春日市や築城で見たこともない基地があるという通報を受けて部隊を動かし、勿論自分たちもこの目で見たいと思い部下たちを率いたがまさか未来から来た日本人だとは流石に想定外だった。
言葉使いも階級もわが軍とは異なり戸惑ったが、聞けば聞くほど強力な兵器があるとわかりこれは神が与えた贈り物だと確信した。
すぐさま第2総軍第16方面軍の指揮下に入ってほしいと交渉したが、あっさりと断られるとは思いもしなかった。
怒鳴りたかったが軍人たるもの常に冷静にしなければならない。
粘って交渉するも自衛隊と名乗る組織は首を横に振るばかりで、徐々に怒りより呆れのほうが強くなっていった。
怒り罵る部下たちをなんとか抑え帰路につくが、報告書を見る限りどの師団でも断られたそうだ。
それに自衛隊から未来の歴史を教えられて愕然とした。特に2発の原爆投下と日本の降伏。
第2総軍や中国軍管区は広島市に司令部を置いているため、このまま原爆が落とされるとなると確実に壊滅し命令系統が機能しなくなる。
(新型爆弾の噂は小耳に挟んでいたがあれ程とは……それに広島・長崎市民も疎開しなければならないぞ。しかし決号作戦はもう間近。全市民を疎開させるには時間が足りないがなんとかしなければ)
すでにインフラは空襲で寸断され軍も市民も戦争に駆り出されている。
畑元帥になんて報告すればいいのだろうかと何度目か分からない溜息をつく。
「司令部を宇品に移転するのは? 船舶司令部があったはずです」
「いや、放射線の影響がありますから船舶司令部も移転すべきかと」
軍医部長の
「70年以上経っても放射線によって苦しめられていると自衛隊から聞いたが、そんなに恐ろしいものなのか?」
「はい。放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線等があります。勿論無味無臭で痛みは一切なく遺伝子や染色体、骨髄細胞、免疫機能等を破壊し気づかないうちに体はボロボロになります。癌や病気にもなりやすく、平均年齢は下がるでしょう。さらに放射線の影響は長い時間体に留まります。つまり次世代の子供にも影響が出ます。奇形児や障害を持って生まれてくる可能性は高くなり、五体満足で生まれる子供はとても貴重になるでしょう」
ゾッとするようなことを淡々と言う軍医に思わず背筋が凍った。
「治療法はないのですか?」と高級参謀の
「ありません。それに人体だけでなく土地や水も放射線で汚染されますので、もう二度と人が住めない街になるかと」
「でも自衛隊の話では未来でも人が住んでいるぞ。これはどういうことだ?」と参謀副長の友森清晴大佐が疑問点をあげる。
「放射線は時間が経過したり距離が離れれば離れるほど影響は小さくなるらしいです。映像で見た限り上空で炸裂したからかもしれませんが私が分かるのはこれくらいです」
実は日本も原爆を開発していたが、極秘中の極秘であり知っているのはほんの一握りだけなのでここにいる誰もが詳しいことは知らなかった。
「まぁ、このままにしておけば甚大な被害が出ることには変わりない」
横山中将達は地図をまた見て近すぎず遠すぎない所を探していく。
呉市や大竹市は海軍にとって重要な基地があるがすでに壊滅しており、江田島は周辺海域が連合国軍の機雷によって埋めつくされている。
長崎県大村市にも海軍航空隊や第21海軍航空廠があるが壊滅している。
すでに重要拠点は連合国軍の大空襲によってすでに潰されてると言ってもいい。
「広島は廿日市市、長崎は諫早市に官庁を移すのはどうか?」
参謀長の
「そうする他あるまい。建物疎開を中止し、広島・長崎市の中心部は暫くの間立ち入り禁止することを第2総軍に提言する」
建物疎開とは空襲による火災の延焼を防ぐ目的で建物を壊すことだが、あの映像を見せられたら意味がないことは明白で一刻も早く中止にすべきだと誰もが思った。
横山中将の意見に否を唱える者はいなかったが、果たして受け入れてくれるかどうか。
信ぴょう性を増すなら自衛隊も連れていきたいが、先ほどの対応を見たからか信用できない。
しかしあなた方は原爆によって塵すら残らない消し炭となってしまいますので逃げてください、と元帥らに向かって言うのも流石に気が引ける。
(下手すればデマで混乱に陥れたとして軍法会議にかけられるか、上層部に握りつぶされるか……いや待て、なぜ自衛隊は原爆投下の映像をもっておるのだ? そもそも我らに見せたのも戦意を挫く目的で見せたとしたら? 仮に自衛隊が第2総軍と接触し転進することを米軍に流したら? 日本人の皮を被った外国人なら?)
考えれば考えるほど横山中将の疑心は膨れ上がっていく。
結局未だ敵か味方なのか分からない軍隊もどきに一丁前に手柄を取られるのはいけ好かないが、第2総軍の命令系統が機能しなくなるかもしれないことを天秤にかけると自衛隊を一緒に連れて説明するしかないものの、一つ気がかりなことがあった。
数日前から連合国軍の無線のやり取りがわずかながら活発化していたことだ。それに初めて聞く暗号も出てきたらしい。
解読班が一生懸命解読を試みているが、今までと異なるパターンや複雑さもあり難航しているようだ。
決戦が近いから、で片付けられるかもしれないがどうも胸騒ぎが収まらない。
まるで横山中将の不安を表しているかのように、先ほどまで小ぶりだった雨が激しくざぁざぁと降り始めた。
自衛隊と艦娘がタイムスリップしてくる数時間前、南九州を包囲している太平洋艦隊では気象担当者が逐次台風の情報を集めていた。
その理由に米海軍には1つのトラウマがあった。
1944年12月にルソン島付近で第38任務部隊が進路予測を誤って台風の暴風圏に突っ込んでしまう。
コブラ台風と名付けられたそいつは米海軍の駆逐艦をいくつか沈没させたり空母の艦載機を失わせたりと散々な被害を出してしまう。
そのため米海軍は台風については敏感になりレーダーや航空機、気球を用いて観測体制を敷いている。
その結果、種子島付近にいる台風は速度を上げて北東しお昼すぎには紀伊沖まで移動する見込みであり、雨は早朝まで降り続き雲が多いが次第に回復し風も波も落ち着く予報が出る。
高知沖にいる陽動部隊に直撃しないのは幸運であり、直撃していたらコブラ台風の二の舞になっていたかもしれない。
早速報告書をまとめ上官に提出し、不備がないことを確認した上官は会議のため戦艦ミズーリに集まった太平洋艦隊第3・5艦隊の幹部たちに配る。
「ふむ、これは朗報だな」
水陸両用部隊をまとめる第40任務部隊司令官R・K・ターナー提督は報告書を見て満足そうに呟く。
揚陸用舟艇というのは波が高いと上陸が難しくなるためなるべく避けたい。
上陸前に沈没してしまっては作戦そのものが瓦解してしまうからだ。
「艦砲射撃や航空機による爆撃も問題なく行えそうですが雲が厄介ですね」
第54任務部隊司令官J・B・オルデンドルフ海軍中将はターナー提督の言葉を補足するように言う。
雲が厄介な理由は誰もが察しした。
「カミカゼアタック、か」とターナー提督が忌々しく呟く。
硫黄島攻略では雲が低く視界不良の天候だった。そのためカミカゼアタックを許しビスマーク・シーが轟沈しサラトガが大破、ルンガ・ポイントなどが損傷したのは記憶に新しい。
日本本土に近いので航空機だけでなく自爆用ボートや人間魚雷、人間機雷も警戒しなければならない。
連日空襲や艦砲射撃で潰しているとはいえ、運よく潰されなかった特攻用の秘匿基地が存在している可能性もある。
もし上陸中に海中と空から連動した特攻を繰り出されたらさすがに苦戦するだろう。
「まったく奴らのカミカゼアタックの執念は凄まじいな……」
オルデンドルフ中将が苦々しげに言い放った。
彼としては祖国防衛のため命を捨ててでもアメリカと戦うというトチ狂った精神論が理解できなかった。
そのようなものは映画や小説の中だけでいいというのが彼の本音である。
「だが、それを恐れていては何もできない。来ると分かっているなら迎え撃てばいいだけの話だ」
ターナー提督はあくまで冷静だった。彼自身、カミカゼアタックに対する恐怖は勿論ある。
しかしそれをいつまでも恐れていてはこの先の戦いを乗り越えることなど不可能だ。
カミカゼアタックは日本にとって最後の切り札であるが、特攻への対策はすでに講じており後はそれを徹底させるだけだと彼は思っている。
それを使うほど追い詰められた時点で戦争遂行能力が無いに等しい。
「念のためもう一度各部隊にカミカゼアタックの対応を周知させろ。それとBC兵器の使用も今後は問題ないか?」と第5艦隊司令官レイモンド・スプルーアンス提督が確認をとる。
「えぇ、天候もこれから安定してきますから大丈夫かと」
書類を配った上官も肯定する。
生物兵器は炭疽菌を詰め込んだ爆弾、化学兵器はマスタードガスやホスゲンを中心とした砲弾や爆弾、それらの貯蔵タンクがマニラ湾や沖縄の各地で急ピッチで建造されていた。
すでに生産量は米国にあるものを含めると数千万トンにも及び、BC兵器を搭載した輸送艦の建造もまるで週刊のように建造している。
「なら良し。例の新型爆弾はどうなっている?」
第3艦隊司令官ハルゼー大将も気になっているのか口をはさんでくる。
「先ほど5発ほどがアメリカから出発したと」
「どちらも開戦まで間に合わせたかったんだがな……」とハルゼー大将は残念そうに言った。
「仕方ありません。様々な障害を乗り越えやっとできあがったんですから」
スプルアンス提督がなだめるとそれもそうだな、と思い巡らした。
幾度の実験の失敗やメンバーの脱退やら紆余曲折あったが、ようやく実戦に使えるレベルまで完成できたことは素直に喜ぶべきだろう。
「まぁ、日本の連中を地獄へ送るには十分な威力があるだろう。台風の影響もなさそうだし事前に検討していたあれを発動するぞ」
おぉ、と幹部たちが色めき立ち室温が上昇したように感じた。
「ついにですね」とターナー提督が上ずった様子で言う。
「あぁ、大統領や元帥のお墨付きだ。パールハーバーでやられたことをそっくりお返しするだけさ」
彼の脳裏にあるのは真珠湾の復讐だった。
ニイハウ島沖付近で真珠湾攻撃のニュースを聞き、急いで付近を索敵したが空振りに終わり12/8にパールハーバーに帰港した。
いくつもの艦艇が鉄くずのように変わり果て、基地が爆撃で穴だらけで様々な航空機が黒焦げになるほど燃え尽き、火薬と燃料と血が混じったような地獄の光景は今でも忘れることができない。
「リメンバー・パールハーバー……今となっては懐かしい響きですね」
スプルーアンス提督も真珠湾へ帰港中に攻撃されたことを知った時は腸が煮えくり返るほどの怒りを覚えた。
いつかジャップに復讐を誓ってから必死に勉強し、1年後のミッドウェー海戦で日本の空母4隻も沈める大勝利をおさめたときは歓喜で踊り狂いたくなったものだ。
「すべてはあそこから始まったな。一時はどうなるかと思ったが、よくぞここまで持ち直して今やジャップとの歴史的な一大決戦が始まる。胸がすく思いだよ」
「同感です。ジャップの奴らに怒りの鉄槌を下す絶好の機会です」
スプルアンス提督は拳を握りしめながら熱く語る。
「我々に歯向かったらこうなるぞ、と黄色い猿には再教育をさせなければなりませんな」
オルデンドルフ海軍中将も興奮気味にまくし立てる。
その言葉に呼応するように士気が高まりつつあった。
彼らの頭の中では自分たちが世界最強の座に就く姿が描かれていた。
日本というアジアの小国を徹底的に叩き潰す。それは彼らにとって当たり前の復讐であり疑う余地もない。
それに彼らは日本憎しの一心でこの作戦に賛同した者たちだ。
中には日本という国がこの世に存在したという事実すら消し去ってしまいたいという思想が渦巻いていた。
「では諸君、作戦開始時刻まで最終点検を不備なく行え。無線は通常通りにな」
ハルゼー大将が会議を締めると幹部たちは紅潮した様子で退出し、会議室には2人の大将が残った。
「いよいよですね、ハルゼー将軍」とスプルアンス大将は高揚感を抑えきれない様子で声が上ずってしまう。
「うむ、奴らはこの世界に必要ない。なんなら絶滅に追い込んでやろう」
ハルゼー提督は狂気じみた目つきをのぞかせながら日本民族を粛清しようとはっきりと口にした。
やっとE3-3甲終えました。
後方待機空母といいボス前のネ級改といい道中の殺意がマシマシすぎるんじゃ。
結局道中支援と基地航空隊を投げて突破率をあげるやり方でラスダンは安定してきたけど5回もかかったよ。
今週末にまた友軍がくるそうですがあと2週間あるかないかだと思います。資源もすくなくなってきたし間に合うのでしょうか……