偽典・魔装機神   作:DOH

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第八話 選ばれし者、そして……(後)

 

 その光は、闘技場上空に描かれた巨大な魔法陣より生まれ、光の柱となって大地を貫いていた。

 

 純白の光に紡がれたそれは、正三角形を二つ互い違いに組み合わせた六芒星魔法陣……一般に、『ラスフィトート方陣』と呼ばれる物だった。調和神『ルザムノ=ラスフィトート』の力を借り、万物にあまねく調和と安定を施すとされるもの。

 

 そしてそれは、神聖ラングラン王国を守護する魔術結界……『調和の結界』の基礎となる魔法陣でもあった。

 

 統制する意志の介在しない過剰なエネルギーを中和する、極めて強力な魔術結界、『調和の結界』。それを維持・制御する事こそ、ラングランの国王の果たすべき、真の責務である。

 

 それは逆を言えば、国王はその技量次第で、『調和の結界』の機能を制御し、その効果範囲や対象をコントロールする事ができるという事である。例えば、効果範囲を闘技場周辺に縮小し、その空間における邪霊の出現や跳梁を封じ込める、と言ったように。

 

 そして今、神聖ラングラン王国国立闘技場の周辺を覆う蒼き輝きこそは、まさしく効果範囲を縮小された『調和の結界』そのものだった。

 

 

 その蒼の光は、闘技場の内外をあまねく照らし、その中で荒れ狂う巨神達の姿を浮き彫りにした。

 

 精霊を宿す巨神の乗り手達は、その余りにも鮮烈な輝きに焙られながらも、それが奇妙なほどの柔らかさ、そしてどことない懐かしさを宿している事に戸惑った。無論彼らはその光の正体を知る由もなかったが、幾十、いや祖先のそれを含めれば幾百、幾千の年月を、彼らを頭上から守護してきた光である事を、彼らの受け継いできた遺伝子、或いは細胞そのものが記憶していたのかも知れなかった。

 

 一方、魔装機同様闘技場のグラウンドに跳梁跋扈していた『デモン・ゴーレム』の群にも、凝集された『調和の結界』の光は降り注いだが、こちらはただでは済まなかった。

 

 元来、『デモン・ゴーレム』とは、神鉱石(オリハルコニウム)結晶などの魔術感応物質に、邪霊が憑依する事で生成される物である。そして、邪霊とは生物の残留思念(つまり強い感情や思念が、その空間のアストラル層に『焼き付け』された物……必ずしも死んだ生物のそれとは限らない)が、破壊衝動などの強い思念を核に凝集して生まれたもので、その挙動は暴走……つまり、『制御されていない』状態に等しい。

 

 つまり、『デモン・ゴーレム』の核は、『調和の結界』の中和対象に含まれるのである。それも、核の《邪霊》を分解するという形で。

 

 果たして、破魔の光は覿面にその威力を発揮した。

 

 はじめに、光の中、訝しげに天を仰いでいた石巨人が、突如として悶え苦しむ様にその体躯を捩らせ始めた。

 

 そして、その悶絶が激しかった物から順に、ばん! ばん! という破砕音を発して崩壊を始める。石巨人の体躯を形成する土塊を固着させていた力が中和され、それらが本来の姿に還元されようとしているのだ。

 

 そして、身を纏う土塊の殆どを奪われ、その核たる紅玉を浄化の光に晒す事となった石巨人は、苦悶の咆吼を思わせる衝撃波を周囲にまき散らして……そこで全ての力を失った。ぱしゅ、という拍子抜けするような軽い音を残して核が弾け、辛うじて残っていた土塊が、砂礫に戻って地面に山を作った。

 

 結局、蒼の光が途切れ、空が再び青と白のコントラストを取り戻した時、グラウンドに生き残っていた『デモン・ゴーレム』は、わずか四体だけであった。しかも、それらでさえ自らを構成する力の大半を刮ぎ落とされ、呪詛の様な呻きを振りまきながら、ふらふらと徘徊する事しかできなくなっていた。

 

 そして、無敵を誇る《咒霊機》『ナグツァート』でさえも、その光の前では無傷ではいられなかったのである。

 

 『ナグツァート』の持つ絶対的な防御力について、セニアは《霊相遷移(アストラル・シフト)》と呼ばれる現象を応用したもの、と推測していた。《霊相遷移(アストラル・シフト)》とは、物体を空間ごと、通常空間に重なるような形で存在する異相空間へと遷移させ、通常空間の物理エネルギーの干渉を……つまり衝突とか破壊とかいった現象から切り離すと言うものである。

 

 つまり要約すると《霊相遷移(アストラル・シフト)》を行えるものは、ほぼありとあらゆる攻撃に対して絶対的な防御を得る事ができるのだ。それはまさしく、現在の『ナグツァート』の状態である。

 

 しかし、《霊相遷移(アストラル・シフト)》は非常に制御が困難な技術であり、またその実行には霊相と物質相の架け橋となり、物質相における邪霊などの思念体を構成する高次元物質『エーテル』を大量に必要とする。これは極めて特殊な魔術儀式等でしか、物質相に利用可能な状態で持ち込むことのできない極めて不安定な物質で、通常の手段では魔装機サイズの物体を遷移させる程の量を確保するのは不可能に近い。

 

 セニアはそれを、『ナグツァート』が呪法によって邪霊を召還し、それを構成物質に還元する事で、必要量のエーテルを確保していると推測した。『ヴォルクルス信徒』が邪霊召喚術に長じた『死霊傀儡の外法』の使い手であるが故に可能となる手段である。

 

 つまり、もしもその推論が正しければ、常時事実上の暴走状態にある邪霊を、召還してエネルギーとしている『ナグツァート』の《霊相遷移(アストラル・シフト)》機構は、『調和の結界』によって召還機構を無力化される筈である。

 

 そして、セニアの分析は完全に事実の正鵠を射抜いていた。

 

「む……これは……」

 

 頭上を覆う魔法陣が霧消し、空が青と白のコンストラトを取り戻した直後。『ナグツァート』のルオゾールは、突如自らの操る邪霊召喚の呪法を阻害する力を感じ、眉を顰めた。

 

 コンディション・モニターを呼び出し、現在の機体の状況を確認する。永久機関、問題なし。各部制御系、問題なし。《魔装》展開系、問題なし。《霊相遷移(アストラル・シフト)》機構……機能停止。

 

「ふむ……なるほど」

 

 モニターの表示に納得した様な声を漏らし、ルオゾールはその口元に薄い笑みを浮かべた。自嘲などではなく、むしろ満足げに。絶対無敵の筈の防御壁が無力化されたにもかかわらず、である。

 

「そうとなれば……長居は無用ですな。後は、あのあばずれ次第……」

 

 一人ごち、ルオゾールは『ナグツァート』をふわりと上空に浮き上がらせた。そして、辛うじて生き残った『デモン・ゴーレム』を狩り立てる『ブローウェル』部隊と、油断無く『ナグツァート』を睨む『グランヴェール』と『ガッデス』を上空から睥睨する。

 

 低位魔装機の『ブローウェル』はともかく、『霧のラストール』や『水のガッデス』、『火のグランヴェール』には空中戦能力もあった筈だが、彼等は『ナグツァート』を追いかけては来なかった。攻撃が通用しない以上、不用意な追撃は無意味……それどころか無駄に被害を拡大する危険も伴っていると判断したのだろう。

 

 そうとなれば、この場に長居は無用。実際の所邪霊召喚能力を封じられては、邪霊を用いた魔術を攻撃の中心とする『ナグツァート』は、丸裸にされているも同然である。それをラングランの魔装機乗り達に気づかれる前に、この場から撤退しなくてはならない。

 

「ふふ……なるほど、皆様の実力の程は見せていただきました。それでは、そろそろ私は失礼させていただきましょう。皆様、次に相まみえる時を楽しみに……」

「みんなっ! 今の結界で『無敵モード』は無効化された筈よ! あの化け物に攻撃を集中して!」

 

 しかし、ルオゾールが撤退前の口上を述べるのを圧して、闘技場の放送設備を介したセニアの声が響きわたった。

 

 

 

 

「みんなっ! 今の結界で『無敵モード』は無効化された筈よ! あの化け物に攻撃を集中して!」

「やれやれ……セニア。お前も無茶をさせるねぇ」

 

 手元の情報端末のマイクにかじりつく様に叫んでいる妹姫を横目に、アルザールは大きな溜息と共に椅子に腰を落とした。

 

 顔はまだいつもの涼しげな造形を保っているが、その礼服の下には、通常では考えられない程の高度な術の行使に、無量の汗が浮き上がっていた。椅子に預けた背中に、汗を吸い込んだ下着が張り付く感触に眉を顰める。

 

「まあ、無茶の甲斐はあられたとおっしゃる物ですわ。正直、ここまで目に見えて効果があるとは思って居ませんでしたし」

 

 眼下の『デモン・ゴーレム』の残骸を見下ろし、こちらも額に浮かんだ汗の玉を拭いながら、姉姫モニカが答えた。父親に負けず劣らず高い魔力を有する彼女は、アルザールが『調和の結界』を収束制御する際、そのバックアップを務めていたのである。

 

 セニアの提案した、凝集した『調和の結界』による邪霊の退魔は、理論的には確かに可能であろうと思われたが、実際にそれを実行しようと思うと、それは並大抵の事ではなかった。『調和の結界』を凝集すると言っても、通常ラングラン全域を覆っている結界そのものを凝集してしまっては、結界の力で封じられている自然災害……火山の爆発などを解放してしまうことになるからだ。

 

 その為、アルザールは通常の結界に重ねる形で、今一つの結界を展開しなくてはならなかったのだ。それがどれ程の労力を要する物なのか、想像を絶する。

 

 それをアルザールは、姉姫モニカの助力を借りたとはいえ、完全に展開、及び制御を成し遂げたのだ。

 

「それにしても、『無敵モード』って何だい、セニア姉さん」

「……なかなか的を得た表現だと思わない?」

 

 セニアとテリウスが軽口を叩き合う向こうで、磁気加速砲の独特の射出音、そしてそれに続いて粒子砲や『アートカノン』の発射音が轟いた。魔装機隊が、『ナグツァート』への攻撃を開始したのだ。その時には既に、地上を徘徊していた石巨人は全て崩れ去り、元々そうであった様に周囲の土と同化していた。

 

「いけいけー! やっちゃえ!」

 

 セニアのバルコニーから半身を乗り出しての声援が届いているのかいないのか。魔装機隊の放つ砲弾の類は、地上から上空への砲撃と少々条件が不利であるのに加え、『ナグツァート』の空中での運動性の高さによって半数以上が回避されていた。だがそれは、半数ばかりは『ナグツァート』に命中打を与えているということでもある。

 

 そして、その命中した弾薬は、明らかに今までとは違う反応を示していた。強固な土壁を、濡れた布で力一杯ひっぱたいた様な、重たい破裂音。そして、着弾点に広がる黄金色の閃光。それは、紛れもなく『ナグツァート』の《魔装》の層が破壊されている事を意味していた。

 

 攻撃が通用するようになってしまえば、もはや戦いの趨勢は決していた。『ナグツァート』の纏う《魔装》を、『ブローウェル』の磁気加速砲が貫き、『ガッデス』の『アートカノン』が灼き、『ラストール』の破壊音波砲が分解する。

 

 そして、最後に『グランヴェール』が両肩の龍を象った砲座から放った紅の光が、その戦いに決着をつけた。

 

 『カロリック・スマッシュ』。『火の精霊王グランパ』の力を借りて生み出した、物体をエネルギー損失なしに加熱する熱素子『カロル』を凝縮し、一気に吹き出すこの魔道兵器である。

 

 この火力の前には、ただでさえ度重なる攻撃に消耗していた『ナグツァート』の《魔装》など、薄紙程度の意味しかなかった。膨大な熱素の奔流の前に、赤熱し、崩壊し、黄金色の粒子となって飛び散ってゆく。そして餓狼の如く《魔装》を舐め尽くした『カロリック・スマッシュ』は、そのまま丸裸にされた『ナグツァート』の魔装素体そのものを焼き尽くしにかかった。

 

「むぅ……おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ルオゾールの咆吼が轟く中、熱素の赤と、水際で展開される《魔装》が弾ける金色が交錯し、ばちばちという連続した破裂音を響かせる。

 

 そして数秒の後。衝突する二つの光が途切れた時……そこには、左の肩口から半身を失った『ナグツァート』の姿が残っているだけだった。

 

「嘘っ! しぶとい!」

 

 満身創痍でありながら、『ナグツァート』は未だ飛行機能を失ってはいなかった。そして、これ又辛うじて生き残っていたのであろう外部音声出力から、ノイズに混じった含み笑いが響き渡った。

 

「く……ふふふふ……ふふふ……」

 

 それはどこか熱に浮かされた様な、病的な笑いだった。憤怒や絶望などではなく……むしろ、歓喜しているかの様な。

 

「ふふ……素晴らしい。素晴らしいですぞ。それでこそ、万世に破滅と崩壊をもたらす存在に相応しい」

「何を、言っているの?」

 

 ルオゾールの奇矯な言動に、セニアが戦きの混じった呟きを漏らす。

 

「……ならば、私は今は退きましょう。皆様が、より大きな力を使いこなせる事を願って……ふ……くははは!!」

 

 哄笑と共に、『ナグツァート』はその周囲に無数の小さな丸薬状の弾丸を射出した。それは主からほんの数メートル離れた場所で炸裂し、膨大な光、そして無数の攪乱素子を振りまく。光は瞬く間もなく『ナグツァート』の周辺を光に包み込み……

 

 そして光が途切れた時、そこに『ナグツァート』の幽鬼の如き姿は、影も形も残ってはいなかった。

 

 ……後には、疲れ切った機神達と、静けさだけが残された。

 

 

 

「……! ……!!」

 

 正樹の目の前を、泣きじゃくる少女と、運ばれてゆく担架が通り過ぎていく。

 

 担架の上には、『デモン・ゴーレム』の一撃を受け、全身打撲で意識を失った騎士が乗せられている。その身体の上に掛けられたシーツの白には、所々に紅の斑点が浮かんでいる。

 

 救護隊の人間から、彼が騎士団魔装機部隊において、ファングに次ぐ二番手の実力を持つ騎士、フェリオス=ザン=クラックスであることを聞かされた。彼の側には練金学士見習いの制服を着た少女……十四歳位の銀髪の少女が付き、幾度も幾度も涙混じりに呼びかけている。妹……にしては容姿に共通点が見えないが、別にそれがどうだという事でもない。

 

 正樹にとって重要なのは、その騎士フェリオスが、自分を庇って負傷した、という事実だけだった。

 

 自分は、皆の危機を救いたくて、『サイバスター』に乗り込もうとした。《風の魔装機神》の力を以て、皆が傷つくのを防ぎたいと願っていた……はずだ。

 

 だが、現実はどうだ。彼等を救ったのは国王アルザールの行使した結界術。そしてあまつさえ、自分の無謀な行動によって、一人の騎士が重傷を負ってしまった。

 

 笑わせる、何が「皆を救いたくて無茶をした」だ。……いや、それ以前に、自分は本当に「皆を救いたかった」のだろうか?

 

 「やってやる! 俺が役立たずなんかじゃねぇって事を、証明してやる!」……自分の言い放った言葉が、脳裏に甦る。そうだ、それこそは自分の本音だ。結局、自分は自分自身のこの世界における存在意義を『人を守る』という大義銘文の中に隠蔽していただけだった。

 

 誇りを得る為に英雄になる事を望み、存在意義を得る為に危機に飛び込む。しかし、その結果残された物は、無惨に瓦解したプライドと、役立たずのレッテルだけ。……とんだ道化だ。

 

 ……ふと気づくと、先程まで騎士フェリオスの側で喚いていた銀髪の少女が、正樹の目の前に立っていた。

 

 どことなく南国系を思わせる小麦色の肌と、エメラルド色の瞳の取り合わせが、一種エキゾチックな魅力を宿している……と言えなくもないが、先程まで涙していたが故に充血した瞳と、ぎりりと引き絞られた眉元と口元を見れば、魅力云々を取り沙汰して良い状況ではない事は容易に察しがついた。

 

 その銀髪の少女は頭一つ分近くも高い正樹の目線を射竦めながら、単刀直入に問うた。

 

「あなたの……せいなんでしょう?」

「……ああ」

 

 真っ向からの糾弾に、正樹もまた真っ向から認める事で答えた。少女は正樹が言い訳をする事を予想していたのか、一瞬虚を突かれた顔を見せたが、すぐさま憤怒の表情へと装いを変え、正樹の胸ぐらに掴みかかった。

 

「……何でよッ!?」

 

 細身の見た目からは意外な程の膂力で、少女は正樹を揺さぶりながらまくし立てた。

 

「何であんな事したの! 英雄でも気取りたかったの!? 格好つけて、人を巻き込んでっ! ……ねえ、何とか答えなさいよッ!!」

「……アーネッ! 止めなさい!」

 

 無言のままの正樹に苛立ち、振り上げられた少女の平手を、背後から伸びたたおやかな手……ウェンディ=ラスム=イクナートの手が掴んで止めた。

 

「マサキを責めても何にもならないわ。みんな、自分のできることを精一杯やろうとしただけ。悪かったのは……巡り合わせよ」

「でも、姉様!」

「いいから、あなたはフィルの所に行ってあげなさい……ね?」

 

 優しい、しかしそれでいて有無を言わせぬ圧迫感をも備えた微笑みを前に、アーネと呼ばれた少女は暫く逡巡していた様だったが、やがて『ぎっ!』と突き刺さりそうな程険を帯びた視線を残して、ウェンディに一礼してから軍の医療車両へと駆けていった。

 

「……妹さんか?」

「従姉妹よ。遠縁の……ごめんなさいね、ちょっと気が強い娘で……」

 

 肩を竦め、申し訳なさそうに謝罪するウェンディに、「いや、別にウェンディさんを責めてる訳じゃないからさ」と、軽く手を振って否定を返す。そして小声で「それに、言っている事は何一つ間違っちゃいないしな」と続けたが、今度はウェンディの耳には届かなかったようだった。

 

「こんな所で立ち話も何だし……どこか落ち着ける所に行かない?」

 

 ウェンディの促すに、正樹は一つ頷いて闘技場の壁際へと脚を進め、壁面に体重を預けた。それに倣うようにウェンディも壁に背中を預け……そして沈黙が、微妙な緊張感を孕んで訪れた。

 

 ただ二人共が、視線を彼方に……魔装機用大型輸送艇に吊り下げられ、基地に回収されようとしている白い《魔装機神》の姿へと注ぐ中で、ウェンディがちらちらと、意識を自分に向けているのが感じられる。何か言いたい事があるのに、それを言葉にできないもどかしさと、迂闊な言葉で相手を傷つけてしまわないかという恐怖感。受け取りようによっては相手の顔色を伺う臆病な態度とも思えたが、裏側にある優しさと労りの感情が感じられたから、それは決して不快な物ではなかった。

 

 ……不快ではなかったが、辛かった。

 

「…………気を落とさないでね」

 

 幾度も幾度も言葉を打ち消し、ようやくウェンディが紡ぎだした言葉がそれだった。

 

「……悪ぃ。無理言って推薦して貰ったのに、俺が未熟だったから……あんたにも恥をかかせちまった」

「私に恥とか、そんな事は考えなくても良いのよ? それに、あなたは確かに未熟だけど、でもそれは、これから成長する余地が十分にあると言う事でもあるでしょう? もしかしたら、その時こそ、あなたは《魔装機神》に選ばれるかも知れない」

「…………」

「それに、《魔装機神》に選ばれる事が絶対価値じゃないわ。あなたはあなたで、《魔装機神》とか『サイバスター』とか、そういう物に囚われない自分なりの価値観で伸びていけばいい……そうも思うのだけれど?」

「そう……だといいんだがな」

 

 苦笑混じりに呟く正樹に、ウェンディは「そうよ」と、奇妙に断言する様に答える。

 

 その時、正樹の腕の通信端末が、彼を呼び出す意志の存在を告げた。詳細を見ると、呼び出し元は軍上層部……恐らくフェイルロードによるものだろう。確かに今回の儀式の後始末や、無理な儀式強行についての審問、騎士フェリオスの負傷問題の責任追及……処理しなければいけないことは幾らでもある。

 

「悪い、ウェンディさん。どうやら呼び出しみたいだ……多分、こってりと絞られるんだろうな」

「……頑張って」

 

 何を頑張れと言っているのか自分でも判然としなかったが、壁から背中を放して、会釈と共にその場から離れようとする正樹に、ウェンディはそう声を掛けた。

 

「……ありがとう」

 

 離れざまに背中を向けたまま、呟く様に言う一言。ウェンディの優しさは嬉しかったが、同時に慰められる自分が情けなくて、正樹はそれだけしか答えることができなかった。

 

 ……そして、逃げ出すようにその場を離れ、飛び込んだ門の薄暗闇の中で、苛立ちと絶望、悔恨と自己嫌悪を一杯にブレンドした拳を、石造りの壁に叩きつけた。

 

 

 

 

「…………ふぅ」

 

 正樹の姿が外壁門の中に消えるのを待って、ウェンディは浮かべた微笑を打ち消し、替わりに深い溜息を吐き出した。

 

 正樹が『サイバスター』に認められなかった事に、落胆しなかったと言ったら嘘になる。『サイバスター』は、彼女自身が全魔装機中、最も手塩に掛けて育て上げた、ある意味彼女の息子の様な存在だ。それが存分にその力を発揮する姿を見たいと思うのは、創造主としては当然の思いだろう。

 

(やっぱり……気づかれたわよね)

 

 勘のいい正樹の事だ。彼女がどんなに取り繕っても、その気配の中に混じるその失望の空気を感じ取ってしまった事だろう。それがあるから、ウェンディは今の正樹は放っておいた方がいい、傷つけずに済む……そう考えていたのだが。

 

「なんで……話しかけてしまったのかしら?」

 

 溜息と共に自問する。年上の恋人(騎士フェリオスの事だ)の負傷に激昂した従姉妹を止める……という理由もあったが、ならば何故、自分はその時タイミング良く正樹の近くにいたのか。

 

 どうしても、落ち込んでいるならば慰めたい、彼の心の重荷を軽くしたい……そんな感情に突き動かされ、気付いた時にはあの場所にいた。実際の所、従姉妹アーネの件は、正樹に話しかけるきっかけに使ったに過ぎなかった。

 

「……私らしくない。どうして、そんな事を?」

「どうしたの? ウェンディ」

 

 突然聞こえてきた快活な声に顔を上げると、そこにはさっきまで『デモン・ゴーレム』の核や、『ナグツァート』の破片が散らばっているのを調査していたセニアの姿があった。

 

「セニア様……ご苦労様です。残骸の調査は終わったのですか?」

「うーん、あの青色『デモン・ゴーレム』の方は、何とか核のパーツとかを回収できたんだけど……あの化け物魔装機の方は絶望的ね。破壊した部品は殆どが溶け落ちちゃってて、辛うじて素材がフィロソフォルム・オリハルコニウム複合材だって事がわかった程度だわ。まあ、『グランヴェール』の最大火力を食らっちゃったんだから、それが残っただけ恩の字と言う気もするんだけど……それよりウェンディ」

「はい?」

 

 訝しむウェンディに、セニアは工作用グローブから手を抜き、満面の笑顔と共に両手を差し出した。

 

「『ガッデス』と『グランヴェール』の起動、おめでとう。『サイバスター』が起動しなかったのは残念だったけど……」

「……でも、私は『彼等』を造っただけです。本当に賞賛されるべきは、『彼等』に選ばれたテュッティとヤンロンではありませんか?」

「確かに選ばれた二人も褒めるに値するけど、起動試験もまともにできない《魔装機神》を、起動後即実戦に耐えられるまでに仕上げたのはあなたでしょ? 同じ技術屋として、素直に賞賛させてよ」

 

 催促する様に振られる手に、ウェンディはしばし逡巡して視線を彷徨わせたが、やがてふっと表情を緩めると、今度はしっかりその手を握り締めた。

 

「ありがとうございます、セニア様」

「でも……やっぱり『サイバスター』が起動しなかったのは画竜点睛を欠いた気がするわね。まあ、候補者のマサキがまだ未熟だったって事なんだろうけど……そう言えばウェンディ、さっきマサキと何か話してたみたいだけど、何を話してたの?」

「ええ……落ち込んでいるようだったら、何とか励ませないかと思ったんですけど……何だか、逆に追いつめてしまったみたいで」

 

 言って再び目元を曇らせるウェンディに、セニアは目を丸くして、「意外だ」と言う表情を浮かべた。

 

「……珍しいわね、ウェンディがそんな事するなんて。普通なら、『私じゃ逆に傷つけてしまうから』とか言って、遠くから心配するのが貴女なのに」

 

 セニアの身も蓋もない言葉に、ウェンディは憮然とする前に思わず破顔した。さすがに、セニアが幼い頃、家庭教師として練金学をレクチャーした時以来の付き合いだけあって、彼女は自分の性格や言動をよく把握している。未だにしばしばセニアの突拍子もない言行に翻弄される自分とは大違いだ。

 

「確か、兄様が最初の魔力テストに落っこちて落ち込んでいた時も、貴女は遠くから見守ってるだけだったもんね? それが何で……」

 

 首を傾げながら、手持ちぶさたの指先で丸い貴石の耳飾りを弄ぶセニアだったが、急に言葉の尻を途切れさせ、にんまりという形容詞そのままの笑みを顔面一杯に浮かべた。

 

「もしかして……ウェンディ。貴女ってもしかして、マサキに……惚れてるんじゃない?」

「……え?」

 

 思いもよらぬセニアの言葉に、ウェンディの思考は一瞬の閃光に覆われた。

 

「惚れてるって……それはつまり、恋愛感情を持っているという……意味ですよね?」

 

 白濁した意識の海を必死に撹拌して、どうにか返答を紡ぎ出すウェンディだったが、その内容はいささか散文的な代物だった。その『恋愛感情』と言う単語を口が紡ぐと同時に、彼女の頬に、奇妙な痒みと熱さが宿り、彼女の混乱に拍車をかける。

 

「……私が、マサキに……惚れてる? そう……なのかしら?」

「そっかー。当年取って二十六歳、今まで一つたりとも浮いた話の無かった、練金学アカデミーの誇る『孤高の女神』も、とうとう恋に目覚めたのねぇ……ふふ、面白くなりそう」

 

 そう言われても、実感がない。呆然と手の中を見つめて呟くウェンディをよそに、我が意を得たセニアは明らかに事態を面白がっている者の表情で、新しく手に入れた、他人の色恋話という玩具で、どのようにして遊ぼうかと思案するのだった。

 

 

 ……そして、同時刻、ラングラン王都郊外のとある名もない岩山の一角。

 

「……では、まだ『あれ』の場所は特定できないのですな?」

 

 岩影に蹲る妖装機『ウィーゾル』の《精霊殻》の中。全方位スクリーンの一画を通信窓から届けられるのは、僅かに疲労の色を滲ませたルオゾールの声だった。

 

「ええ。結界展開時のエーテルの乱れをスキャンしたけれど、同時に強力な妨害エーテル流が発生して……まだ、正確な位置を割り出すには、もう何度か繰り返して、データを集める必要がありますわね」

 

 《精霊殻》の中心に配された座席に座る、『紅蓮のサフィーネ』が、ルオゾールの言葉に答えた。スクリーンの正面に展開した地図……ラ・ギアス最大の陸地、エオルド大陸の全体図を睨み付け、手元に呼び出したデータベースとの比較から、地図を色とりどりに塗り分けてゆく。

 

 その色彩は、その時々のエーテルの流れを表す物だったが、とある時刻……ラングラン国立大闘技場を蒼い光が包み込んだ瞬間、全体が無秩序な斑模様へと変貌している。サフィーネは表示情報の設定などを細かく操作し、なんとかそれを意味ある映像に変換しようとしていたが、やがて諦めた様に深い息を吐き出した。

 

「ふん、やはり一筋縄では行きませぬか……『あの方』のご帰還の前には、全ての準備を終わらせておかねばならぬと言うのに、面倒な話ですな。やはり、奴らに『あれ』を使わせるか」

「本当に、連中が『あれ』を使うかしらね? 自殺同然なのに」

「問題はありませぬよ。『ジラドス』の中に、丁度うってつけの連中がおりましてな。あの連中を焚き付ければ、結界の中で『あれ』を爆発させる事も可能でしょう」

「いっそ、それで王城そのものを吹き飛ばしてしまえばいいんじゃないの?」

「『あれ』が残っていては、結界は何度でも修復される。……二つの要素を、同時に消滅させませんとな」

「……まったく、忌々しい結界だね」

 

 言って、サフィーネが舌打ちする。

 

「だが、我々は何としてでも、あの結界を永劫に消滅させねばなりませぬ。それこそが、我らと我らが神の大願を果たす、必要不可欠の条件なのですからな」

「私たちの大願……結界を消滅させ、そして……」

「全ては、『ヴォルクルス』様の復活の為に」

 

 ルオゾールは『ヴォルクルス教団』の礼拝の仕草と共に言い、それを合図に通信窓が暗転した。

 

「……全ては、『ヴォルクルス』様の復活の為に」

 

 通信が切られ、もはや用の無くなった通信窓を閉じながら、サフィーネはルオゾールの言葉を小さく反芻した。ルオゾールがやった様に、『ヴォルクルス』への礼拝を意味する仕草……左の人差し指と中指を立て、それを右の指で作った輪でなぞる仕草と共に唱えるが、ルオゾールのそれに比べると、いささか熱意に欠ける唱え方と言わざるを得ない。

 

 しかし、それに対して、彼女が続けたもう一つの言葉には、いっそ陶酔とでも表現するべきの様な感情が込められていた。

「……そして、何よりも『あの方』の為に」

 

 

 

 そして、更に二週間が過ぎて。ラングラン北東部、『シュテドニアス諸国連合』との国境に接するコウォード州の山岳地帯……。

 

「……驚いたな。『ルジャノール』の戦闘用改装型が三機……それから『グラフ・ドローン』が四機か」

 

 木立の合間に機体を屈め、眼下の谷川を下ってゆく魔装機の一団の姿を観察しながら、『ジャオーム』の中の正樹は一人呟いた。

 

「あの肩の印章は、間違いなく『ジラドス』の魔装機……まさか、初めての偵察任務で、いきなりババを引く事になるとは思わなかったぜ」

 

 その日、正樹は『陽炎のジャオーム』を駆り、初めて正式な命令を受けて、トロイア州方面の偵察任務に就いていた。

 

 それまで未成年(第二次法的成人に達していない)である正樹は、市民団体等の反対の為に魔装機隊からの任務に駆り出される事はなかったのだが、先日の《魔装機神》操者選定の儀に操者候補として参加した事で、社会的に「《魔装機神》操者候補として認められる程には戦闘能力も自己責任能力も有している」と認められた。それが、彼に任務が与えられた理由と言う事になっている。

 

 しかし、その真の理由とは、実戦にも出ず未熟なままに《魔装機神》操者候補として立候補し、《魔装機神》に認められなかったため。そればかりか、迂闊な行動によって騎士団の一員を負傷させた正樹に対して、軍内部での風当たりが強まってきたためであると、正樹は推測していた。

 

 人には、何か一つの不満要因を見つければ、それを核として反発心を育て、その属する物全てを排斥しようと動く傾向があるものだ。このままでは、彼の影響で魔装機隊そのものの立場が危うくなる危険性もある。それを回避する為に、適当な理由をぶち上げ、正樹を出動させて何らかの功績を挙げさせるのが、魔装機隊上層……つまりフェイルロード達の思惑なのだろう。

 

 それは少々被害妄想気味の発想と言えなくもなかったが、事実の一面を突いているのも確かだった。

 

「なら、その好意に答えるのも、義務だよな……」

 

 乾いた唇を濡らしながら、正樹は画面内に映し出されたテロリスト機を睨み付けた。よもや正樹の行く先に『ジラドス』の部隊がいる事を予想していたという訳でもないだろうが、ここで正樹があれらを仕留めれば、フェイルロード達の思惑に十二分に適うだろう。

 

 更に、この谷川の下流には、人口八千人程であるが、希少金属神鉱石(オリハルコニウム)の鉱山を持つ町が存在する。もし、彼等の目的があの鉱山町の占拠であったりしたならば、何としても今彼等を叩いておかなくてはいけない。

 

 そして、この場にテロリスト集団が行進しているとなれば、彼等の目的が鉱山の略奪或いは制圧である事は、ほぼ間違いないだろう。神鉱石(オリハルコニウム)は極めて稀少な上、魔装機の装甲材は勿論、各種の魔術機器を制作する際に不可欠な素材なのだ。その価値は、精錬されたインゴット1マク(約67.5キログラム)で、量産型魔装機が一機まるまる建造できる程である。

 

(今、一番近くにいる味方は……『ラ・ウェンター』と『グランヴェール』か。だが、遠いな……)

 

 通信衛星から味方機の配置状況図を呼び出し、正樹は舌打ちした。現在ラングランの魔装機はその絶対数が少なく、単独戦闘力の優れた正魔装機は、すべてが単独に分散して偵察を行っている。無論お互いの距離は、緊急時には短時間で集結できる程度の距離ではあるが、今回は地形と、機体の傾向が災いした。

 

 今一番正樹に近い位置にいる『砂のラ・ウェンター』は、本来平地での長距離砲撃戦を想定して設計された機体で、装甲や火力には申し分ない物の、真空渦動機構などの空中機動ユニットを有さず、地上での機動力も必ずしも高くない。その為、ここの様な起伏の激しい森林地帯などでは、その機動性は絶望的なまでに殺される。

 

 『ジャオーム』の人工精霊の試算するところによれば、『ラ・ウェンター』がここに到達するには、移動開始から約三十分を要するとの事だった。

 

 そして、次に近い『グランヴェール』は、さすが《火の魔装機神》だけあって、攻撃力・機動性・空中機動能力共に申し分ないが、いかんせん現在位置がここから少々離れている。もっとも、それでも空中を全速力で飛行すれば、十分前後で戦場に到達できるだろう。できるだろうが……。

 

「『グランヴェール』か……」

 

 眼前の『ジラドス』魔装機部隊の進行予想ルートから、十分後の予想到達位置を割り出させながら、正樹は苦々しさを漂わせる呟きを漏らした。

 

「十分後か……。連中を町に近寄らせる訳にゃ、いかねぇよな……」

 

 まるで言い訳する様に呟きながら、正樹は操縦桿を前に押し込んだ。《精霊殻》が微震動し、『ジャオーム』の機体が跳躍する。

 

 突如自分達の頭上に影を落とした存在に、『ジラドス』の魔装機は困惑して算を乱した。眼下のそれをまるで写真機のフレームに納めるように照準器を調整しながら、正樹は通信回線を開く。送信先は、近隣の味方魔装機部隊。

 

「こちら、『ジャオーム』の正樹。HO54地区の哨戒中に、『ジラドス』の連中と鉢合わせしちまった。どうやら連中、川下の神鉱石(オリハルコニウム)鉱山を襲撃する腹らしい。足止めするんで、応援を頼む!!」

 

 言いながら、現在座標と敵機の編成などのデータを送信する。果たして、一秒も時を置かず返答が、通信窓から届けられた。

 

「あいさ、レベッカ=ターナー了解。急行するよ」

「……ホワン=ヤンロン了解した。マサキ! 無茶をするんじゃないぞ!」

「……無茶、ね。ああ、無茶はしないさ」

 

 ヤンロンの返答に、正樹は通信機の送話機能をカットしてから呟いた。そして、操縦桿の指スイッチから使用火器を胸部ミサイルマウントラッチに切り替え、照準を固定する。目標補足……発射。

 

「この程度で無茶な筈がねぇ……俺にはできる筈だ。できなきゃいけねぇんだよッ!!」

 

 言って口元を歪める正樹の眼下で、『ジラドス』魔装機部隊に向けてばらまかれた多弾頭仕様の小型熱素反応弾(カロリックミサイル)が、地上を紅の花畑に変えた。

 

 

「おっらああああぁぁぁぁ!」

 

 突如降り注いだ紅の閃光に算を乱した『ジラドス』魔装機部隊に、正樹は雄叫びと共に斬り込んだ。

 

 最初の標的は、空中機動力を有する『グラフ・ドローン』だった。数ヶ月前、リカルドがこれを捕り逃した際の被害から得た教訓で、『グラフ・ドローン』が敵部隊にあった場合、優先して破壊すべし、という条項が『魔装機隊戦訓』に加えられたためだ。

 

 もっとも例えそうでなくとも、元よりその悲劇の現場に居合わせた正樹に、『グラフ・ドローン』を見逃す道理はなかったのだが。

 

 機動性、運動性、照準性能、回避性能。あらゆる面において、『ジャオーム』は『グラフ・ドローン』のそれを圧倒していた。『ジラドス』の『ルジャノール』が体制を立て直す間に、『ジャオーム』の剣が唸り、磁気加速砲が咆哮し、粒子砲が閃き、熱素反応弾が弾ける。

 

 そして、四機の『グラフ・ドローン』が魔術銀(ミスリル)(オリハルコニウム・セラミックス複合材)屑に変じるまで、ものの三分も要さなかった。

 

 爆発によって蒸発した水蒸気と爆煙がブレンドされ、もうもうと舞い上がる煙を引き裂いて、『ジャオーム』の姿が現れる。それは、さながらそれが抗するべき《魔神》の如くなる威容を以て、『ジラドス』の魔装機操者達を戦慄の海へと叩き込んだ。

 

「……生憎伊達に毎日『ブローウェル』相手に戦闘訓練やってる訳じゃないんでね。投降するなら今の内だぜ?」

 

 強制通信で降伏勧告を送りつけつつ、威嚇のつもりで剣を真横に一閃させる。励起した《魔装》の飛沫が薄い緑の月弧を描く向こうで、気圧された『ルジャノール』が一歩退く。

 

 だが。

 

「くっ……うぁあああああああっ!!」

 

 その示威行為は同時に、『ジラドス』の魔装機操者を、自棄的な突撃へと導く結果となった。泣き叫んでいる様にも聞こえる咆吼と共に、『ジャオーム』に至近であった『ルジャノール』の一機が、その腕の獲物……射出式鋲付鉄球……俗に『ロケットハンマー』と呼ばれる武器を高く差し上げ、その短い足で地面を蹴りつける。

 

「くたばれぇっ! 正魔装機ッ!」

 

 一跳躍して『ジャオーム』を射程距離内に納め、トリガーを引く。ハンマーの根本に仕込まれた炸薬が点火され、ごうと唸りを上げて鉄球が正樹に迫った。

 

「……甘ぇな」

 

 だが、所詮それは、格闘技の中でも最速と言われるボクシングの拳を見慣れた正樹にとっては、隙だらけのオーバーブローに過ぎなかった。ほんの半歩、右に踏み込んだとほぼ同時に、鉄球がその左を通り過ぎてゆく。

 

 そして、正樹が何気ない風に剣を時計回りに一旋させると、鉄球とその射出機を繋いでいた鎖が断ち切られ、繋ぎ止める物を失った鉄球は、そのまま崖の壁面にめり込んで止まった。

 

「俺は降伏しろって言ったんだぜ? 言っとくが、これ以上やる気なら、俺も手加減はできねぇ……くっ!」

 

 必殺であった筈の鉄槌を失った『ルジャノール』に、『ディスカッター』の切っ先を突きつけながら正樹は今一度降伏を勧告するが、その返答は『ルジャノール』の胸部機関砲を以て代えられた。《魔装》表面で弾ける弾薬が火花を散らし、同時に正樹の頭の中でも火花が散った。

 

「俺は……手加減しねぇって言ったぞ!」

 

 瞬間、『ジャオーム』の纏う《魔装》が、正しく陽炎の如く揺らめいた。

 

 激昂した正樹の動的プラーナを注ぎ込まれた『ディスカッター』が、まばゆい薄緑の光芒を放つ。正樹はそれを左の腰だめに構え、そして全身のばねを動員して一閃させた。

 

「そんなにやられたいなら……望み通り、くたばれぇっ!!」

 

 本人としては、その攻性の意志を表現する為に過ぎない叫び。

 

 ――しかし、光り輝く『ディスカッター』は、使用者のその言葉を、忠実に実現した。

 

 

 

 

(…………!?)

 

 それは、喉を破る絶叫。

 

 それは、胸を焼き切る怨嗟。

 

 その感触は、『ルジャノール』の胴を半ばまで断ち割った『ディスカッター』の刃先から、正樹の腕へと伝わってきた。

 

(……何だ!? この感触は!)

 

 腕から身体に入り込み、鳩尾の奥でわだかまる異質な感覚に戸惑いつつも、正樹はそのまま剣を真横に振り抜いた。『ルジャノール』の機体を上下二つに分断し、横腹から飛び出す刃から、《魔装》の滓や素体の破片、そして紅の飛沫が飛び散る……紅の飛沫が。

 

(マシンオイル……じゃない。あれは……あの色は)

 

 考えるな、気付くな。正樹の無意識が警鐘を鳴らす。しかし、正樹の目は紅を追い、それが何なのかに思いを巡らせる。

 

 赤。ややどす黒く、粘つくような赤。見慣れたような色でありながら、同時に言い知れない不快感を催させる赤。

 

 それは……それは、もしかして、人の血じゃないのか!?

 

「……ッ!? ウグッ」

 

 瞬間、鳩尾のわだかまりは、臓腑を爛れさせる嘔吐感へと変貌した! 喉の奥から吹き上がる、酸味を帯びた瘴気を抑え込まんと口元に手を当てるが、その手もまるでおこりにかかったようにぶるぶると震え、正樹の望む所に収まろうとしない。

 

 そんな中で、正樹の理性が冷徹に告げる。自分が何をしたのかを。自分の振るった剣が、『ルジャノール』の脆弱な《精霊殻》を破壊してしまったのだと。……つまり、今の瞬間、安藤正樹という人間が、名も知れぬ誰かの命を絶ったのだという事を!!

 

(俺が、俺が……この手で、人を殺したのか!? 馬鹿な……そんな馬鹿な!)

 

 認めたくない。自分が、もっとも忌み嫌う殺人者の仲間入りを果たしてしまったなどとは。

 

 しかし、胴を両断されて地に伏する『ルジャノール』の姿と、『ディスカッター』の表面を汚す紅が、厳然と事実を正樹に突きつける。全身の力が抜けてゆく。

 

「そ、そうだよ、俺は命懸けで、戦ってるんだ。戦う以上、運の悪い奴が死ぬのは当たり前だ。当たり前なんだ」

 

 必死に自己弁護の題目を紡ぐ。しかし、それでも身体の震えは止まらない。心の畏れは止まらない。ただ厳然とある殺人者の三文字が、正樹の心臓に焼き付けられる。

 

 そうして驚愕に震える正樹を、今や二人となった『ジラドス』の魔装機操者は、訝しげに眺めていた。

 

 当然だろう。つい今し方まで、圧倒的な戦闘力で自分達を恐怖の淵に落とし込んでいた薄緑の魔装機が、彼等の仲間を一人屠った途端、その戦意を失った様に呆然と立ちつくしているのだ。

 

 よく見れば、その体表面の、今まで確固として実体を形作っていた《魔装》が、その収束を失って薄靄の様に揺らいでいる。

 

「ガスパさん……こいつぁ……?」

 

 何かの罠か。しかし、この圧倒的有利な状況で、正魔装機操者が何の罠を仕掛ける必要があるのか。しばし警戒心の虜となっていたガスパと呼ばれた『ジラドス』魔装機操者だったが、やがて痺れを切らし、探りのつもりでロケット砲のトリガーを引いた。

 

 無論、この様な鈍足の弾頭が、機動性においては正魔装機でも一・二を争う『陽炎のジャオーム』に通用するとは思ってもいなかったのだが……。

 

「……うあっ!?」

「!?」

 

 彼等の予想を裏切り、ロケット弾は見事に『ジャオーム』の胴の真心を捉え、紅蓮の華を咲かせた。しかも驚くべき事に、魔装機操者ならば誰でも反射的に行う筈の、《魔装》を収束しての防御すら、『ジャオーム』の操者は行っていなかったのである。ロケット弾の爆炎は、『ジャオーム』の胸の《魔装》を焼き尽くし、その素体さえもを歪ませていた。

 

「こいつは……もしかして、人を殺してブルってやがるのか!?」

 

 そう思い至り、操者ガスパは笑いが腹の底からこみ上げてくるのを感じた。何が正魔装機だ。それは確かに強大な力を誇る兵器だが、その操者がこの様な有様では、物の役に立ちはしない。地上人が乗り込んでいるとは聞いていたが、よもやそれが、人殺しに呵責を感じる様な人間だったとは!

 

「へへっ……こいつは最高だ。『グラフ・ドローン』四機とレッカの奴は惜しかったが、それも正魔装機が頂ければ十二分にお釣りが出るぜ」

 

 非情な台詞と共に下卑た笑いを頬に張り付け、ガスパは同胞に命じた。

 

「おい、ウィノ。一気に仕掛けるぞ。《精霊殻》を狙って、操者だけを潰せ。そうすりゃ、あの正魔装機は俺達のもんだ」

「で、でも、相手は正魔装機『ジャオーム』ッスよ!? 俺達だけで……」

「ハッ! 奴は人一人殺した位で怖じ気づく様な奴だ! こっちが捨て身のフリすりゃ、もう手は出せねぇ!」

 

 言って、ガスパは自らの『ルジャノール』を加速させた。そしてその言葉を実証する様に、諸手を上げて『ジャオーム』に突撃する。回避も何も考えない、『ジャオーム』が剣を一つ突き出すだけで、全てが終わってしまう様な、無謀な突撃。

 

 当然、正樹はそれを迎撃せんと、剣を構える。あとは、この剣を一度振るだけで、目の前の『ルジャノール』は破壊できる……しかし。

 

「おうらぁぁぁぁあ!」

「……クゥッ!?」

 

 正樹には、剣を振るうことはできなかった。手が震え、魂が震え、剣の行く先を定められない。自分の行いが、相手の命を奪うかも知れないと考えると、恐ろしくて剣を見ることさえ適わない。

 

 その隙に、ガスパの『ルジャノール』は腕の『ロケットハンマー』を『ジャオーム』の胸に突きつけ、そしてトリガーを引いた。ばんっという炸裂音と、がぅんという破裂音が続き、正樹の全身を、車両の衝突にも似た衝撃が貫いた。

 

「!!」

「おらおらぁ! 死ね! くたばれ、『ジャオーム』の操者ァ!!」

 

 ガスパの咆哮と共に、ハンマーが幾度も幾度も『ジャオーム』に叩きつけられる。その度に正樹の身体が跳ね上がり、《精霊殻》が破滅を告げてみしみしと軋む。

 

 そして、幾度目かの衝撃で正樹の額が操縦桿と激突し、差し込む痛みと広がる紅を目にした瞬間、正樹の意識が爆発した。

 

「こ……の野郎ォォォォォォォォォォッ!!」

 

 雄叫びと共に、『ジャオーム』の機体が薄緑の炎を纏った! それは未収束状態の《魔装》だ。操者の集中が不充分な為に、霧の様に不安定な状態で放出された《魔装》が、まるで炎の様に機体全体を包み込んでいた。

 

 そしてそれは、『ジャオーム』の手にした『ディスカッター』にも伝播した。さながら緑の炎を纏ったかの様な剣を、正樹は振り上げ、激高した感情の促すままに、叩きつける。

 

 絶対に反撃はない物と油断していたガスパの体勢では、その攻撃を避けることは不可能だった。突然に咆吼する『ジャオーム』操者に驚愕し、顔を上げた時には、霧状に刃を覆う《魔装》によって棍棒の様になった『ディスカッター』が、その視界の全てを占拠していた。

 

「何……げぇっ」

 

 そして、衝撃。破壊音。悲鳴さえも聞こえない。

 

 …………。

 

「…………はあっ、はあっ、はあっ」

 

 ……次の瞬間には、そこには『ルジャノール』という魔装機は存在せず、ただその残骸が、『ディスカッター』によって胴体半ばまでをめちゃめちゃに押し潰された人形の形で残されるだけだった。

 

 ……これでは、中の操者も無事ではいられまい。荒い息を吐き出す正樹の全身に、冷や汗がぶわっと吹き出る。

 

(俺は……また、殺したのか)

 

 操縦桿に納められた両手の皮膚を、何か忌まわしい、汚らわしい物に浸食されていく様な感覚。今すぐにでもそれを引き剥がし、放り捨ててしまいたい衝動に駆られる。

 

 しかし、もし汚れたと言うなら、それは腕だけではなく、安藤正樹と言う人間の存在そのもの……逃げられはしない。

 

 ようやくわかった。ヤンロンが何故、自分に『実戦経験がない』と言ったのか。それは、戦闘の経験だけの意味ではなかった。自分の肌で、魂で、命を奪い合う行為を体感しているか、と言う意味だったのだ。

 

「畜生、畜生、くそ、くそったれ、馬鹿野郎……」

 

 罵倒の言葉を繰り返しながら、正樹は『ディスカッター』を『ルジャノール』の残骸から引き抜いた。支えを失った人形の残骸が、ゆっくりと足下に崩れ落ちてゆく。それを呆然と見下ろす正樹は、その時になって漸く、もう一機の『ルジャノール』の存在を思い出した。

 

 わななく身体を必死に抑えつけ、頭を巡らせる正樹。果たして、最後に生き残った『ルジャノール』の姿は、未だ呆然とそこにあった。

 

 その『ルジャノール』は、完全に戦意を失っている様子だった。『ジャオーム』の身体が自分に向けられると、ただそれだけで、まるで死神の一瞥を受けたかの様に数歩を退く。

 

「もう、戦うな。戦うと、死ぬぞ……」

 

 強制通信で相手機に声を送りながら、まるで幽鬼の様にしわがれた声で、正樹は言った。自分が殺すのではない、戦うと言う行為を続ける限り、その人間は死神とならなくてはならない。それ自身が、別の死神の鎌に捉えられるまで。

 

 正樹は、もう戦いたくなかった。戦う事で、相手を傷つけたくはなかった。だから、その『ルジャノール』に、早くこの場を立ち去って欲しかった。

 

 だが、恐怖に支配されたその『ルジャノール』操者にとっては、その言葉は死の宣告の如く捉えられた。もう見逃してはもらえない……このままでは死ぬしかない。彼の中で恐怖と絶望がミックスされ、それは自棄的突撃という炎となって、彼の脳裏を焼き尽くした。

 

「う・う・あ・あ・ああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ひきつれた絶叫が、開きっぱなしの強制通信回線を通じて、『ジャオーム』の《精霊殻》に流れ込んだ。驚愕に目を見開く正樹の目の前で、その操者の雄叫びに答える様に、『ルジャノール』の機体が、虹色の閃光を放つ。

 

「何っ!?」

 

 突然の異変に、機体を退かせようとする正樹だったが、虹色の光芒を纏った『ルジャノール』は、それよりも遙かに早かった。正魔装機中でも一・二を争う機動性を誇る『ジャオーム』のそれさえも凌駕する速度で駆けだした『ルジャノール』は、瞬き一つする間に『ジャオーム』へと組み付き、そのまま地に押し倒したのだ。

 

「うわっ……」

『嫌だ、嫌だ! 俺は死にたくない! 俺はアイリと結婚するんだ! 死にたくねぇ、死にたくねぇよぉ!』

 

 がん! がん! 絶叫と共に虹色の『ルジャノール』が、組み伏せた『ジャオーム』を殴りつける。先程の『ルジャノール』のハンマーに匹敵する、いや、それ以上の衝撃が、徒手空拳の『ルジャノール』の腕から生み出されている。その鉄拳は、『ジャオーム』の《魔装》を半ば以上まで貫き、素体にまで衝撃を伝播させた。

 

「な……何で『ルジャノール』にこんなパワーが出るんだよ……!? 嘘だろっ!?」

 

 『ジャオーム』の《精霊殻》の中で正樹が驚愕を吐き出す間にも、暴走……そう、正しく暴走状態の『ルジャノール』の攻撃は続く。ついに頭部の《魔装》が限界を突破し、鉄拳が無防備状態となったそれを叩き潰す。メインカメラを破壊され、モニターの暗転した《精霊殻》の中に、ただ狂戦士の拳の生み出す衝撃音だけが反響する。

 

 がん! がん! ぐしゃり! がん! がん! がん! 断続的な衝突音に、時折混じる破滅の音。サブカメラも潰され完全に暗転した《精霊殻》の正樹にとって、その音は一歩一歩近づいてくる死神の足音に他ならない。

 

(死ぬ!?)

 

 今度こそ、死ぬ。もう逃げようもない。自分の力を証明しようと焦り、その結果二人の人間を死に至らしめ、自分も又死を迎えようとしている。正樹の脳裏を満たしていた『殺す恐怖』を、それよりも遙かに強い『殺される恐怖』が洗い流す。

 

 自分は、殺される。彼の仲間二人を殺した報いとして。それが罰ならば、自分は、死を甘受すべきなのかも知れない。

 

 ……………………。

 

「嫌だーーーーーッ!!」

 

 淀んだ絶望の海を貫いて、思惟が迸った。全ての理屈の壁を打ち砕いて、たった一つの思惟、『生きたい』と言う感情が荒れ狂う。 彼の知る由もなかったが、その瞬間、彼の乗る『ジャオーム』の纏う《魔装》の色が、いつもの淡い緑色から、鮮やかな緑の光芒へと変貌した。

 

 ……そうだ、自分にはまだ、やりたい事がある。やり残した事がある。愛するべき、人がいる!

 

 絶叫する正樹の前で、ひときわ大きな衝撃音が、ばしゅ、という《魔装》の断末魔と共に轟いた。《精霊殻》胸部を保護する最後の《魔装》が、『ルジャノール』の拳に貫かれたのだ。

 

 血泡を浮かべた咆吼を上げながら、止めの一撃を加えようと、虹色の『ルジャノール』が拳を振り上げるのが、不思議と正樹には知覚できた。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 正樹もまた咆吼を上げ、操縦桿をめちゃめちゃに振り回す。

 

 ぐいん! 緑の光芒の中で、力を失って伸ばされていた『ジャオーム』の腕が伸び上がる。

 

 ごうう! 唸りを上げて、『ルジャノール』の虹色の拳が突き下ろされる。

 

「うあああああぁぁぁぁぁッ!!」

「うあああああぁぁぁぁぁッ!!」

 

 二つの光芒と、二つの腕と、二つの咆吼が交錯して。

 

 

 そして、正樹は『自分の肉と骨が挽きつぶされる音』を聞いた。

 

 




第八話です。選ばれませんでした。

記録によれば、この章を書いていた頃に、PSのファイナルファンタジー9を遊んでいたようです。ジタンくんのヒーロー性が気に入っていたみたいですね。この「動機は持っているのが当たり前」「しかし確かめなかった動機は脆い」という筋は、最近のヒーローのスタイルにも繋がるものがある気がします。

ルオゾールとサフィーネが会話している内容から察することができるでしょうが、ルオゾールが大根芝居を演じたのは、このアルザール王による疑似サイフラッシュを誘発するためです。ラングランを崩壊させるための下準備を、一つずつ固めていたわけですね。

《魔装》バトルの強みとして、装甲が破れたり、大火力のビームを受けたりした際に気合一発『追い《魔装》』で持ちこたえる演出ができることがあります。演出として楽なんですよね。最近ガンダム系の小説も書いてますが、この辺の根性論の出番がなく、演出の手札が足りなくなっています。困ったもんだ。

さて、次章からは、サイバスター不在のまま『魔装機神の名に賭けて』編が始まります。クリフハンガーは落としてナンボ。
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