蒼穹の花嫁 ~ドラゴンクエストⅤ:parallel~    作:イチゴころころ

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 こんばんは。イチゴころころです。

 何気にこのお話でのボス戦ってムチおとこ以来ですね。ムチおとこがボスなのかは議論の余地があるとして。

 ちなみに今回のサブタイトル、最初は『みんなのトラウマ』か『3人に勝てるわけないだろ!』かでめちゃくちゃ悩んでいました。





2-5. 天空の盾への道② 光を纏う英雄

 

『マグマに溶け込み命を喰らう魔物の伝説です。かつては炎の神として崇められていたみたいですが……。高温のマグマは一瞬にして触れた者の命を刈り取ります。そうやって命を落とした数多の魂が混ざり合った怨霊のようなものとも言われていますね』

 

 

 

 “溶岩原人”は、マグマの塊に腕らしきものが生えただけの、存外シンプルな見た目をしていた。しかしそのサイズ、触れただけで死をもたらす高温の体表は、命あるものに本能的な恐怖を覚えさせる。

 胴体の中央が窪み、大きな穴が開かれた。それはさながら巨大な口のようで……。

 

「――まずい、みんな下がれ!」

 

 直後、その『口』から大量のマグマが吐き出された。高温の流体は空中で発火し、燃え盛る火炎となってイーサンたちに襲い掛かる。

 

『キキーッ!!』

 

 咄嗟にトレヴァが氷のブレスを吐き出し、主たちに降り注ぐマグマを押し返す。……しかし、

 

「物量が……違い過ぎるのか…! トレヴァっ!」

 

 火炎と冷気がそれぞれ弾け飛び、トレヴァの小さな体が宙を舞う。

 

「……新米!」

 

 すかさず後方で構えていたマービンが彼女をキャッチした。ところどころ火傷の後はあるが、どうにか致命傷は避けられたみたいだ。

 

「トレヴァ、一旦距離を取れ! 追撃だけは受けるな!!」

「ご主人、前ニャー!!」

 

 リズの叫びに反射して地面を蹴った直後、“溶岩原人”の腕が先ほどまで立っていた岩盤を叩き割り、マグマに沈めていった。

 

「危険ニャ! 火炎のブレスも打撃も、食らえば間違いなく黒焦げニャン!!」

「黒焦げで済めばいいけど……なっ!!!」

 

 振り上げられたもう片方の腕めがけて、風の呪文を発射する。放たれた“バギマ”は魔物の腕を切り裂いて千切り飛ばすも、その付け根では早くも新たなマグマが集まり腕を形成し始めている。

 

「旦那……まずいぞ!!」

 

 再びマービンの方を振り返ると、彼はその場を動けずにいた。どういうわけか足元の溶岩が冷え固まっていて、マービンの両足を封じ込めている。

 

「“溶岩原人”の……魔力のせいか、岩盤すら…不安定だ。同じ足場に、留まるな……! 動きを封じられたら、終わる……!」

 

 足元を確認すると、緩くなった岩盤が少しずつイーサンの足を登ってきていた。

 

「走るぞリズ! あっちの浮島に跳ぶ!!」

「ニャン!!」

 

 リズと共に全力で跳躍し、マグマに浮かぶ別の足場に着地した。“溶岩原人”は顔のない顔をこちらに向けゆっくりと迫ってくる。

 

「あんなんどうやって倒すニャン!!」

「やれるだけやるさ……。リズ、合図したら援護を頼む」

 

 彼女は短く応答し、さらに隣の足場に飛び乗った。

 

――オ、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア

 

 “溶岩原人”はどこに声帯があるのか大きく叫ぶと、再び腕を振り上げる。

 

「――っ!!」

 

 振り下ろされた腕が足場を破壊する瞬間、その衝撃を利用してイーサンは足場の端から跳んだ。狙うは敵の胴体!

 

「あああああああ!!!」

 

 力を込めて剣を振り抜く。渾身の一刀は確かな手ごたえと共に、その真っ赤な胴体に切れ込みを入れた。

 

――ア、アア、アアアアアアアアアア、アアアアアア

 

 悲痛な叫び声が上がり、切れ込みから赤い液体が噴き出した。返り血ならぬ『返りマグマ』が、イーサンを消し炭に変えようと振りかかる。

 

「リズ!」

「“ヒャド”っ!!!」

 

 大量の氷のつぶてがイーサンとマグマの間に差し込まれ、主の体を守る。さらにイーサンはその氷の壁を蹴り、距離を取って新たな足場へ着地した。

 

「すごい! 効いてるニャン!」

「実体のないマグマだから不安だったけど、痛がってくれてるようで安心したよ」

 

 そう言いつつも、イーサンは父の剣を見て奥歯を噛み締める。パパス特注の剣の耐久性は並ではないが、相手は全てを溶かしつくす自然の脅威。赤熱した刃をよく見ると表面が少し歪みつつあるのが見て取れた。……あと何発、この剣は耐えられる? そしてあと何発で、奴は沈む?

 

 

 

 剣の一撃と氷の援護によるコンビネーションを繰り返し、イーサンたちは着実にダメージを与えていた。切れ込みからマグマが流れ落ち、少しずつ巨大な体躯が小さくなっていくのがわかる。魔物の悲痛な叫びがこだまし、それは徐々に怒りを帯びていく。

 “溶岩原人”は体を震わせ、『口』を開いた。

 

「“バギマ”!!」

「“ヒャド”ぉぉぉ!!!」

 

 竜巻と氷が襲い来る火炎の弾幕に抗う。が、圧倒的質量の前には数秒ももたない。

 

「動き続けろリズ!」

 

 呪文が切れる直前に次の足場へ走り出す。止めきれなかった火炎の粒をイーサンは斬り飛ばし、リズは自慢の敏捷性で躱すことで何とか回避した。

 

 イーサンはふと“溶岩原人”の顔を注視した。マグマの塊である奴の頭部は赤く光っているだけかと思ったが、流れ落ちるマグマが模様を描き、苦痛に歪む人間の顔らしきものが浮かび上がっていることに気付く。いや、『顔』はひとつだけではない。頭部を中心に点々と、様々な表情の『顔』が浮かんでいた。様々と言えど笑っている顔はひとつもない。絶望、憎悪、憤怒。ありとあらゆる負の感情が、マグマの影で描き出されていた。

 

「命を奪われた怨念の化身か……。少なくとも俺は崇めようなんて思えないね……!」

 

 いくつか足場を飛び越え距離を取っていたら、すぐ横のマグマが変色し、地響きと共に盛り上がってきた。

 

「……冗談、キツイな!!」

 

 飛び退いた直後そのマグマは爆裂し、巨大な腕を持つ魔物へと変貌した。

 

「に、2体目……ニャン」

「ひるむなリズ!! それぞれの動きは鈍い。片方ずつ処理する!!」

『キーッ!!』

 

 態勢を持ち直したのか後方からトレヴァが飛来し、2体目の“溶岩原人”に氷のブレスを吹きかけた。

 

「いいぞトレヴァ! そのままそいつを引き付けてくれ! 反撃だけには注意――」

 

 

 

 そこでイーサンは目撃してしまう。トレヴァの背後で盛り上がるマグマ、3体目の“溶岩原人”の誕生を。

 

 

 

「あ……」

 

 咄嗟に言葉を失ってしまった。

 

「っトレヴァ! 避けるニャ! 後ろニャーー!!!」

「……っ!!」

 

 心臓がひやりとした。

 リズの決死の叫びのお陰でトレヴァは振り下ろされる腕をすれすれで回避した。しかし真下の岩盤が派手に爆ぜ散り、彼女はその煽りを受けて岩壁に叩き付けられてしまった。

 

「トレヴァああああ!!」

 

――ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア

 

 駆け寄る間もなく、1体目と2体目の“溶岩原人”が火炎を吐き出してくる。おびただしい量のマグマがイーサンとリズに飛来した。

 

「身を守れぇぇ! 直撃だけは食らうな!!」

 

 全力で魔力を練り、それぞれ氷と風の防御壁を展開した。ギリギリで火炎を押しとどめたものの、やはり衝撃は吸収しきれず弾き飛ばされてしまう。

 イーサンの体はバウンドしながら足場の端まで投げ出されてしまった。何とか膝をついて立とうとすると、すぐ横で火傷を負ったリズが力なく倒れていた。

 

「リズっ!?」

「……ンニャ…」

 

 意識はある! イーサンは手をかざして魔力を注ぐ。

 

「ダメッ、ニャ! 魔力は身を守るのに使うニャア!」

「はっ――!?」

 

 背後には“溶岩原人”の腕が迫っていた。回復に変換しかけていた魔力を風の力に変え、振り下ろされる腕をすんでのところで弾く。

 ……ダメだ。彼女の言う通り、これじゃ回復している暇がない。じゃあ彼女は? いや、このままじゃ俺の魔力が尽きる。身を守る事さえ、できなくなる。

 

 3つのマグマの塊が、イーサンたちを取り囲んでいた。あるものは腕を振り上げ、あるものは口を大きく開く。あらゆる手段で、目の前の命を終わらせようとしてくる。

 イーサンは底を尽きかけている魔力を風に変換し練り上げる。――とりあえず凌ぐ。この一撃だけ、凌ぎきる。直撃さえしなければ、反撃のチャンスはある。ある……はずだ。

 

「頼む、持ってくれ……、俺の、魔力――!!」

 

 直後、全方位から大量のマグマが叩き付けられ、周囲の空気を激しく震わせた。

 

 

  *  *

 

 

 “楽しい”。

 ロランはその感情しか知らなかった。

 

 そもそもそれが感情なのかも断言はできない。人間や、生まれながらに命を持つ他の魔物とも違い、“踊る宝石”は魔力で動けるようになっただけの、もともとはただのズタ袋なのだ。一般的な感情を当てはめることすら、ひょっとしたら見当違いのことなのかもしれない。

 それでも敢えて言葉にするとしたら、ロランが常日頃から感じているものは“楽しい”という感情だろう。

 

 なぜロランと名乗るようになったのか、あのヘンテコな喋り方はどこで身に着いたのか、それは彼自身もわからない。

 港町のはずれで旅人について行くようになったのは“楽しそう”だったからだ。その旅人はたくさんの魔物を引き連れ、ゆったりと旅をしていた。それが“楽しそう”だと思った。実際に彼に話しかけられるのは“楽し”かったし、彼が道端で()()()()()()()()()()のに混ざるのも“楽し”かった。木の箱の中に揺られるのも好きだが、やはり草原を跳ねまわる方が“楽しい”、そう思っていた。

 そんな旅人は、今度は真っ赤な水が至る所で流れる不思議な場所に連れてきてくれた。ロランはマグマを見るのが初めてだ。すごく“楽しい”。そう思いながらロランは洞窟内を飛び回って遊んだ。

 

 

 ――でも、その旅人が仲間を庇い苦しそうに戦う姿を見て、ロランは初めて“楽しい”以外の感情を覚える。

 

 

 楽しくないなら、何なんだろう?

 その答えを彼が知るのは、実はもう少しだけ先の話だ。

 ただ、その得体のしれない感情に、ロランは身を任せることにした。

 

 

  *  *

 

 

 熱くない。イーサンは不思議に思った。

 無様にも瞑ってしまった目をそっと開くと、柔らかい光のカーテンが自分たちを包んでいるのがわかった。マグマはその外側を流れ落ちていく。

 

 その中心に、小さな白い袋が浮かんでいた。

 

「ロラン……?」

 

 彼が身をよじると光のカーテンは外側に弾け、3体の“溶岩原人”はバランスを崩されて倒れていった。

 

「英雄 ロラン …… は ……」

 

 彼はぴょこぴょことイーサンの前まで近づいてきた。

 

「英雄 は 弱き を 助ける もの ナリ …… 英雄 は 信念 を 貫くもの ナリ ……」

 

 ロランの視線がぶつかってくる。ここまで目を合わせていられたのは初めてだ。

 

「英雄 は …… 君主 の ため に 命を …… 燃やす もの ナリ!」

 

 彼の気持ちが、その無茶苦茶な言葉から少しずつ伝わってくる。

 

()()()() ……」

「……!」

「マスター! 英雄 ロラン に 輝き を! 英雄 の 未来 に (しるべ) を!」

 

 そこまで聞けば、十分だった。

 

「ロラン」

 

 周囲では3体の“溶岩原人”が、再びその巨体をこちらに向けていた。

 

「あいつらを倒す。力を貸してくれ」

 

 ロランは高く跳ねた。心の底から“楽しい”と思った。

 

「英雄 ロラン は 無敵 ナリ!!」

 

 ロランは高速で跳び、“溶岩原人”たちの間をすり抜けマービンの元へ降り立った。

 

「なに……ロランか!?」

 

 未だに動けないマービンは大きな袋を背負っている。火山攻略に向けてイーサンが調達してきた物資である。

 

「借り る ナリ!」

 

 ロランはその中から鋼鉄製のキバを取り出し、来た時と同じ勢いで戻っていった。

 

「行けロラン!!」

 

 イーサンの目の前を白い影が横切ると、3体の“溶岩原人”の腕が計6本、スパッと切断された。

 

「よし! そのままそいつらを少し引き付けておいてくれ!」

「マスター! 武器 が 消えた ナリ!」

「溶けたか……、溶岩の破片を使え! ないよりマシだ!!」

 

 魔物たちの注意は完全にロランに向いていた。イーサンはリズを抱え、トレヴァの方へ駆け寄る。彼女も意識はないが、なんとか無事だ。

 

「旦那……!」

 

 さらにマービンの元へ戻り、彼にまとわりついている溶岩を壊して開放する。

 

「マービン。うん、薬草はまだあるね。安全なところまで下がって彼女たちの手当てを頼む」

「わかった。だが、旦那は……」

 

 イーサンは熱で変形しかけている剣を今一度引き抜いた。

 

「英雄の加勢に行ってくる」

 

 

 

 

 “溶岩原人”たちはロランの動きに完全に翻弄されていた。

 渾身の打撃も火炎のブレスも彼の宝石の加護の前に弾かれ、目にも止まらぬ速さで足場を移動し続けるロランは的確に反撃を与えている。

 

「(だがどうやって倒す? これじゃあ負けはしないが勝つこともできない……)」

 

 余波で飛び交うマグマや溶岩を斬り飛ばしながらイーサンは思考を巡らせていく。

 ロランはイーサンに言われた通り溶岩の破片を使って攻撃しているが、それは文字通り付け焼刃。マグマの体表に触れたそばから崩れ落ちて有効打を与えられていない。

 

 そもそも物理的に攻撃を加えるというのは極めてリスクが高く効果も薄い。イーサンたちが散々身を守るのに使っていた呪文。それを攻撃に使うのが正しい戦略なのだろうが、巨大な体にダメージを通すほどの大魔法はイーサンもリズも、トレヴァも使えない。渾身の“バギマ”も、奴の細身の腕を斬り飛ばすので精一杯だったのだ。

 

 そしてイーサンの知る限り、別格の魔力量を誇るロランも攻撃呪文は覚えていない。敵の動きを封じる呪文に特化しているのだ。さらにそういった呪文が、対象が大きくなればなるほど効き目が悪くなることは経験から知っている。いくらロランの魔力でも、巨大な“溶岩原人”3体もの動きを封じられるとは到底――、

 

「……ん?」

 

 イーサンは“溶岩原人”の頭部に目をやった。様々な表情の顔が体表上を漂っている。言い伝えでは、あれは数多の魂が集まった怨霊。魂の集合体……!

 

「ロラァァァン!!!!」

 

 高速移動をしていたロランがぴたりと止まり、彼と再び目が合う。

 

「“メダパニ”だ! “メダパニ”を使え! ありったけ撃つんだ! ()()()()()()()()!」

 

 ロランは頷き、助走をつけて高く跳んだ。“溶岩原人”たちの頭上に弧を描く。

 

「英雄 ロラン の 裁き ナリ!」

 

 イーサンが目と耳を塞いだ直後、エリア中に不快な音が放たれた。精神を蝕む呪いの文言“メダパニ”。それはロランの特技にして、聞いた者の心を破壊する恐るべき呪文だ。

 

――アアア、ウ、アア、アアア

 

 マグマの魔物たちが悶え、浮かび上がる無数の顔はより苦痛な表情を宿していた。それらすべてに呪いが届いたわけではない。だが、怨念の集合体である“溶岩原人”にとって、そのなかにいるいくつかの魂に効いてしまえば十分なのだ。3つの巨大な影がひしゃげ、蜘蛛の子を散らすように崩れていった。

 真ん中にいた個体はより強く呪いの影響を受けたのだろう。崩れながらも両腕を振り回し、横にいたもう1体の体を殴りつけ粉々に破壊。そしてそのままマグマの底へ消えていった。残った最後の1体は苦しみながら崩壊に耐えるも、イーサンと同じくらいの背丈にまで縮小してしまっていた。

 

『ァ……ゥア……!』

 

 それでもなお、目の前に立つ人間に憎悪の視線を向けてくる。

 

「……随分、可愛らしくなったな」

 

 イーサンは剣を構え、搾りかすのようになった炎の化身にゆっくりと近づいた。

 

「俺たちの『勝ち』だ。いい加減眠ってくれ」

 

 剣を振り払い、目の前の魔物はただのマグマに還っていった。熱を浴び続けた剣の刀身が溶解し、根元から折れて地面に転がった。

 

 

  *  *

 

 

「リズ! トレヴァ! 無事か!?」

「ニャーン……まだ生きてるニャ?ここはあの世じゃないニャ……?」

 

 そんな冗談をこぼすリズを見て嬉しくなり、ぐったりと横になる彼女の首を撫でる。

 

「見届けたぜ……、旦那の、勇姿……」

「みんなのお陰だよ。それにあいつも。……ロラン!」

 

 ロランは溶岩の間から顔を出すと、軽快に跳ねながらこちらへ向かってきた。

 

「英雄 ロラン は 更なる 成果 を 得た ナリ!」

「え、どういうこと?」

 

 ロランが身をゆすると、袋の中から赤く輝く宝玉が転がり落ちてきた。

 

「『炎のリング』……! 見つけてきてくれたのか」

 

 “溶岩原人”にめちゃくちゃに荒らされたこの場所を改めて探索するのは苦行が過ぎる。みんなの体力的にも出直すしかないと考えていたが、それもたった今解決した。

 

「ナーン? こいつ本当に役に立ったのかニャ……? リズはそんなのみてにゃいニャ……」

「ロラン こそ 最強 の 英雄! 八面六臂 の 活躍 ナリ!」

「まあ口ではなんとでも言えるニャア……」

 

 そう言いながら彼女はゆっくりと立ち上がり、イーサンにくてっと寄り掛かった。

 

「そこまで言うなら帰りはしっかり働いてもらうニャ……。もうクタクタだし、いい加減暑くて死んじゃうニャ……」

「……同感。ロラン、帰りの戦闘は任せていい?」

 

 ロランは高く跳ねる。だんだんわかってきた。これが彼の“楽しい”の表現だ。

 

「英雄 ロラン は 有能 ナリ!」

 

 こうして一行は花婿としての試練の一歩目、『炎のリング』の入手に成功した。

 そして、小さな英雄が本当の意味で、イーサンの仲間となったのだ。

 

 

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