蒼穹の花嫁 ~ドラゴンクエストⅤ:parallel~ 作:イチゴころころ
こんばんは。イチゴころころです。
攻略本のサラボナ周辺の地図とにらめっっこしながら書きました。
フローラかわいい。
フローラの旅装も含めた旅の準備をするために、ふたりは街へ繰り出した。
以前買った武具やもともと持っていた物資などは、先代の馬車が破壊されたときに残念ながら失われてしまっている。せっかくなので、思い切って色々買いこんでしまおうと思ったのだ。ちなみに、折れたパパスの剣や桜の一枝をはじめとする大事なものは、馬車から逃げるときに仲間たちが持って行ってくれたので無事である。どうやらロランが“収納”して持ち運んでいたらしい。詰め込み過ぎて苦しくないのかと聞いたら『懐 は 無限 ナリ!』と答えられた。なんじゃそりゃ。
何だかんだで、サラボナの街をゆっくり巡るのは初めてだ。地図を片手にフローラが案内をしてくれた。彼女は方向音痴ではあるが、幼少期からここで育った言わば生粋のサラボナっ娘である。道がわからないだけで色々なことを教えてくれた。『こっちの店は薬草の品ぞろえが豊富』『生活用品を買うならあっちの店の方がお買い得』などなど。有名人なだけあって顔も利き、値切り交渉などもお手の物だった。道はわからないが。
「ちょっと意外だな」
「何がですか?」
「いや、安く売っているお店とか、さっきの鮮やかな値切りとか? ルドマン家の令嬢さんなんだしあんまり気にしなくてもいいように思って。これって偏見かな……?」
「そんなことありませんわ。確かにルドマン家に財産の蓄えは多くありますが、父が湯水のように使ってしまうものですから……。それに、こういった感性はこの先の旅においても必要でしょう?」
「恐れ入ったよ。さっそく役に立ってもらってる」
ある程度の物資を買いそろえ、いよいよフローラの旅装を残すのみとなった。モップにトレイに雑な重ね着という摩訶不思議な格好で、愛する人を野原に解き放つわけにはいかない。
「呪文は使える?」
「簡単なものですが心得はあります。戦闘で役に立たないということはないと思いますが……」
「わかった、あとで見せてもらうよ。じゃあやっぱりあまり前に出ない方がいいかな」
サラボナの武器屋には飛び道具や杖などの後衛用の武器が置いてなかったので、逆にあっさりと決まった。呪文が使えるとのことなので、護身用のナイフのみ持たせておく。
問題は防具だ。彼女の筋力的に重装備は選択肢から外れ、軽めの旅装に絞られてくるのだが、これが信じられないほどに種類があった。
「女性でしたらこちらの身躱しの加護付きのトップスがおすすめです。シャツ・ブラウス・ベスト・カーディガン・セーター。タイプ別に各色取り揃えております。さらに柄物もございまして、今年はこちらのチェック柄がトレンドで――」
「すみません、何の呪文ですか?」
「……?? 呪文が気になるようでしたらボトムスで調節するのが良いかと。先日入荷したこちらのレギンスは呪文の効果を軽減する素材で作られていて通気性も抜群、こちらのカーゴパンツには――」
「フローラ! フローラわかる? 翻訳して!」
「わあ、この胸当て可愛い!」
「お目が高いですね奥様。ですがそちらは属性耐性に偏りがあって少々扱いが難しいのです。是非、インナーとの組み合わせで考えていただけると」
「うーん……属性、というのはよくわかりませんね。イーサンさん、差し支えなければ、その……い、インナーから選んでくださるかしら」
「ああよかった分かる単語が出てきた。いいよ、良い旅は良い属性耐性から。そういうことなら任せてくれ。せっかくだからそのインナー? とやらから選んでやろうじゃないか」
「まあ、旦那様がお選びになるので? おアツいですね! ささ、こちらへどうぞ!」
「ん? なにがですか?」
フローラがぽっ、と顔を赤らめる。このあと女性ものの下着コーナーへ連れていかれる運命を、イーサンは知る由もない。
* *
その後、下着コーナーのレジをメタルスライムばりの素早さで駆け抜けたり、試着室を十数往復したりと様々なドラマを経て、ようやくフローラの旅装が完成した。
空色のブラウスに、白い革製の胸当て。薄紫のスカートは丈がかなり短めものを選んだが、その下に膝丈ほどのアンダースコートを身に着けている。不自然にならない色合いの膝当て、耐久性に優れた小さなブーツ。赤色がアクセントのベルト。トレードマークのリボンも新調し、蒼い長髪を後ろで束ねられるようになっている。
「ど、どうですか……似合って、ますか?」
彼女は普段着であるパステルカラーのワンピースが似合う印象が強い。機能性や防御力はもちろんだが、そんな彼女のイメージをなるべく崩したくないとイーサンは密かに画策していたのだ。似合わない道理はない。
「うん。素敵だよ」
「ああ、ありがとうございます! 大切に使いますね!」
「でも……今考えると色合いとかはフローラが選んだ方が良かったかもね。ほら、ファッションとか、君の方が詳しいだろ?」
そう聞くと彼女はうつむき、上目遣いで答えた。
「だって……貴方に選んでほしかったんですもの。新しい服、とっても嬉しいわ」
そう言われてしまったら満更でもない。奥様方の白い視線に耐え、下着コーナーを徘徊した甲斐があったというものだ。ちなみにどんなインナーを選んだのかは内緒だ。
* *
ぴかぴかの旅装に身を包んだフローラは大変ご機嫌で、道行く知り合いに片っ端から『選んでもらったんです』と自慢した。イーサンはその度に脇腹をくすぐられるような感覚を覚えたが、当のフローラが嬉しそうなので良しとした。
そうして、弾む足取りで街中を進み、街外れの馬車小屋に辿り着く。ルドマン氏の依頼のことはみんなも承知済みだ。リズたちは既に出発の準備を整えてくれていた。
「あ、あのっ。今回からわたくしも、みなさんとご一緒させていただくことになりました! えっと、ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします!」
深々と頭を下げるフローラを、温かい笑顔で迎える仲間たち。ただひとり、最古参のリズだけは渋い表情を向けていた。
「ナーン? フローラちゃんのことはご主人のハナヨメだとは認めたけど旅の仲間と認めたつもりはないニャ? 言っておくけどチュートハンパな気持ちで付いてこられても迷惑なだけニャン」
「う……」
フローラが顔を伏せる。イーサンは呆れて諫めようとしたが、マービンがリズの頭を押さえつけた。
「こらこら……。そんな、ツンツンした言い方をするものじゃあない……。お嬢、リズ先輩はこうは言っているが……、本当はあんたの加入を、嬉しく思っているはずだ……。オレたちはずっと、旦那の恋を応援してきた。……みんな、大歓迎だ」
そんな死体の言葉を聞いて、フローラの頬が緩む。
「そうでしたね……ありがとう、マービンさん。リズちゃんも、よろしくね」
「ふん、リズはそんな甘い考えなんてちっとも……ンニャアァァ……」
フローラに首元を撫でられ、威勢もむなしく無力化されるリズ。
「こちらこそ……、よろしくだ、お嬢……」
というか、マービンのこの呼び方は何なのだろう。これだとフローラがイーサンの娘みたいになってしまうが……。
「まあ、いいか。さて、ざっくりと行程の説明をするぞ」
イーサンは地図を広げる。仲間たち、それにフローラも加わり、地図を覗き込む。
「目的地はこの辺り。北の湖の西側にあるという祠だな。ここのツボの色を確認してくるのが……フローラに課せられた試練の内容だ」
フローラにとって初めて見る旅人用の地図では、その場所が果たしてどのくらい遠いのかは見当もつかない。ごくり、彼女は唾を飲み込んだ。
「この距離だと……だいたい……1日くらいか?」
「だんだん分かってきたなマービン。そうだ、見立てでは片道で丸1日かかるだろう。しかも今日はもう昼過ぎだ。だから一旦ビアンカの村に一泊して、そこで補給をしよう」
「……」
フローラは少しだけもやもやとした気持ちになった。経緯はどうあれ、フローラは彼女からイーサンを取ってしまったことに少なからず負い目を感じている。ビアンカは結婚式の後、イーサンの送迎ですぐに村へ戻っていった。多忙な準備期間もあり、彼女とはほとんど話したことがない。……こんなにすぐ、彼女に会いに行って良いのだろうか。自分には、彼女に向ける顔はあるのだろうか。
「ずいぶんのんびりニャ? その気になれば休憩なしでもすぐ帰ってこれると思うニャ……」
「うん。でも今回はフローラも一緒だ。甘やかしたいとかじゃなく、彼女も交えた隊列とか戦略も探っていこうと思って。だから今回は道中の魔物をできる限り無視しないで行く。俺も新しい武器を試したいし。そういう意味でも今回はのんびり、というかじっくり行く」
「そういうことなら納得ニャ。フローラちゃんのお手並み拝見ニャ」
「道はこう。川沿いにこう進んで……せっかくだしこの林に寄って行こう。少し遠回りだけど、魔物との戦いの練習にはうってつけなはずだ。トレヴァ、いつも通り先導と索敵を頼む」
『キキッキー!』
「マービンはいつも通り馬車番……と、覚えられそうならパトリシアの扱いも少しずつ覚えていこうか。最近仲が良いみたいだし、いざというときに馬車を動かせるメンバーがいると助かるかもしれないからな」
「わかった……善処しよう」
「リズとロランは、移動中は待機。ロラン、フローラにちょっかいかけるなよ……?」
「マスター 目 が 本気 ナリ! 承知 ナリ!」
「フローラも移動中は待機。魔物と遭遇しても、最初は馬車から見てるだけでいい。魔物との戦いがどんなものか、まずは自分の目で見ること。いいね」
「わ、わかりました……!」
イーサンが合図をすると仲間たちは意気揚々と馬車に乗り込み、トレヴァは翼を広げて飛び立っていく。こういうのを作戦会議、と言うのだろうか。スムーズかつ無駄のないやりとりを見ていたフローラは、夫とその仲間たちの絆を垣間見た気がした。
「……緊張してる?」
そんな夫が優しく声をかけてくる。
「え、ええ。少し……。でも、大丈夫です。実は、少しわくわくもしているのです」
「わくわく?」
「好きな人とお出かけすることを、デートと呼ぶらしいのです。だからこれは、その……わたくしの生まれて初めてのデートでもあって……。少し、壮大なデートにはなりましたが、とてもそのことが、心躍ると言うか……」
束ねられた蒼い髪が、そよ風に煽られて楽しそうに揺れた。
「それは、とんだ初デートになっちゃったな……。でも、俺も同じ気持ちだよ。君と一緒に行けるなんて、うん、夢みたいだ。ただ、ルドマンさんの課題もちゃんとクリアしないとな」
「もちろんですわ。よろしくお願いしますね。イーサンさん」
「うん。じゃあフローラも、早速馬車に乗ってくれ……!」
気合を新たにし、荷台へと乗り込むフローラ。
「……? ……??」
荷台の中は、クマでも暴れまわったんじゃないかというほどぐちゃぐちゃに散らかっていた。
「フローラちゃん、どうしたニャ?」
「い、いえ……大丈夫です」
ふるふると首を振り、足場を探しながら奥へと進むフローラ。仲間たちは、空になった袋や用途不明の布などを雑に敷いて、各々くつろいでいる。
「(こ……これも経験です。旅人としての常識ですわ! 精進精進!)」
ちなみにだが、馬車か草むらか洞窟でしか寝泊まりをしたことのないイーサンには、整理整頓という概念はない。
* *
「――ふっ!」
イーサンが剣を振り払うと、徒党を組んでいた“ベロゴン”の群れがまとめて弾け飛ぶ。実戦で剣を扱うのは火山以来だが、太刀筋は衰えてはいなかった。
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◎イーサン 18歳 男
・肩書き さすらいの魔物使い
・ステータス(A~E五段階)
HP:C MP:D すばやさ:C
ちから:B みのまもり:E かしこさ:B
・武器 破邪の剣
・特技 バギマ、ホイミ
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衰えてはいないのだが、サラボナで購入した『破邪の剣』はお世辞にも扱いやすいとは言えなかった。筋力的に重すぎるというわけではないが、なにぶん大きすぎる。イーサンの体格とバランスが合っていないその得物は、軽々と振り回せる代物ではない。
「タイミングが合わないか……。フォロー!」
押し寄せる第二の群れに、ロランが幻惑呪文“マヌーサ”をぶつけて撹乱する。さらにリズが飛び掛かり、後方からはトレヴァの放つブーメランが飛来した。
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◎リズ ??歳 メス
・肩書き 頼もしいプリズニャン
・ステータス(A~E五段階)
HP:C MP:D すばやさ:A
ちから:B みのまもり:D かしこさ:C
・武器 牙とツメ
・特技 ヒャド、甘い息
◎トレヴァ ??歳 メス
・肩書き 心優しきキメラ
・ステータス(A~E五段階)
HP:C MP:B すばやさ:B
ちから:B みのまもり:C かしこさ:B
・武器 刃のブーメラン
・特技 ベホイミ、氷の息
◎ロラン ??歳 男
・肩書き 忠実な踊る宝石
・ステータス(A~E五段階)
HP:C MP:A すばやさ:A
ちから:C みのまもり:A かしこさ:C
・武器 宝石の加護
・特技 ラリホーマ、メダパニ、その他多数
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さらにイーサンは『破邪の剣』を地面に突き立てる。柄にはめ込まれた宝玉が光を帯び始めた。
「みんな、下がれ!」
仲間たちが飛び退くのと同時に、剣から炎が噴き出した。既に満身創痍だった敵の群れは、その炎にたちまち焼かれていく。
イーサンは前方を見やる。そこには魔物の群れの最後の一匹、大型の“ダークマンモス”が憤怒の形相で構えていた。
「ここらでどうだ……フローラ!」
遥か後方、馬車に向かって呼びかける。
「は、はい!」
馬車の横では緊張した面持ちのフローラが、マービンに付き添われて立っていた。
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◎マービン ??歳 男性
・肩書き 馬車守の死体
・ステータス(A~E五段階)
HP:A MP:E すばやさ:E
ちから:A みのまもり:B かしこさ:B
・武器 素手(右手のみ)
・特技 毒攻撃、冷たい息
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「さあ、お嬢……肩の力を抜くんだ。一発で倒そうとは、考えるな……。旦那も言っていたように、お嬢の役割は牽制だ……。重く考えなくていい。あんたなら、きっとできる」
「はい……行きます!」
魔力を練る。落ち着いて、指先に集中した。
サラボナを発ってから数時間。何度かイーサンの戦いを見てきた。彼は指揮官として非常に優秀で、自らが前線に立ちながらも仲間に的確な指示を出していた。彼らのコンビネーションには、野生の魔物の群れなど太刀打ちできるはずもなかった。しかしそれはイーサンの力だけではない。イーサンが仲間を信頼し、仲間も彼の信頼通りに動くからこそ、無敵とも思える戦い方ができるのだ。そして今度はフローラの番だ。彼に、愛する夫の信頼に応えるために、自分に出来ることをするまでだ。
「――はっ!」
両手を頭上に掲げると、巨大な火の玉が形成される。火球呪文“メラミ”。広範囲を焼き払うビアンカの“ベギラマ”と違い、炎を凝縮させることによって一点突破で対象を焼き尽くす強力な呪文だ。
「す……すごいニャ……!」
前線にも圧倒的な存在感を与えてくる火の玉を目の当たりにし、リズは思わずつぶやいた。ここまでの大きさのものを見るのは、イーサンたちも初めてである。誰もがフローラの頭上の火球に注目した。
冷静に魔力を注ぎ、目の前を見る。前線の仲間たちのさらに先に、今にも暴れ出しそうなダークマンモスを捉える。狙うは、あの凶暴な魔物……!
「……っ! い、行っけぇ、“メラミ”!!」
両腕を前にかざし、渾身の呪文を放つ。術者のもとを離れた火球は大砲の弾の如く高速で飛来し――。
ダークマンモスの数メートル横を通り過ぎ、遥か遠くの地面に着弾した。
「……え?」
「……ニャ?」
『……キッ?』
「…… ナリ?」
前方の仲間たち、当のダークマンモスまでもが、衝撃的な射角で放たれた火の玉の軌跡を茫然と見つめていた。
「え、え……ええええぇぇぇぇええ~~~~!!」
* *
苦い初陣を飾ったフローラは、林へ向かう一行を重い足取りで追っていた。
「……で、フローラちゃん。さっきの大ポカはどう説明してくれるニャ?」
「ご、ごめんなさい……。実戦で使うのは初めてで……」
「まあ、いいじゃないかリズ。今まで火属性の攻撃が使える仲間がいなかったんだ。当てることさえできるようになれば、フローラもかなりの戦力になる」
「でも、ご主人だって使えるようになったニャ。炎の攻撃」
イーサンは『破邪の剣』を抜く。やはり、パパスの剣に比べてかなり大きい。
「うん。ここにある宝玉のお陰で、魔力消費無しで“ギラ”相当の攻撃ができる。でも、その程度じゃ雑魚処理くらいにしか使えないし、これ自体がでかすぎるから前みたいに素早い打撃はできないかも……」
「ぴったり な 大きさ の 武器 を 買えば 良い ナリ!」
「これしかなかったんだ。オーダーメイドにしようとしたら時間がかかるし。仕方ないからしばらく我慢するよ。俺の戦力が落ちた分、なおさらフローラには頑張ってもらわないと」
「う……」
彼女が目を伏せると、頭のリボンもしょんぼりと揺れる。
「一回の失敗くらい気にするなって。これから練習していけばいい。そのためにわざわざこの林に寄ったんだ。……一緒に頑張ろう、フローラ」
イーサンが手を握る。そうされるだけで、フローラは勇気が湧いてくるようだった。顔を上げ、その手を強く握り返した。
「はい……! よろしくお願いします!」
しかしそれからさらに数時間、フローラ渾身の呪文は一向に敵に着弾しない。
「“メラミ”!!」
スモールグールの横をすり抜け燃え尽きる。
「“メラミ”!!!」
上空の蛇コウモリではなく何故かトレヴァを掠める。後にトレヴァ涙目の抗議。
「“メラミ”!!!!」
ベロゴンの群れの手前で謎の失速。地面を穿つ。
「“メ ラ ミ” ! !」
真上に射出。木々をすり抜け大空へ。
「“メラミ”ぃ~~~!!!!」
不自然な軌道を描き馬車に着弾。発火。リズとトレヴァが急いで消火。パトリシア激怒。
「うぅん“メラミ”っ!!」
グレゴールの横を当然のように通り過ぎ木に着弾。発火。みんなで慌てて消火するも危うく山火事一歩手前。
「“メ~~~ラ~~~ミ~~~”っ!!」
まさかのイーサンに着弾。夫気絶。トレヴァが手当てするも旅人のマントが焼失し、ここでフローラの心が折れる。
* *
「イーサンじゃない! 早速旅に出たんだね。こんなに早く顔が見られるなんて嬉しいわ! ……って、なんでそんなにボロボロなワケ?」
夜。山奥の村にて笑顔で出迎えてくれたビアンカに対し、イーサンは煤だらけの顔で苦笑いを返した。
「やあビアンカ。まあ……色々あってね。突然で申し訳ないんだけど、宿を紹介してくれないか?この村の構造、まだよくわかってなくて」
「もう、何水臭いこと言ってるのよ。ウチに泊めてあげるわ。リズにゃんたちも、あとフローラさんもいるんでしょ? せっかくだしみんなで……あれ? フローラさん? ねえ、ちょっと、どうしたの!?」
イーサンの後ろ。一同の最後尾には、顔面蒼白のフローラが虚ろな目をして佇んでいた。
「ちょっとこの子大丈夫!? イーサン、キミ彼女に何したの!? 説明しなさい!!」
ビアンカが肩を揺さぶると、パラパラと煤が舞い落ちた。
「まあ……色々、あったんだよ。うん」