蒼穹の花嫁 ~ドラゴンクエストⅤ:parallel~    作:イチゴころころ

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 どうもイチゴころころです。

 ドラクエ11のロミアのお話が大好きで、5章は人魚モチーフのストーリーでも書こうかなとか思ってましたが『そんな調子じゃあ一生テルパドールにたどり着けない』と思い直し断念しました。

 ということで第5章、開幕!





第5章 天空の勇者と光の教団
5-1. 水平線の果て


 

 

 

 『カジノ船』を発ってから、1年と半年。水平線に新たな大地が見えた時の喜びは何にも代えがたいものだった。本来なら1年弱で辿り着くはずがやはりそう甘いものでもなく、道中様々なイベントやハプニングに見舞われた。名もなき島で水着だらけの水泳大会をしたり、廃墟の博物館で肝試し大会をした挙句そこの館長になったりと本当に色々あったのだが、それらはまた別のお話である。

 甲板から海を眺めるのはもはや日課となっていて、イーサンは今日も、近づいてくる大地を見つめている。……あと数時間ほどで目的の地、南の大陸のテルパドール地方に辿り着くのだ。

 

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 ◎イーサン 19歳 男

 ・肩書き  モンスターマスター

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:C    MP:C すばやさ:C

 ちから:B みのまもり:E かしこさ:B

 ・武器 刃のブーメラン

 ・特技 バギマ、ホイミ

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「わあ……!もう着きますね、イーサンさん!」

 

 客室の扉から姿を見せたのは最愛の妻、フローラだ。彼女はお気に入りの旅装に身を包み、長い髪もお気に入りのリボンで束ねている。船酔いを克服してから、彼女も積極的に船乗りの手伝いや魔物の迎撃に参加するようになった。イーサンが後衛に下がったのも(『破邪の剣』を海に投げ捨てたのもあるが)、彼女の戦力が安定してきたことが大きい。……というかこと攻撃に関しては、今やフローラの右に出るものはいないのではないだろうか。

 

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 ◎フローラ 21歳 女

 ・肩書き  イーサンの妻

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:D    MP:B すばやさ:C

 ちから:D みのまもり:D かしこさ:B

 ・武器 グリンガムの鞭

 ・特技 メラミ、バイキルト

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 『カジノ船』でまさかの才能に目覚めたフローラはあのままカジノを破産寸前にまで追い込み、未だかつて誰も交換したことのない伝説の武器『グリンガムの鞭』を有り余るコインを以って手に入れた(自らの父が経営する施設を潰しかけるのもおかしな話ではある)。この武器は非力な女性でも扱える軽量装備だが、伸縮性に富んだ謎の素材から繰り出される範囲攻撃はちょっと意味不明なほどの破壊力をたたき出す。さらに彼女が戦闘に慣れてきたこともあり、“メラミ”の命中率も格段に上がっていた。中衛に立つ彼女は群体に鞭、単体に火球と隙の無い構えを見せ、そして手が空いたらイーサンに愛のこもった“バイキルト”をかけてくれる。そして可愛い。まさに最強の花嫁である。

 

「フローラ。アイナが言うにはあと数時間で到着だそうだ。荷物の準備、部屋の片づけは済んだ?」

「荷物は既に、馬車に積んでおきました。ばっちりですわ」

「……どうでしょうね。これは忘れ物とお見受けしますが」

 

 声に振り返ると、黒髪の小柄な女性が、小さなビンを手にして立っていた。

 

「アイナ。それは……懐かしいな。俺があげたボトルシップじゃないか」

「ええっ、うそっ!? あ、そうでした……ずっと枕元に置いていて……」

「いらないのなら、私が処分いたしますが?」

「ああ~やめてぇ~!」

 

 フローラが慌ててボトルシップを取り返す。その様子を見て、アイナはくすりと笑った。

 

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 ◎アイナ  23歳 女

 ・肩書き   銀眼の姐御

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:D    MP:D すばやさ:B

 ちから:B みのまもり:C かしこさ:B

 ・武器 銀の槍

 ・特技 フローミ、インパス

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 アイナはこの1年半で、かなり印象が変わった。

 出港時には肩口ほどの長さであった黒髪は胸のあたりまで伸び、もともとそういう髪質だったのか先端が緩く巻かれている。毎日髪の手入れをしているフローラが散髪を申し出るもやんわりと断ったらしい。豪奢な航海服は度重なる戦闘でひどく消耗し、赤いジャケットはノースリーブのベストに大変身。シャツは失われたのでその下はさらし。ズボンは擦り切れ羽根帽子もいい具合に年季が入り、全体的にかなりワイルドな仕上がりになっている。こうなると航海士というより女海賊だ。しかし彼女も存外この格好を気に入っているらしく、予備の服も出さずに一張羅を貫いている。イーサンとしても、色々な偏見としがらみを脱し、吹っ切れた印象のあるこの格好の方が似合うと思っていた。

 

 ……そして、彼女の目だ。ややつり上がった切れ長の目、その片方は無骨な眼帯に覆われていた。“大海のヌシ”との戦いのときに落雷を受けた後遺症から彼女の左目の視力は落ちる一方で、今ではほとんど失われてしまったのだ。損傷した視神経をトレヴァが必死に治療し続けたのだが、やはり目視のできない体内のケガには回復呪文の効果が薄い。結果、彼女の世界は半分閉ざされることとなってしまった。

 

「うぅ……せっかくイーサンさんに買っていただいたのに、なんで忘れてしまったのでしょう」

「俺は悲しいよフローラ」

「ああ、ごめんなさい! わたくしったら本当に、昔からこういううっかりなところがあって! ううぅ……!」

「イーサン様、フローラ様をいじめないでください。これはベッドの下で見つけました。きっと波の揺れか何かで落ちてしまったのでしょう」

 

 アイナがとんとんと、左目の眼帯を指でたたいた。

 

「こんなこともあろうかと、お部屋を“インパス”で確認して正解ですね」

 

 船乗りの業務において視力は最も重要な能力のひとつだそうだが、物理法則を越えてモノを見ることができるアイナにはほとんど関係のないことだったようである。彼女が“インパス”を発動すると、黒い眼帯に鈍い銀色の文様が浮かび上がる。もともと状況を見る目に長けていたアイナにとって、これ以上に相性の良い呪文もないだろう。片目を失った今も、一等航海士としてその手腕を振るっている。

 

「さすがは“銀眼(ぎんがん)の姐御”だね」

「やめてください、恥ずかしい……」

 

 そんな彼女にいつの間にか船乗りたちが通り名をつけた。もともとが“串刺しの姐御”だったのだからだいぶマシにはなっただろう。口では嫌がるアイナも、まんざらではなさそうだ。

 

「……さて、いよいよですね」

 

 甲板で作業をしていた船乗りが何か叫び、周りの仲間たちも景気よく返事をした。新大陸に降り立つ準備が着々と進められる。

 

 

  *  *

 

 

 テルパドール地方の海岸には港らしい港がない。ルドマン氏の言うように国家間の交流が途絶えた影響か、それとも別の要因かはわからない。クイーン・ゼノビアは比較的潮の流れの穏やかな場所を見つけ、そこに停泊した。当然だが、海岸は浅くて大きな船では近づけない。

 

「トレヴァたちは馬車と共に、専用のボートで一足先に海岸へ向かいました。イーサン様、フローラ様はこちらへ」

 

 積載されていたボート群が列をなし、船乗りたちや物資を乗せて各々海岸を目指していた。イーサンたちもそのうちの一隻に腰をおろし、アイナの操縦で船を離れていく。

 

「こう見ると、乗組員のみなさんって結構たくさんいましたのね……。わたくしたちの船旅は、本当に多くの方に支えられていたのですわ」

「確か、簡単な港を造るんだっけ?」

「ええ、『カジノ船』の皆さんに建材を分けていただきましたので。私たちはいつでもここに船が泊まれるよう、テルパドール地方の窓口を作ります。領主であるテルパドール女王への許可願いはイーサン様の荷物に入れておきましたので、どうか渡していただけると」

 

 イーサンの旅の目的を知ったルドマン氏は考えを改め、今一度国家間、引いては大陸間の交流を復活させようと考えた。娘夫婦の旅路、そして世界の未来を知られざる脅威から守るためのささやかな一歩だと彼は言っている。

 

「ですのでおふたりは、到着したらすぐにテルパドール王国へ向かってください。南の大陸と東の大陸は地続きです。しかしグランバニア王国のある東の大陸は山で囲まれているため陸路でしか目指せません。……私どもが導けるのは、ここまでです」

「アイナ……お別れね」

「はい、フローラ様」

 

 もともとアイナの業務内容は旅のお供ではなく、”船旅”のお供なのだ。それに、クイーン・ゼノビアの実質的な責任者であるアイナは、船を離れるわけにはいかない。

 イーサンは遠ざかるクイーン・ゼノビアを見た。1年半という長いようで短い期間、彼らを雨風、魔物から守った青い塗装の帆船。一度は帆を折られ満身創痍になるも、船員たちの努力と共に息を吹き返してくれた。そして最後まで航海を共にしたその船に、イーサンは奇妙な友情さえ覚えていた。

 

「わたくしは……みなさんのことを忘れませんわ、ずっと……」

「やめてください。湿っぽいのは……苦手です」

 

 やがてボートは海岸に着く。岩場の向こうには、テルパドール地方が広がっているはずだ。馬車を引くパトリシアが、久々に大地を踏みしめることができて嬉しそうに立っている。船乗りたちは建材を並べ終えると、アイナと共に馬車の前に集まってきた。

 

「船長っ!」

 

 声をかけてきたのは、ひとりの陽気な航海士。

 

「……ザック」

「どうかお達者で! どこへ行ってもジブンらの船長は、……船長っス!」

 

 船乗りたちが口々に、別れと感謝を述べてくれた。それらを受けてイーサンは新鮮な気持ちを覚える。未だかつてこんなに多くの人に囲まれて、それも魔物使いとして邪険にされるのではなく、ひとりの仲間として言葉をかけてもらえたことがあっただろうか?

 

「……私たちはしばらく、この海岸で作業を続けます。貴方様は貴方様の旅を続けてください。私たちは船乗りとしてやるべきことをやるだけですから。……むさくるしい男所帯なのが、少し気になりますけどね」

 

 おどけるアイナに、船乗りたちの抗議の声が上がる。

 

「いいじゃないか。君も知っている通りみんないい奴だ。それに、今なら小さな騎士様だってついているだろう?」

『るんっ!』

 

 アイナの背後から顔を出したのは、しびれクラゲのレックラ。彼はアイナとお揃いの羽根帽子を被り、嬉しそうに触手を揺らしている。

 

「いいのですか? 彼は貴方が仲間にしたモンスターでしょうに」

「他でもないレックラが、君と一緒にいることを望んでいるんだ。俺は主として、その気持ちを尊重するだけ」

『アイナ! 好き、好き!』

 

 レックラが笑顔でそう叫び、彼女の肩に乗る。ひゅー、アツいね! と誰かが言った。アイナは目を逸らし、少しだけ頬を赤らめた。

 

「まったく……こんな言葉誰が教えたのです……」

 

 イーサンは思わず吹き出しそうになる。するとアイナが睨んできたので咄嗟に口をつぐみ、咳払いをした。

 

「……で、その後はどうするつもり?」

「我々は船乗りです、ここでの作業を終わらせたらすぐにでも出航します。まずはラインハットを目指そうかと。そうやって……内海の航路を結んでいきます。旦那様の意思を継ぎ、失われた大陸間の絆を再び結ぶことこそ、私たちに出来ることだと思いますので。それが巡り巡って、貴方様の旅の支えとなれれば幸いです」

「そうか……」

 

 南と東の大陸を踏破すれば、大陸を統べるすべての国を回ったことになる。“ルーラ”の使えるイーサンは、どこへでも自在に移動できる最強の旅人になれるのだ。しかし、そうなったらもう船は必要ない。この世の数多の旅人からしたら夢のような話だが、イーサンは少しだけ寂しさを覚えた。

 

「それでも、先ほどザック君が言ったように……私たちの船長は貴方です、イーサン様」

「あ……」

「この心、この魂は貴方と、フローラ様に捧げました。それはこれからも変わりません。道は違えども、共に立って歩める。……それが仲間というものでしょう?」

 

 イーサンは言葉を失った。1年半前、『貴方を信用する気はない』と言い放った不愛想な瞳は今はどこにもなく、旅立つ仲間の背中を押す、頼れる姐御の顔がそこにはあった。

 

「ありがとう、アイナ」

「……こちらこそ」

「じゃあ、行ってきます」

「ええ、お気をつけて」

 

 言葉を交わし、振り返るとフローラの姿。……涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。

 

「フローラ!? やけに静かだなと思ったら泣いてたんだ!?」

「だ、だって……アイナ、ずっ、一緒に、いてぇ……! わたくし、昔、かっ、アイ、いっ、う、うえぇ……っ!!」

 

 感極まったフローラがアイナに抱き着いた。胸当てがぶつかる鈍い音と共にアイナは一瞬顔をしかめたが、すぐにその表情は微笑みに変わる。フローラの背中をとんとんと叩く彼女を見て、まるで姉妹だな、とイーサンは思った。アイナの方が背は小さいけど……なんて言ったらきっと串刺しにされるから、胸にしまっておこう。

 

 かくしてクイーン・ゼノビアの旅は一度幕を下ろす。海と陸、ふたつに別れた道はもう交わることはないが、各々の意志もまた、分かたれることはない。

 

 

_______________________

 

 ◎レックラ  ??歳 たぶん男

 ・肩書き   恋するしびれクラゲ

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:E    MP:C すばやさ:C

 ちから:E みのまもり:E かしこさ:D

 ・武器 石の牙

 ・特技 マヒ攻撃、キアリク

_______________________

 

 

 

 

 

 

 

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