蒼穹の花嫁 ~ドラゴンクエストⅤ:parallel~    作:イチゴころころ

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どうもこんばんは。イチゴころころです。

前回退場したアイナ×レックラのカップリングが好きです。幕間書きたいです。
再出航から1年間ほどかけて粘り散らかした結果、レックラは愛しの姉御の私室に寝床を置かせてもらえるようになったとか何とか。イーサン・フローラ・船乗りたちもノリノリで後押ししたみたいです。レックラの次の目標は『おてて、つなぐこと』だそうですが彼のしびれ体質もあり難航しているのだそう。……そんなお話書きたい。

ちなみにノリノリで後押ししていたフローラも「そういえばわたくしたちも、ちゃんとおてて……繋いだことないですわね」と悟り悶々とし始めます。


色々述べましたがこれらもまた別のお話……。どいつもこいつも爆発しろ!




5-2. 神秘の大地 テルパドール

 

 

 照りつける太陽が砂埃をも貫通し、むき出しの二の腕を焼いてくる。そんな陽光にぱんぱんに温められた砂の大地が、ブーツの下から足の裏を熱してくる。……この旅装はオールシーズン対応ってお店の方は言っていたけれど、どこまでの暑さなら対応できるのかしら。と、フローラは思う。

 

「――やあっ!“メラミ”!!」

 

 発射された火球は“オーク”の頭上を掠め、空に消えていった。

 

「いけない、やってしまいましたわ!」

 

 チャンスとばかりに距離を詰めてくるオークに、カウンターの要領でブーメランが激突する。

 

「大丈夫か、フローラ!?」

「ごめんなさい、ちょっとお洋服のことを考えていましたの!」

「はぁい!?」

「もう一度……“メラミ”!!」

 

 態勢を立て直したばかりのオークに今度こそ火球が直撃し、その体躯を消し炭に変えた。しかし息つく間もなくその背後から、3体の“炎の戦士”が飛び掛かってきた!

 

「しまっ――」

「まっかせるニャァーーーー!!!」

 

 フローラの眼前を白い影が横切ると、人間大のサイズを持つ氷塊が計5本、瞬く間に生成され“炎の戦士”の群れに襲い掛かる。炎を司る凶暴な魔物は、周囲の砂と共に瞬時に氷漬けにされてしまった。

 

「リズ!? お前いつの間に腕を上げたんだ!!」

「ふふーん♪ 今の今まで船酔いでダウンしてた分しっかり働かにゃいとね! さぁフローラちゃん。戦いにおいてどっちが先輩か、今一度わからせてやるニャン?」

「あ、これ冷たくて気持ちいいわ」

「聞けニャ!!」

 

 嫁とネコがそんな漫才のような掛け合いを繰り広げる一方、少し離れた場所ではロランとトレヴァ、マービンが襲い来るスライムの群れに囲まれていた。彼らはひとりの男性――なぜかこの砂漠のど真ん中で迷ったという商人を魔物から庇っている。

 

「おかしい わ。 スライムが こんなに たくさん……」

「無限 湧き 楽しい ナリ!」

「ロラン には 敵わない なぁ……」

 

 それぞれ高速移動と冷気のブレスでスライムたちを退けつつ、倒れ込む商人の周りを飛び回るふたり。防御と妨害に長けた彼らの陣を突破するのは、容易ではないだろう。

 

「ひ、ひええ……何がどうなってるんだよぉ……」

「商人の旦那、ほら……こっちだ、ひとまずオレたちの馬車まで来い……」

「は、はいぃ……!」

 

 マービンが彼の手を引き、商人を戦線から離脱させていく。

 

「フローラ、リズ! そっちはもう大丈夫だな」

「「ええ!/ばっちりニャン!」」

「じゃああっちの加勢に……ん?」

 

 スライムたちが不穏な動きを見せる。ロランとトレヴァに翻弄されていた大小さまざまなスライムが一か所に集まっていき、巨大な影を作り出している。

 

「すごい! すごい ナリ!!」

「ま マスター!? はやく こっちに 来てぇ~~~!!」

 

 トレヴァの涙声に応えるように、イーサンたちは駆け出した。

 

「フローラ、あれは?」

「えっと……“キングスライム”! スライム族を束ねる王者。危険度大! だそうですわ!」

 

 眼前の“キングスライム”が大きく飛び上がり、その巨体を地面に叩き付ける。地響きと共に砂埃が舞い上がり、トレヴァとロランが悲鳴(と歓声)と共に吹き飛ばされた。

 

「うん、確かに別格っぽいな……! 一撃で決めよう!」

 

 フローラが応答し、イーサンに“バイキルト”をかける。数段跳ね上がった筋力でイーサンはブーメランを投擲し、同時にリズが“ヒャダルコ”を発射した。砂丘に叩き付けられる氷塊と一閃のブーメラン。その渾身の攻撃を受けたキングスライムは巨体を保てずバラバラに散っていき――。

 

 一瞬で、もとの巨体を取り戻した。

 

「ええっ!?」

 

 こちらを嘲笑うかのように跳ねるキングスライムの背後から、数体の赤い魔物“ベホマスライム”が現れた。可愛らしい見た目とは裏腹に“ベホマ”という回復の最上位呪文、どんな傷も一瞬で治療してしまう禁術を操る危険な魔物である。

 

「そんなんずるじゃん!!」

 

 キングスライムがその巨体に反した速度で飛来し、イーサンたちに飛び掛かる。咄嗟にフローラを抱きかかえ距離を取ると、その直後、地響きと共にキングスライムがすぐそこの地面に着地した。

 

「あ……っぶなかった! フローラ、無事?」

「え、ええ。だだ、大胆ですわ、ね、イーサンさん……ぽっ」

「リズはほったらかしかニャーン! 薄情者!」

「くそ……あのインチキ呪文を止めないと……!」

「無視かニャ!」

 

 口笛を吹くと、ロランが猛烈な速度で戦線まで舞い戻ってくる。

 

「英雄 の 力 を 思い 知る が 良い! “マホトーン”!!」

 

 スライムの群れに、魔力の流れを止める呪文が降り注いだ。

 

「2匹 逃れた ナリ! トレヴァ!」

「任せて!」

 

 さらに急降下してきたトレヴァが、クチバシにくわえた『魔封じの杖』を起動。ロランの呪文を逃れた個体に、再び呪いがかけられる。

 群れを成す“ベホマスライム”たちは、名前にもなっている大呪文を封じられて困惑を隠しきれないようだ。

 

「今だ、フローラ!」

「はい! ――ん~~~~~、えいっ!!」

 

 距離を詰めたフローラが『グリンガムの鞭』を振り抜いた。

 無限に伸びる鞭の先にきらりと光る3つの鏃。三叉に分かれた必殺の鞭がベホマスライムたちに暴威の一撃を与える。

 

 すぱぱぱぱぱんっ、という軽快な音と共に、小さな魔物たちは弾け飛んでいった。『う~んやりましたっ』と笑顔でポーズを決めるフローラに、傍らのリズは若干の寒気を覚える。

 頼れる家臣を失ったスライム族の王は動揺を露わにし、自らにも降りかかる一撃に気付くのに、ワンテンポ遅れてしまう。

 

「――っふ!!」

 

 再び投擲されたブーメランがキングスライムの胴体を貫き、今度こそ体を保てなくなったその魔物は元の小さなスライムたちに分裂。ぴききー!? と悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 

「ふう……みんな、お疲れ様」

 

_______________________

 

 ◎リズ  ??歳 メス

 ・肩書き  歴戦のプリズニャン

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:C    MP:C すばやさ:A

 ちから:B みのまもり:D かしこさ:B

 ・武器 牙とツメ

 ・特技 ヒャダルコ、ベホイミ

 

 

 ◎ロラン ??歳 男

 ・肩書き  無敵の踊る宝石

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:C    MP:A すばやさ:A

 ちから:C みのまもり:A かしこさ:C

 ・武器 宝石の加護

 ・特技 ラリホーマ、メダパニ、その他多数

 

 ◎トレヴァ ??歳 メス

 ・肩書き  聡明なキメラ

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:B    MP:B すばやさ:A

 ちから:B みのまもり:C かしこさ:B

 ・武器 魔封じの杖

 ・特技 ベホイミ、氷の息

 

 ◎マービン ??歳 男性

 ・肩書き  馬車の番人

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:A    MP:E すばやさ:E

 ちから:A みのまもり:B かしこさ:B

 ・武器 素手(右手のみ)

 ・特技 毒攻撃、猛毒の霧

_______________________

 

 

 馬車に戻ると、大きなリュックを背負った商人がぺこぺこ頭を下げてきた。

 

「ありがとうございます旅のお方!! いやぁ、まさか私もこんなところで魔物に襲われるなんて思ってもいませんでした……」

 

 どうやらこの大砂漠にはあちこちに小さな集落があるらしく、彼はそれらを転々とする商人なのだという。

 

「世界中で魔物の生息域に変化がみられるみたいですからね。あなたの集落まで案内してもらえますか? このままじゃまた襲われるかもわからないので俺たちが護衛します」

「ああ、本当に何から何までありがたいです」

「でも マスター。 お水 食べ物 足りる? 大丈夫 かしら」

「アイナにたくさん貰ったから大丈夫。テルパドールへは遠回りになるけど、人の命には代えられないだろ?」

「旅のお方、ひょっとして……、テルパドールに向かわれるので?」

「はい、そうですけど……?」

 

 商人は考え込むように目を伏せ、それから馬車の荷台に目配せした。

 

「まさか、あそこに積んであるのは『天空の剣』と『天空の盾』ではないですかい?」

「えっ!? なんで、それを――」

「うぅむ、どうやら本当のようだ。では女王様のおっしゃったとおり……うぅむ……」

 

 商人は顔を上げ、イーサンの目を覗き込む。

 

「……よし! 予定変更! 旅のお方、テルパドールへ案内いたしましょう!!」

「はい!? でも、あなたの集落は……」

「ふふふ、商人は世を忍ぶ仮の姿。申し遅れました、私はクルスム。テルパドール王宮、アイシス女王に仕える宮廷騎士です!」

 

 

  *  *

 

 

 クルスムの案内で砂漠を進むと、砂煙から浮かび上がるように巨大な王宮が姿を現した。『テルパドール王国』、南の大陸を統べる王国の、統治者が住まう王宮である。

 

「す、すごいですわ……。遠くからでは気付けませんでした。クルスムさんの案内がなければ、わたくしたち辿り着けたかもわかりませんわね……」

「この砂漠は広いうえに年中砂嵐が吹き荒れていますからね。山に囲まれたグランバニアが天然の要塞なら、ここは差し詰め天然の隠れ家、でしょうかね」

「でも、城下町らしい城下町が見えないけど……」

 

 見渡すと、王宮のほかには石造りの家が数件建っているだけだ。それが民家なのか何か別の施設なのかは見た目では判断できない。巨大な王宮は確かに荘厳ではあるが、ラインハット城下町やサラボナと比べるとどうしても活気に欠ける気がする。イーサンの疑問に、クルスムは肩をすくめて答えた。

 

「民のほとんどは集落をつくり、砂嵐を避けるように移動しながら暮らしています。そういう意味では大砂漠すべてが『テルパドール城下町』と言えます。だからここに定住しているのは王宮関係者くらいのものですね。それに、もともとテルパドールは人口が少ないんです。たぶん他の大国と比べて最下位だったと思います。だから単純な国力は国家間最低。でも十分なんですよね。過酷な大自然と共に、慎ましくも逞しく暮らすのが我々テルパドール民の生き様ですから」

 

 クルスムの話に感心しながらも、イーサンは少しばかり違和感を覚えた。ルドマン氏の話では、とうの昔に大国間の交流は途絶えたはずだ。実際、内海の沿岸には港はなかった。だからか、彼の『他の大国と比べると』という言い回しに引っ掛かりを感じる。彼の話し方も、とても外への興味を失った現代人のようには聞こえなかった。

 

「でも大変ではありませんか? 領主として民にお触れを出すときとか……広すぎて、しかもみなさん移動を続けているそうですし」

 

 フローラが領主の娘らしい疑問を投げかけると、クルスムは不敵に笑みを浮かべた。

 

「ふふ……それは我らがアイシス女王にお会いになれば、わかることですよ」

「「……??」」

 

 イーサンとフローラが顔を見合わせ、同時に首を傾げた。

 

 

  *  *

 

 

 王宮の中は意外にも涼しく、熱砂にあぶられ続けたイーサンたちは思わず感嘆の声を漏らした。通りがかる人たちも、珍しい来客に興味の視線を向けてくる。クルスムの言う通り、王宮関係者たちは建物内で砂嵐から身を守りながら暮らしているようだ。

 

「ようこそ、テルパドール王国へ。女王のアイシスと申します。お待ちしていました。()()()()殿()()()()()殿()

「え……」

「ふふ。なぜ? という顔をしていますね。テルパドールの王族は代々、遠く離れた場所を”視る”能力を有しているのです」

 

 玉座に座るアイシス女王は、褐色の肌にすらりと伸びるボディライン、艶やかな長い黒髪を持つ美女だった。

 

「遥かな海を渡りこのテルパドール王国へ参られたこと、女王として光栄に思います。北の沿岸に港をお造りになられているのも承知済みです。後ほど改めて書簡をいただきましょう。ですが……あなたがたの本当の目的は、『天空の武具』で相違ないですね?」

 

 ……これは本物だ。“千里眼”とは言葉でしか聞いたことがないが、ここまで的確に言い当てられたら信じるしかない。“インパス”でドヤ顔をしていたアイナが知ったら泣いて悔しがるだろう。

 

「おっしゃる通りです、女王様。俺たちは『天空の武具』とそれが指し示す『天空の勇者』の手掛かりを求めて――」

「そんなに緊張なさらないで、イーサン殿。……それに、フローラ殿も」

「ぇあうっ!?」

 

 隣に跪いていたフローラがそんな素っ頓狂な声を上げるので、イーサンは少しばかり焦ってしまう。

 

「(どうしたのフローラ?)」

「(ご、ごめんなさい。わたくし、王族、って言うんですの? そういったご身分の方とお話しするのは初めてで……緊張しちゃって……)」

「(いやいや、領主という意味ではフローラだって近いんだし。そんなに固くなることないって。政治の事とか、なんなら俺より君の方が詳しいし?)」

「(それとこれとは話が別ですわ!)」

 

 そんなことを耳打ちし合っていると、アイシス女王がくすりと微笑んだ。

 

「そうですね……玉座の間ではなんですし、落ち着けるところへ行きましょうか。積もる話も、そこで」

「あっ……えっと、かたじけない、です」

「(は、恥ずかしいですわ……気を使わせてしまいました)」

「(大丈夫、俺だって確かに緊張してたし。フローラのお陰でちょっと助かったかも)」

「(イーサンさん、お優しい方……。でもちょっと複雑ですわ)」

 

 ちなみにだが玉座の間は広く、小声も良く通る。近衛兵の何人かがいちゃつく会話を聞いて眉間にしわを寄せたのを、当の夫婦は知る由もない。

 

 

 

 

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