蒼穹の花嫁 ~ドラゴンクエストⅤ:parallel~    作:イチゴころころ

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どうもさっきぶりです。

6章では新しいパーティメンバーが登場するよ!
メンバー増えるのいつ以来だ……?




6-2. 旅路は山を越える

 

 

 去り行く敵影を視界に捉えながら、イーサンは懸命に足を動かした。薄暗い洞窟、でこぼこの足場、敵の逃走経路……いくつもの思考を同時にこなし、脳の奥がちりちりと痛む。

 

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 ◎イーサン 20歳 男

 ・肩書き  モンスターマスター

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:B    MP:C すばやさ:C

 ちから:B みのまもり:E かしこさ:B

 ・武器 奇跡の剣、刃のブーメラン

 ・特技 バギマ、ホイミ

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「――ふっ!」

 

 走りながら、力を込めてブーメランを投げつけた。しかし敵はその一撃を難なく躱し、横穴に飛び込んだ。ブーメランは洞窟の壁に突き刺さる。

 

「さすがに無理があるか……! ロラン、逃がすな、追え!!」

「承知 ナリ!」

 

 隣にいたロランが閃光のような速度で駆け抜けていった。イーサンはブーメランを引き抜き、彼を追う。

 

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 ◎ロラン ??歳 男

 ・肩書き  感情豊かな踊る宝石

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:C    MP:A すばやさ:A

 ちから:C みのまもり:A かしこさ:B

 ・武器 宝石の加護

 ・特技 ラリホーマ、メダパニ、その他多数

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 ロランは敵を追いながら、一瞬だけ焦りを覚える。

 

「は 速い ナリ……!!」

 

 かけっこには自信があった。実際リズにも、空を飛ぶトレヴァにも負けたことはない。だが今の敵は……ロランの素早さを上回っているように思える。狭い洞窟内だからこそ、ぎりぎりで追随できているのは間違いない。

 

「あはははっ! これぞ 英雄 の 試練 ナリ! 試練 を 乗り越え 英雄 は 強くなる!!」

 

 一瞬感じた焦りはすぐに『楽しい』に変わった。長旅を経て覚えた様々な感情、それらをすべて『楽しい』に繋げられることが、ロランの強さなのだ。

 敵影を追い、大きな吹き抜けに出た。しめたと、ロランは口角を上げる。

 

「トレヴァ! こっち ナリ!」

「ロラン!」

 

 呼びかけに応じ、吹き抜けで待機していたトレヴァが降下してきた。ロランは彼女の背に飛び乗る。

 

「上へ 向かった ナリ!」

「了解 先回り するわ」

 

 単純な能力で敵わなくても、工夫次第で対等以上に渡り合える。今まで何度も、自分らの主はそうやって危機を脱してきた。

 

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 ◎トレヴァ ??歳 メス

 ・肩書き  勇敢なキメラ

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:B    MP:A すばやさ:A

 ちから:B みのまもり:C かしこさ:B

 ・武器 魔封じの杖

 ・特技 ベホイミ、氷の息

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 一階層上の横穴を抜けて広い空洞に出ると、リズが敵と戦っていた。敏捷に定評のある彼女であっても、敵の姿を視界に捉え続けることさえ難しいようだ。

 

「遅ぇニャ!!!」

「任せる ナリ!!」

 

 ロランが飛び出し、高速で敵とぶつかり合う。ガキガキガキンと、洞窟内に白と銀の軌跡が瞬いた。

 

「ニャーー!! 頑張るニャ、ロラン!!」

「ロラン 攻撃 苦手…… 大丈夫 かな……」

 

 スピード勝負に敗れたロランが振り切られ、敵の影は奥の横穴に逃げ込んでいく。

 

「しまった ナリ!?」

 

 しかし暗闇の奥から分厚い刀身の剣が振り下ろされ、逃げようとする敵の小さな体をはじき返した。

 

「「「マスター!/ご主人!」」」

「手ごたえあり! でもまだ倒れないか……!」

 

 驚いた敵は弾かれた勢いのまま、別の横穴に飛び込んでいく。

 

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 ◎リズ  ??歳 メス

 ・肩書き  イーサンの相棒

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:C    MP:C すばやさ:A

 ちから:B みのまもり:D かしこさ:B

 ・武器 牙とツメ

 ・特技 ヒャダルコ、ベホイミ

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「追うんだみんな! 絶対に逃がすな!!」

 

 イーサンの怒声が洞窟内にこだまする。仲間たちと共に、イーサンも再び駆け出した。

 

「絶対に……逃がすものか……!」

 

 敵影を追いつつ、イーサンは奥歯を噛み締める。幼少期の朧げな記憶のひとつ、父に言われたある言葉を思い出していた。

 

 

――なに? 大きくなったら父さんみたいな旅人になりたい?

 

――はっはっは! じゃあ私がひとつ教えてやろう。旅人になるための、大事な心掛けだ。

 

――いいかイーサン。その銀色の体を見つけたら。何があっても逃がしてはならない。

 

――全てをかなぐり捨てても倒すんだ。情けは無用。この世すべての敵だと思って全力で挑め。

 

 

「忘れないよ父さん……。絶対に倒す!」

 

 しかし敵の素早さは圧倒的で、今にも見失いそうだ。先頭を行くロランも、じわじわと距離を離されている。だが……。

 

「あと少し……!」

 

 横穴の先、逃げ行く敵のさらに先で、緊張した面持ちのフローラが姿を見せた。束ねた蒼い髪をなびかせ颯爽と登場する。

 

「作戦通り、ですわ!」

 

 敵は驚いたように速度を緩めたが、それも一瞬。なにぶん追手は4人。目の前にはたったひとり。ニンゲンの女ひとりくらい無傷で切り抜けられる。そう思ったのだろう。敵はすさまじい速度でフローラに向かっていった。――彼女の手に、何が握られているかも知らずに。

 

「いっけぇ、フローラぁ!!!」

「やああああああ!!!」

 

 彼女が握っていたのは鞭ではなく、小さなナイフ。いや、ナイフと言うにも細く、小さすぎる。言うなればそれはただの針だ。フローラは飛来する敵に向かってその針を突き出す。その先端は敵の胴体に吸い込まれるように向かっていき――。

 

 ちくっ。

 

 という音と共にその体を掠めた。それはあまりにも小さく、か弱い一撃。ましてロランを越える防御力を持つその敵には文字通りかすり傷にしかならないだろう。しかし。

 

――!?!?

 

 針の先端に仕込まれていた魔物用の毒が、一瞬で敵の体内を駆け巡る。毒はその小さな体を瞬時に蝕み、敵の息の根を止めた。

 

「あ……!」

 

 敵の体がぱぁんと弾け、銀色の魔力の搾りかすがフローラの周りに振りまかれた。

 

「や、やりました、の……?」

 

 唖然とするフローラの前に、息を切らしたイーサンたちが駆け込んできた。

 

「倒した……“はぐれメタル”を、倒した……!」

 

 イーサンの表情は歓喜に満ちていた。それを見たフローラも、胸に込み上げてくるものを感じる。

 

「イーサンさん!」

「フローラ……!」

 

「「やったあああああああああ~~~~~っっ!!」」

 

 ふたりは飛び上がり、笑顔で抱き合った。ロランも満面の笑みで跳ね、リズの短い腕とトレヴァの小さな翼がハイタッチをする。離れた場所でパトリシアの手綱を握るマービンも、満足そうに頷いていた。

 ひとしきりはしゃいだ後、未だに降り注ぐ銀色のきらきらを見つめ、イーサンはふと我に返った。

 

「……それで、これ、どうなるの?」

「さ、さあ……」

 

 

_______________________

 

 ◎フローラ 22歳 女

 ・肩書き  イーサンの妻

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:D    MP:B すばやさ:B

 ちから:D みのまもり:C かしこさ:B

 ・武器 グリンガムの鞭、どくばり

 ・特技 メラミ、バイキルト

 

 

 ◎マービン ??歳 男性

 ・肩書き  手綱を握る者

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:A    MP:E すばやさ:E

 ちから:A みのまもり:B かしこさ:B

 ・武器 素手(右手のみ)

 ・特技 毒攻撃、猛毒の霧

_______________________

 

 

 テルパドールの大砂漠を抜けてから約4か月。イーサン一行は南の大陸の荒野を越え、東の大陸との境目となるチゾット山、その山道を進んでいるところである。この山の真隣に連なるのが『グランバニア山』であり、その名の示す通り目的地であるグランバニア王国まで残る道筋は山越えのみの所まで辿り着いていた。

 

「マスター と みんな の 魔力 含有量 増大 を確認! “はぐれメタル” 討伐前 の 約 2倍 ナリ!!」

「そんなに!?」

 

 チゾットの“山道”と、近隣の村人はそう言っていたはずだったのだが、山道らしいのどかな道は早々に途絶え、今はこうして山の中の洞窟を進んでいるところである。イーサンたちは開けたところに簡単な陣を取り、焚火の炎と共に休憩をしていた。

 

「単純に、撃てる呪文の回数が倍になったってことニャン……?」

「みたいだな。図鑑にも、あのモンスターは特殊な魔力を帯びているとある。昔戦ったメタルスライムもそうだけど、なんか段違いみたい」

「そんなん倒し得ニャンね。気が触れたみたいに追いかけまわしていたけど、そんな秘密があったニャンて……」

「そうだと知っていたらもう少し頑張ったのに……。なんだか、ちょっと疲れてしまいましたわ……」

 

 そう言いつつフローラの手にあるのは金色の包装の小さなお菓子。荒野の真ん中にある謎の施設で購入した『メダル型チョコ』である。

 

「フローラ、それ好きだね」

「えっ、い、いえ。手が止まらなくて、つい……。はあ、間食はほどほどにしないといけないのに……」

「我慢は体に毒じゃない? 俺もいっこ食べよっと」

 

 けらけら笑う夫を尻目に、フローラはそっと自分のおなかに触れる。……最近ちょっと気になるのはきっとチョコの食べ過ぎだ。イーサンはああ言うけど、自分も女性の端くれとして気を付けなければ、と静かに思う。

 

『きゅ……ぴぃ……?』

 

 ふと馬車の荷台から顔を出したのは、深い紫色の体を持つ小さな魔物だ。

 

「あら、シモンズくん」

 

 彼はこの洞窟でひょっこり仲間になった魔物である。“ミニデーモン”という、その名の通り小悪魔のような姿をした可愛らしいモンスターだ。

 

『きゅぴ……』

 

 彼はよちよちと、フローラの元までやってきた。

 

「何? 貴方もこれが欲しいの?」

 

 フローラがチョコを差し出すとシモンズは一瞬だけ目を輝かせ、すぐに申し訳なさそうに顔を伏せた。

 

「ふふ。遠慮しなくていいのよ? はい、どうぞ」

 

 フローラは微笑み、手に持っていた残りのチョコ全てをシモンズに手渡した。持っているとまた手が出てしまうからと言う本音も少しあったが、それは内緒だ。

 

『きゅぴ……!』

 

 シモンズは嬉しそうに笑い、荷台に戻っていった。

 

「フローラちゃぁん、シモンズに甘すぎじゃないかニャア?」

「あ、ごめんなさい。リズちゃんも欲しかったわよね、チョコ」

「そうじゃないニャン! あいつ、未だに戦ってもいないニャ? かと言ってマービンみたいに馬車の操縦をするわけでもなく、フローラちゃんみたいに身の回りの世話をしてくれるわけでもない。ついてくるだけのヤツに施しを与えられるほど、リズたちに余裕があるワケでもないニャ」

 

 憤慨するリズを、イーサンが撫でて落ち着かせた。

 

「まあ、いいんじゃない? どうやらシモンズ、呪文とかも覚えていなくて戦えないらしいし」

「他のミニデーモンはあんなにアグレッシブに襲い掛かってくるのにニャ?」

「そういう個体もいるだろ。同じキメラでも、トレヴァみたいに優しい奴だっているんだしさ」

「マスター ……」

 

 トレヴァが頬を赤らめ、フローラはほんの少しだけむっとした。

 

「相変わらずリズ先輩は……新米に厳しいな。だがオレは知っているぞ、リズ先輩のその態度は……9割がた優しさでできている、ってな……」

「ほぼ全部ニャン!? てか、そ、そんなことあるワケニャイニャン!」

 

 焦るリズを見て、イーサンも微笑む。

 

「リズ、ロランにも最初きつかったしな。かけっこで負けてからずっと」

「は、はぁ!? リズはただ言うことを聞かないその宝石袋が気に食わなかっただけで!」

「大丈夫 リズ。 リズの 優しさ、 その健気さ、 英雄 ロランには ちゃんと 届いていた」

「ク ソ む か つ く ニ ャ ン !!!」

 

 フローラも、櫛で髪をとかしながらリズに笑いかけた。

 

「わたくしも最初は厳しくされましたわね。でもリズちゃんのその厳しい言葉のお陰で、わたくしが強くなれたのもありますわ。まあ実際はまだまだなわけですけれど。……ありがとうね、リズちゃん?」

「はぁっ!? な、なに言ってくれちゃってるニャン!? リズはただ、ご主人の迷惑になるようなヤツが許せないだけで……。だ、だって、リズはみんなの先輩だし? 先輩は、その、後輩の面倒を見るものニャ!!」

「お、今、面倒を見てたことは認めたぞ」

「ニャア~~~~!!!!!」

 

 リズが焚火の周りをころころと転がり、イーサンたちは笑い合う。

 ……その様子を、シモンズは幌の隙間から覗いていた。そして、不敵な笑みを浮かべる。

 

「……ケケケっ。呑気な連中だぜ」

 

 シモンズはそっと幌を閉じ、荷台の奥に向かう。誰にも聞かせたことのない、人語をつぶやきながら。

 

「ニンゲンってのは馬鹿ばっかりだ。上目遣いでちょっぴり媚びを売ってやれば、向こうから可愛がり、愛でてくれる」

 

 彼は干し草の上に寝転がり、大きなあくびをした。

 

「そして俺様の本性さえ、勝手に闇に包んでくれる……。だから俺様は誰にも気付かれることなく、『目的』を達成できるってワケだ」

 

 シモンズは懐からあるものを取り出した。それはまさに、先ほどフローラにもらったお菓子。一部の人間社会でも“幻のお菓子”と名高い、メダル王特製の『メダル型チョコ』である。

 

「俺様の長年の悲願……この伝説のお菓子! ああ、なんて神々しいお姿……。これを手に取る幸せを、食べられる尊さを、あの女は何も理解していないなんて……。でも大丈夫、俺様がしっかり、味わって食べてあげるからね……」

 

 シモンズは丁寧に包装をはがし、敬意を払いながらチョコを口に運んだ。そして、なんとも言えない多幸感に包まれる。

 

「ああっ……おいしい……!」

 

 そして瞬く間に、フローラからもらったチョコを食べ切った。

 

「こうして俺様は、誰にも悟られることなく……このチョコを食べる! ケケケっ、あのニンゲンについて行って正解だぜ。俺様はずっと、何の苦労もせずにこのチョコを味わって生きていけるんだからなァ!! ケケケケケケケケケっ!!!」

 

 シモンズが歪な笑顔と共に笑い声を上げた直後、幌が勢いよく開かれた。

 

「ケごぁっ!?!?」

「あら?どうしたのシモンズくん」

 

 幌を開けた張本人であるフローラは可愛らしく首を傾げた。

 

「ケ、き、ぅ……」

 

 とめどなく汗を流しながら、シモンズは表情筋をフル稼働して愛くるしい表情を作り、笑う喉元を強引に押さえ込む。

 

『きゅ……きゅぴ?』

 

 いつもよりその声は掠れていた気がしたが、目の前の彼女は気付いていないようである。

 

「よかったらシモンズくんもこっちへおいで? せっかく仲間になってくれたんですもの。皆さんで仲良く、焚火を囲みましょう」

 

 フローラの柔らかい笑顔に若干胸を刺されつつ、シモンズは彼女に促されるまま荷台を降りる。引きつった笑顔がどれくらい持つか、ちょっとだけ不安になった。

 

_______________________

 

 ◎シモンズ ??歳 たぶんオス

 ・肩書き  ずる賢いミニデーモン

 ・ステータス(A~E五段階)

  HP:D    MP:C すばやさ:C

 ちから:D みのまもり:D かしこさ:B

 ・武器 なし(本当はバトルフォークが使える)

 ・特技 なし(本当はメラミ、イオラが使える)

_______________________

 

 

 

 

 

 

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