チートな幌筵泊地が異世界に転移した結果……   作:提督兼指揮官兼トレーナー

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「仮面を1つずつ剥いだ先にあったのは泣きじゃくる男の子でした」

(鳳翔が転生者一同に向けて書いた手記の書き出し)


というわけで、前回に引き続き、多元くんの内面に迫るお話ですが、色々キツイ描写(性的含む)があるので、ご注意ください。






第31話 多元実という男の真実②

 

 

 

多元入院から1週間後、ロウ・ハコネ温泉にて

 

 

「さぁ、温泉ですよ!」

 

「なんで鳳翔さんと一緒なんですか……」

 

「お互い休職期間中ですから、疲れを癒すために温泉旅行ですよ」

 

「ええ……」

 

 

引き気味の多元を他所に、鳳翔は温泉旅行を楽しむ。

 

荷物は平河が手配したおかげで、先にホテルに運び込まれているため、手荷物だけで観光できている。

 

「提督、射的やりましょう」

 

「提督、足湯へ行きましょう」

 

「提督、アイスを食べましょう」

 

 

(なんというか、すんごいグイグイ来る……)

 

(でも何故か嫌にならない自分がいる……)

 

(なんでなんだろう……、この感じ……、前にも経験したような……)

 

 

多元が何かをふと思い出そうとした

 

と、その次の瞬間……

 

 

「うっ……」

 

「提督!?」

 

 

突然うずくまる多元。

 

 

「あ……、嗚呼、ア゙ア゙!」

 

「提督!、私がここにいますよ!」

 

「止めて、やめてよ父さん!!」

 

「提督!、もうお父様は居ませんから!」

 

 

背中を擦りながら、多元の感情を落ち着かせる鳳翔。

 

やはり彼と父親の間に何かあったのだ。

 

 

「大丈夫です。私が付いてますよ、提督」

 

「ハァ…ハア…、あれ?、鳳翔さん?」

 

「提督?、大丈夫ですか?」

 

「えっ?、大丈夫だよ」

 

「いやっ……、でもさっき……」

 

「ん?、あー、まぁなんでもないよ」

 

「またそうやって逃げて……」

 

 

と、言ったそばから気づいた。多元の体に。

 

彼の体はまるで水でも被ったかのように汗がびっしょり付いており、ただならぬ気配を感じた。

 

 

「汗かいちゃったな……」

 

「一旦ホテルに行って着替えますか?」

 

「そうだな」

 

 

幸いまだ時間はある。ゆっくり楽しむのも悪くないと思った2人は、先にホテルに向かうことにした。

 

 

 

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一方、多元の居ない幌筵泊地では……

 

 

「それじゃあ、腰堀くんが知っている提督のことは、全て本人が話していたことだけで、ほかはなんにも知らないのか?」

 

「ええ、僕と先輩が出会ったのは高校からですし、それより前のことについては、本人が語る内容ぐらいしか知る由もなく……」

 

「えーっと、確か資料によれば提督の家ってのは、かなりの土地を持つ地主だったってことらしいよな?」

 

 

幸い、幌筵泊地の地下には膨大な書庫が何故か用意されていたため、多元自身の出自を辿るのは難しくなかった。

 

 

「ええ、それも百姓とか、商人とかの類ではなく、荘園とかそういう方面の……」

 

「貴族や華族ってことか」

 

「そうです。つまり、伝統的な上流階級の人間だった可能性があります」

 

「それにしちゃあ、昔昭和天皇に謁見した時に、固まっていなかったか?」

 

「恐らく、直接謁見できるほどではなかったのかも知れません。その証拠に礼儀作法についてはしっかりしてましたから」

 

「なるほどな、しかし驚いたな、まさかあの人が華族だったなんて……」

 

「でも、そう仮定すると全てがまとまります」

 

「有力な分家と見るのが正解かもな」

 

「そうですね、祖父は既に亡くなっているとの事だったので、恐らく当代は父親だったんですね」

 

「んで、父親からの厳しいというより半ば洗脳教育と……」

 

「せめてもの救いが母親からの愛情だったんですかね」

 

「んで、父親は自由恋愛を禁じて、性欲の発散には御用達の店を使うと……、例の事件じゃねぇが、厳しい教育の反動からテロリストにならなかったのが奇跡だよな」

 

「今回なりかけましたけどね」

 

「それもそうだな」

 

「そして、多分影響は防衛大時代から出てると思いますよ」

 

「あー、なるほどな……、それで幹部も無理だったのか」

 

「厳しい教育の反動はいつだって過剰なまでの攻撃性に現れるって事ですね」

 

「今回はたまたまトリガーが僕だったってとこでしょう」

 

「腰堀くん、冷静だな」

 

「敵地で死にかけたことに比べればどうってことないですよ」

 

「そういえば……、自衛官を辞める前後、父親が死んでからが提督にとっては本当の自分らしい人生なのかもな」

 

「なんとか逃れられたのかもしれませんね」

 

「子供にあんなこと仕込むくらいだから相応に死んでもらいたかったが、そうもいかなかったか」

 

「タイミング良く死んでくれたのが好都合というか……」

 

「ま、なんにせよ、提督の固く閉ざされた心の扉を開けるかは鳳翔さん次第だな」

 

「そうですね……」

 

 

 

 

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旅館「大ハコネ」にて

 

 

「えっ?、鳳翔さんと同じ部屋なの!?」

 

「そうですよ?」

 

「なんでこうなった……」

 

「私が頼みました」

 

「ダメでしょ、だって……」

 

「だってなんです?」

 

「いや……、その……」

 

 

(たまに家に帰ってこいとか言われた時に来ていた女性とやっていたこと変わんなくない?、鳳翔さんそういう職業の人じゃないでしょ?)

 

 

「提督、貸切風呂まで用意されてますね」

 

「えっ?、風呂??」

 

「広々とした露天風呂ですね」

 

「えっ?、結構いいホテルじゃん」

 

「結構?、大分いいホテルじゃないですか」

 

「えっ、部屋に大きい風呂付くのって当たり前じゃない?」

 

「えっ?」

 

 

鳳翔がかなりの違和感を覚える。

 

 

(大きいお風呂が付くのが当たり前……??)

 

 

やはり、この男、何かがおかしい。

 

鳳翔は一人訝しむ。

 

 

「あ、鳳翔さん、俺先にここの風呂入るからその間に着替えておいて」

 

「わかりました」

 

 

 

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その頃、幌筵泊地精神科医を交えて話す腰堀と平河

 

 

「………、なるほど……、それで提督は……」

 

「何か思い当たるところでもありますか?」

 

「いえね、私もこれは疑っていただけなんですが、こういう家庭内の教育が原因で起こる事件のトリガーってのは一般的には母親からの指導だったんですよ、今でこそこの傾向自体は多少程度になりますが、昔は父親は仕事で居ないことが多いですからね、しかし、多元家はこれが逆だったと……」

 

「と言うと?」

 

「実は、私たちが転生してすぐ、提督が内緒でこちらに来られて、診察をお願いしたんですよ」

 

「と言うと?」

 

「なんでも「前から定期的に診察してもらうように言われていた」との事で、カルテの共有は当然無かったですが、提督の手元の資料に診察の記録があったので、そちらを元に診てました」

 

「初耳なんだが……」

 

「提督が内緒にして欲しいとの事で……、それで、診察中に気づいたことがあったんですよ」

 

「一体なんですか?」

 

「お母様は文化系とだけ仰っていましたが、以前提督の特技を看護師などに見てもらった時、ピアノだけでなく、生け花や茶道の心得もあったんですよ」

 

「えぇっ!?」

 

「そこまで多芸な母親なら、教室を開いていることもありそうですし、大会などで家に居ないこともあるでしょう」

 

「あー、なるほど……」

 

「反対に、腰堀さんの推測を元に考えれば、父親は家にいても仕事はできる身分でしょう、というか、不労所得が相当あるはずなので、外出して働く必要はありませんね」

 

「父親が実質的に家に居て、提督を支配していた……」

 

「はい、しかし……」

 

「ん?、どうした?」

 

「過労だけで自衛隊は閑職に飛ばしますかね?」

 

「はっ?」

 

「いえ、私からすると少し疑問なのは、仮に問題はあっても、結局軍隊というのは敵の排除です。使い方を考えれば提督の存在というのは役に立つはずですから、わざわざ退役を示唆するような部署に移動させる必要があるんですか?」

 

「えっ……」

 

「そもそも自衛隊の処分は免職、降任、停職、減給、戒告、訓戒及び注意だけ、懲罰的異動なんてありますか?」

 

「降任……いや、それは違うな……」

 

「もう1つ、ここに提督の持ってきたものがあるんですが、ここだけ黒塗りとQRコードになっています。QRコードは読み込んでもパスワードが必要な場所が多く、黒塗りも何か工夫しないと見れないんですよ」

 

「そんなことがあるのか?」

 

「いや……、患者のプライバシーは確かに配慮するのは医者として当然ですが、提督本人にすらこの部分は読めないみたいなんです」

 

「うーん困ったな……、とはいえ、これを多くの人の目に晒す訳にもいかんしな……」

 

「真多さんに頼んでみますか?」

 

「ああ、奴なら口は硬いし大丈夫だろう」

 

 

 

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幌筵泊地地下

 

 

幌筵泊地は限界まで地下開発が進められた泊地でもあり、優秀な転生者には、贅沢にも広々とした研究施設が与えられる。

 

幌筵泊地の最強転生者としても名高い真多獅郎は、そんな中の一人であった。

 

 

「それで……、このQRコードの中身と黒塗り資料の内容を明らかにして欲しいということですか?」

 

「そうだ、極秘にやってもらいたい」

 

「わかりました。やってみます」

 

 

そう言うと、真多は持っていた端末でQRコードを読み取り、まるで物置かと見間違えるほどの大きな処理装置に接続されたノートパソコン(会社名が刻印されてないことから、完全自作と見られる)で解析を始める。

 

 

「で、こっちは……」

 

 

プリンターのような機械の中に、黒塗り資料を挟んで、同じように解析を始める。

 

 

 

「随分としっかりしたセキュリティですね」

 

「やっぱりか?」

 

「ええ、民間のこの手の機密保持のやり方としては最高クラスですね」

 

「きっと、相当な内容が書いてあるんだろうな」

 

「ええ、おそらくは……、提督の全てが書かれたような資料ですが、わざわざこんなところまでして守ろうとするあたり、そして、僕がここで調べた限り身元保証人が偽名であることからも、身元保証人含めて特定の相手以外は秘匿したい何かが含まれているのかもしれませんね」

 

「提督の両親はこの時期死んでいるから……、親戚か?」

 

「親戚……、まさか本家の人間か?」

 

「精神疾患持ちを晒す訳にはいかないって事ですかね?」

 

「それにしたっておかしくないですか?」

 

「真多?」

 

「だって、結局提督って分家とはいえ良家の人間で、偽名は使って無いんだから結局バレません?」

 

「それもそうだな……」

 

「あ、解読終わりました」

 

 

Enterキーを叩き、カルテとQRコードの中身が出てくる。

 

 

「おい……」

 

「これって……」

 

「嘘でしょ先輩……」

 

「それでこの偽造……」

 

 

まさかの内容にその場にいた全員が驚愕する。

 

 

「……、確か大統領からは提督の現状についての報告せよとの指示があったよな?」

 

「はい」

 

「関係閣僚のみにしろ、こんなもんプライバシー云々以前に特級クラスの機密だ」

 

 

 

 

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一方、大ハコネでは……

 

 

「ふぅ……、いい湯だな」

 

 

一人風呂に入る多元。

 

 

「なんか……、鳳翔さんといると変だな……」

 

 

何か心の中に安心感がある。ふわふわとした何かがある。

 

 

「なんなんだろう、感じたことの無い感覚だ……」

 

「失礼します」

 

「うえっ!?、えっ!、えっ!?、鳳翔さん!?」

 

 

タオルで前を覆ってはいるが、なんにも身につけてない秘書艦が居た。

 

 

「ちょ!、鳳翔さん!、マズイですよ!」

 

「何が不味いんですか?」

 

「混浴が問題無いわけが無いでしょう!」

 

「私は別に構いませんよ?」

 

「俺が問題です!」

 

「どうしてですか?」

 

「どうしてって……そりゃあ……、法的に……」

 

「混浴の禁止は共同浴場で、プライベートに近い部屋付き露天風呂は例外ですが?」

 

「鳳翔さん?」

 

「何か合理的な反論はありますか?」

 

 

言われて黙る多元。

 

正直言って、女性の裸を見る機会なんて閑職に飛ばされる前まで何回もあった。

 

それこそ鳳翔さんよりスタイルの良い女性ばかりだったし、裸を見た程度では正直ぐらつかなかった。

 

だから転生して以降、艦娘達が中破したりしても、なんの反応もしなかった

 

それがどうだ?、鳳翔さんの裸を見て、何故かぐらついている自分がいる。

 

混浴だってやってたし、なんならその先もやっていたのにぐらつく。

 

 

(この感情はなんなんだ……)

 

 

分からない、レンアイ感情なるものが世の中にあるらしいが、それがこれなのかも分からない。

 

 

[貴様は将来本家の人間として家を継ぐ、そのための行動だけが貴様の人生だ]

 

 

思い出したくもない男の声が頭に響く。

 

 

「提督?、こっち向かないんですか?」

 

「えっ……、いやぁ…、ちょっと……」

 

 

チラッと目を向ければ、乳白色の温泉に体を沈めている

 

 

「提督?、顔赤いですよ?、のぼせましたか?」

 

「えっ……、ああ、そうかもしれない……」

 

 

とりあえず撤退する口実ができた多元はそのまま露天風呂から上がり、部屋に戻った。

 

 

 

 

 

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大統領官邸にて

 

 

「多元提督について何かわかったことがあると?」

 

<<ええ、このことは全員に共有すべき内容ですが、如何せん内容が内容ですので、関係閣僚のみを集めて頂きたいです>>

 

「それで……、転生者側としては今後の多元提督についてどう為さるお積もりですか?」

 

<<我々はあの人に導かれ、助けてもらい、そして、生き甲斐を与えてもらいました。であるならば、今度は我々が支えるべきですし、彼の進退については自らの身で決めるよう促すべきです>>

 

「わかりました。閣僚の方には私から伝えます」

 

<<ありがとうございます>>

 

 

ガチャリ

 

 

 

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その夜、夕食を終えて部屋に戻った多元と鳳翔は……

 

 

「ちょっと!、鳳翔さん、何するんですか!」

 

「提督、貴方がどんな人生を辿ってきたのか、何故今回のように我を失ったのかは知りませんし、知る必要も無いと思います。ですが、それとは別に、いつまでも焦らされて進展が無い現状にしびれを切らしています。私はあなたに伝わらない想いを伝えるために行動に出ることにしました。それがこれです」

 

 

現在鳳翔は、敷布団の上で多元に覆い被さるようにして構えている。

 

まぁ、要するに夜戦()の構えだ。

 

 

「提督、私はあなたのことが好きです。1人の男性としてあなたを見ています。あなたは私のことを1人の女性として見てくれていますか?」

 

 

ストレートな想いを伝えて多元の反応を見る鳳翔。

 

 

「いや……、その……、わかんないです」

 

「分からないんですか?、じゃあ、なんで私をずっと秘書艦に置いていたんですか?」

 

「それは……、仕事に慣れているから……」

 

「仕事の能率や、慣れの話なら大淀さんでもいいですよね?、パソコン使いこなせるようになってからなら彼女の方が仕事が早いですよ?」

 

「て、手続きが……」

 

「軍規によれば、泊地並びに鎮守府や、警備府、基地の秘書艦任用については、原則として司令官の命令によってのみ決まるとなっています。これはこの世界に来てからでも変わりませんよ?」

 

「いや……、その……」

 

「じゃあもう1つ聞きます。どうしてあの決戦の前に、試作艤装なんて身につけてやってきたんですか?」

 

 

幌筵泊地が転移する前、深海棲艦との最終決戦を決意するきっかけとなった事案として、武器や艦娘単体の性能だけで見れば世界最強だった幌筵泊地の艦隊が、極超音速ミサイルの攻撃(深海棲艦のもの)を受け、全艦大破という非常事態になり、初の敗北を喫したのだ。

 

この時、大破した鳳翔を助けるため、試作艤装を背負ってきたのが多元だった。

 

 

「あの時、確かに航空燃料が漏れて危険だったとはいえ、私だけをあの場で抱きかかえてでも助けようとしたあの動きに納得のできる合理的な回答はありますか?、別に幌筵泊地にはまだ量産艤装をつけていた人がいましたよね?」

 

「それは……」

 

 

回答につまる多元。

 

 

「どうして改装されたとはいえ、あの場にいた建御雷さんより私を優先しましたか?、核融合炉が万が一暴走した時のことを考えないはずが無いですよね?」

 

「未だ誰が放ったかも分からない上、まだ攻撃意志を持った相手がいる可能性があるかも分かる前に、SM-6は愚か、SM-2すら持たない提督の試作艤装で助けに来た理由は何ですか?」

 

「分からない……、分からないんですよ、あの時のことは今でも!、あの時だけじゃない!、イギリスでスパイの言葉に激昂して殺した理由も!、艦娘の、秘書艦の命が大切だということしか!」

 

「理由が付けられないなら教えます。愛です」

 

「はっ?」

 

「愛によって引き起こされた行動に理由なんてつきません。だってそれ自体が理由なんですから」

 

「でも……、俺は……」

 

「あなたがお父様に感情をコントロールされていたのは知っています。ですがコントロールされたとしても無くなるわけじゃありません。理解する手段を破壊されて、見えなくなって、分からなくなっただけです」

 

「俺は……」

 

「さっき、秘書艦の命が大切だからとおっしゃいましたよね?、それだけですか?」

 

「えっ?」

 

「私と今日一緒にいて、嫌だと思いましたか?」

 

「いや……、嫌じゃ無かったです」

 

「丸1日、異性と行動を共にして、混浴までして、そこまでしていた相手に何も感じませんでしたか?、今こうやって馬乗りになって、襲われるのに、口では抵抗しているのに、体では抵抗の意志を見せていませんよね?」

 

「いや……、それは……」

 

 

鳳翔の立て続けに放たれた言葉の前に、何かを受け入れようとしたその時……

 

 

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[卑しい女狐なんぞに化かされるとは、お前も哀れだな]

 

[違う!、彼女はそんなんじゃ!]

 

[まぁ安心しろ、お前の前にもうあの女は表れない]

 

[おい親父てめぇ、何しやがった!]

 

[親に対する口か!]

 

 

持っていた木刀で殴られる中学生の多元。

 

 

《ごめんね、もう君には会えない》

 

 

書きなぐったような文字とボロボロの紙に全てを悟った多元。

 

 

[うわぁぁぁぁぁ!]

 

 

ショックのあまりに、叫び、座り込む。

 

その次の日、やってきた女

 

 

[よろしくお願いします。夜のお相手をさせていただきます]

 

[性欲の溜まった猿みたいな男では本家は継げないからな、定期的に呼んでやるからそこで発散しておけ]

 

 

自分が継げなかった本家を息子である自分に継がせるために、自分が本家に返り咲くための道具として多元を扱ってきた父親。

 

 

[実、母さんが付いてるからね]

 

 

家庭内の唯一の味方だった母。

 

 

[お前が晩飯に無理を言ったから死んだんだ!]

 

[お前のせいだ!、悔しかったら、本家を継いで、母さんを安心させろ!]

 

[そんなの母さんは望んでいない!]

 

[黙れ!]

 

 

彼女が死に、味方の居なくなった家は地獄だった。

 

 

防衛大に入り、自衛隊に入り……

 

 

そして……

 

 

 

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今までのことがフラッシュバックする。

 

 

「ダメです……、鳳翔さん……、僕と関わったら……、きっと……、酷い…こと…に……」

 

「大丈夫です。もうお父様は死んでいますよ、私だって艦娘ですよ?、普通の人に比べれば力は強いですし、何より、あの子たちも居ますからね」

 

「本当……に……?」

 

「ええ、遠慮なくぶつけてください、あっ、でも焦らされたぶん、私から襲わせてもらいますよ?、今までの女の人なんか忘れさせるほど激しくね」

 

 

大の大人が突然泣き出した状況にも、慌てずに、そっと頭を撫でながら落ち着かせるその様は、洋上を飛ぶ荒鷲達の母(艦)としての姿そのものだった。

 

その後はもう凄かった。

 

タガの外れた鳳翔がガンガン襲い。多元から一方的に搾り取った。

 

最初こそ、襲われている状況に恥ずかしがっていた多元だが、次第に身を委ね、最後には密着していた。

 

 

「ふぅ……、さすがに疲れましたよ、提督」

 

「鳳翔さん……、その……」

 

「何ですか提督?」

 

「僕は……、こういう感情について、長いこと知らなかったし、理解出来なかったんですけど、もしかしたら、鳳翔さんのことを愛しているのかもしれません」

 

 

ようやく絞り出した一言に鳳翔は喜びつつも呆れて

 

 

「ほんと……、乙女を待たせるなんて罪な人ですね」

 

 

月夜の宿の一室で、一糸まとわぬ2人が抱き合い、互いに口付けをした。

 

 

 

 

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数十分後、露天風呂にて

 

 

「提督、指輪はいつ下さりますか?」

 

「えっと……、ちょっと気が早くないですか?」

 

「遅いくらいです!」

 

「えぇ……」

 

「それにしても……、提督。1つ気になったことがあったので聞いていいですか?」

 

「はい?」

 

「お父様は癌で亡くなったのに、どうしてそこまで怯えていたんですか?」

 

 

鳳翔の疑問はそこだった。

 

何故病死して二度と蘇ることの無い父親にそこまで怯えたのか?、死ぬ前に何か言われたのだろうか?

 

そう思って聞いてみた鳳翔。

 

だが、多元から返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

 

「違いますよ……、鳳翔さん……」

 

「えっ?」

 

「親父は癌でなんか死んでません」

 

「と言うと?」

 

「もう時効だから話しますが……

 

 

 

 

 

 

 

殺したんです。俺が」

 

 

 

 

 

 






次回の③をもって、内面編については終了です。

謎の多かった主人公の内面が明らかになります。

(恐らく)襲いかかって来るであろう愚帝本土攻撃艦隊をどうやって調理しましょうか?

  • 単艦無双(ヤ○トかな?<すっとぼけ>)
  • 特生自衛隊(特殊兵器多数)出動
  • 航空殲滅(ソ連を超えた!?)
  • 普通に艦隊決戦(まだ常識の範囲)
  • 全部♡‪(愚帝君号泣不可避)
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