白金の竜王に転生した人間の日記   作:美味しいラムネ

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日記の頁は、未来へと続く。


エピローグ─2

「ようこそ、お待ちしておりました── ツァインドルクス=ヴァイシオン様。」

 

ワールドアイテムの効力が切れたのか、元の墳墓に戻ったナザリック地下大墳墓表層。

そこに、一体の竜が降り立った。

 

それを待っていたかのように、一人のメイドが墳墓の入り口に立っていた。

 

「アインズ様より、墳墓の内部を案内するように仰せつかっております。」

 

恭しいお辞儀をしながら、メイドが名乗りを上げた。フィース、という名前のメイド。緻密な刺繍の施されたメイド服をきたホムンクルス。

魂の大きさはそこらの一般人と大差はない──それに、ギルドとの繋がりも切れているように見える。

 

(これなら、例えギルドを破壊しても、彼女達は魔神化することはない、か。)

 

「『世界断絶障壁』《次元封鎖》」

 

魔神化したNPCが万が一にも外へ出ないように結界を再び貼り直す。

ドーム状に何も通さない障壁が構築される。

 

体の大きさを調節する魔法──墳墓に入るために急いで完成させた──を使用し、メイドの後を歩く。

瞬間、墳墓の周囲を取り囲む戦士像が動きだし、ツアーの体をその手に持った武器で穿とうとする。

空を割きながら迫る刃は、ツアーの体に当たった瞬間砕け散り、軽く振るったツアーの尾が、一撃で8体の戦士像を破壊する。

 

「案内か…助かるよ。内部のことはわかりようがないからね。」

 

メイドは、戦士像が破壊されたことに動揺もせず、平然と墳墓の内部へと足を進める。

階段を下る。

迷路のように複雑な三層にわたる墳墓の迷宮を歩く。

エルダーリッチの編隊を吹き飛ばし、壁や扉に擬態した不死者を食い破りながら進む。

死に物狂いで、ツアーの足を止めようと墳墓の内部の存在が襲いかかってくる。

張り巡らされた罠をその肉体で無理やり突破しながら、ひたすら下へ下へと降ってゆく。

 

蜘蛛の巣の貼った空間で、巨大な雌の蜘蛛と出会った。それは、勝てないと分かっていながらも、「この領域を任された者として。ここを通すわけにはいかない」と言い、その強靭な肢体を武器に襲いかかってきた。そして、殺した。

そうやって、墳墓を下っていく中で、何度も襲われた。

 

墳墓の最奥を目指しているのは、ギルド破壊時に、NPCが魔神となって出現する地点は、ギルドの最奥である可能性が一番高いから。いや、それだけではない。

 

(私は、見届けなきゃいけない…ここを壊す前に、一度、その全てを見ておく責任がある。)

 

魚竜の群れに襲われながら、地底湖を抜ける。

 

「…どうして君たちは、ここから離れて自由になろうとしなかったんだい?…もう、君たちは縛られていないはずだ。」

 

地底湖を抜けると、猛吹雪が吹き荒れる極寒の大地へと飛ばされた。

その次は大雨が降り注ぐ大森林、灼熱の炎が吹き荒れる溶岩地帯、天使達と戦った荒野、──そして居住区らしき、第九層へ突入する。

 

雄叫びを上げながら包丁を振り上げるオークスを両断し、豪華な調度品で彩られた空間を歩む。

その内部は、鮮血で染め上げられていた。

 

あちらこちらには、さまざまな手段で自害したメイド達が横たわっていた。

その目は、憎悪で染まっていた。

 

「…初めから、飼われるために生まれた小鳥は、籠から出されても、飛べないんですよ。私たちには、アインズ様しか残っていなかった…みんな、薄々気づいていたんです。もう、他の至高の御方が戻ってくることなんてないって。」

 

非戦闘員でありながら、襲いかかってくる幾人かの異形を撃ち倒しながら、前へとすすむ。

 

「何人かは、飛び立つことのできた、強い子もいたみたいですけど…私たちには無理なんです。アインズ様の最後の命令だとしても、ここから離れることはできません。私は、私たちは最後まで忠義に殉じるつもりでここにいます。」

 

第十層。長い廊下を越え、玉座の間へつながる大扉を開けようとする。

瞬間、メイドがツアーの体に抱きついてきた。

 

「だから──ごめんなさい、アインズ様。私は悪い子です。最後に、あなたの命令に、『生きろ』という命令に背くのですから。」

 

メイドの体が輝いたかと思うと、刹那、爆発が発生する。

おそらく体内に爆発系の魔法がこもったマジックアイテムでも隠し持っていたのだろう。

 

「糞…糞っ!」

 

ツアーは壁を全力で殴りつける。

分かっていたはずだ。私たちが生きたかったのと同じぐらい、彼らだって生きたかったということを。大切な人と歩きたかったことを。

独りよがりな、私たちから奪おうとする者であったとしても、同じこの世界に生きる者であったことを。

 

だが、後悔はしてはいけない。それだけは、絶対に。友のためにも、戦いの中で散っていった勇士達のためにも。それは彼らへの愚弄と同義となる。

これは私が選んだ道だ。私に大切な者達のためなら、罪も、責任も全部私が背負う。

 

(私が世界を守らなければならない…呪詛を吐きかけられても、恨みを背負うことになっても。)

 

 

扉を開く。

中にいたのは、巨大なハサミを持った顔の皮のない女と、赤と白の巫女服を着た巫女。

それと、高レベルの傭兵モンスターと思しき存在が数体。

 

大墳墓の最後を守るにしては、ちっぽけな最後の抵抗軍(レジスタンス)

吹けば飛ぶような存在。

 

最早語ることは何もない。

敵同士が出会えば、あとはその力で雌雄を決するのみ。

 

諦めにも近い決意の炎が灯った最後の兵士たちは、叫びながら襲いかかってきた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

砕けた黄金の杖。

そして、廃墟同然となった玉座の間。倒れ伏す魔神達。

 

「ノロッテ…ノロッテやる…キサマラノみらいニ絶望あれ、終焉あレ!死ね、死んでクチハテろ…ぉ!」

 

呪詛を吐きながら、暴れ回る最後の守護者を、女淫魔のその首を切り落とす。

首と離れた胴体は力なく倒れ伏し、その目から光が消える。

 

もう、誰もいない。

墳墓の中はもう空っぽだ。

 

そして、いずれここも完全に崩れ去り、いつの日か無へと還るのだろう。

過去の栄華は塵へと還る。

 

これ以上、ここにいる意味はない。

 

「あぁ、帰ろう。我が家へ…大切な人たちの、いる場所へ。」

 

崩れ去った墳墓を後にし、ツアーは勢いよく飛び上がる。

ひかりの中へ。この先も続いていく未来へと。

 

墳墓の外には、仲間達が待っていた。

 

「じゃあ、帰ろうか。」

 

一瞬だけ後ろを振り返り、それからはもう後ろを振り返ることもなく、ツアー達はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

292500日目

 

あの戦いから、一年近くが経った。

人というのは強い生き物だ。既に復興が進み、皆、未来へと進もうと頑張っている。

王国は帝国へ併合され、新たな歴史を歩もうとしている。

竜王国はビーストマンと相互不可侵条約を結び、聖王国は…なんか国の偉い人と別の国の偉い竜が日々じゃれあってるけど大丈夫なんだろうか?

法国の聖典の彼らは、人類の守護者でありながら守りきれなかったと日々厳しい訓練に励んでいるそうだが、彼らは本当によくやったと思う。…本当に。私なんかよりも、彼らの方がずっと強いさ。

 

そういえば、あの戦い以降、スルシャーナがやけにくっついてくる気がする。というかこんなに国から離れていて大丈夫なのだろうか?いやまぁ大丈夫だからいるんだろうけど。

 

王国、帝国、聖王国、評議国、竜王国、法国、エルフの国。

戦いの惨禍で大きな被害を受けながらも、前を向いて、先へと、未来へと必死に進もうとしている。

超常的な力がある訳でもない。何か、特別な使命があるわけでもない。

 

人間が、確固たる意思を持った人間が、手を取り合って、辛い過去を乗り越えて、前へ進んでいる。

壊されても、また作って。知恵を出し合って、努力して。それはいつか破滅に繋がるのかもしれないけど、それでも。

この魂の輝きは、誤ちなんかじゃないから。

 

あぁ、こんなにも。

こんなにも、この世界は、美しい!





















ここまで本当にありがとうございました!
これで、本当におしまいです。
白金の竜王に転生した人間の日記に、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!
ここまで読んでくださった読者の皆様、評価や感想、誤字報告をくださった皆様。本当に、本当にありがとうございました

ちなみに、シズとペストーニャが外へ出ていったNPC二人です。
ひょっとすると、長い、長いときの果てに、魔法詠唱師と軍服を纏った戦士、それと銃士と神官の冒険者パーティができるかもしれませんね。

最後に現時点でのツアーの設定と、おまけを載せて締めとさせていただきます。
では、いつかまたどこかで。

あ、匿名切ったので質問などあれば活動報告にお願いします。

ツァインドルクス=ヴァイシオン
tsaindorcus vaision

住居─フェルンオスト内部の洞窟迷宮

誕生日─星の降る夜

趣味─友人と語らい、領地内を散歩すること。修行をすること。

属性─可変(中立〜極善(0〜500))

種族レベル

古老(エインシャント)(ボスエネミー) -5lv
竜神(ドラゴンゴッド)(イベントクラス)-3lv
重装紋様竜(アーマードカーヴドドラゴン)(ボスエネミー)-5lv
他 計60lv

職業レベル

竜司祭(ドラゴン・クレリック)(神官) -10lv
ホーリーロード -10lv
ホーリーナイト -8lv
ホリー・バニッシャー -5lv
力の信奉者 -5lv
ミューテッド・プリミティブキャスター -7lv
オーバードドラゴン -7lv
ワールドコネクター -10lv
ソウル・サクセサー -10lv
ソウル・コネクター -10lv
レッサーワールドチャンピオン-5lv
ソウルコネクター -3lv
ローグ -1lv
ポイズンメーカー -1lv
マジッククラフター -1lv
コマンダー -1lv
他 計103lv

竜王でも、プレイヤーでも、この世界特有の力でもない。
長い旅路の中で身につけた、完全に異質な力。性質としては竜帝が異世界と接続した力に近い。
紡いだ絆の数が、歩んだ歴史の厚さが、力の源泉である。












おまけ
────────────────────


「あはは」

慈母は、愉快そうに戦場を見つめていた。
十の天使に争う白金の竜王。

自分の愛しい作品(子供)。今にも負けそうだが、敗北などあり得ないと言った様子で、余裕のある笑みをその顔に浮かべていた。

──だって、私の作品だもの。彼の置き土産風情に負けるなんてありえないでしょう?

あぁ、待ち遠しい。
あの子が、あの天使たちの強大な魂を喰らえば、竜帝を再びこの世界に連れ戻すのにふさわしい生贄に成長するだろう。
慈母は、夢想する。
再び、竜帝が、愛した夫がこの世界に降り立つ瞬間を。
()()()()()()()()()()()、異世界に可能性を見出した彼が、再びこの世界へ帰還する瞬間を。

彼女は、狂っていた。最初は、『竜が支配者であった時代の再臨』が目的であったはずなのに、いつしかそれは『竜帝の復活に』──目的と手段が逆転していた。

「はは、そう、争いなさい、そして喰らいなさい!」

そうして戦いを見つめていたら

全身に、痛み。激痛。
視界は一回転し、平衡感覚を失った体は地面に落ちる。

「あ…らぁ?なに、かしらねぇ…?」

衝突。そして土煙が舞う。
目に写ったのは、七色の鱗を持った竜。
七彩の竜王。自分と同じく、最古の竜王の一体。それが、慈母の体目掛けて灼熱の吐息を吐きかけていた。

「嫌な予感がしたのでな。抜け出してきたってわけだ。…貴様が、自身の悲願が達成するその瞬間に、戦場に出張ってきてないわけがない。予想通りだったと言う訳だ」

七彩の竜王の鋭利な爪が、慈母の体を切り裂く。

「あら、あら…まぁ、あの子と彼らが争う展開に…悲願が達成するチャンスが巡ってきたんだもの。気が抜けていたのも仕方ないわね…それよりも、裏切るのかしら?七彩の?あなたも竜王なら、竜帝の復活を望むべきではなくって?」

「ふん…裏切るも何も、我々は最初からお前の敵だよ旧時代の遺物が。」

七彩の竜王は吐き捨てる様にいい、慈母の貼った結界を砕く。

「あのニンゲンたちに毒されたかしら?彼女たちと交わったのは、あくまであなたの研究者気質な…知的好奇心からではなくって?」

「最初はそうだったがな…まぁ、長い間生きれば考えも変わるさ。まぁ、彼の影響もあるだろうがな。」

七彩の竜王のテールアタックが、慈母を地面に落とす。
その瞬間、白金の竜王が戦っている方向から強大なエネルギーが溢れる。

「あぁ」

慈母の顔が輝く。

──あれは、まさしく竜帝だ。称号としての竜帝ではなく、彼と同質の、真の意味で竜帝と言える力。

「すごい、すごいわ!さすが私の作品!さぁ、もっと、もっと魅せてちょうだい!そしてもっと喰らいなさい!もっと、もっ…!?」

慈母の狂乱が止まる。
硬質化した七彩の竜王の尾が、慈母の心臓を貫いたのだ。

「…そこまで狂ったか。慈母(マザー)…もはや救い難い。──仮にも母親がここまで狂っていたと…彼は知らない方がいいだろう。」

心臓に突き刺さった尾が、勢いよく引き抜かれ、噴水の様に鮮血が吹き出す。

「あは、あははは!出来ることならあの子に殺されたかったけど…まぁいいわ!だって、だって!ずっっと憧れていた、焦がれていたものを見れたんですもの!」

もう、それ以上口を開くなっ!

七彩の竜王から放たれた七色(プリズム)の光線が、慈母の体を焼き切る。

「あはは!あ、そうそう!貴方達!私に感謝した方がいいわよ!だって、私が少し彼らに細工をしなければ負けていたわよ!あは、あははは!」

最後まで狂ったように笑いながら、慈母は死んでいった。
その顔には、幸せそうな笑みが張り付いていた。

「…くだらん奴だったな。このことは、私以外の誰も知るべきではない、な…死体も残さずこの世界から消え去れ。」

七彩の竜王が最古の始原の魔法を呟くと、慈母の死体を囲う様に幾何学模様が現れ、それが赤く輝いたかと思うと──
次の瞬間、慈母の体は灰になって消え去った。

「さて…彼らの戦いも終わったようだし、私も帰るとするか。」









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