今回は一つだけコメントから名前を貰っています。
「忘れ物はありませんか?」
「ない!」
「問題ありません。」
あれから数日、待ちに待ったお出かけの日が来た。この日のために作ってくれたニシノフラワーの服を着て準備は万端である。
ニシノフラワーのカバンに吊るされて部屋を出る。ニシノフラワーとミホノブルボン。お出かけをするには少し珍しい組み合わせなのか、周りのウマ娘から好奇的な視線を向けられている。
「おや、これからお出かけかな?ポニーちゃんたち。服もよく似合っているよ。楽しんでおいで。」
「フジキセキさん!ありがとうございます。楽しんできますね!」
向けられる視線を気にせずに進み、寮を出たところで入り口の前を掃除していたフジキセキに出会い、オレを含めた服装を褒められながら外へと出る。
暫く歩き、周りに誰もいないのを確認しながら路地裏に入る。ここでも暫く誰か来ないかを2人で確認した後、ニシノフラワーがオレをカバンから外して地面に降ろす。
「ここなら大きくなっても大丈夫そうです。」
「分かった!」
許可が出たので子どもモードに変形する。服もきちんと適応しているのを確認してからニシノフラワーからオレの猫ちゃんカバンを受け取って首に下げる。
「それじゃあ、行きましょうか。ミホさんは私と手を繋ぎましょう。」
「はーい。」
ニシノフラワーが差し出してきた手を握る。そのままだと片方の手が寂しいのでミホノブルボンに手を差し出すと、少し硬直したが握ってくれた。
「えへへ。」
思わず頬が緩む。オレよりも大きなミホノブルボンの手は握っているだけでも安心感がある。逆にニシノフラワーの手はオレのより少しだけ大きいだけなのにオレを思いやる優しさを感じる。
それが嬉しくて嬉しくて堪らない。今すぐにでも駆け出したくなるがお出かけの前日に言われた注意事項を思い出してなんとか止まる。
しかし駆け出したい気持ちはどうしようもないので、フンスフンスしながら身体は前へと進もうとする。そんなオレを見てニシノフラワーがクスクスと笑い、ミホノブルボンが口元を緩ませる。
「ミホさんも待ちきれないようなので行きましょうか。」
「そのようですね。」
2人に挟まれて歩き出す。目指すはデパート、お出かけ計画の一番最初の目的地である。
「色んなものがあるね!」
前世のデパートは何度も行ったことがあるがこの世界はウマ娘という存在がいるため品揃えが違う。それが目新しくて色々なところを見てしまう。
「ふふっ、ミホさんはデパートは初めてですもんね。色々見ていきましょうか。」
手を引かれながら色々なところを見ていく。小物売り場やゲーム売り場。本屋や服飾店。オレが部屋で暇にならないように本を何冊か買ってもらったが、前世で知っている本は全くなかった。読んでいる途中のものもあったため、少しショックである。
服もニシノフラワー監修で何着か買った。服を次々と持ってくるニシノフラワーに少しゲンナリしそうになったが、オレのために持ってきてくれていると思えばむしろ早く着たいと思えた。
子どもサイズのため、ぱかプチやリアルモード中では着れないのが残念だが、仕方ない。どのサイズでも着れるようになれたらよかったんだけどなぁ……。
それが終われば昼ご飯である。2人が予約を入れていたレストランに入って食事をとる。ここで問題が発生する。そう、オレは綿しか食べれない。
だけどその問題は解決済みだ。猫ちゃんカバンに入れてあった綿を取り出して一緒に入れておいた棒を突き刺す。これが本当の綿アメってね!
2人の注文も届いて食事をとる。いつもの綿でもみんなと食べると余計に美味しく感じるのは不思議だよね。
それが済むと今度は蹄鉄を見に行く。レースやトレーニングで使うとあって2人とも真剣な目で見ている。オレの目には大きさや色が違うようにしか見えないが、選手じゃないと分からないことでもあるのだろうか?
試しに大きさの違うものを二つ持って触ってみるが何も分からない。むぅ、分かるのなら2人にこれがいいっておすすめ出来るのに残念だ。
「あ、ごめんなさい。ミホさんにはつまらないかもですね。そろそろ行きましょうか。」
蹄鉄を二つ持って?マークを頭に数個浮かべていると、オレに気付いたニシノフラワーが少し申し訳なさそうな顔をしてオレの手を引いて店を出る。店の外では既にミホノブルボンが紙袋を持って誰かと話していた。
「ブルボンさん、お待たせしました。……こちらの方は?」
「ライスシャワーさんです。偶然あったので少しお話をしていました。」
「初めまして、ライスはライスシャワーって言います。」
「私はニシノフラワーって言います。よろしくお願いしますね?」
お互いに自己紹介を済ませるとライスシャワーがオレの方を見る。じっと見られると少し恥ずかしいのでミホノブルボンの腰に隠れて少しだけ顔を出す。
「ライス姉ちゃん、オレはミホって言うんだ!2人はミホさんって呼ぶよ!」
「ミホちゃん、初めまして。ライスはライスシャワーって言います。よろしくね?」
オレの目線まで屈んで微笑むライスシャワーにオレも隠していた身体を出す。オレの身体を上から下まで見たライスシャワーは目をパチクリさせて驚いているようだ。
「ミホちゃんはブルボンさんにそっくりだね。妹さんなのかな?」
「ミホさんは私の親戚ですね。妹みたいなものです。」
2人と前もって話してオレはミホノブルボンの親戚の子ということになった。名前はミホのままだ。オレの自己紹介の仕方でフルネームを聞こうとする人はいないだろう。もしいたとしたら……うーん、ミホノブルボンそのままは不味いだろうし……。あ、そうだ!ミホノフラワーって言おう。仮の名前だし、名前でショックを受ける人なんていないでしょ。
「ライスさんはこれから何処に?もし何もなければ私たちと一緒に行きませんか?」
「うっ、嬉しいけど、ごめんなさい。ライスはこれから用事があるの。」
ライスシャワーが少し嬉しそうな顔をするが、用事があることを思い出したのかすぐに断った。
残念だが用事があるのなら仕方がない。2人もそう思っているようで、一言二言話すと邪魔をするのも悪いと思ったのか手を振って別れる。
歩き出した2人に手を引かれながら少し気になったので後ろを振り返ってライスシャワーを見てみると、1時間限定!大食いウマ娘チャレンジ!と書かれたポスターが貼っているお店に姿を消していくところだった。
デパートを出て、今度は町を見て行く。考えてみればオレは拾われてからずっと寮でいたため、この町のことを全然知らない。
歩きながらここはこんな店があると2人から説明を受けながら、時々クレープなどを食べて休憩しながら歩いて行く。
先が見えなくて怖がりながら一人で彷徨い歩いていた時と同じ道なのに、2人と一緒に歩いているだけでなんと楽しいことか。楽しくて顔はニコニコしているし腕はぶんぶんしている。
「ある程度紹介はしましたし、ミホさんは何処か行きたい場所はありますか?」
「ならオレはあそこに行きたい!」
2人と歩いているだけで楽しいが、目の端に気になるものが見えたのでそっちを指差す。
オレの指差したところには、煌びやかな装いをした店舗があり、2人と同じくらいのウマ娘やヒト耳が中に入っていく。
「ゲームセンターですね。時間もまだまだありますし、遊んでいきましょうか。」
許可が出たので走って……だと危ないので歩いて店に向かう。店に入ると色んなゲームの音が耳に入ってきて、これだけで気分が楽しくなる。
「フラワー!ブルボン!色々ある!色々あるよ!」
「ふふっ、そうですね。気になったものから遊んでいきましょうか。」
店の中なので離してもらい、人の迷惑にならない程度に周りを見渡して気になるゲームを探して行く。
格ゲーや音ゲー、リズムゲームやウマ娘専用と思われるゲームなど、本当に色々ある。
目を輝かせて2人の方を向くと、頷いてくれたので興奮しながら近くのゲームに手をつけた。
楽しい、とても楽しい。席が空いているゲームを一通りやってみた感想がこれである。音ゲーがダメダメでも格ゲーでKOを取られても楽しいのだ。更にオレのプレイを見て少しのことでも喜んでくれる2人がいるから更に楽しい。
2人プレイが出来る時はニシノフラワーと一緒にやった。ミホノブルボンも誘ってみたが、断られた。そこで機械音痴ということを思い出して悪いことをしてしまったと思ったが、落ち込む前にミホノブルボンから見ているだけで楽しいと言われたので、もっと楽しんでもらえるように大げさにリアクションをすることにした。
他にも2人と一緒にプリクラも撮った。撮れた写真は大事に猫ちゃんカバンの中に入れてある。帰ったら飾る予定だ。
気分が良くて鼻歌を歌いながら歩いているとクレーンゲームを見つけた。中を覗いてみると沢山のぱかプチが置かれている。
「オレの仲間がいる!」
「ミホさんのお友達が一杯ですね。」
ほわー、と中を眺めていると、ニシノフラワーのぱかプチを見つけた。これは欲しい。是非とも欲しい。
「挑戦してみましょうか。」
「うん!」
ニシノフラワーを見るとオレの言いたいことが分かっていたのか頷いてくれたので、100円を貰ってクレーンゲームに近付く。しかし子どもモードだと身長が足りなくてボタンに手が届かない。
何処かにオレが乗れる台はあるかと周りをキョロキョロ探しながら歩く。するとオレの周りに大きな影が差した。
「………ヒッ!?」
影の正体を確かめようと顔を上げると厳つい顔をした大男がオレを見下ろしていた。そのあまりの怖さに尻もちをついて悲鳴を漏らしてしまう。
思わずニシノフラワーの方を見てしまうがそちらからだと大男が見えないようで、尻もちをついたオレに対して心配そうな顔をしながら歩いてくる。
「あの……。」
「な、何ですか?」
「台です。どうぞ。」
「えっ?あ、ありがとうございます。」
上から大男の声が聞こえてきて、怖い気持ちを隠して返事をすると台を渡される。オレが探しているのに気付いて持ってきてくれたのだろう。その証拠に大男は目的を果たしたのかそのまま立ち去ろうとしている。
(ただ親切で持ってきてくれたのに、オレは何で怖がっているのか……。お礼を言わないと!)
「あの!お兄さん!」
「なんだ?」
「しゃがんで下さい!」
「……何故?」
「いいからしゃがんで下さい!」
オレのお礼を最大限にするならしゃがんでもらった方が都合がいいのでお願いするが、大男は疑問顔だ。なので少し頬を膨らませてもう一度お願いすると、疑問顔をしたままだがしゃがんでくれた。
やっぱりこの人はいい人だ。顔だけで怖がったのが恥ずかしい。自分の勘違いに少し頬を赤らめながらしゃがんでくれている大男に近付いて。
「ありがとう!お兄さん!!」
「!!!!????」
ギュッと抱きついてお礼を言う。それだけだと気が済まないので頬擦りも追加で行う。む、髭がジョリジョリするね。
「お、おぉ……。イ……」
「イ?」
「イエスロリータ……ノータッチ……!」
オレはロリじゃないと少し頬を膨らませて更に抱きつきを強くして頬擦りをすると大男に腋に手を入れられて持ち上げられる。ミホノブルボンより遥かに高い景色に目が輝くが、直後に優しく床に降ろされる。
もう一度やって欲しくて大男を見上げるが、大男は少しよろめきながら通路を曲がって姿を消すところだった。
「ミ〜ホ〜さ〜ん〜?」
「ヒェッ。」
残念に思っていると後ろから間延びしたニシノフラワーの声が聞こえてくる。普段とは違う声に恐る恐る振り返るとそこには腕を組んだ笑顔のニシノフラワーがいた。一目で怒っているとわかる姿に逃走を選びたくなるがそれよりも早くニシノフラワーに両頬を掴まれて伸ばされる。
「お礼を言うのは偉いことですが抱きつくのはやり過ぎです!あの人も困っていたでしょう?」
「でもあれをやれば大体の男性は喜ぶって……。」
「誰ですかミホさんにそんなことを教えた人は!帰ったら少しお話をしないといけません!」
前世のネットの住民たちです!と言えればいいんだけど言えるはずがないので手をモジモジするしかない。そんなオレを見てニシノフラワーが困ったかのようにため息を吐いた。
「はぁ、ごめんなさい。言い過ぎました。よく考えたら又聞きの可能性もありますし、楽しいお出かけの時にお説教は駄目ですね。反省です。」
「オレもやり過ぎました。ごめんなさい。」
「はい、お互いが謝ったのでこのお話はこれでおしまいです。向こうでブルボンさんが待っているので行きましょうか。」
「うん!」
手を繋いでミホノブルボンの方へ歩いていく。空いた方の手にあの人が渡してくれた台を持っていくことも忘れない。
「お待たせしました、ブルボンさん。」
「ミホさんが尻もちをついたように見えましたが大丈夫ですか?」
「うん!おっきな男の人がいてビックリしたんだけど台をくれたんだ!」
笑顔でミホノブルボンに渡してもらった台を見せびらかした後でクレーンゲームの前にセットする。台を登ってみるとちょうど押しやすい位置にボタンがきていた。
「ミホさん、クレーンゲームはこの二つのボタンであそこのアームを操作して景品を取るゲームです。最初にココ、次にこのボタンを押します。一度ボタンから手を離すともう押せなくなるので注意してくださいね?分かりましたか?」
「うん!頑張る!」
ニシノフラワーから貰っていた100円玉を取り出して、勇みながら投入した。
「むぅ〜、むぅ〜!!」
あれから数回はチャレンジしているが、何も取れていない。惜しい時は何回かあったのだが大体は持ち上がった衝撃で落ちてばっかりだ。
途中からは落ちるたびに頬が膨れて、それを後ろからミホノブルボンに指で押されて萎むの繰り返しだ。
「ミホさん、次で最後です。」
「えっ!?……分かった。」
何でと言いそうになったが当たり前だと冷静になる。チラッと見えた時計は寮の門限の少し前を指しており、そろそろ帰らないと間に合わなくなる。それにこれは2人のお金だ。それをオレが好き勝手に使うわけにはいかない。
これで最後なら確実に取りたい。もしダメでも悔いが残らないようにしたい。どうするかと考えた時に妙案が浮かんだ。
「そうだ!2人も手伝って!フラワーは横から教えて!ブルボンはオレと一緒!」
「ですが私が触れば壊してしまいます。」
「だったらオレの手の上から押して!ミホさん号の発進だよ!」
ミホノブルボンの手を掴んでオレの手に添えるように置く。少しビクッとしたが笑顔を見せればミホノブルボンは自分からもう片方の手もオレの手にそっと添えた。
「それじゃあ、入れますね。」
ニシノフラワーが100円をゲーム台に入れる。コミカルな音がゲーム台から流れてきたのを確認した後、すぐに横へと移動する。
「それではミホさん号、発進します。」
「バッチコーイ!!」
ニシノフラワーの指示を聞きながらミホノブルボンが優しくオレの手を押す。それに従ってアームを動かしていき、やがてアームは目標の真上に到達した。あとは取れることを祈るのみだ。
「お、おお?おおおお!!」
「おかえり、ポニーちゃんたち。門限ギリギリだね。」
「間に合って良かったです。フラワーさんは?」
「少し前に帰ってきたよ。」
門限ギリギリに帰ってきたブルボンたちに少し呆れながらも迎え入れる。先に帰ってきたフラワーから話は聞いていたとはいえ、まさか門限の1分前に帰ってくるとは思っていなかった。
「これからはもう少し違和感がないように、ね?」
「はい。了解しました。」
帰る直前でミホちゃんを何処でぱかプチに戻すかという問題が発覚して、至急ブルボンがミホちゃんを送っていく体で人目のつかないところに移動してぱかプチに戻してくるために別行動になったと聞いた時は大丈夫かと心配したけど大丈夫だったみたいだね。
「それじゃあ、行っていいよ。私はここで遅刻したポニーちゃんたちを待たないといけないからね。」
「失礼します。」
私に頭を下げてブルボンが寮の中に入っていった。それを見送ってから再び寮の入り口で遅刻したポニーちゃんたちを待ち構えるが、ブルボンの姿を思い出してクスリと笑ってしまう。
「どうやらお出かけは成功だったみたいだね。」
ブルボンが抱えていたのは笑顔のニシノフラワーのぱかプチとそれに笑顔で抱きついているミホちゃんだった。
オリ主……お礼を言うために全力でありがとうをした。ぱかプチを無事に取れて幸せ。夜寝る時は抱きしめて寝ることになる。
ミホノブルボン……初めてやったクレーンゲームはとても楽しかった。またやりたいですね。
ニコニコしたミホノブルボンに出会ったウマ娘は二度見をした後に目を擦ってからまた見ることになる。
ニシノフラワー……オリ主が尻もちをついた後に自分を見たので心配して近付いたら知らない男性に抱きついてすごいビックリした。次の日にオリ主には内緒で抱きつけば喜ぶと言った人を探そうとしたが候補が多すぎて諦めた。
自分の姿をしたぱかプチを暇な時や寝る時にいつも抱きしめているオリ主を見てぱかプチに少しやきもちを妬く。
ライスシャワー……あの子すごくブルボンさんに似ていたなぁと考えながらも無事に食べきった。なんならおかわりもした。膨らんだお腹を撫でながら満足していると自分のお兄さま(トレーナー)にバッタリ出会った。
「えっ?お兄さま!?あの、えっと、これは……違うの!その……身籠っちゃいました!!!!!!」
厳つい顔の大男……身長2メートルと少しぐらい。子どもサイズのオリ主からしたら巨人。
あの後、通路を曲がったところで沢山の紳士諸君に囲まれた。
「お、お前……!紳士協定の教えはどうなっているんだ!教えは!」
「いや待て、様子がおかしい……!」
「こ、こいつ……。立ったまま気絶してやがる!」
「きっと子供に怖がられていたのが普通だったのに満面の笑みからの抱きつき頬擦りコンボをくらったせいだ!威力が高すぎたんだ!」
「今すぐ気絶したいのに子供に心配をかけまいとここまで歩いてきたのか……。お前、漢だよ!」
「感激してる場合か!?衛生兵!衛生兵ー!!」
推し活中のデジたん……今日はなんだかパトカーが多いですねぇ。何処かで事故でもあったんでしょうか?ウマ娘ちゃんたちに関係なければいいんですが……。
オリ主豆知識……ぱかプチの時にサイズが合っている服を数時間着ていると、服が登録されて子どもモードとリアルモード時でも服のサイズが大きくなる。しかしぱかプチの時にしか登録されないため、子どもモードとリアルモード時では何時間服を着ようが登録されない。
ぱかプチ状態でも着てすぐにモードチェンジをすれば服が大きくならずにそのままはち切れる。