ぱかプチ!!   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます。
レース描写はサラッといきます。


走るのは楽しいことです。

 あれから時間がある時にアグネスデジタルを探していたが、全く見つからず、最終手段のデジたん召集を使うかどうか迷っている今日この頃。オレはレース場に来ていた。理由は簡単で、ミホノブルボンのレースを応援するためだ。

 かといってオレ1人で行くわけにはいかない。リアルモードならいけるかもしれないが、なんか良からぬトラブルに巻き込まれる気しかしなかったのでやめた。

 ニシノフラワーはだいぶ前からトレーナーと予定があったらしくてここにはいない。なら何故オレはここにいれるのか?

 

「ねぇ、あの人……。」

 

「ギャップ萌えってやつかな?」

 

「はぁ……。なんで俺がこんな目に……。」

 

 周りの人がボソボソと話しながらチラチラとミホノブルボンのトレーナーを見ている。見られているミホノブルボンのトレーナーが抱きかかえているのはミホノブルボンのぱかプチ。つまりオレである。

 どうしても行きたくて色々考えた結果、ミホノブルボンのトレーナーにお願いすればいいのでは?と答えが出て、真剣にお願いしたら連れて行ってくれることになったのだ。

 だけどぱかプチのオレが勝手に動くわけにはいかないのでミホノブルボンのトレーナーが抱きかかえて運ぶことになった。

 他のウマ娘のトレーナーも来ているんだけど、ミホノブルボンのトレーナーを見た後でほぼ確実にもう一度見てくる。まぁ、厳つい顔と厳しいトレーニングを行なっているって言われている人が大事に担当のウマ娘のぱかプチを持ってたら二度見しちゃうよね。

 そんなことを考えているとファンファーレが鳴り響いた。トレーナーの腕をこっそりペチペチ叩いて肩車に変更してもらうと、ゲートで出走の時を今か今かと待ち構えるウマ娘たちの姿が見える。

 ゲートが開き、勢いよくウマ娘たちが飛び出す。そんな中でも突出してくるウマ娘がいて、その姿を見ると興奮して声が出そうになるがトレーナーに軽く太ももをつねられてなんとか堪える。

 突出したウマ娘、ミホノブルボンは一定のペースを守って逃げを行なっている。他のウマ娘も追いかけているが、鍛えられたスタミナとそれに見合ったスピードで走るミホノブルボンを捕らえられない。

 

(マスター!そろそろ!そろそろだよ!)

 

「……本当にやるのか?」

 

(当たり前だよ!)

 

 ミホノブルボンがもうすぐ観客席にいるオレたちの前を通るのでトレーナーに準備をさせる。

 トレーナーは嫌がりながらもカバンから文字が書かれた画用紙を取り出してオレに持たせる。その後にオレをミホノブルボンから見える位置に持ち上げた。

 

(ブルボン頑張れ!)

 

 画用紙に書かれた文字と同じことを心の中で叫びながら応援する。ついでに身体を左右に振ってミホノブルボンにここにいるとアピールする。

 

(マスター!もっと背中に手を入れてくれないとバレるよ!)

 

(無茶言うな!ミホがただの人形じゃないって知っているのにそんなこと出来るか!!)

 

 なんでこんなに動いていて周りにバレないのかというとトレーナーがオレの服に手を突っ込んでトレーナーが動かしている風にしているからだ。最初は今のに加えてトレーナーが腹話術をしていることにしてオレが声を出して応援をする方針だったけど、流石に恥ずかしいからやめてくれとストップが入った。まぁ、今の時点でかなり視線が集まっているからね。

 

(あ!ブルボンがこっち見た!おーい!ブルボン!!)

 

 観客の人たちの中から頭一つ抜けているぱかプチは目立つのかチラッとオレを見た後に少しだけ頬を緩めて通り過ぎて行った。

 

「この調子なら勝てるな。もう下ろすぞ。」

 

(えー、もう?)

 

 ミホノブルボンが通り過ぎたのでトレーナーがオレを胸の位置まで下ろしてまた抱きかかえる。トレーナーの宣言通り、ミホノブルボンは見事に一着を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォー!!」

 

 少しの休憩を挟んだ後でウイニングライブが行われた。センターを飾るミホノブルボンはとってもキラキラで輝いて見える。

 トレーナーはこういうのは出口近くで見るタイプだったみたいだけど今回は最前列で見ている。会場に入った時は既に人でいっぱいだったが、トレーナーの姿を見た人が何かを察したのか道を開けてくれたのだ。

 両手にサイリウムを持ってミホノブルボンに歓声を送る。トレーナーはオレを操作している振りをしているので、その分も一緒に応援するのだ。

 

「なぁ、ミホ。」

 

「何?マスター?」

 

 隣の人の振り付けを真似しているとトレーナーから呼びかけられる。周囲は音楽や歓声で満たされているので、周りには聞こえないだろうと判断して普通に声を出して応える。

 

「ミホはこういうのに憧れないのか?今は人形だが、ミホはブルボンそっくりにもなれる。その気になればデビューすることも出来るはずだ。」

 

「うーん、そういうのはいいかな。確かに憧れるしやってみたいって思うこともあるけど、オレはこうやってみんなの応援をしている方がいいな。あ、でも一回はみんなと走ってみたいや。」

 

 割と真面目な話だったのでオレも真面目に答える。オレはどこまでいっても人形だ。そんなオレが彼女たちの舞台に登るべきではない。

 少ししんみりした空気になったが、それとは裏腹にライブは大成功で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、部屋の鍵だ。」

 

「ありがとうございます。」

 

 ウイニングライブが終わった後、オレら一行は近くのホテルに来ていた。レース場からトレセン学園までは遠いので1日だけ泊まっていくらしい。それで明日に今日の反省をしてからトレセン学園に戻る予定みたい。アプリだとすぐにレース場とトレセン学園を行き来出来ていたのでこういうのは考えたことなかった。

 オレたちの部屋の鍵を受け取ってトレーナーと別れる。といってもトレーナーは隣の部屋だ。会おうとすればすぐに会える。

 ミホノブルボンもオレもトレーナーと一緒の部屋でいいと言ったのだが拒否された。すっごい拒否された。年に一度見るかどうかレベルの拒否の仕方だった。やっぱりシングルベッドはダメだったか。みんなで寝ると気分が良くなるし安心するのになぁ……。

 少しがっかりしたけど気持ちを切り替える。部屋に荷物を置いた後、ミホノブルボンにレースの健闘を讃えてからいっぱい遊んでもらってからその日は就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、どうしたものか。心の中で腕を組んで直面した問題の解決に必死に頭を回す。うっすらと瞼を開いて問題が解決してないか期待してみるが、あいも変わらず問題はそこにいた。

 

「ジーーーーー。」

 

 ベッドの縁に手を置いて、俺をずっと見つめているブルボン……いや、リアルモード状態のミホが声を出しながら俺を見続けている。寝返りをして逆を向いてもわざわざ目の前に移動してからまた見つめてくる。

 何か問題があった時のためにこの部屋の合鍵は渡した。夜は本当に困った時にだけ来いと言った。だが早朝に来るのは予想できなかった。

 いや、これは多分俺を起こしに来たんだろう。起きていることを気付かれないようにこっそりと時計を確認すると、起床時間の数分前であり、時間になれば起こすつもりなのだろう。

 だが服装がダメだ。大きめなシャツを着ているせいで、下を履いていないように見える。しかも服が着崩れており、目の置き場に非常に困る。

 本来ならすぐにでも注意するべきだろう。しかし出来ない。何故なら俺が起き上がって注意した時の反応が予想できるからだ。

 

『ミホか……。何故部屋に来たかは大体予想できるが取り敢えず服をちゃんと着ろ。』

 

『わぁ!マスターはもうオレとブルボンの見分けが付くんだ!嬉しいな!凄いのぎゅー!』

 

『マスター、そちらにミホさんは……。ステータス、軽蔑を獲得。マスター、流石にそれは……。』

 

 ワンアウト。なら間違えるとどうなるか?

 

『ブルボン、服をちゃんと着ろ。』

 

『むぅ!オレはブルボンじゃなくてミホだよ!……あ、抱きつけば覚えてくれるかな?ぎゅー!』

 

『マスター、そちらにミホさん──』

 

 ツーアウト。なら起床時間まで粘ってブルボンを待つか?

 

『おはよー!マスター!起床時間だよ!起きろのぎゅー!!』

 

『マス──』

 

 スリーアウト。どうしようもないじゃないか。しかも最後の抱きつきかたが1番マズイ。

 そもそもなんでミホは俺に抱きついて来るんだ。あのムチムチした感触を耐えなければならない俺の気持ちを少しは考えてほしい。

 何度注意しても抱きつきだけは止めないし、どうしたものか。そんな考えをしたくなるが起床時間まであと1、2分のところまで来ている。

 いっそ布団にくるまってブルボンが来るまで粘るか?いや、ダメだ。来る前に剥がされて抱きつかれる未来が見える。

 必死に頭を回すが、出てくるのは今日の予定ばかり。時間も1分を切り、ミホがベッドの上に乗る音がした。

 万事休す。いっそのこと心を鬼にしてはっきりと拒絶するかと決めかけた時、ふとブルボンの言葉が頭をよぎった。

 

『ミホさんはたまに大人びた時がありますが、基本は幼女です。些細なことで喜びますのでマスターも試してみてはどうでしょうか?』

 

 目覚まし時計がけたたましく鳴り響き、それと同時に布団が引き剥がされる。グッと足元辺りのマットが沈むのを感じると共に目を開くと、両腕を広げて俺に飛び込んでくるミホの姿が見えた。

 

「おはよー!マスター!っておよ?」

 

 そのミホを素早く両手と足の裏で受け止めて持ち上げる。そしてゆらゆらと揺らしてやると、不思議そうな顔をしていたミホの目が輝き始めた。

 

「おぉ!飛んでるよマスター!びゅーん!ばびゅーん!」

 

「マスター、そちらにミホさんは……。ステータス、安堵を獲得。ミホさん、マスターの方へ行くのなら次からは私に一声掛けてください。心配しました。」

 

 俺の上で遊び出したミホにブルボンがやんわりと注意するのを見ながら身体の力を抜く。どうやら危機は脱せたようだ。はぁ、疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやぁ、楽しかった。またやってもらいたいね。ミホノブルボンに抱っこしてもらって道を歩きながらトレーナーにやってもらったことを思い出す。高い高いとはまた別の楽しさがあって、とても楽しめた。

 また時間がある時におねだりしようかなと考えていると、目的地に着いたのかミホノブルボンが足を止める。

 辺りを見渡して頭を傾げる。オレ的にはもう帰ると思っていたのだが、ここはどう見てもトレーニング場だ。しかもかなり規模が大きいのか坂路や模擬レースが出来るコートもある。

 

「来たか、ブルボン。すぐにジャージに着替えてこい。それから坂路だ。」

 

「了解しました。ミホさんをお願いします。」

 

 ミホノブルボンはトレーナーにオレを渡すとすぐに更衣室へと走っていった。

 それにしてもレースをした次の日にはもうトレーニングなのか。1日ぐらいゆっくりしたらいいのにとトレーナーを見ると、オレの視線に気付いたのかトレーナーがミホノブルボン自身が望んでいることだとこちらを見ずに話し出した。

 トレーナーが無理矢理やらせているならまだしも、ミホノブルボンが望んでいるならオレは何も言えない。戻ってきたミホノブルボンが坂路を走り始めるのをトレーナーの腕の中でじっと見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ミホ。一度ブルボンと模擬レースで走ってみるか?」

 

 トレーニングを見ること大体1時間くらい。唐突にトレーナーがそう言った。あまりに唐突だったので目をパチクリとしてトレーナーを見てしまった。

 

「周りに見られたらどうするの?」

 

「この時間帯は人が来ないことが多い。仮に来てもあそこは死角になっていて見える位置に来る前に俺が気付ける。」

 

 なら大丈夫なのかな?チラッとミホノブルボンの方を見てみると、話を聞いていたのか少し嬉しそうに道具の準備をしている。

 

「走るのは楽しいからいいんだけど……。でもマスター。」

 

「何だ?まだ問題があるのか?」

 

「服がない。」

 

 走るのに適した服を持ってきていないのだ。今着ているのはニシノフラワーが作ってくれた花を模したような可愛い服だ。走ろうと思えば走れるけど汚したくない。それ以外だと寝る時用のブッカブカのシャツと短いズボンだけだ。

 

「………ブルボン。」

 

「はい、予備のジャージを持ってきます。」

 

 オレが持って来ている服を聞き出すと、今日の朝の出来事を思い出したのか少し顔を赤くしてトレーナーはミホノブルボンに指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいか?」

 

「いつでもどうぞ。」

 

「ちょっと待って!」

 

 2人に確認を取ると、ジャージに上半身だけを出したぱかプチ状態のミホが綿を口に含みながら待ったをかける。口に入れるたびに、にんじん味やハンバーグ味だと感想を言いながら飲み込み、満足したのかジャージを着直して力を込め、一気にブルボンそっくりになる。

 

「オレも準備完了!いつでもいいよ!」

 

「よし、俺がスタートと言うと同時にスタートだ。ゴールは……、あそこにしようか。」

 

「分かりました。」

 

「おっけー!」

 

「じゃあ、行くぞ?…………スタート!!」

 

 俺の合図と同時に2人が飛び出した。最初は全く同じ動きで並走していたが、徐々にミホが前に出始める。

 

「速いな……。しかしペース配分がぐちゃぐちゃだ。その内バテてブルボンに追い抜かれるな。」

 

 常に全力疾走。更に楽しそうに笑い声まで出している。これだとすぐに体力が底につくだろう。ブルボンもそう判断したのか下手に追い比べをせずに自分のペースで走っている。

 しかしあのスピードは魅力的だ。走りかたやペース配分の指導をすればミホはブルボンの良い練習相手になるかもしれない。

 ミホを加えたトレーニングメニューを考えながら模擬レースを見ていると、レースは後半に入ったようだ。

 そろそろミホがバテて来る頃か?そう思いミホを見て、驚愕する。あんな走りかたなのに、変わらずミホは笑顔でペースを落とさずに走っていた。

 既にブルボンと大体5馬身も差をつけており、逃げで走るブルボンはもう追いつけないだろう。

 

「ゴール!マスター、オレの勝ちだよ!」

 

「……あぁ、見事だ。ってちょっと待てこっちに来るぐぅ!?」

 

 ゴールと指定した場所を通り抜けたミホが嬉しさからか俺に飛びついて来る。俺の胸に顔を埋めてぐりぐりして、耳を伏せて遠回しに頭を撫でろと俺に訴えてくる。

 ため息を吐いて頭を撫でていると、急に抱き上げられて位置を入れ替えられる。その行為の意味が分からなくて問いただそうとした時、後ろから走る音が聞こえてくる。

 嫌な予感を感じながら後ろを向くと、ゴールを通り過ぎたブルボンが、そのまま俺に向かって走って来る。

 

「お、おい。流石にブルボンはそんなことしないよな?せめてスピードを落とぐほぉ!?」

 

 スピードの乗ったブルボンの突撃が背中に当たり、危うく意識を飛ばしかけたのだった。




オリ主……ミホノブルボンのトレーナーは父親みたいな感じ。抱きつき心地が良いので高頻度で抱きつきに行く。要するに小さい時にある『将来お父さんと結婚するー!』状態。

ニシノフラワー……今回は別行動。前日にオリ主に向かって30分ぐらい向こうでの注意事項を話していた。

ミホノブルボン……レース中に見えたオリ主にほっこりした。朝起きるとオリ主が隣にいなくてかなり焦ったのは秘密。オリ主が良いトレーニング相手になると知ってしまった。
 ミホさんだけマスターに抱きつくのはずるいです。

ミホノブルボンのトレーナー(マスター)……夜遅くまで仕事をしているとオリ主が入ってきていきなり抱きつかれてレースに連れていってくれないとずっとこのままと脅された。
 オリ主の抱きつきは個人的にはまんざらでもないし、オリ主が嬉しそうなので強く注意できない。
 この度ミホノサンドをされた。だが耐える。

アグネスデジタル……察したと共に尊み溢れて倒れた。

デジたん召集……デジたんに会いたいと思いを込めて呼ぶとデジたんが来る……かもしれない。距離にもよるが、来る時は数分もかからない。

オリ主豆知識……リアルモードと子どもモードの性能は、変身時のエネルギー充填率が高いほど高くなる。
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