テラでDJやってたけど感染したのでオペレーターになります。 作:ヘルメットのお兄さん
観光都市シエスタ。
この世界では珍しい移動しない都市であり夏になると『オブシディアンフェスティバル』と呼ばれるトップクラスのミュージシャンを呼び集めた、都市を丸ごとステージとしたミュージックフェスが行われるアツい都市である。
「……黒曜石祭かぁ」
「お? どうしたの相棒、もしかして良い思い出が無かった?」
夏服の涼しそうな格好をしたオルフェは同じく夏服のエリジウムと共にロドスの一斉休暇を楽しんでいた。
「いやぁ、昔はよく呼ばれてたから自分から行くのは初めてだなって」
「そっか、相棒は音楽会の重鎮側だもんね」
エリジウムは手に持ったパンフレットを読む
──音楽会の重鎮達を集めた最高の音楽祭!!
他にもシンプルだが音楽好きには堪らないであろう文面が書かれていた。
「ところで相棒……今日の予想気温は36度って聞いてたけど……顔暑くないのかい?」
エリジウムが話しかけるオルフェは帽子にマスクにサングラスと不審者のような格好をしていた。
「……だって、周りに俺だってバレたら困るもん……」
「その前に身長でバレるよ!? というか倒れちゃうから脱ぎなって!」
「いや〜やめて〜」
サングラスを残して顔が晒されたオルフェは不安そうな顔をしていた。
「そんなに心配しなくてもほら、誰も反応してないでしょ?」
「うぅん……そうかな……あ、そう言えばソーンズはどうしたの。一緒に観光しようって言ったの「ねぇ……あれってN.Nじゃない?」「えぇ!? あのDJの?」……やっば……」
「さっきまで一緒にいたはずなんだけどどこかではぐれたんだよね……相棒? どうしたの顔色が、悪い……」
みるみる蒼白になっていくオルフェにエリジウムが怪訝な顔をして視線の方向を見ると2人の女性がこちらに近づいているのに気づいた。
「あの……もしかしてN.Nさんですか? DJの……」
「あー……えっと……人違いで」
「あ! 本物のN.Nよ! 首元に黒子があるわ!! 私ブロマイド持ってるもん!!」
「え"っ何それ……」
女性の1人が恐ろしい事を言い出すと周囲の人間も騒ぎに気づく
「N.Nだって?」
「まさか復活したのか?」
「あの背丈……本物か!?」
「でもパンフレットには載ってなかったぞ」
「きっとサプライズゲストなんだよ!」
「あー……相棒、これってもしかして……僕のせい?」
「それについては後で話そうか、今はとりあえず……」
「「逃げよう!!」」
2人が走り出すと後ろから大勢のファンも追いかけ始めた
「あっ! 逃げた!」
「追いかけろ! サイン貰えサイン!!」
「握手!! 俺握手して貰う!!!」
「だからあの格好してたんだよ!! 俺の人気舐めんなエリジウム!!」
「ごめん!!!!!」
それから30分後、何とか逃げ切った2人は昼にもなっていないのに疲労困憊だった。
──ー黒曜石は鉱石病を抑制する効能があると言われ、近年広く流行していますね。
──ーええ、シエスタ市の鉱石病感染者の数がこれ程少ないのもその良い例と言えます。
──ーつまらない噂や、科学的根拠が無いだのと、否定的な意見をお耳にすることもあるかと思いますが、シエスタ市の現状が何よりの証拠なのです。
「黒曜石が鉱石病を抑制するなんて話、聞いたことありません」
『鉱石病が本当にそんな簡単に予防できればいいのだが』
「源石や天災は、まだ地域によって全然正しく理解されていないところもあるんですね。それが幸せなことなのか、それとも不幸なことなのかはわかりませんが……」
街中で放送された観光案内を聞いていたアーミヤとドクターは放送の内容に懐疑的だった。
「無知は不幸に決まってますわ!」
「スカイフレアさん、プロヴァンスさん! こんにちは!」
「アーミヤちゃん、ドクター、こんにちは。偶然だねー、こっちに来てるって事は2人はビーチへ?」
「私達は適当に回っているところです。お二人は?」
「わたくしたちは……」
2人の話によるとシエスタ火山の麓で火山の実地調査に向かうと言う。
なんでも研究者としての性の様なものらしい。
「じゃあ僕達は行くね、バイバイ」
プロヴァンスは二人に手を振るとスカイフレアと共に火山に向かっていった。
「では私たちも行きましょう、ドクター」
アーミヤとドクターはシエスタ最大のビーチへ向かった。
それから暫く、オルフェとエリジウムはファンを振り切ったあとビーチに来ていた。
「あれ、グムじゃん」
「あれ、オルフェさんにエリジウムさん! こんにちはー!」
「こんにちは、オルフェさん、エリジウムさん」
「アーミヤちゃんも、2人で露店をしてるの?」
「そうだよ! ビーチの周りのグルメエリアは、観光客でもお店を出せるんだ!」
「あーそう言えばそんなのあったな……」
オルフェが思い出すように語るとふとグムは疑問を口にした。
「ところでなんで2人とも顔だけそんなに重装備なの?」
2人はマスクに帽子にサングラスを掛けていた。
「「……身バレ防止」」
「「?」」
アーミヤとグムは頭にハテナを浮かべているとオルフェは聞き慣れた声を受け取った。
「(……あれ? ドクターの声?)」
オルフェは耳を澄ますと遠くの方でドクターと女性の話し声がするのが聞こえた、もっと内容を聞き取ろうと集中すると
「ちょっとー、グムたちのお店買わないならどいたどいた! 2人とも大きいんだから壁になってるよ!」
「あ、ごめん!」
「ねぇ相棒、どうしてドクターの所に行くんだい?」
「なんか知らない声の女の人と話してるのが聞こえたから、面白そうだなーって」
「……君って結構野次馬根性あるよね」
オルフェはエリジウムと共にドクターの元に向かうと何やらドクターは通信越しに誰かと話していた。
「あれ? 居なくなってる」
『N.Nにエリジウムか』
「やあドクター、なんだか真面目な雰囲気だけどどうしたの?」
『折角だ、2人にも手伝って欲しい』
「「?」」
ドクターに連れられた2人はホテルの一室に着く、そこではスカイフレアとプロヴァンスと共にもう1人が待っていた。
因みにこの時点で2人はマスクと帽子は取っていた。
「来たね、ドクター……ってあれ、2人も来たの?」
『詳細はまだ聞いていないが人手は多くて損は無い事なんだろう?』
「そうですわね。それではしっぽ、話してちょうだい」
「僕が話すの? わかったよ……」
プロヴァンスが語るには、どうやら火山に異変があるらしく、詳しく調査しようとした時にオリジムシに襲われていたこのシエスタ市の市長の娘であるセイロン・ドルクスを助けたらしい。
『市長の娘!?』
「ああ! 知ってるよ俺、昔ライブの時何度か市長の隣にいたのを見た事あるよ」
「あら、貴方まさか……N.Nさんですか?」
「お? 覚えてた? まぁ今はもうDJやめちゃったけどねー」
その言葉にセイロンは信じられないと言った表情の後、ズボンの下から見えた黒い鉱石に気づくと表情を曇らせる。
「そうですの……貴方は鉱石病に……」
「あー、気づいた? でも今は治療して貰ってるから大丈夫だよ、ドクターもいるし」
軽く話すオルフェに対し尚も暗い表情をするセイロンに、空気を戻そうとスカイフレアは咳払いをする。
「しかし……まさか市長の娘が一人きりで、火山近くの雑木林にいたなんてこの目で見なければ信じられませんわ」
「わたくしは、学術研究者としてあの場所を訪れていたのです」
「じゃあ、さっきの火山の麓の話に戻ろう……」
ざっくりとプロヴァンスの話を要約すると、セイロンは火山が噴火するという兆候を探しに来て万全な準備もしないで飛び出して来たと言う。
「火山が噴火!?」
『冗談だろう!?』
エリジウムとドクターが驚く中プロヴァンスは冷静に返す。
「特徴のある刺激臭、異常なまでの高温、そして凶暴化したオリジムシ……そもそも火山の周囲でこんなに感染生物に出くわすなんて火山が普通じゃないって事の証拠だよ。もしもこの火山で源石が採れるなんて事になったら採掘業者が山のように押し寄せてくるよ」
「この火山の正確な状況を把握している者は殆どおりません。普段は行政と関連機構が管理しておりますもの」
「そういや朝の放送で言ってたな、天災トランスポーターのクローニンだか何だかが危険性は無いって語ってたが……」
「観測ステーションのデータサンプルでは異常無しと判断されましたが、私のサンプルでは明らかに異常が見てとれましたの。
シエスタ市行政は火山観測に力を入れていない節がありますわ。そこで市民と都市の安全を確保するために、これらの事象に対して専門的な知見がある方を探しておりましたの」
そこでセイロンは言葉を区切ると全員に向き直る。
「そこで……と言っては何ですがこのわたくしの力になってくれませんこと? シエスタ市が今回の難関を乗切るために」
エリジウムとオルフェは厄介な事に巻き込まれた予感がした。