テラでDJやってたけど感染したのでオペレーターになります。   作:ヘルメットのお兄さん

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リアルが落ち着いたんで久しぶりに投稿します。ちょっと間を開け過ぎたんで書き方変わってるかもしれないです


騎士競技を見に来たんです

「着いた!ここがカジュミエーシュ?」

 

『オルフェ様、カジミエーシュです。ここは中部のカヴァレリエルキですね』

 

「えっと、四都連合の大騎士領だっけ」

 

オルフェはsound-Mと盲目向けの点字ガイドを手にカジミエーシュに来ていた。

 

「いやぁ、一回騎士競技ってのを聞いてみたかったんだよね。スポーツって見えなくなってから関わる機会が一気に無くなったから」

 

『以前は何を?』

 

「試合前のBGM提供とか、後は実況とかも何度かしたよ?騎士競技は無いけど。ただ最後のライブ以降仕事は取ってないから自然と関わらなくなってるんだよね……うん?」

 

オルフェが街を歩いていると目の前の道路で何やら喧嘩声が聞こえてきた。

 

「俺の目はあんたよりずっとハッキリ見えてるんだよ。だからあんたに注意してやったろ?「前に木があるぞ」って」

 

「わしは聞いとらんが?」

 

「音楽がうるさすぎるから聞こえねぇんだろうが!」

 

「はて、MSRのCDを入れたのは誰じゃろうのう?」

 

「忌々しいジジイだ…嬢ちゃんの点検の邪魔になるから黙ってろ!」

 

「うわぁ……また派手にぶつかっちゃったね…」

 

『交通事故のようですね、どうやら街路樹に車が衝突したようです』

 

「なるほどね…最後の女の子の声、誰かに似てるな…」

 

オルフェは事故現場に近づいていくと徐々に輪郭が聞こえてくる。

 

「ああ…なんか二アールと似てるな」

 

「配線はOK、でもエンジン部分にまだ反応がない。うーん、これって二世代前のモデルだよね?これで動くかな…?」

 

「ちょっといいかい?」

 

オルフェは三人の近くまで来ると声をかける。

 

「うん?なんだ……ってでけぇな兄ちゃん、俺以上かよ」

 

「何の用じゃ?見ての通りこちらは事故の最中じゃが」

 

「ああいや、そこの修理士さん?多分だけどそこの部分に異常はない?」

 

「え?」

 

修理中の少女はオルフェが指した場所を確認すると確かに異常が確認できる。

 

「あ!ここを直せば…」

 

エンジン音が鳴りだすと老騎士は嬉しそうに車を撫でた。

 

「お主見ただけで異常を見つけたのかのう?」

 

「いや、あいにく目は見えないもので。異音が聞こえたからそこかなって」

 

「ほお、すげえな兄ちゃん」

 

「凄いねお兄さん、…あれ?お兄さんどこかで会ったかな?見たことあるような…」

 

少女が首を傾げるとオルフェは苦笑いする。

 

「初対面だよ、この街に来たのも初めてだし」

 

「もしかして騎士競技を見に来たのか?ならその前に飲まねぇか?嬢ちゃんの修理を手伝ってくれた礼だ、いい店を教えてやる」

 

「お、それはいい。お言葉に甘えさせてもらうよ」

 

「決まりじゃな、マリアはどうするかの?」

 

「私は……ちょっとやる事があって……」

 

「残念じゃのう……それなら途中まで送ってやるわい。コーヴァルよ、今日のパーティーで一杯目の酒にありつくのはわしら以外にありえん!行くぞ、しっかり捕まっておれ!」

 

「そんなの言うまでもねぇ……兄ちゃんも乗りな、名前はなんて言うんだ?」

 

「オルフェって呼んでもらえれば……待って、エンジン音がなんか……」

 

「発進じゃ!」

 

老騎士が叫んだ瞬間古い車はすさまじい速度で走り出した。

 

「なんでこんなにスピード上げるんだ!」

 

「何を言う!わしの若い頃はこれよりもっと飛ばしておったぞ!…じゃがのう、実はわし、今アクセルを踏んでおらんのじゃよ」

 

「は?待て、70マイルだぞ。スピードを落とせ―落とせって!おい!80マイルになってるぞ!完全に速度オーバーだ!」

 

「落とせないんじゃ!アクセルを踏んでおらんと言うたじゃろ!」

 

「今、俺この車に乗ったのすごく後悔してます」

 

「いいからブレーキを踏め!ブレーキだよ!」

 

老職人の叫びを最後に車は大きな音を立てて大破した。

 

「あちゃー…源石エンジンに負荷をかけ過ぎたみたい……」

 

 

 

 

 

 

次の日、とあるバー。

 

「はい、生ハムお待ちどうさん、オルフェさんだったかな?」

 

「合ってますよ、これは美味しそうだ」

 

「それにしてもフォーもまた凄い人を誘って来たね」

 

「確かにここまで大柄な男は騎士内でも見たことが無いのう……それにしても、今回は爆発せんじゃろうな?」

 

フォーと呼ばれた老騎士はジュークボックスの修理をしているマリアとコーヴァルと呼ばれる老職人を見ていた。

 

「そういう事じゃないんだけど……たかがジュークボックスの修理で爆発する訳ないだろ?」

 

「そうとも言えぬ。源石と関係があるものなら、コーヴァルはやりかねんぞ」

 

「俺の悪口を言ってるのは誰だ?」

 

「彼、そんなに物壊してるの?」

 

「ほら見ろジジイ!オルフェが勘違いするだろうが!」

 

「コーヴァル師匠!き、気を付けて、あんまり動かさないで!」

 

「おお――すまねえ、マリア。フォー!俺の手が空いたら覚悟しとけよ!」

 

「いいだろう、待っておるぞ――」

 

「賑やかだね」

 

「まぁ、賑やかなのは確かだね。ただうちのバーでケンカはやめてほしい。二人とも、グラスを割ったら弁償だからな」

 

「ふん、わしがあいつに負けたのをここ十年で見たことがあるか?」

 

「前回だな」

 

「あれはわしがだいぶ酔っておったからな。それに、関節炎も出とったからノーカウントじゃ。昔、あやつがわしにくっついて辺境を駆け回ってた頃はあんな口は利かせなかったんじゃが……」

 

「へえ、フォーさんは騎士なの」

 

「おお!そう言えばまだ言ってなかったの、とはいえもう老いぼれとなった今ではのう……」

 

「いつまで過去の栄光に酔いしれてんだよフォー、今はもうあんたにへこへこしてた従者がスーツを着込んでアンタや俺の上に立つ時代だぜ」

 

「ふん、わかっておるわい」

 

フォーが酒を一気にあおると突然扉が激しく開かれる。

 

「マリア!」

 

「ひゃいっ!?」

 

驚いたマリアはジュークボックスから手を放しコーヴァルはジュークボックスに指を潰された。

 

「痛っ……!この馬鹿、急に手を放すんじゃねぇ!」

 

「ご、ごめん。でもちょっと隠れさせて……」

 

「ゾフィア、頼むからそっと開けてくれ。今月だけで何回ドアを交換したことか……だから自動ドアを躊躇するんだよ」

 

「(マーティンさん、彼女は?)」

 

「(マリアの()()だよ、あそこまで怒ってるのは久しぶりに見るね)」

 

「どうしたゾフィア?そんなすごい剣幕で怒鳴りこんできおって」

 

ゾフィアは店内を一瞥し目的の人を見つけると華のある笑顔を見せた。

 

「そこにいるんでしょ?マ・リ・ア?」

 

「ひぃ!」

 

マリアは必死にジュークボックスに隠れる為に縮こまるが彼女の体格ではそれは叶わなかった。

 

「おい嬢ちゃん、隠れられていないぞ」

 

「どうしてこのジュークボックスは小さいの……ねぇ師匠、今あの人どんな顔してる?」

 

「やばいな……酔っぱらって暴れたガキの騎士を追い払った時以来、あんな怒った姿は見たことねぇ――あっ違う、微笑みながらこっちに来てるぞ」

 

「それはもっとヤバい時のやつだよ!」

 

「コーヴァル?」

 

「ゴホンッ――フォー!酒でも飲もうぜ!さっき俺の悪口を言ったお返しに今日はあんたを酔い潰してやる」

 

「ケッ、逃げ出してきおったか腰抜けめ」

 

フォーがコーヴァルに対し冷めた目で見るとそれをマーティンが指摘する。

 

「じゃああんたはどうしてマリアを助けに行かないんだい?」

 

「わ、わしは何があったか知らぬからな!他人の家の問題にむやみに口出しせぬほうがよかろう!」

 

「ねぇ、彼女はなんでまたあんなに怒ってるの?」

 

「さあな、普段あそこまで怒る事はねぇがああなったら俺じゃ止められねぇ」

 

「マリア?どうして隠れてるの?」

 

ゾフィアは笑顔のままジュークボックスの裏に話しかける。

 

「え、えーっと……」

 

「君ね、隠してることがあるでしょ?ていうか私もう全部知ってるんだけどね」

 

「あは、あははっ……」

 

「……はぁ、マリア、騎士競技に出ることが何を意味するかわかってるの?」

 

ゾフィアの言葉にマーティン、コーヴァル、フォーの三人はゾフィアの怒りの意味を理解する。

 

「なるほど……ゾフィアがあんなに怒っとるのはそういう訳か」

 

「ごめん、俺だけわからないんだけどもしかして騎士競技に出るのって褒められる事じゃないの?」

 

「……騎士競技っていうのは基本的にスポンサーからの援助を受けるもんなんだ、援助なしだとどれだけ選手に実力があろうと勝つのは難しいね」

 

「……ああ、なるほど。彼女は一人で騎士競技に出ようとしてるのか」

 

オルフェが騎士競技というものの認識を改めようとするとふとゾフィアがマリアに新聞を見せていた。

 

「『耀騎士再び!?二アール家から新たな騎士がデビュー。規則の栄光奪還なるか』……今日の競技新聞のトップ記事よ」

 

「あははっ……やっぱりお姉ちゃんって有名人なんだねぇ」

 

「笑い事じゃないでしょ!」

 

声を思わず荒げるゾフィアだったがふとオルフェはその記事が気になった。

 

「マーティンさん、あの新聞ってもう一つある?」

 

「ああ、取っているが……読むかい?」

 

「じゃがお前さん見えんのじゃろ?代わりに読もうか?」

 

「大丈夫、こういう時に文字を読む道具があるから……ちょっと音出るから離れるね」

 

「へぇ、便利な道具を思いつく奴がいるもんだな」

 

コーヴァルが感心するとオルフェは席の隅に移動してしまう。

 

「……ちょっと、マーティンおじさん!騎士競技がどんなものか詳しいでしょ!何か言ってやってよ!」

 

ゾフィアがマーティンに話を振るがマーティンは少し考えた様子を見せる。

 

「そうだな、うん……だったらやらせてみればいいんじゃないかな」

 

「――はぁ!?」

 

「マーティンおじさん!ありがとう!」

 

「いやいやいや!今のマリアじゃ私の腕一本、いや……指一本にすら敵わないかもしれないわ。本気で言っているの?」

 

「言い過ぎだよ!」

 

「そう言うてやるなゾフィア。お主はメジャー十六強入りした騎士。お主の腕一本に勝てさえすれば、それで合格ラインじゃよ」

 

「そうそう、今のフォーもゾフィアの腕一本には勝てないしな」

 

「なんじゃと?もういっぺん言うてみい!?」

 

「ふぅ……まぁここの常連客はみんな引退した年寄りばかりで、実力も昔ほどじゃない。だが人を見る目に関しては食えないジジイたちだ。俺はマリアは見込みがあると思「はぁ!?嘘だろ!?」……なんだ?」

 

コーヴァルの言葉を遮るように大きな声があげられたが当人はそれどころではない様子だった。

 

「まだ来て一日だしどこでバレた!?」

 

『おそらく先日の事故でしょう、多くはありませんが人は集まっていましたし、オルフェ様の体格は隠密行動には向いておりません』

 

「どうしたんじゃ、突然声を荒げて」

 

フォーがオルフェを宥めに行くとオルフェは隠し事がバレたというような顔で新聞を渡してきた。

 

「ここの記事、読んでみてください」

 

オルフェが指した記事はマリアの記事よりは小さいがそれでも十分な見出しが張られていた。

 

「なになに……?『伝説のDJの帰還!?引退したN.Nのお忍び旅行か』……もしや、これがお主か?」

 

そこにはコーヴァル、フォーと共に中破した車でのびているオルフェの背中が撮られていた。

 

「伝説のDJ?見た目からしてただものとは思えんかったが大層な二つ名がついてたんじゃなお前さん」

 

「まさか新聞に載せられるとは思わなかったよ……第一今はもう引退してるから復帰する気はほとんどないんだ」

 

「え、おじさん有名人だったの?」

 

マリアがひょっこりと来たがゾフィアがすぐに引きずり戻す。

 

「私はまだ君が勝手に決めたことを許してないわ。今回ばかりは冗談じゃ済まされないのよ」

 

「その点に関しては私もゾフィアに同意するよ。一族のために身を投げ出し、それでも前向きでいられる君の心意気は称賛に値する。しかし騎士競技は、君や観客たちが思っているような華々しいものとは違う」

 

マーティンは大半が機械に置き換えられた片腕をあげて見せた、その様子にマリアはハッとなってしまう。

 

「これはちょっとした不注意がもたらした結果だ」

 

その時マリアは自然とオルフェの目を見てしまう、彼女から見たオルフェの眼はサングラスに阻まれているが微かに見える眼から生気を感じられなかった。

 

「あ、俺は音楽とは関係ないよ?……でもそうだな、俺から言うとすれば何かを失ってから後悔するのは遅いから。騎士競技がどんなものか俺は詳しく知らないけど、やるなら覚悟を持って」

 

「……わかってるよ」

 

「……マリア」

 

「うん。わたし、本気だから。叔父さんはいつも「例え貴族の身分が剥奪されたとしても、紋章が無くなったとしても、金輪際二アールが存在しなくなるわけじゃない」って言ってるけど……私はやっぱり守りたいの。お祖父ちゃんやお姉ちゃんがずっと守り抜いてきたものを」

 

「……」

 

「過酷な現実を知ってなお、茨の道に足を踏み入れる……これこそが騎士じゃ、時代がどう変わろうとな。わしは、マリアなら出来ると信じておる。この一杯はお主に捧げよう」

 

「ハッ、俺もだ、マリアに捧げるぜ」

 

フォーとコーヴァルがグラスを掲げると、マーティンとオルフェも無言でグラスを掲げる。

 

「はぁ……みんな絆されちゃって……」

 

「あの……お願いゾフィアおばさん」

 

「その呼び方は止めて!君より五歳年上なだけなんだから!…私だって二アール本家に仕えてきたんだもの。もちろんマリアの気持ちもわかるわ。でもやっぱり――」

 

「私ちゃんと剣術を磨くから!ちゃんという事も聞くから私の事を信じて!…そうだ!それならゾフィア姉さんが私の教官になってよ!」

 

「へぇ?」

 

「そういえば、私達が最後に剣の稽古をしたのっていつだったかしら?」

 

「えっと……お姉ちゃんがカジミエーシュを去る前だっけ?」

 

「そう、じゃあ――」

 

「ごめん、話の腰を折るようで悪いんだけど、その訓練俺も手伝ってもいい?」

 

「え?」

 

オルフェが想定外の申し出にゾフィアとマリアだけでなくそこにいた全員が驚いた。

 

「なんじゃ、お主戦えるのか?」

 

「ああ、DJを引退した今は民間企業の戦闘員やってるんだ。これでもそこらの奴よりは奇抜で強い自信があるよ?」

 

「君も大概大変な人生を送ってるんだね」

 

オルフェがそう言うとゾフィアはオルフェをじっと見る。

 

「あなた、戦闘経験と使う武器は?」

 

「三年、使用武器は主に大槌、色々仕込んでるけど」

 

「人に戦い方を教えた事はある?」

 

「教えられたことならある、武器に関わらない基礎的な技術を特に」

 

「……そうね、お願いしようかしら。明日の朝、うちの庭の訓練場に集合よ。遅れたりしないわよね?騎士のマリアさん?」

 

「え?あ、うん!絶対遅れないから!」

 

こうしてマリアは明日の朝、訓練をする約束を取り付けたのだった。

 

 

 

 

 

「オルフェおじさん、どうして手伝おうとしたの?」

 

「おじさんではないけど、まあ、君の姉には世話になったからね」

 

「お姉ちゃんと会ったことあるの!?」

 

「あるよ?ていうか同じ職場だし」

 

「ちょ、ちょっと詳しく教えてもらっていい!?」

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