テラでDJやってたけど感染したのでオペレーターになります。 作:ヘルメットのお兄さん
「グオオ……小癪な!」
腐敗騎士の降り下ろす戦鎚を音響騎士は受け流す、金属同士がぶつかり合う音が静寂の競技場に響き渡る。
「何をしている! アーツを使え!」
凋零騎士がアーツを纏わせた矢を放つが音響騎士が左手をかざすと重低音が響き渡り矢を弾く、それに合わせて振り下ろして来た腐敗騎士の一撃を回避する。
『あ──っと!!!? 音響騎士がアーツを使用したのか凋零騎士の複数の矢を吹き飛ばした!! 続く腐敗騎士の一撃も素早い回避を見せている! 二対一、そしてマリア・二アールを守りながらも余裕の態度を崩さない──ー!!』
「オルフェおじさん……」
マリアはゆっくりとだが立ち上がる、アーツでの治療がある程度終わったのか傷も多少マシになっていた。
「……立ち上がれるか」
「うん、私も戦う……!」
「マリア、時間を稼げ。自身の剣ではなく盾と体捌きに集中して」
え、と言う前に音響騎士は腐敗騎士に接近する。腐敗騎士は横振りで音響騎士を襲うが音響騎士は剣を離すと戦鎚を真正面から受け取める。
「グオオ……ッ!?」
「使わせねぇっ」
戦鎚を押し返し足にアーツを込めて手を蹴り上げると腐敗騎士は戦鎚を取り落とした。
蹴り上げた隙を凋零騎士が音響騎士に向けて矢を放つが
「はぁぁっ!!」
マリアが盾を構え凋零騎士に体当たりすると矢は大きく逸れ背後を爆発させる。
「貴方の相手は私だよ!」
「まだ余力が残っていたか、だが貴様一人で俺に勝てると?」
「……わからない。けどおじさんは私に時間稼ぎをするように言ったんだ、だから私は全力で時間を稼ぐ!!」
「……チッ」
凋零騎士が矢を複数放つがマリアは盾を巧みに使い、受け止めるのではなく逸らしていく。
「貴方のアーツはもう見たよ、もう爆発は喰らわない」
「そうか」
矢を構えたまま凋零騎士がマリアへ突っ込むと盾を強く蹴りマリアは体勢を崩した。
「うっ……!?」
そのまま矢を直接刺すため振りかぶるがマリアは盾を捨てると転がり矢を躱す。
「おらぁっ!」
「ガアァッ!!」
「くっ!? 何をしている! アーツはどうした!」
「グルル……アーツを弾きやがる、それに騒音が流れてイライラする!!!」
音響騎士に投げ飛ばされた腐敗騎士は転がるマリアに追い打ちをかけようとした凋零騎士に当たる。
音響騎士は自身の剣と共に腐敗騎士の戦鎚を遠くへ飛ばしていた。
「マリア、大丈夫か」
「だ、大丈夫。まだ行ける……っ?」
突然、マリアの膝が崩れてしまう。自分の足を見るとあり得ない程震えていた。
「嘘、こんな時に……! あっ」
立ち上がろうとするマリアの前に戦鎚を取り戻した腐敗騎士が今まさにマリアめがけて振り下ろそうとしていた。
「くっ」
「貴様はやらせん!」
凋零騎士が矢を放ち音響騎士の動きを阻害する、マリアは滑りこむように後ろへ倒れこむ事て戦鎚を回避していたが次は無かった。
「──―死ね!!」
「────っ!!!」
「おじさんっ!?」
咆哮をあげてマリアにぶつかるように飛び込んだ音響騎士は体格が災いし戦鎚を足に受け潰されてしまう、マリアが青い顔になり肩を見ると既に矢を数本受けアーツが音響騎士を蝕んでいた。
「オルフェおじさんっ、今治療を」
「があぁっ……いや……いい……」
「何言ってるの!? 早く治さないと傷が……」
音響騎士は空を指すと、──―マリアから表情は見えないが、笑っているような気がした。
「時間だ」
次の瞬間、マリアの視界に光が差し込んだ。
太陽を覆っていた雲が消えたのか、あるいは建物に遮られていた光の角度が変わったのか……
しかしマリアだけは、この光を懐かしく感じた。
直後、着弾。大きな音と共に土煙が巻き起こり腐敗騎士と凋零騎士に警報を鳴らした、今すぐこの二人を殺さねばならない。
ふいに、腐敗騎士の戦鎚が金属音と共に空高く放り投げられた。
「……お姉ちゃん?」
「汚れたアーツ……苦難の道を歩んできた、哀しきサルカズ感染者の成れの果て。それが、「騎士」にあるべき姿なのか?」
「お姉ちゃん……? 待って、本当にお姉ちゃんなの? 気を失って幻覚を見てるって訳じゃないよね……?」
「ああ……」
「や、二アール……遅かったね」
「すまない、装備の準備に手間取った」
マーガレットは音響騎士に向けて大槌を投げ渡す、音響騎士はよろよろと立ち上がるとそれを掴む。
「おじさん! 治療を先に……」
「いや……大丈夫」
「大丈夫って……矢も肩に刺さったままだし」
音響騎士は肩の矢を引き抜くと動脈がやられたのか血が噴き出す。
慌てたマリアはアーツで傷を塞ぐ。
「大丈夫じゃないよ!? 何してるのおじさん!」
「あー……ありがとう、マリアに二アール……楽になった」
「動けるか?」
「オッケー、……うん、やっぱあんな
「え……あ、うん」
ふいに、二アールが音響騎士に近づき耳元で何かを囁くと音響騎士の空気が変わる。
「わかった、二アール? これが終わったら妹とちゃんと話した方が良いよ?」
「……ああ」
音響騎士が足に力を入れると周囲にサウンドエフェクトを残しながら飛び上がり、二アールと入れ替わるように競技場の外へと消えていった。
「マリア、準備は良いか?」
「うん!」
二アールは一つ息を吸いこむ、その目はアーツと同じくらいの輝きを放っていた。
「騎士とは!」
「大地を照らす崇高なる存在だ!」
二人のアーツが競技場を照らしだす、まるで自らが太陽であるように。
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「……見つけた、モニーク」
オルフェが降り立つとそこにいたのはいつかバーで聞いた青髪の男の声。
「よぉN.N、また会えて嬉しいぜ」
「そうだね、で? モニーク君は何の任務を受けているの?」
音響騎士はマスクを外しながら青髪の男に問いかけるが男はきょとんとした顔をすると声をあげて笑う。
「あっははは!! そうか! あのサインか! 悪い、あれ俺のじゃなくて相方の名前なんだ。俺はロイ」
「あ……そうなの。じゃあ改めて、何の任務を受けてるの? ロイ君?」
「まぁざっくり言うと耀騎士を見張れって任務だ、実力行使しろとは言われてねぇけど」
「そういうのって見張るだけじゃすまないでしょ」
「だよな、まぁやりあう事になってもあのしかめっ面……ああいや、お前がサイン書いてくれた奴が一緒だから楽勝だと思ってたんだけどな」
「無理そうだった、だからここで見学会?」
オルフェは下を────ビルの屋上から競技場を聞き下ろす、競技場の外ではロドスの一員であるシャイニング、ナイチンゲールがコーヴァル、フォーと戦っていたプラチナの横を通り抜けていった。
「あのツノ付き、ちょっと厄介そうなんでな」
「へぇ、同僚なのに知らなかったよ」
「あぁ、そういやあのまま何もなかったら無事に耀騎士は間に合わなかったのにお前のお陰で助かっちまったな」
「まあね、それに似合ってるでしょ? このライブ衣装」
「そんな実用性のねぇ装備相手に苦戦したあの薬中も可哀想だな」
そうこう言っていると一際大きい歓声が競技場から響く、どうやら決着がついたようだった。
「じゃ、そろそろ戻ろうかな」
「N.Nとしてか? それか謎の騎士として?」
「いいや」
オルフェはビルのふちに足をかけると振り向いた。
「マリア・二アールの友達、オルフェとして」
「*口笛*カッコいいなそれ」
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オルフェが競技場に戻ると既にマリアと二アールは観客の波から脱出した直後らしく、ゾフィア達三人が抑え込んでいた。
「やっほ、ゾフィア。大丈夫?」
「オルフェ! あなた……いえ、いいわ。とにかく今はこの人の波を抑えるのを手伝ってちょうだい!」
「おっけ、ちょっと待ってて」
オルフェは走り出すとMC──ビッグマウスモーブの元へ来た。
「やあモーブ、元気?」
「え、えぇ!? オルフェさん!? 最初の試合以降いないと思ったら……い、いえそれよりまた会えて嬉しいです!」
「7年ぶりくらい? ごめんちょっとマイク借りていい?」
「は、はい!」
モーブからマイクを受け取るとオルフェは軽くマイクを小突く。
『あ、あーあー。マイクテスト……はい皆さん落ち着いてくださいー今回の優勝者マリア・二アールとマーガレット・二アールは既に競技場から退出いたしましたー』
オルフェが喋り出すと観客はにわかに騒ぎ始める。
「誰だ? モーブじゃないぞ」
「馬鹿! あの声はDJ N.Nだ! なんでここに!?」
「そういえばマリア・二アールの最初の試合でも観客に居たって……」
『彼女たちは今回のトラブル続きの出来事に大変疲労してますー、その状態の彼女たちを追いかけるのは少々ひどくはないでしょーか? そこの記者とか、そこもそこも。はいストップ!』
「どうしてこの場所に! 写真撮れ写真!」
「マリア・二アールと何か関係があるのか? おい! 彼に取材しに行くぞ!」
『ですが皆もこのままだと彼女たちの家に突撃すらしかねないので俺が何とかしようと思います』
「あの……オルフェさん? 一体どうやって……」
『俺、マリア・二アールと仕事の関係でちょっとした知り合いになったんで君たちの話を俺が代わりに聞こうと思いまーす』
ざわめきが大きくなる、しかし先程と違うのは標的がマリアからオルフェに代わったということだ。
『あ、あとサインあげる』
その一言を皮切りに、まず熱狂的な音楽ファンが、遅れて記者、最後に普通の観客がオルフェに殺到し始めた。
先程まで抑えるのに必死だったゾフィア達はその力に唖然としていた。
「……ファンって凄いわね」
「最早宗教の類だな、うちの店で宣伝したら大変なことになりそうだ」
「そりゃ困る、儂の定位置が無くなってしまうわい」
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数日後
カジミエーシュ、その都市の暗い隅。感染者が集まる場所にシャイニングとナイチンゲールはいた。
「……ここには、人が住んでいたようですね」
「はい。彼らの生活の痕跡がまだ残っています……ですが、皆さんは隠れてしまったのでしょうか?」
「痛た……そのようだね、僅かだけど人の息声がする」
オルフェはタンクトップを身に着け、肩と足に包帯を巻いていた。
「オルフェさん……やはり休まれた方が、致命傷ではないとはいえ深く刺さっていたのは事実ですし」
「女の子二人を放置するほど人でなしじゃないよ、それに……」
オルフェはマリアの顔を思い出す。
「俺が家族会議に顔出してもしょうがないし」
「ふふ、そうですね……」
ナイチンゲールが笑うとオルフェを見る。
「それにしても……私もオルフェさんの騎士姿、見てみたかったです。二アールさんが褒めていたので」
「あれが? まぁロドスに戻ったらまた着てあげるよ、ちょっとマスクのせいで顔が蒸れるけど」
すると、爆発音のような音が鳴りナイチンゲールが思わず身を縮こめる。
「きゃっ!? ──―何事でしょう?」
「工事現場の方々が……ビルと……その地下部分を解体しています」
「……ですがもし感染者がまだ地下に隠れていたら……?」
ナイチンゲールはオルフェの方を見るが彼は何も言わず首を振った。
シャイニングはナイチンゲールの手を取ると歩き出す。
「今日みたすべてを記録しておいてください、リズさん。二アールさんなら何かわかるかもしれません」
すると、オルフェの携帯が音を鳴らす。着信は……
「この着信音、アーミヤからだ。……あれ、まだ長期休暇残ってるよね俺?」
オルフェは恐る恐る電話に出ると顔色がゆっくりと変わっていった。
「もしもし……うん………………うん…………えぇ? それで? ……マジか、わかった。引き受けていいよ」
「オルフェさん、どうしましたか?」
シャイニングが顔を変えるオルフェを心配するとオルフェは驚いた顔で答えた。
「……騎士メジャーからだ、ロドスのN.NじゃなくてDJ N.Nとして……どこで俺がロドス所属だって知ったんだ?」
おまけ
N.N専用コーデ サウンドナイツ
アンビエンスシナスタジア特別モデル/サウンドナイツ。DJ「N.N」の友人との協力で作られたライブの「没衣装」。着心地の良さに反した持ち運びの悪さとそもそもDJがライブ衣装を着る機会がほぼ無いので現役中に使われる事は無かった。