テラでDJやってたけど感染したのでオペレーターになります。   作:ヘルメットのお兄さん

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暗い暗い地上へ

 ────―剣がケースにぶつかり火花を散らす。

 審問官が現れた後、関りを避けようと一度近くの廃屋に移動したスカジ達は追ってきていた審問官に理由もわからず襲われていた。

 

「くっ……あんたの目的は何!?」

 

「お節介なのね、あなたには関係ないわ」

 

 審問官の風を斬る剣先を全て紙一重で躱し、挑発でもしているかのように動いている。

 

「す、すごい……歌い手さんが審問官を挑発してる! ────あっ、もしかして挑発じゃないのかな、歌い手さんってずっとあんな感じだったし」

 

「このイベリアでの出来事で私達と無関係なものなど一つもない、法律が禁じた全ての過ちを察知し、それらを正す必要があるの」

 

 審問官は険しい顔でスカジ達に向けて叫ぶ。

 

「ここの海は間違っているわ。あいつらが増え続けている。この都市はもうすぐ……いいえ、既にもう手遅れかもしれない」

 

 鋭い一撃がスカジを狙う、しかし彼女の首を捕える事は出来なかった。

 

「言いなさい! この異常は全て、あんたがもたらした……そうでしょう? エーギル!」

 

 審問官は剣を収めるとハンドキャノンを取り出し、両手でスカジを捉えた。

 

「えっ!?」

 

「伏せなさい」

 

 スカジはアニタを突き飛ばすと審問官はハンドキャノンにより廃屋を吹き飛ばした、周囲には土煙が立ち上り互いの姿が見えなくなる。

 

「ふっ……エーギル、私の凄さが身に染みたかしら?」

 

「スカートが……一箇所、穴が空いちゃったじゃない。ホセさんに返さないといけないのに……」

 

 スカートが破損した以外全くの無傷だったスカジに、審問官は動揺した。

 スカジは彼女にとって意味のないこの戦いを終わらせようと口を開こうとする、その時、一筋の光が夜闇を裂いてスカジの頬を照らした。

 光を持っていたのは、一人の大審問官だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、オルフェは海の中で暴れていた。

 

「ゴボゴボゴボッ!! (何処みても怪物ばっかりじゃねぇか!)」

 

 海の中には洞窟の比ではない規模の怪物が住んでおり、オルフェはひたすら水面下を目指していた。

 体が鈍くなる海の中でも、辛うじてオルフェの力に軍配が上がるようで怪物たちを倒しながら泳いでいた。

 

「(早く岸にでも上がらないと窒息するぞ……光は見えるんだ、そう遠くはない筈……)」

 

 その時、オルフェの肩に鈍い痛みが走る。

 部位を見ると一匹の怪物が歯を喰い込ませオルフェを千切らんとしていた。

 オルフェは肩の怪物の根本を掴むと握力のみで握り潰す、力が弱くなった怪物を引き剝がすと泳ぐ速度を上げる。

 

「(しめた! 光だ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌い手さん、歌い手さん? いるんでしょう?」

 

 アニタは大審問との戦闘後、姿を消していたスカジを探し一つの空き家に入った。

 

「────離れなさい」

 

「歌い手さん、やっぱりいたんですね、色々さがしましたけどここなら審問官にも気付かれないでしょうしね」

 

「聞こえなかったかしら……血が出てるの、早くここから離れなさい!」

 

「──そう簡単には逃がさないわよ」

 

 アニタは背筋を凍らせた、気づかれていないと思っていた審問官の声が自分の後ろから聞こえてきたのだから。

 

「も、もしかして私についてきてたの……? 全然気付かなかった!?」

 

「こほん……一般人に気づかれるわけないでしょう? 勿論、ここを見つける方法なんて幾らでもあるけど……」

 

「またあなたなの……」

 

 スカジは初めて苦い顔をした、アニタがふとスカジを見ると服の隙間から決して浅くない傷跡が見えた。

 

「歌い手さん、怪我を……?」

 

「もう油断しないわ……エーギル、絶対にあんたを捕まえてやるんだから!」

 

 審問官が剣を構えようとした時、アニタが声を上げる。

 

「あれっ、なんだか外から音が聞こえます……ぬるぬるの何かが、地面を這ってるみたいな……それも沢山の……」

 

 その言葉にスカジは審問官の腕を素早く取り、拘束する。

 

「あっ!? 離しなさいエーギル! あんたは上手く捕まえたと思ってるでしょうけどまだ私にはハンドキャノンが────」

 

「静かに────―来てるわ」

 

 アニタが疑問に思った音の正体は、スカジ以外の正気を削るのに時間はかからなかった。

 

「きゃっ!」

 

「う、わああ──―」

 

「来たわ」

 

 スカジは怪物を強く蹴り飛ばすと花のような怪物は壁に叩きつけ変形するがそれでもなおうねうねと動いていた。

 

「こ、これは!? 黒い……花? ううん、鱗獣…………てか、何で動いているの……うえっ、吐き気がするわ……」

 

 審問官が激しい嫌悪感を抱いていると空き家の窓を叩く音が聞こえる。

 

「ま、窓を叩いてます! もしかして……中に入るつもりなの!?」

 

「い、入れてはダメ! 窓をちゃんと閉めて────も、もう入って来た!」

 

 審問官が剣で怪物の一匹を斬りつけるが深くまで切れていても必死に怪物はスカジ達に近づいていく。

 

「うわっ、これでも動くの!? 床を這い回ってるし……こっちに近づいてくる!」

 

『皆さん! 窓の外の怪物が増え続けています! このままでは──!』

 

 Sound-Mが警告すると審問官がハンドキャノンを手に取り弾を確認する。

 

「残り一発……いい!? 私が連中を撃ったら、あんたたちはこの家から飛び出して、廃墟群の奥に向かって走りなさい。こんな割れ窓より向こうの方がまだ丈夫だもの!」

 

「で、でも、あなたの手……震えてますよ」

 

「な、なんてことないわよ! 聖なる経典が……私に力を与えてくれるから。だから、わ、私は、怖くなんかない!」

 

 その時、スカジは気づいた。

 怪物たちの這い回る音に混じって、謎の破壊音が聞こえ始めたことに。

 

「……」

 

「えっ────歌い手さん!?」

 

「な、何やってるのあんた!?」

 

『スカジ様!?』

 

 スカジは怪物を蹴散らしつつ部屋から飛び出すと彼女の目には久しい顔が飛び込んできた。

 

「だああぁっ!! こいつらいつまで俺に引っ付いてんだよ! 久々の地上なんだからいい加減離れろ!」

 

 いつの間にか行方不明になっていた最近出来た友人で──

 時々心地よい音楽を聞かせてくれた、友人が──

 怪物たちを相手に素手で殲滅していた。

 

「オルフェ……?」

 

「誰だ!? 今こっちは危ないから……」

 

 飛び掛かってきた怪物を殴り潰すとスカジの方にオルフェは振り向いた、そこでスカジは初めてオルフェのサングラスが外れているのに気づき、()()()()()()()()()()が見えていた。

 

「あなた……目が……」

 

「その声……あっ、もしかしてスカジか!?」

 

「え、ええ────きゃっ」

 

 オルフェは風すら置いていきそうな速度でスカジに迫り、その手を取ると涙を流しながら握る手を振り回した。

 

「マジか……マジか!? お前そんな顔だったんだな……!! すっげぇ美人じゃねぇか!」

 

「ちょ……ちょっと……」

 

 スカジは一瞬ではあるがここに来た目的が飛び、顔を背けてしまう。

 

「あなた、もしかして目が見えるの?」

 

「あぁ! 実はさっきまで海にある洞窟にいてな、気が付けば目が見えてるしアーツが使えなくなるし無茶苦茶だったけど……今だけはすっげぇ嬉しいよ!!」

 

 その時、スカジは違和感を感じ取った、オルフェが纏う雰囲気が変わっている事に。

 

「オルフェ……あなた洞窟で────」

 

 しかし違和感を言語化する前に怪物たちが更に海から現れる、スカジが剣をケースから取り出すとオルフェも涙を止め拳を構えた。

 

「取り敢えずこいつらを倒してから話そう、俺も聞きたいことがあるしな」

 

「……いえ、そうね。でもここはいいわ……貴方にお願いがあるの」

 

「うん?」

 

「あれは……私を狙ってるの────―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

 斬撃の音がする、スカジがボロボロの小屋を飛び出し、残りの怪物を審問官が幾度となく切り捨てて尚、怪物は現れていた。

 

「し、審問官さんっ」

 

 アニタの声で背後から迫る怪物に気づいた審問官は、振り向きざまに剣を振るってから自身が思っているより疲弊している事に気づいた。

 

「どうして逃げないのよ、この村の住人はやっぱりおかしいのね!」

 

「し、審問官、さん……う……後ろ……」

 

 アニタが怯えながら指を指す方に視線を動かすとそこには今までの怪物と比べても一際大きい、花のような怪物がいた。

 

「っ!」

 

 審問官は思わず後ずさる、今までの怪物と比べ大きく、冒涜的な姿をしていた。

 

「……いい、今度こそ私の銃撃に合わせてあんたは逃げなさい。もう自分を守れるかすら怪しいんだから」

 

「ち……違います! そいつじゃなくて……」

 

「え……」

 

 審問官が呆気に取られた声を上げた瞬間、何かが過ぎ去った音と共に目の前の怪物は真っ二つに千切られ絶命していた。

 

「お前らか、スカジの言ってた奴は」

 

 その声の主は、巨大だった。

 

 二メートルはあろう人間が自分たちを見下ろしていた、その目は異様でどこかあの怪物達を想起させる恐怖を内包させていた。

 

「っあ、ああっ!!」

 

 気が付けば、撃っていた。今撃たなければ殺される気がしてならなかったから。しかしその銃撃は目の前の男を殺す事は出来なかった。

 

「……あっぶねぇ……何すんだいきなり! スカジから助けてやれって言われたのに……地上に出たのに土に還るかと思ったぜ」

 

 避けられた。もう残された武器は手元の剣だけ、しかしあの歌い手の時は倒せると思ったのに、どうしてもこの男は倒せるという考えが浮かばない。

 

『オルフェ様! ご無事だったのですね!!』

 

「おぉ! sound-Mか! 悪かったな、今まで放ってしまって」

 

「……あ、あんた、その男と知り合いなの?」

 

『はい、この方が私の探し続けていたオルフェ様です!』

 

「お前たちがスカジの言ってた審問官とアニタって奴だろ? あいつにお前達を守るように言われてな。立てるか?」

 

 いつの間にか自分がへたり込んでいる事に気がづくと、慌てて立ち上がり咳払いをした。

 

「守るって……私はあの歌い手に頼まれる覚えは無いわ、それに貴方に助けられる覚えも無い」

 

「随分と疲れてるみたいだが?」

 

「わ、私は審問官なの! この程度で倒れるような鍛え方はしてないわ!」

 

「ああ、まあどっちにしろ休んでおきな。もうすぐ終わるだろうし」

 

「え……?」

 

 それから審問官は、いつの間にか怪物たちの音が聞こえなくなり、静寂を取り戻している事に気が付いた。

 

「さて……俺も倒しちゃいたが案外早く終わったな、行くか? あいつの所に」

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