テラでDJやってたけど感染したのでオペレーターになります。 作:ヘルメットのお兄さん
ロドス・アイランドには様々なオペレーターがいる。
自らオペレーターを志願する者
患者や避難民として保護された後にオペレーターを志願するもの
他企業から派遣される者
理由は様々だがこの方舟に乗る者たちは皆鉱石病という病と闘う者達だった。
その中には著名な人物もオペレーターになる事があった。
「リーダー、今日はちょっと出かけてみない?」
リーダーと呼ばれた者……ドクターはコータスのCEOが持ってきた書類を片付け終えると自分に提案をしてきたエクシアから一枚の紙を渡される。
『DJ……ライブチケット?』
「そ! 知り合いから貰ったんだけど今日はテキサスもクロワッサンも用事があるって断られたからさ~」
エクシアが不貞腐れながら話しているとふと裏返しにして内容を読む。
『伝説のDJ復活! N.Nが帰って来る……?』
「N.Nって言うのはすっごい有名なDJなんだ、うちのボスも気に入ってて一緒にライブした事もあるんだよ!」
エクシアの言葉に何度か顔を合わせたペンギンの顔を思い浮かべる、結構気難しい……というよりはすぐに手を出しかねない性格の彼が気に入っているという事にドクターは興味が湧いた。
『このライブはどこで行われる?』
「龍門だね、今日ロドスが龍門の近くを通ってそれでこのことを思い出したんだ~」
『行ってみよう』
「さっすがリーダー! そうだ、リーダーの分含めてあともう一枚あるから良かったら誰か誘ってね!」
そう言ってエクシアはチケットと待ち合わせのメモを置いて執務室を出て行った。ドクターはしばらく考えた後アーミヤを誘った。
龍門の指定された場所に向かうとそこには既に大勢の人で賑わっていた。
『すごい人気だ』
「ドクター、私エクシアさんが言っていたN.Nという方について調べていたんですけれど3年前までは彼が出たライブは大成功するなんて言われていたそうです、ですがいつの間にかぱったりと消息が途絶えてしまったみたいですね」
『振り回すタオルは買った方が良いかな』
「既に売り切れてしまっていますね……あ、キーホルダーはまだ売っているみたいです」
ドクターとアーミヤが合流前に龍門の露店を見ているとアーミヤが一人の男とぶつかってしまう。
「きゃっ……」
「おっとごめん、大丈夫?」
男はよろけてしまったアーミヤを助け起こすと頭を下げて謝罪の姿勢を見せる。
「ちょっと急いでて、周りをちゃんと見てなくて悪かったよ」
「いえ、こちらこそすみませんでした」
『二人とも、怪我はない?』
ふとドクターは目の前の男を観察する、エーギル人、だろうか。身長は相当高い、確実に190以上はあるだろうし下手をすれば200を超えるかもしれない。首にはヘッドホンをかけており細身ではあるがしっかりと鍛えているのが縦縞の入った半袖から見える筋肉からわかる、灰色の髪は後ろで結ばれており目はサングラスで確認ができない……?
ふとドクターが男を見ると信じられないものを見たかのような表情をし石のように固まってしまった。
『……?』
「あの……大丈夫ですか?」
「……ド……ドドドドクタドク……!? え……?マジ……!?」
『毒?』
ドクターの言葉に男はハッとなると大きな咳ばらいをした。
「い……いや、なんでもない……おっと、もう時間が無いな……俺はもう行くから。お二人さん、ライブ楽しんで!」
男はそう言うと慌てた様子で雑踏の中に消えていった。
「あ、リーダーやっと見つけたー! 急がないとライブ始まっちゃうよ!」
その後自分達を探していたエクシアと合流しライブ会場に到着したドクターたちは突如起こった大歓声に気圧された。
「始まったよ二人とも!」
エクシアが言うと二人は視界にエクシア達ペンギン急便のボスであるエンペラーの姿を映す。エンペラーはマイクを持つと歓声に向かって声をあげる
「ヘイ! ようこそ俺のライブへ、子猫に小犬たち!」
うおおおおおお!!!!!
「まず大切なコトを言っておくぜ。俺のいるライブハウスこそが俺たちペンギン帝国の領土なんだけどよ。お前ら、俺の視界にいるよな?」
「お前らここにいるって事は帝国へのビザ持ってるんだよな?」
ひと際強くなる歓声と共に観客は持っているチケットを掲げた、それに合わせてアーミヤとドクターもチケットを掲げた。
「ようし全員持ってるな? ようこそ俺の帝国へ!!」
歓声は最高潮となり彼の持つ代表曲が流れ始める。
「このままライブ開始と行きてぇが今日は特別な野郎がやってきやがったぜ! 知らねぇ奴はいねぇよな?」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」
「3年間も消えやがって馬鹿野郎!! 叫んで呼びなお前達! 伝説のDJ『N.N』の復活だ!!」
エンペラーの声と共に舞台裏から現れたのは先ほどぶつかった大きな灰髪のエーギル人だった。
アーミヤとドクターが驚いているとN.Nと目が合い二人に向かって手を振られ、周囲のファンが何人か倒れた。
黄色い声援が聞こえる中N.Nはターンテーブルの前に立つと首に下げたヘッドホンを片方かける。
それからドクターとアーミヤが体験したのは伝説のDJという肩書に恥じない最高のライブだった。
「ドクター、楽しかったですね」
ライブの帰り道、N.N、と書かれた帽子を被ったアーミヤが皇帝と書かれたTシャツを着たドクターに話しかける。
「どう? リーダー、面白かったでしょ!」
『記憶を消してもう一度訪れたいよ』
「エンペラーさんのラップも凄くかっこよかったですね、あんなに自然に言葉が出せるのは凄いです」
「ボスは口喧嘩で負けたとこは見たこと無いからね~、これからも負けないんじゃないかな……あれ?」
エクシアがおや、と目を凝らすと先程までターンテーブルに居たN.Nを見つけた。
「N.Nじゃん! リーダー、サイン貰いに行かない?」
『Tシャツにサインして貰おう』
「……ドクター、N.Nさんこちらに向かってきていませんか?」
『「え?」』
エクシアとドクターが気の抜けた声をあげ、改めてN.Nを見るとこちらに手を振りながら笑顔で走って来るではないか。
「こっち来てるじゃん、リーダーN.Nと関係あったの?」
『ライブ前に一度ぶつかったがそれだけのはず……?』
ドクターはそういうがエクシアから見た彼の笑顔はまるでずっと探していたものがようやく見つかったような表情で……ふと彼の後ろをよく見るとN.Nと共に走る者が一人……二人……四人……百人以上はこちらに向かって走って来る。
ドクターとアーミヤが唖然としていると目の前まで来たN.Nは二人を捕まえると脇に抱えた。
「ひゃあっ!?」
『!?』
「ようエクシア! 久しぶり、そしてお願い俺を逃がして!」
「ええ!? エクシアさんお知り合いだったんですか!?」
「あ~うん、一応…ボスが一緒にいる時に何度か会ったよ」
言いながらエクシアはN.Nの為に先導して逃走経路を確保する。
「いやほんとはお忍びで君達に会おうと思ってたんだけど予想以上にファンが待ち構えてて逃げきれなかった! ごめん!」
「あたし久しぶりだから忘れてるだけかもだけどN.Nってそんな雰囲気だったっけ?」
「こんな雰囲気だよ! というかどんな雰囲気だと思われてたんだよ俺!」
「あ、あの私たちに会おうとしたと言うのは」
「いたぞ! こっちだ!」
ファンの熱意は相当強く、複雑な道を通った筈だが全て看破されていつの間にか大通りに誘導されていた。
「いやぁ俺ってば凄く人気者! サインあげたら帰ってくれるかな?」
「捕まったらサインどころか身ぐるみ全部奪われるんじゃない?」
万事休すかと思われたその時、ファン達の背後から年代物の車が飛び出し二人(と荷物二人)の前で停止した。
「よう、乗ってくか?」
車の後部座席にはエンペラーが乗っており、運転席にはテキサスが座っていた。
「最高のタイミングだよエンペラー! 俺上に乗るから二人をよろしく!」
N.Nはドクターとアーミヤを座席に押し込むと屋根の上に飛び乗った。
エクシアも乗り込むと車は大きなエンジン音を吹かせた。
「アジトへ向かう、安全運転で頼むぞテキサス」
「了解した」
「ぐえぇっ!?」
テキサスがペダルを踏むと数度タイヤが空回りし見た目とは裏腹に力強い音と共にファンを蹴散らしながら進みだす。
余りの勢いにアーミヤは座席に貼り付けられドクターも身動きが取れなくなっている。
「安全運転って言っただろうがよお……」
エンペラーに至っては逆さのまま転倒していた。
「ボス、もうすぐ道路に入る……っ」
テキサスがアクセルの勢いを落とそうとしたその時、衝撃が起こり車体が大きく揺れる。
「今度は何!」
「おいエンペラー! なんか武器持った奴らが取り囲んでんだけど!?」
屋根上からN.Nが顔を覗かせるとエンペラーは舌打ちをした。
「あー、そういえばここら辺マフィア共の縄張りじゃねぇか……」
「ボス、あたし今日弾持ってきてないよ?」
「エンペラー、要はあいつらって君のファン?」
「ああ、ファンだ。ただし銃と爆発でもてなす熱烈な歓迎が大好きなファン共だぜ」
「じゃあ俺が何とかする、少しだけスピード落とせるか?」
「聞いたかテキサス」
「了解」
テキサスが車のスピードを少し落とすとアーミヤとドクターに警告する。
「二人とも、今のうちに耳を塞いでおいてくれ」
アーミヤがぺたんと耳を塞ぎ、ドクターもマスクの上から塞ぐ。するとN.Nはアーツを展開し屋根の上に簡易的なターンテーブルとスピーカーが出現した。
「特別だぞ、過激なファン達! N.Nの即興技の披露宴だ!」
マフィアたちはスピーカーが出現した瞬間クロスボウや銃弾が発射されたがN.Nが非常に短い音楽を流すと同時にスクラッチを行うと衝撃波がスピーカーから発生し、弾丸を全て弾いてしまった。そしてもう一度アクションを起こすと自分達の乗る車を除きマフィアの乗る車のタイヤを全てパンクさせた。
「演奏終わり! あっさりしてたけど皆大丈夫だったか?」
「はい、私たちは大丈夫です、けど……」
N.Nが屋根の上からみんなの無事を確認するとアーミヤは少し気まずそうな顔をしていた。
「あいつらに車体をへこませなかったのは流石だなN.N、だが……」
エンペラーが窓を指した先をN.Nが見ると綺麗に窓ガラスが全て割れていた。
「修理代はお前持ちだ」
「……これ一枚いくら?」
「ボス、奴らの縄張りを抜けた」
「ていうかN.Nアーツ使えたの? あたし初耳なんだけど!」
「そりゃ言ってなかったから……」
「ドクター、大丈夫ですか……?」
『大丈夫』
屋根上と会話するエンペラーたちを乗せアジトまで到着したテキサスは車を停めるとエクシアと共にグロッキーになったアーミヤとドクターを支えアジトへ入り、N.Nはエンペラーと共にアジトへ入っていった。
アジトの中ではクロワッサンがソファでくつろいでいた。
「おーボス帰ったんか、って……旦那さんやないか、なんでウチらのアジトに?」
『成り行きで……』
「ただいまー、さっき車があったけどボスもう帰ってきたの? ……ってドクター? に、あれっ!? N.Nさん! 生きてたの!?」
ソラが帰ってくると彼女はなぜかドクターがいることに驚いたがそれ以上に目の前のエーギル人がいる事に驚愕した。
「久しぶり、ソラ。驚くことにまだ生きていたよ」
「ほんとにびっくりした! 三年もいなくなってて事務所の人たちも皆悲しんでたんだよ?」
ソラはN.Nの手を取るとぶんぶんと嬉しそうに振っている。
「あの……いいでしょうか、N.Nさん」
「あ、ごめんね。放置しちゃって……」
「その、私達はどうして連れてこられたのでしょうか。N.Nさんとの関係も私達事態に繋がりはないはずですし……」
「そうそうそれの事なんだけどちゃんと理由はあるよ」
N.Nがそう言うとポケットから二枚の紙を取り出しドクター達に手渡した。
『これは……ロドスの求人票?』
「それと……これは履歴書ですね……まさか……」
「そ、本題は俺をオペレーターとして雇ってくれない? って事」
『……なんだって?』
「何ぃ!?」
ドクターが疑問の声をあげ、アーミヤが反応する前にエンペラーが先に驚愕した。
「N.N、お前一体どういう風の吹き回しだ?」
「理由はあるよエンペラー、ロドスは給料が中々良い、それと一国家と違って都市間の移動も頻繁に行われる。それに契約中も結構自由に動けるらしいし何よりも……」
N.Nはサングラスを外しズボンの裾をまくる。
「!!」
「鉱石病の治療に関してはここが一番だと思ってるよ」
その光景にアーミヤはおろかエクシアやソラ、エンペラーまでも驚愕の表情を見せた。
今まで隠れていた目は眼球が真っ白に染まっており光が宿っていなかった、そして何よりも膝下には源石が体表から浮き出ておりN.Nが感染者となっている事の証明書となっていた。
「お前……まさか三年前消えた理由ってのは」
「ちょっと旅行中事故に巻き込まれてね、感染した時に鉱石病の影響で失明したよ……まぁ聴覚は良くなったから音で大体把握できるけど」
「待って下さい、N.Nさん。貴方は三年間鉱石病の治療は行っていましたか……?」
アーミヤが険しい表情で聞いてくる、それに対しN.Nは
「あぁ、一応抑制剤なんかは何度か買ったよ、ちゃんとした治療は受けられなかったけど三年耐えたのは健闘したよ」
「そもそもなんで隠しとったん? 三年も隠れんとさっさと公開した方が復帰も早かったんとちゃう?」
「本当はさっさと話してどこかの医療機関にでも行こうとしたんだけど、その時だいぶ辺境に行っちゃってて、愛用のバイクも通信機も壊れちゃったから目立った場所に帰れるまで三年もかかったんだよ」
その言葉に全員が絶句する、軽く言ってはいるが三年も一切の音沙汰がない程の場所で一人徒歩で歩いてきたという事になる。
「で、確か……シエスタだったかな。通信機器も全滅してたからそこにたどり着いて友人に連絡とって助けてもらったんだ」
「良く生きてたね……でも生きてて良かったぁー……」
ソラがほっとするような声をあげるとN.Nが口を開く。
「まぁとにかく俺は治療も含めロドスに行きたい! あと出来ればお忍びで!」
『そういう事ならロドスは歓迎するよ』
「はい、ですが詳しい事は改めてロドスで話しましょう」
ドクターとアーミヤが歓迎の意を示すとソラが待ったをかけた。
「まって、N.Nさんがオペレーターになるのは嬉しいけど……DJの仕事は大丈夫なの?」
「あー……それなんだけど元々ライブ自体は今日だけのつもりなんだ。作曲はやるつもりだよ」
「まあそいつは聞いてたから驚かねぇが……実質的に引退じゃねえか、本当にいいのか?」
「これでも多芸の自信はあるからね、色々やっていけるつもりだよ」
「……そうかい、止めるなんてダサい真似はしねぇがいつでも戻れる準備はしてやるよ」
「エンペラー……あ、そうだ。これ俺のコレクション、俺はもう聞き終わったしあげるよ」
「おう……ってこいつはレアもののウルサスレコードじゃねぇか! こっちは数点しかねぇマジもんの限定品だと!? *声にならないペンギンの悲鳴*」
「ボスがこない錯乱するの久々に見たなぁ、しかしええんか? ボスが発狂するほどのレアもんを渡してもうて」
「まあ、エンペラーなら壊さないって信頼できるし? それに音楽はもっと多くの人に聞いてもらわないと」
「あぁ、その通りだな。こいつは本気で守ってやるよ、安心してロドスに行きなN.N」
「それじゃああたしが運転しよっかな! ロドスまで一直線で行くよ!」
「それじゃあエンペラー、またいつか」
「あぁ、期待しといてやるよ」
エクシアの運転の元ロドスへ向かった三人を見送ったエンペラーは僅かに体を震わせた。ふとそれをみたソラが
「(ボスも涙ぐむ事もあるんだ……)」
などと思った直後
「よっしゃあ! お前ら今日はパーティだ! こいつを流して酒とメシで騒ぐぞ!!」
ソラは自分のボスがどういう人物かを思い直した。
書いてて思ったんですけど世間的に有名だったオリ主って設定的に大丈夫なんですかね、後から発覚する設定次第では破綻しかねないしTRPGの万能金持ち枠みたいな感じがしないでもない様な…まぁもう書いたしこのまま進めるか!