憂鬱の魔神   作:萎える伸える

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 天弓(てんきゅう)六八


『天泣』

 

◆◇◆

 

 

「──それで、これはいったいどういう状況なのかな? げほっ、これは……かなり衰弱している……?……聞いているのかい? ──ナナホシ・ユウ」

 

「……スピン、クス……?」

 

「ああ、ボクだよ? ……随分とやつれているね。何があったんだい」

 

「……あ……ぼ、僕が……僕が……ぜんぶ悪くて……っ……フェリスが……っ」

 

「……落ち着いて、一度深呼吸するんだ」

 

「……はっ、はっ、はっ」

 

 

 深呼吸。深呼吸?

 あれ……深呼吸って、どうやるんだっけ……。

 

 ユウは気が動転するあまり呼吸もままならなかった。

 

 吸って、吐く。それだけだ。

 しかし、狂ったように脈動を打つ心臓がそれをさせてくれなかった。呼吸しようとすればするほど、過呼吸になり苦しさが増していく。

 

 ──苦しい。苦しい。苦しい。

 

 ごめんなさい。ごめんなさい。僕が、僕がぜんぶ悪かったから。ごめんなさい。──ごめんなさいっ。

 

 罪悪感は止めどなく、溢れて溢れて止まらない。涙が溢れて止まらない。

 視野は狭くなり、視界は暗闇に染まり、何も見えなくなる。

 

 ──楽に、なりたい。

 

 はやく、一刻も早く罪悪感から逃れたい。フェリスに会いたい。この終わった世界を、はやく終わらせたい。

 

 そうやって、狭くなった視野で自暴自棄な思考に陥ってしまう。

 あまりに恥知らず、あまりに自分勝手な考え。

 しかし、それは『合理的』。それが一番『効率的』。故にそれは『正しい』。

 

 ああ、それではまるで──人形みたいじゃないか。

 

 ユウはスピンクスの方を見れなかった。責められると思った。あんな啖呵を切っておいて、フェリス一人守ることもできずに、それどころかその責任から逃れようとすらしている。

 侮蔑して、蔑んで、罵倒してしかるべき愚行。

 

 怖かった。

 

 でも、そうされて当然だ。僕は、間違えた。僕が悪いんだ。僕が、僕が、僕が全部悪い。僕が、悪いんだ。認めろよ。僕には──フェリスといる資格なんて。

 

 ──苦しいっ嫌だっ僕はフェリスと──。

 

 何してるんだろう、僕は。言い訳して、いやだいやだって、何言ってるんだ。フェリスの事を考えろよ。彼女は今、死のうとしてるんだぞ。僕のせいで、僕のッせいでっ。

 

 心臓が痛い。呼吸ができない。涙が止まらない。喉が奇妙な音を鳴らしてる。

 

 思考の渦に囚われて、自責と拒絶と恐怖を堂々巡りするだけ。

 

 ──僕は……本当に……──

 

 

「──落ち着いて」

 

「───?」

  

 

 その声は、いやに優しい感触だった。

 同時に、ユウの身体を温もりが包んだ。

 ユウの身体も雨に打たれだいぶ冷えていたのだろう。その温もりはとても、とても温かかった。

 

 

「──大丈夫」

 

「───」

 

 

 思考が、止まった。

 苦しく、自己嫌悪を重ねるだけの不毛な負の連鎖を、その心音が止めた。

 ユウは、スピンクスに抱きしめられていた。ユウの頭は彼女の胸に当てられていて、そして、彼女の心音が、弱く、か細いその心音が、確かに聞こえた。

 

 

「……ゆっくり、ゆっくりでいい。まずは深呼吸をして、そうして話してくれ。何があったのか。できるね?」

 

 

 ──これが、スピンクス? なんだこれ。なんで、こんなに。……優しくするなよ。僕を責めて、責めて、罵倒しろよ。なんで……こんな……。自分だって苦しいくせに。こんな、弱い心音っ。

 

 まだ、生きている。でも、もうすぐ止まってしまう。苦しいはずだ。怖いはずだ。フェリスが死ぬのはもう分かってるはずだ。それはつまり、自分も死ぬということだ。前とは違う。今度は確実な死だ。コピーはない。死ぬんだぞ。スピンクスの事も、僕が、殺すんだ。

 

 ──やめてくれ──

 

 話したところで、何も変わらない。話す意味なんてない。

 頭の中では、そう思ってたのに。

 

 

「…………フェリス、が……突然倒れて、それで……」

 

「……うん……うん」

 

 

 なんでだろう。僕の口は勝手に動いて、言われた通りに何があったのか説明していた。

 

 

 ──話して、楽にでもなろうってか。

 本当に、お前ってやつは──クズだな。──なぁ。

 

 

◆◇◆

 

 

 ユウは話した。

 フェリスが倒れてから、ユウの過ちまで全部。

 彼女は静かに、時々相槌を打ちながら聞いていた。

 そうして、聞き終えた彼女はただ一言、

 

「……そうか」

 

 そう言うだけだった。

 話して、楽になるわけでもなかった。

 ただ改めて自分の情けなさを客観視した。 

 

「……ごめん……僕のせいで……」

 

 ごめんで済むはずがない。死ぬ。彼女は、彼女も死ぬんだ。──ユウとは違う。死。それは戻らない。終わりだ。終わりなんだ。死。死。死。

 

「そうやって自分を責めたところで……何も変わらないよ」

 

 死ぬ、か。ああ、そうだよ、何も変わらない。

 僕は、何も感じられないままだ。

 わからないままだ。

 僕には理解できない。僕は共感すらできない。僕は死ぬことよりも自分のせいでフェリスが死ぬことを恐れてる。その責任を、死に戻りでなかったことにするしか、僕には………。

 

 ──あ、れ?

 待て……なんで忘れてたんだ!

 

「──なぁお前なら治せるんじゃないのか!?」

 

「───」

 

「お前なら、これくらい! これくらいの症、状……『回復魔法』で簡単に……」

 

「………」

 

「…………無理、なんだな……」

 

 彼女の顔が雄弁に語っていた。申し訳なさそうな顔をしないで欲しい。安易な希望に縋った僕が間違ってる。そんなことスピンクスが気づかないはずがない。まだ、僕は責任から逃れようとしてるのか。意気地なし。

 

「……すまない」

 

「……どうしてできないのか、聞いてもいいか?」

 

「……結論から言えば、ボクは『回復魔法』を使えない。『回復魔法』というのは、本来相手の肉体に自身のマナを浸透させ満たすことで治癒を促すものだ。当然、自身の身体に掛ける時もそれは変わらない。それだけであればただの技術だ、今のボクにもできる。しかし……ボクのマナは穢れている」

 

「……穢、れる?」

 

「ああ……厳密にはマナを生み出すオドそのものだけどね。──魂の転写の副作用さ」

 

 ──副作用。そんなものがあったのか。

 

「穢れたマナは瘴気と呼ばれ、正常なマナを汚染する性質をもっている。今のボクがこの身体を治療しようとすれば……けほっ、治癒する、どころか体調は悪化し話すこともできなくなるだろう。……すまない。この子の身体に勝手に居座っている身で、ボクは……何の役にも立てない」

 

「……お前のせいじゃない、全部、僕のせいだ。……お前がいてくれなかったら、とっくに力尽きてたはずだ。こうして、話す猶予はなかった。だから……」

 

「………」

 

 

 それっきり、会話は止んだ。

 ザァザァと、雨が降り注ぐ音が響き渡り、時々、彼女が咳き込む音が混じる。

 

 

「……お前は、死ぬのが怖くないの──か、っておい、大丈夫か!」 

 

「──?────あぁ、すまない、どうやら……限界みたいだ」

 

「………そんな」

 

「もう……起き上がる力も出ない……」

 

 彼女は身体をぐだっとさせてユウに寄り掛かった。

 

「………っ」

 

 ついに、終わりが来た。

 終わる。終わる。

 彼女の命が、潰える。

 

「………良いのかい、最後に話さなくて」

 

「………え?」

 

「……君には、何かしらの挽回する手段があるのだろう? 前に言っていただろう……不便な力があるのだと。……この子が死のうとしているのに……それだけの落ち着きよう、不自然だからね。でも……いいのかい? このまま、この子と話さずに終わってしまって……君は、後悔しないかい? 余計なお世話だったらすまないね、しかし……きっと、最後に苦しむことになったとしても……この子は君と話していたいと、そう思っているはずだ……」

 

 ……怖い。フェリスが苦しむのが? 違う。

 怖い、フェリスに嫌われるのが? 違う。

 

 違う、僕は、フェリスに、嘘を吐くのが怖いんだ。

 フェリスが好きだってこの気持ちが信じられなくなるのが、怖いんだ。

 

 だから、

 

「……ありがとう、スピンクス。……フェリスと変わってもらっても、いいかな」

 

「……そうかい、わかった……──」

 

「………」

 

 スピンクスは目を閉じて、そして呼吸のリズムが変わった。

 

「………フェリス、起きて」

 

「………ぇ、ゆ、う………さむい……つめたい……ゆう、どこ……っ、こわいよ………どこ……っ」

 

「──っここに、ここにいるよ」

 

「……わかんない……わたし、どうなってるの……? ゆうが、わからないっゆう、そこにいるの……?」

 

「──ごめんね、本当に、ごめんなさい、フェリス」

 

 フェリスは、もうきっと、触覚が働いてないのだろう。

 身体は冷え切り、命は風前の灯火、死ぬ寸前だ。

 ああ、やっぱり、最後までスピンクスに任せた方が良かったかもしれない。

 そうしたらフェリスは苦しまずに……いや、いいや、違う。

 それはフェリスの気持ちを勝手に邪推した僕の勝手な、都合のいい思い込みだ。

 フェリスには、フェリスの気持ちがある。

 フェリスが、僕を罵倒するなら受け入れる、フェリスがどうしたいか、フェリスの思いを聞かなくてはいけない。

 

「……フェリス、ごめん。僕のせいで、君は……」

 

 言えない。いったい、なんて言えばいいんだ。

 どんな顔して、どんな口調で、なんて言えばいいのだ。

 

 ──君は今から死ぬんだよ、って……?

 

 そんな、そんなこと、言えるわけないじゃないか。

 どうしよう。

 

「……ユウ」

 

「っ、うん、なんだい……?」

 

「……わたし、死んじゃうの……?」

 

「……っぼく、は……」

 

「…………そっか……そっかぁ……」

 

「……っ……」

 

 静けさに包まれる。

 フェリスは、死を受け入れていた。

 ユウよりも遥かに己の死を感じていた。

 むしろ今は死しか感じていなかった。

 

「……ごめん、ごめんなさいっ、ごめん……っぜんぶ、全部、何もかも……僕が悪いんだ、僕のせいだ……ごめん、ごめんなさい……守るって、言ったのに、約束したのに……っまた約束、守れなかった……っまた、君を、僕は……」

 

 何を言えばいいのかわからない。

 何が言いたいのかわからない。

 ただ、罪悪感を吐き出す、そんな醜い自己満足の言葉しか出て来なくて。

 

 もっと、せめて、フェリスが少しでも楽になれるように気の利く言葉を言えたらいいのに、ユウには今、フェリスが何を感じているのか、何を思っているのか、わからなかった。

 

 今、フェリスが感じていることは、今まで百回を超えて繰り返した失敗した世界で彼女が思っていたことそのものだ。

 今まで、目を逸らしてきた、彼女の気持ち。

 

 彼女は──。

 

「……ユウ」

 

「……うん」

 

「……っ……っ……」

 

 フェリスは、口を小さく、開けたり閉じたりしたりして、何かを言いかけてはやめてを繰り返していた。

 そうして、少し考えたように間を開けてから、言った。

 

「……ごめ……ううん、ユウ、ね──ありがとう」

 

「──────ぇ?」

 

 何を言ったのか、わからなかった。

 あ、り、がとう……?

 なんだっけ、それ。

 

「───」

 

「……ユウ、ね。ありがとう、すっごく……ありがとう、ユウ……」

 

「───」

 

「……あのね、わたしね……すっっっっごく……──幸せだったよ」

 

「───」

 

「……もう、あそこで死ぬんだって、独りで消えてなくなるんだって、ずっと思ってた。ずっと、諦めてた。わたし、誰にも愛されないで、誰も、愛せないままで、死ぬんだって……そう思ってた。……でも、わたし、いま、やっとわかったよ……わたし、ユウがだいすき……わたしは……ユウの……あなたのことを──愛しています」

 

「──────」

 

 心臓が、跳ねた。

 胸が、心が、脳が、震えるんだ。

 強く、とても力強く、響くように。

 

「…………わたし、ほんのすこしの間でも……ユウと過ごせて、すっごく幸せだった……すっごくすっごく幸せだった。………だから、わたしをつれだしてくれて、ありがとう……ユウ。──わたしを助けてくれて、ありがとう。──愛してる」

 

 それは熱だった。

 それは衝撃だった。

 それは、爆発だった。

 

「…………────」

 

「……あ……」

 

 フェリスは目を閉じた。

 だめだ。まって、まって、だめだっ。

 

 いっちゃだめだッ。

 いかせちゃだめだ、いや、 

 

「……フェリスっ待ってッいかないでッ!」

 

 ──ああ、もしかしたら、僕が今まで死んだときも、みんなこんな気持ちだったのかな……。

 

 ああ、それは、いやだな。

 

「……ふぇりす……」

 

「……ゅ、ぅ……」

 

「あ、な、なに…………僕に、なにか、できることは、ない?」

 

「……手……にぎってて……」

 

「…………わかった。──ぜったい、死んでもっ離さないからっ」

 

「───」

 

 ──しんじゃだめだよ。

 

 微笑んで、フェリスは、その手からは力が抜けた。

 

「───」

 

 胸が熱かった。

 

「───」

 

 脳が熱暴走に苛まれていた。

 

「───」

 

 熱、熱、熱。

 それは胸を満たして、そうして溢れ出した。

 外へ外へと、コツコツと吐き出されていく。

 

 心臓から湧いて、胸を通って、肩に回って、腕を通して、そうして、彼女の手を握る手へと伝わっていく。

 

 それは、熱だった。

 それは、想いだった。

 それは、愛だった。

 

 考えても、わからないことがある。

 いくら考えても、わからないことばかりだ。

 

 何度も間違えて、何度も失敗して、今度は助けようって、今度こそ助けたいって、そう言ってまた間違えた。

 いつまでも成長できなくて、いつまで経っても誰一人救えなくて、みんなを悲しませて、自分は独り勝手に死んで、そうしていつも助けたいはずの誰かを死なせてきた。

 

 どうすればよかった。

 どうすればいいんだ。

 わからなくて、わからなくて、ずっと苦しかった。

 

 でも、わからなくていいんだ。

 頭でわからなくても、心では理解していたんだ。

 ただ想えばいいのだ。

 

 頭で思うのではなく、心で想い合うことでしか人はそれを得られない。

 合理性とか、機械とか、人形とか、そういうことじゃないんだ。

 

「───」 

 

 ──死なないで。死なないで。死なないで。

 

 想いは情熱、愛は熱愛。

 溢れ出す熱が繋がる手と手を通して彼女に伝わっていく。

 その傲慢で、独り善がりで、しかし、尊い想いが、『優しさ』が彼女へと流れ込んでいく。

 

 

 

 ──あったかい……。

 

 フェリスはとても温かい場所にいた。

 そう、それは、夢で見た草原。

 長閑で、爽やかで、とても優しい風の吹いている。

 

 フェリスは気づいた。

 

 ──そっか、これが……ユウの心なんだ。

 

 嬉しい。フェリスはまさしくユウに包まれている。

 ユウがフェリスを包み込んでいる。

 冷たかった体が再び熱を持ち始め、苦しかった呼吸が楽になっていく。

 

 同時、あまりの心地よさに眠気が襲ってくるのだ。

 

 ──ふわぁ……やっぱり……ユウはすごい……わたしの、大好きな……おうじさま……──

 

 

 フェリスの症状は、ユウの『回復魔法』によって劇的に回復した。

 

 

◆◇◆

 

「……君は自分を最低だと罵っていたが、そうか……君の本当の適正は……やはり興味深いね、君は」

 

 眠りに就いたフェリスの中からその光景を見ていたスピンクスは独り言を呟いた。

 

 ユウが『回復魔法』を使えた理由。それは当然、彼の本当の適正が『水魔法』だったからだ。きっと本人も知らなかったのだろう。

 

 とはいえ、なんの心得もない彼があの重篤な状態だったフェリスの身体を回復しきれたのは『傲慢』の力がやはり大きいだろう。

 だが、それもまた彼のもつ『優しさ』がなせる業だ。 

 

 いくらそういう『性質』を『傲慢』がもっているとはいえ“ゼロから一”を生みだすということはそう容易くないからだ。

 

「……面白い。君がいったいどこまで至れるのか。──今は亡き彼女たち(魔女)と同じところへ行けるのか、はたまた道すがら力尽きるのか。それとも──」

 

 興味が尽きない対象というのはどうしてこれほど惹かれるのか。

 欠陥品とは言えど、やはりもっている記憶と知識に寄せられているのだろうか。

 

 ああ、これから彼がどうなっていくのか、実に楽しみだ。

 

◆◇◆

 

 

「───ハッ」

 

 目が覚めた。

 そしてすぐに気づく、──フェリス。

 その方を見れば。

 

「──すー……」

 

「──あ、あぁ……よかった」

 

 彼女はちゃんと息をしていた。

 小さく、しかし確かに胸を上下させて、呼吸していた。

 

「………」

 

 あの時、何が起こっていたのか。

 ユウはよくわかっていない。

 ユウは何も考えていなかった。

 

 ただ、心のままにフェリスを想った。

 

 そしたら、凄まじい熱が溢れてきて、それを彼女に流せって、本能が囁いてきた。

 そのまま祈るように彼女の手を握っていたら、どっと、疲れが湧いてきて、気づいたら意識を飛ばしていた。

 

 ……どれくらい寝てしまっていたのだろう。

 

「………ん……──ユウ?」  

 

「フェリス……」

 

 静かに、慈しむように、ただお互いを抱きしめた。

 

「……よかったっほんとうにっ」

 

「……うんっ」

 

 しばらくそうしていると、

 ぼろぼろと、二人を覆っていた石のドームが風に溶けていく。

 用済みとなり役目を果たした土塊は効力を失い、塵と化して空気に溶けていく。

 すると、二人を赤光が包み込んだ。

 

「……っ」

 

「……わぁ」 

 

 目を開けると、二人を迎えたのは透明に輝く美しい夕日だった。

 雨はいつの間にか上がっていて、そこには大きな虹がかかっていた。

 

「……きれいだね」

 

 ユウは、泣いてしまった。

 安堵か、感動か、そのどちらもか。

 泣いて泣いて、泣いてばっかりだ。

 

 わかるのは、ただ、ただこうして、二人で、二人で生きて、この夕日を見ることができたことに感謝したかった。

 それはきっと世界で一番美しい夕日だった。

 そうに違いない。少なくともユウにとってはそうだった。

 

 

 頬を伝う雫が、夕日に輝いていた。

 

 

◆◇◆

 





 一応タイトルの元ネタは『この音止まれ』から……好きなんです。

クルシュとフェリスと過ごした五年間のお話読みたいデスカ?

  • ある程度
  • そんなに
  • それより話を進めてほしい
  • どっちでもいい
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