理想を掲げた皇帝と理想に殺されたトレーナー   作:リョナ専マン

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ありきたりな事件が不穏な流れへと変わっていく。

邪悪で歪な事件の真相にある記者が足を踏み込んだ。


しがない記者の思索

 

 

「──本日行われた再捜査の結果、先月半ばに起こりました中央所属のトレーナーによる痴漢容疑が誤ったものであると判明致しました」

 

 

 突如行われた警察庁の会見にて、衝撃的な発表がなされた。

 

先月起こった事件の犯人とされたトレーナーが殺害された数日後に、担当のウマ娘が警察に直談判しに行ったらしいとは聞いたがまさかこんなにも早く訂正してくるとは、さすが警察サマってところだな。

 

ウチの局内も大荒れの大騒ぎだ。

 

やれ誤認逮捕の記事を作れ、やれトレセンに突撃しろだ。

そういうのは暇そうな奴らに任せて俺は別口いかせてもらうわ。

 

 

 

とある田舎町

 

 

俺は例のトレーナーの遺体が見つかったこの町に足を運び様々な情報を聞き出して回っていた。

 

「──そんで、どういう状況で発見したんですか?」

 

今は町の古びた小さな交番の中にいた小太りの警察官に尋ねている。

 

人の死に様を聞き出すのはあまり気が乗らないが、この事件に関しては別だ。

 

長年記者をやっている俺の感が、これはただの人殺しという事件では終わらないと告げている。

 

「いやそりゃもうたまげたよ。なんせ橋の下にゴミが捨ててあるのかと思ったぐらいだからね」

 

こういう田舎町の警官は口が緩い事が多々ある。この町も例外ではないようだ。

 

して〝ゴミが捨ててある〟か

 

「大きなゴミに見えるほど...だったんですね」

 

「あぁ…」

 

警官の顔から血の気が引いてゆくのがわかる。思い出してしまったのだろう。

 

彼が見たゴミのようなものは、恐ろしい力で叩きのめされたトレーナーの成れの果てだ。

 

秘密裏に見せてもらった写真はあまりにも凄惨で、様々な事故写真を見てきたこの俺でさえ吐き気を催す程だった。

まるで幼児が人形のおもちゃの関節をねじ曲げるが如く、あらぬ方向に曲がり、骨は突き出し、片目は抉られていた...思い出すだけでもゾッとする。

 

「ありがとうございます」

 

「オフレコで頼むよ」

 

わかってますよと返し俺は交番を後にした。

 

 

.......明らかに異常だ。

 

親を殺されでもしたのかという程に正気を疑う残虐性。

 

あの警官は言わなかったが、犯人達の目星はついてる。徹底的に洗ってやるぞ

 

 

 

 その後東京に戻った俺は、痴漢の被害者のウマ娘と田舎町にいた娘達に接点がないか調べ始めた。

 

すると驚く事に全員過去に中央でレースを行っていたことが判明した。

被害者のウマ娘と暴行の容疑者の娘たちは全員出身があの田舎町だったのだ。

 

「.......じゃあなんであのトレーナーに目ェ付けたんだ?」

 

今度は彼女達の中央でのレース結果を調べた。

すると今度は全員最初のレースや選抜戦、その他のレースでシンボリルドルフに打ちのめされている。

 

偶然か?

 

いや違う。 この時のシンボリルドルフのトレーナーは例の男だ。

 

なら動機はなんだ? 悔しいから? 嫌がらせか?

 

「レースで勝つ幸せを奪われた.......腹いせ?」

 

頭の中で仮説が組み立てられる

 

初めに彼女達は揃って中央に来た、だがそこで揃いも揃ってシンボリルドルフに打ちのめされた。

 

おそらくこの時点では何も異常がなかったはずだ。

 

問題はシンボリルドルフが会長の座につき『ウマ娘の幸せ』を掲げ始めた事じゃないか?

 

自分たちの幸せを奪っておいてよくも...という感じに憎しみが膨れ上がり、結果皇帝様の幸せを奪う計画が練られた。

 

トレーナーを排除したはいいが、皇帝様の反応がイマイチだったためにエスカレートしてしまった。

 

あくまで憶測に過ぎないが出揃った条件からして辻褄は会う。

 

だがこんなしょうもない目的のために人を殺してしまうのか、はたまた彼女たちの持つ闘争本能とやらが倫理観を叩き壊すほどだったのか。

 

もし後者だとすれば、けして彼女達だけで済む話ではない。

ウマ娘という種族全体が抱える起爆装置だ。

 

ウマ娘の闘争本能は人間のそれとは比較にならんほどの凶暴性と危険性を孕んでいる。

 

この状況を変えることの出来る人物は皇帝様ただ一人。

 

彼女と近い関係にあるシリウスシンボリが状況を変える可能性も無くはないが、渦中のウマ娘である皇帝様の発言が人とウマ娘の今後を変えることになるはずだ。

 

 

「こっからどう転ぶのか、見せてもらいますか」

 

 

俺は机にある油性ペンで思いついた見出しを殴り書きした。

 

 

【ウマ娘が持ちうる闘争本能の危険性】

 

 

数ヶ月後。

 

 

ある有名なウマ娘が命を絶ったという話が俺の耳に入ってきた。

 

 




今回は外部の視点です
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