とある“白銀の競走馬”の記録。   作:乃亞

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毎度のことですが、この作品は『そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで』に登場する架空ウマ娘、スバルメルクーリの(捏造)史実やエピソードをふらっと投稿する三次小説的な何かです。


各種ネタバレや競走馬の時代の話を敬遠したい方は閲覧を回避していただけると幸いです。


Rep2:佐目毛の競走馬がデビューするまで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二世紀ぶりに生まれた佐目毛の競走馬こと、ポーニーズの1982。この馬のデビューまでの経歴は少々特殊である。まず出産直後に母のポーニーズとフランスへと渡航しているのだが、これは2年連続で受胎したポーニーズの体の都合というものが大きい。

 

 

 このポーニーズの1982はフランスで約半年の生活をするのだが、当時の牧場にわずかに残っている記録としては『とても賢く耳が良い。足音で人や馬の判別ができていた』というものがある。後年ずっとこの馬の問題となる聴覚過敏の兆候は出生直後から出ていたようである。

 

 

 この半年の生活の間、当初はフランスでのデビューを目指していたが、牝馬であること、馬格の見栄えが悪い、貴重な佐目毛血統を遺したい等の理由で出走登録すらせずに繁殖に回される話も出ていた。

 

 

 そこで手を上げたのが『スバル』の冠名で知られる張須(はりす)建三(けんぞう)氏。

 自身のルーツが明治時代に日本に渡航してきたいわゆる『お雇い外国人』であり、海外志向の強かった張須氏はプレストウコウの仔が産まれ、しかも佐目毛であること、そしてデビューせずに繁殖入りするかもしれないという情報を得るや否や単身フランスに渡航。正確な記録は残っていないが当時にしては法外な値段でこのポーニーズの1982を当歳で購入し再輸入したとされている。

 

 

 こうしてポーニーズの1982は冠名の『スバル』にフランス語で水銀を意味するとされる『メルクーリ』の名を与えられ、『スバルメルクーリ』として競走馬登録されることになった。

 

 

 こうして日本でデビューすることになるスバルメルクーリだが、デビュー前からしばしば騒動の的になることがあった。1971年からのいわゆる持込馬の空白期間の影響である。

 

 

 母ポーニーズはフランスから日本に渡航した際、血統登録をした後にプレストウコウと種付けをして受胎したため、スバルメルクーリはカテゴリ的には内国産馬と同等の立場であった。似た経緯を持つ馬としてプレストウコウと同期でスプリンターズステークスを連覇した快速牝馬メイワキミコがいるが、この馬はオークスにも出走(23着)した。

 

 ではなぜこの馬が騒動の的になるかというと、やはり出生後のフランス渡航が異例中の異例であったからである。

『日本で種付け、受胎した状態で母馬を外国で輸出し、国外で産まれた仔馬を当歳の12月31日までに輸入した』場合は内国産馬、『種付けのために外国に輸出された牝馬が受胎して帰国して出産した』場合や、『外国産の牝馬が受胎した状態で日本に輸入され、日本で出産した』場合は持込馬という規定はあるが、『日本で出産した仔馬を国外に輸出し、その仔馬を国外の厩舎に所属させることなく当歳の12月31日までに再輸入した』というスバルメルクーリへの現場の評価は、“いやー…確かに佐目毛のサラブレッドなんて初めて見たし、確かに日本生まれだけど…。これ持込馬扱いされないのは違くない?”というものだった。

 

 

 結局この話題は1983年末に持込馬に関する制限の撤廃が行われ、持込馬が内国産馬と同等の扱いに戻ることで終止符が打たれたのだが、ごく一部では“内国産馬で三冠馬も生まれたし(ミスターシービー、19年ぶり3頭目)、この馬をクラシックに出走させたかったからなのでは…?”という噂がまことしやかに囁かれていた。

かつてダービーに出走できず涙を飲んだ持込馬、スーパーカーことマルゼンスキー。そのスーパーカーに一蹴された銀髪鬼(プレストウコウ)の仔でこのような論争がおこったのは皮肉としかいえない。

 

 

そんなデビュー前から競争能力以外の部分で注目の的にされていた競走馬、スバルメルクーリは1984年に新潟競馬場での3歳(旧齢)新馬戦についに出走、衝撃のデビューを果たすことになる。

 

 

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