IS オーバーコマンド   作:黒鉄48号

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白式に変化があるのでタグ追加します。


command_11 シロとノラ

「遅えなぁ……」

 

 (三之川鉄也)はアリーナの地面に立ちながらそう呟く。時刻は夕方の少し手前辺りで、試合をするにはギリギリといったところだろう。

 これから行うのは第三試合なのだが、その一個前で色々あったせいで待たされているのだ。

 

 第二試合────この決闘における大本命であったはずの『織斑一夏(ルーキー)セシリア・オルコット(エリート)』という対戦カードは、しかし大方の予想を裏切る塩試合だった。

 まず最初に、オルコットはいきなり全てのビットとライフルを併用した全力であり、対する一夏の方は射撃武器無し(ブレオン)という某世界最強のようなクソ構成の専用機に翻弄されていた。

 

 それでも三〇分近く耐え抜いたのは流石の一言で、その才能に多くの人が感心したことだろう。そして俺には不発で終わったミサイルの一撃が白式に決まり、それと同時に機体が一次移行(ファースト・シフト)した瞬間には俺も思わずガッツポーズをした程だ。

 ────だが、そこから一分も満たずに試合は終了。しかも敗因が()()()()()ものだった為、ギャラリー、教師含めたほぼ全員が肩透かしを食らう始末だったのだ。

 

 閑話休題(それは置いといて)。第一試合の後に修理を施した自分の専用機の状態を再確認していると、Aピットの方から『白』がやって来た。

 大型のウィングスラスターに、胸や腹を覆う装甲板。所々に青と金の差し色が入ったそれこそ、一夏の専用機である『白式(びゃくしき)』だ。

 

「すまねえ三之川、待たせちまった」

「まぁ、あんな負け方しちまったらなぁ……織斑先生とか大丈夫だったか?」

「あー……()()を見たら、なんか顔を青くしてたぜ」

 

 高周波の音とともに、彼の右腕から光の粒子が放出される。

 形作られるのは、刃渡りが一・六メートル。そして同じかそれ以上の柄を持つ長大な『(ナニカ)』であった。

 

「──どう思う、こいつ?」

「すごく……大きいな……」

 

 (やいば)の構造はかつて『暮桜』が振るっていた物に近いが、同一視するにはあまりにも異形。歪に型成(かたな)し、故に形名(かたな)も異なる。

 ──近接特化ブレード・《雪巴(ゆきともえ)》。それが一夏の手にした武器であった。

 

「さっきの試合、それのせいで散々だったな」

「ちょっ、気にしてるんだから言うなよ!?」

 

 俺の言葉に慌てる彼を見ながら、俺も武器をコール。短槍と眼前のデカブツになにか引っかかるものを覚えるが、一先ず無視する。

 

「さっきは負けちまったが……今度はちゃんとやらせてもらうぜ?」

「へえ、そうか。それなら──」

「「──参る!!」」

 

 その台詞を合図に、それぞれ得物を構えた俺たちは同時に加速して激突。鍔迫り合いの最初はどうにか均衡を保てていたが、少しずつ俺の方が押され始める。

 

「なんつー馬鹿力……!」

「技術じゃお前には勝てないけど、フィジカルならこっちに分があるんだぜ!」

 

 両翼から吐き出す炎を更に巨大化させ、一夏は俺を弾き飛ばす。絶対防御こそ発動はしなかったものの、それ故に凄まじい衝撃が襲いかかる。

 喉奥から溢れた酸っぱさに白い敵の危険性をより実感し、同時に倉持製AR『焔備(ほむらび)』をコールし弾丸を撃ち込む。

 だが、白式は雪巴をぐるぐると回転させてそれらを跳ね除けた。ISの操縦時間が一時間に届いているかどうかの段階でそういった発想が出来ることに、思わず仮面の裏で表情を歪める。

 

(これだから天才っていうのは……! 定石もなにも通じやしねえ!)

『まだまだこんなもんじゃねだろ三之川! 俺よりずーっとIS使ってたんだからよ!』

 

 そしてその隙を逃すような相手ではない。即座に一夏が俺の上に飛びかかってくる。振り下ろされる雪巴。咄嵯に身をひねる事で回避に成功するも、バランスが崩れたままでは反撃できない。

 そのまま距離を取るが、すぐにまた突撃してくる一夏に俺は舌打ちし、仕方なしに格闘戦に切り替える。

 とはいえ向こうの攻撃速度に追いつくのは難しいため、適当に捌きつつ牽制程度にしかならないだろう弓撃をばらまいていく。しかしそれも効果なし。

 そしてついに雪巴の一閃が俺を捉えそうになった時──一夏の目が驚きに染まる。

 

「なっ……!?」

「この段階じゃまだ使いたくなかったんだけどな……!」

 

 白い刃を受け止めたのは、二振りの赤熱したナイフだった。それを見た一夏は驚愕の声を上げる。

 

『そいつらは!?』

『こっそり仕込んでおいたんだよ。まさかお前相手に使う事になるとは思わなかったけどな……!』

 

 俺の言葉通り、脚部のスラスターユニットには二本のヒートナイフが装着されていた。

 これは以前、亡国機業のとあるIS操縦者が使っていた装備を参考にしたものだ。通常の装甲程度であれば簡単に溶かし斬れるが、雪巴の刀身は一向に溶けない。どうやらあの剣はかなり頑丈らしい。

 とはいえ、これで攻撃を防ぐことは出来た。そして、それだけの時間があれば十分だ。

 

 俺は脚部のスラスターを展開してブーストをかけると、その腹に鋭い蹴りを叩き込んだ。

 そのまま吹き飛ばされた彼に追いつき、短槍の穂先とヒートナイフをキャスリング。右の大型ウィングを溶断することになんとか成功する。

 

『ぐぅうッ……!!』

 

 だが一夏も黙ってはいない。すぐさま体勢を立て直すと今度はこちらに向かって突進してきた。

 再びの接近戦に持ち込まれるが、やはり単純な力比べでは分が悪い。押し負けて吹っ飛んだ俺は空中で姿勢制御しながらどうにか着地。追撃を仕掛けてきた白式の攻撃を辛うじて避けた。

 

(うえ)で戦うよりも、地面(こっち)の方が俺もお前も本気を出せるだろ、三之川?」

「はっ、()()()()()()()癖してよく言うな。褒美に全力で叩き潰してやる!」

 

 互いに軽口を交わしながらも激しい攻防が繰り広げられる。既にどちらもシールドエネルギーは大きく削られており、このまま長期戦になれば不利なのはこちらだろう。

 

(それにしても本当に強い……!)

 

 そう改めて思うほど彼は強かった。俺の動きを完全に捉えていて、まるで自分の手足のようにISを使っているのだ。先程の試合でオルコットがこいつに勝てたのは、ある意味幸運であったとすら言えるだろう。

 だが……やはり経験不足なようで、一夏の目には焦りの色が浮かんでいた。それを逆手に取り、鍔迫り合いをしながら煽る。

 

「量産機相手に随分と時間をかけてるじゃねえか!? 専用機なら、もっと素早く倒せるだろうが!」

「このっ……! そこまで言うなら、お望み通りにやってやるさ!」

 

 片翼を吹かして俺から一旦距離を取ると、雪巴が(しのぎ)の溝から二つに割れ、その間から光の奔流が現れる。

 これを知らない者は、恐らくIS学園(ここ)にはいないだろう。織斑千冬が『世界最強(ブリュンヒルデ)』たる所以、その代名詞。数多の操縦者を破った圧倒的な“力”。

 世界に名を轟かせた単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)──零落白夜(れいらくびゃくや)

 

「おおおおおっ!!」

 

 ただでさえ圧倒的な雪巴のリーチ、それすら上回る長さとなった光刃が勢い良く迫る。そしてこちらのシールド範囲に入る寸前──僅かに速度が落ちた──に俺は短槍で刃の先端付近へ横から衝撃を与えた。

 梃子の原理によって切っ先は僅かに逸れ、すぐ横の地面を削り取る程度で収まってしまう。だが一夏は驚かず、むしろしてやったりという表情を浮かべる。

 

「──かかったな!」

 

 雪巴から放たれた一撃は光波へと変わり、弧を書いて俺の方へと迫ってきていたのだ。当然回避は不可能、ならばこちらも奥の手を使うしかないだろう。

 俺は腰部ユニットに出力を回し、全スラスターの推力を一点集中させ爆発的な推進力で前方へと踏み込みコンマ二秒で白式の背後へ。次いで整備班からの説教を覚悟しながらの一零停止とアブソリュート・ターン。

 そして最後にもう一つの得物——あの猟弓(さつゆみ)を展開。矢を番えて強く引き絞り、それが青白い光に包まれたところで力を解放。

 

「なっ!?」

「……王手!」

 

 ハイパーセンサーですら捉えられない弓矢の一撃を決められた機体は吹き飛ばされ、そのまま光波へと激突。自分自身の攻撃でシールドを全損すると同時に、試合終了のブザーが鳴り響いたのだった。




雪巴(ゆきともえ)
白式の一次移行(ファースト・シフト)に合わせて生成された専用武装。
長巻(ながまき)型の近接ブレードであり、極めて大型かつ強度も高い。特に刀身部は異常と言っても過言ではなく、ヒート武装やレーザーですら傷一つ負わない。
また、『零落白夜』発動時はリーチが更に延長され、誘導性能のある光波のオマケも付いてくる。

・打鉄(はやて)
三之川鉄也の専用機である第二世代IS。打鉄をベースにして機動面を改修しており、可動式になった腰部大型ブースターと、リヴァイヴのものにウィングスラスターを合体させた脚部が特徴。
武装においては生身と同じ弓と短槍を使える他、基本装備(プリセット)の近接ブレードを外し、代わりに『ポーキュパイン』や各種サブウェポンといった後付装備(イコライザ)を搭載している。

次回、『勝利の後』
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