──れ、録音って、こんな機械でやるんですか?
はい、もう始まってますよ。
へぇ……すごいなぁ。こんなニューラライザーみたいなものでやるんですね。
なんか、もっと……カセットレコーダとか、スマホとかでするのかなって。
あんまり大きな声では言えませんが、相手方に許可を取る場合ばかりじゃないですから。
あははは、そんな事もするんですね。
例えば、どういうのか聞いても?
すいません、そろそろ本題に……
あぁ、すいません。
いやぁ、ついつい気になってしまって。
それで、三年前の事件について、でしたよね。
はい。よろしくお願いします。
じゃあ、事前に言っておいた通り、私が話し終わるまでは喋らない、という事で。
はい。そうしたら、何処から話したものかな。
警察さんの方にも、ある程度は話してますから。
そうですね、半年前私が通っていた、A高から帰る途中のことでした。
私と二人で、あぁ、私とは別にってことです。
行方不明になったK君と、I君と一緒に帰ってたんです。
私の家は、B県側の方にありまして。
三者面談の期間中だったので、早く帰れるぞーって、私の家で遊んでから、二人は帰る予定でした。
それで、私の家の方に向かっていたんですよ。
あそこの病院、なんて言ったかな……そうそう、C病院の坂を下ったところに、Dっていうコンビニがあるでしょう? 個人経営の。
で、その裏側の、E幼稚園側のほうにちょっとした竹やぶがありますよね。
まぁ、分かりますか。二人が消えた竹やぶです。
で、その中。
今行けば何もないと思うんですけどね。
あそこって本当に狭いじゃないですか、10m四方くらいのサイズですよね。
なんか、そこが凄い気になって。
帰り道に竹やぶの前を通るんですけど、みんな同じタイミングで止まって。
『あれ、なんか……やけに、暗くね?』
みたいに喋ったんですよ。
今見ても同じくらいの暗さで、いつもと変わらないはずだったんですけど、何故かその時はいつもより暗く感じる気がしてしまって。
ちょっと行こうぜという話になって、そこに向かったんですよ。
向かったといってもね、すぐに着いてしまう訳ですけど。
それで、行ったはいいものの、何もすることが無いので。
折角だし、中に入ってみようぜとなるわけですね。
それで自転車を道の前に止めて、中に入っていきました。
砂利道……っていうか、なんて言うんでしょうね、砂道?
ちょっと滑らかな砂が道にある感じで、道が続いていたので。そこから入りました。
中は少し暗い感じで、竹やぶの中にしても、光が少ない感じがしましたね。
それで、何を言うわけでもないですが、反対側に抜けよう、という感じになって。
今思えば、なんとなくですけど不気味な、呪いといいますか。
呪術……? そういう訳じゃないんでしょうけど、そういう感じがしまして。
それを打ち破りたかったんでしょうね。
向こう側に抜ければ、単なる竹やぶじゃないですか。だから、本当に竹やぶだと確認したかった。
それで、中にどんどん進んでいったんですね。
そうはいっても、長さは10mぐらいですから、すぐに抜けれるだろうと思って進んでいきました。
気付いたと思うんですけど、おかしかったんですね、最初から。
10mですよ? 長さは。
当たり前ですけど、多少中は曲がっていますが、向こう側は直ぐに見えるはずなんです。
なのに、見えませんでした。
空からの光以外はなにもなくて、ただ、先に続く竹と、向こうから暗闇が覗くばかりです。
でも、私たちも意地でと、ちょっと思考能力が下がっていたんでしょうね。
そんなことは気にも留めず、先に進んでいきました。
まぁ、直ぐに気付くんです。
何かおかしいぞ、と。
一向に竹やぶから出れないんです。ぐるぐる回っているわけでもなく、一本道でちょっとずつ曲がっているくらいで。
なのに、出れないんです。
先に光も見えない。
ずっと、暗い竹やぶに閉じ込められてしまっている。
そんな感じがしました。
でも、進まない訳にはいかない。
帰ろうなんて言い出せないので、とにかく進みました。
そうしていくと、変なものまであるんです。
こういう話でよくあるじゃないですか、仏像とか。
倒れてるんですよね、道の隅に。
あぁ、もう駄目だ。
全員が直感したと思います。
一斉に走り出しました。目の前に。
後ろに戻ってればよかったんですかね。
まぁ、もう分からないです。
そうして一心不乱に体力が尽きるまで走っていると、神社がありました。
道の左に、鳥居が立ってるんです。
もう、すごい異質ですよね。
誰が見たって分かる。
入っちゃいけない場所ですよ。
それで、私たちはどうしたかって?
そりゃ、入りますよ。
お約束のように思えるかもしれませんが、私たちにとっては希望の光だったんです。
凄い怪しかったんですけどね、神社の中にいるであろう神主さんに助けを求めようと思って、行きました。
二人はもうそれは速く駆けだしていって、境内の中にいないと分かると社務所を探していました。
ですが私は、どうにもこの不気味さが気になる。
そう思って、辺りを見渡します。
そうすると、神社の障子の影から日本人形がコトン、と。
こっちを向いたまま倒れてきたんです。
ビクッ! っとしちゃって……
一瞬フリーズしましたよ。
「そのまま動くな」
そう言われました。
日本人形が喋ったんです。
まぁ、ここまでの話を聞いていたら、特に不思議でもないかもしれませんね。
はは……
で、暫く動けずに待ってました。
十数秒のあと、大きく口を開けて、笑いながら、こう言うんです。
「いいよ、お前は気に入った。だからさ……早く、帰れよ」
で、終わりです。
そのまま、僕は二人を置いて帰りました。
無我夢中で、二人の事なんて忘れてました。
それで終わりです。
……拍子抜けしました?
そんなもんです。
二人はそれから見つかってません。
これが、貴方が必死で探してたであろう、高校生二人の失踪事件の私が知る限りの全てです。
あの竹やぶは、もうただの竹やぶでした。
多分、ね。
カチリ。