俺の運命は最弱メモリのようです   作:一般メモリユーザー

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風都感は薄めの風都生活です


根性だ

 ガイアメモリに関わる者同士は惹かれ合う、とはよく言うらしい。よく言うのか? スタンド使いじゃああるまいし。

 ともかく、そういう観点から見れば、俺のスタンスは決まっている。『覚悟こそが幸福』だ。メモリを使っている以上、いずれ仮面ライダーに倒される。そして、マスカレイドメモリの自爆機能で俺は死ぬわけだ。これはどうしようもない。メモリを破壊した時点で爆発するから、インビジブルメモリのようにもいかないし。

 死にたくない。死にたくはないが……どうしようもないだろう。これは。メモリ使うの止めろと思うかもしれないが、無理だろう。ここまできたら運命(万灯)が俺を逃がさないはずだ。なんとかして逃げ延びたところで、メモリ関連の事件に巻き込まれてドーパントに変身しなきゃいけなくなるだろう。ジャスト100%の適合率で、仮面ライダーの舞台(仮面舞踏会)から降りれるわけがない。

 だが、俺はそれを覚悟している。フィリップが最後の変身の後に消滅する未来を知りながら戦うことを選んだように、死の運命という絶望を覚悟によって吹き飛ばしているんだ。まあ、メモリブレイクされずにフェードアウトできるかって考えれば、無理だろうとは誰だって思うし。逆説、俺は自分の死を確定事項として覚悟できていると言ってもいい。

 言ってしまえば、仮面ライダーWという舞台を降りる時こそが天国。

 

 そんなことを、錐通(きりとおし)村──今は廃村であるそこ唯一の屋敷、鏡野家の廊下を歩きながら考えていた。

 莫大な資産を持つその家の嫁を決めるため、花嫁候補はその土地の魔除けの仮面を着けて当主と四日間過ごす。そんな因習に来ているわけだ。

 とはいえ、俺自身が嫁入りするわけじゃない。男と付き合うのは嫌だし。万灯曰く、俺がいるだけで正体がバレなくなるらしい。少なくとも、この仮面夜会の間は。……俺の恩恵地味じゃない? なんかこう……ハイドープらしさとか、ないか。そっか。

 

 吹雪の山荘とはいえ、なにも事件が起きていないからやることがない。俺を連れてきた本人からも、いるだけでいいと言われているから、部屋で曲を書いたり耳コピしてたりするくらいだ。2月10日の風都タワー感謝祭の仕事は貰っているので、『cod-E』の練習がメインだ。他にやることがないのかと言われるかもしれないが、学校に通っているとはいえ、ここで課題をしたりして探偵に見られたらシャレにならない。こんな凡ミスが手掛かりになるのは、一介の犯人としてのプライドに傷がつく。

 正直なところ、俺から語ることは少ない。俺たちが来てからの二日間は特に進展がないし、探偵が遭難してきて事件が始まっても、犯人を知っている以上はさほど興奮しない。もちろん容疑者の一人として現場にいるのは貴重な経験だけど、前マネージャーの件があるし……風都探偵最初の事件は盗み聞きだったから、こうして事件の全貌を知ったうえで推理を安心して見られるのは貴重な体験だから、まあいいけど。

 

 当然といえば当然だが、俺が幹部大集合に混ざることはない。仮面を着ける因習を終えれば、正体を隠すというマスカレイドメモリの能力も必要なくなる。あとは帰るだけだが……

 

「水香さん、あなたも来てください」

 

 ブラキオサウルスこと秀夫くんに引っ張ってこられた。仮面ライダー相手には足止めくらいにしか期待できないだろうが、どの程度性能が違うのかなどの検証も兼ねているらしい。……仮面ライダーを相手にする担当だとかに思われてる? 裏風都の幹部を仮面ライダーに当てると、負けたらその手札を捨てることになるだろうし。秀夫くんもそれを知っているから、自分が切れる札を持っておきたいのだろう。

 そんなわけで、手に持った杖でバランスを取りつつブラキオサウルスの肩に乗っている。探偵たちの視線は恐竜としての頭の方に向くだろうから、そっち側にいるオーロラドーパントの方が目立つはず、俺はこう、小ぢんまりとしていれば問題ないはずだ。

 一応、ここにいる利点としては裏風都経由で帰宅できることが挙げられる。翔太郎たちがいけたし、帰りは雪も止んでいるから徒歩で下山できるだろうとは思っていたけど。

 

「よその『街』の住人さ。君たちに関わらずに済むならむしろその方がいいんだが……」

 

 万灯ことオーロラドーパントが、ときめの方を向く。思えば、相手が記憶喪失かつ俺が全力で隠れていたとはいえ、よく見つからなかったな。最強の殺し屋に。

 

「『運命』、がそれを許すまい……」

 

 運命、か。俺の運命は最弱メモリなんだが。それでも、俺の一部であることには変わらない。覚悟した場面に辿り着くまで、全力で演じ切ってやるさ。

 

「機会があればまた会おう」

 

 ブラキオサウルスがボーンズを生成するのと共に、杖を手近な場所──ブラキオサウルスくんの肩になってしまった……そこへこつんと突く。体組織からボーンズを作り出すのとは違って、マスカレイドの方はなんか知らないけどどこからともなく出現する。ルナドーパントみたいなアレだ。そんなわけで、それらを仮面ライダーに嗾けつつその場から離れる。

 

 そこから当面は、特にやることもなかった。いや、喫茶店である『白金』でときめを紹介する時に、俺も呼ばれたんだが。いつのまにか、風都イレギュラーズにカウントされていたのか? 俺、千家貴司だったかもしれない……どういう感情で聞いてるんだ俺……

 そこから繋がるパズル事件も、特にやることはなかった。探偵の協力者として求められている役割は、高校での情報収集だ。そして、今回の事件は漫画家など手を使う職業がターゲット。さらにいえば、高校生が整骨院に行くことはそうそうないだろう。野球部とかが利用するにしても、突出したピッチャーの才能くらいじゃないと収拾する価値も見出されないだろうし。つまり、俺が集められる情報はほとんど存在していない。幹部会議みたいなのに呼ばれることもないし、平穏な日常だった。

 仕事もあるから高校に行く機会は少ないが、たまに行く分には懐かしさも感じる。だから実のところ、二回目の高校生活は気に入っているわけだ。友達もいるし、充実したものだと言っていい。

 

「ずっと前から、目障りだった!」

 

 夜道で会った同級生が殺気を放ちつつ、メモリを手に持っていなければ。

 

「──最近は平穏すぎて忘れていた。ここは、風都だ」




ジョジョ6部のアニメも終わったので。
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