※ほぼモブキャラの一人が亡くなった前提での話です。

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お盆のシャカファイ

クソ暑い中

後ろを歩く殿下サマがやたら楽しそうに

オレの親父と喋ってやがる。

 

あの人が普通の父親のツラして

アイツと話をしてんのが気味が悪くて仕方ねぇ。

 

あの人の口から出てくる

「家族だから心の底では通じ合っていた」

とかいう言葉がオレの足を速くさせる。

 

できることなら行きたくねーところ。

お袋が眠ってる場所に向かっているのにな。

 

オレと親父。それから殿下サマに

護衛隊長サンの4人でやったからなのか

墓掃除はすぐ終わった。

 

順当に親父が最初に祈りを上げる。

あの人が今、何を考えてるのか

想像したくなくても、考えちまう。

 

そんな事情なんて余所にオレの番がきた。

 

出来る限り感情を込めず

祈りのプロセスをこなていく。

 

“破いたのはやり過ぎだったな”

 

暑さでバグったオレの脳みそがひねり出した

クソ傲慢な謝罪を奥の方へ押し込みながら。

 

オレの番が終わると

ファインも続けて祈りを上げ始める。

 

無駄がねぇ動作に敬意と美しさが宿った祈り。

 

オレが並び立つのには相応しくねぇ事実を

イヤでも分からせられる。

 

唐突にオレの手に紙のカドらしきモンが当たる。

 

親父が何かを渡そうとしてやがる。

ファインが祈ってる最中なのによ。

 

「これで一緒に何か食べきなさい」

とかアホな事をちっせぇ声でぬかしながら

三つ折りにした一万円札を渡してきやがった。

 

殿下サマのお食事には全く足りず

ファインとのメシには多過ぎる金額。

 

ああ、そうか。

アンタも同じなんだな。

 

オレはよ。

ガキの頃からアンタらが結婚した理由

っていう問題が解けずにいたんだよ

 

でも、今、気づけたわ。

アンタら似たもの夫婦なんだな。

 

自分が知ってる事が世界の全て。

考えたくねぇ事は一切考えねぇ。

 

自分の世界を他人に押し付けねぇけど

他人の世界を理解しない。

 

お互い一番安全な相手を求めて

巡り合ったんだな。アンタらは。

なんだ。お似合いの夫婦だったんじゃねぇか。

 

長年、求めていた答えを手にしたオレは

笑いながらオヤジから昼飯代を受け取った。

 

 

オヤジと別れて、ファインと昼メシ食った後

そこら辺をしばらくほっつき歩いて日が暮れた頃

隊長サンからいつもの感染症対策セットを受け取って

オレたち恒例の別れの挨拶おっぱじめた。

 

ラーメンのニンニクと

デンタルダムのわざとらしい香料が

オレたちの口の中で混ざり合って生まれた

カオスな風味にもすっかり慣れちまったのに

 

こういう行為は慣れたのに

オレはお前の事は未だに分からねぇ。

 

なんで、お前は全てをオレにくれるんだ。

お前の運命以外の全てを。

 

持たざる者への同情や慈悲の心とか

じゃあねぇのは解る。

 

お前はオレが知らないオレの何かを

受け取っているのか?

 

オレはお前が与えくるモンと同等の

何かをお前に返せてるのかオレは?

 

お前がいる時も、いない時も

オレはいつも解こうしている。

ファインモーションという名の問題を。

 

 

「キミのそういうトコロ。

 好きだなぁ」

 

ファインがいきなり口を離して

いつもの戯言を吐いた。

オレの口と糸で繋がったままの口で。

 

「舌の使い方なら殿下サマの動きに

 合わせているだけでゴザイマスヨー」

 

「考える事を絶対に止めない。

 いつでも、どんなことでも

 本気で考えてくれるシャカールが大好きだよ」

 

「損切りがヘタクソなだけじゃねぇか」

 

「意地っ張りな所も含めて

 私はキミの全部を愛してるの」

 

なんで、いつもそんな顔で

そういうこと言いやがる。

お前はオレが何なのか分かってんのかよ。

 

「私はエアシャカールよりも

 キミの素敵なところをたくさん知ってるよ」

「オレはファインモーション様の事は

 何一つわかんねぇよ」

 

そのヘラヘラしたツラを崩す方法を

運命からお前を奪い取る方法を

オレが何回考えたか解んのかよ。

殿下サマよ

 

「そう言ってくれて嬉しいな

 シャカールは解き甲斐のある問題が大好きだから」

 

舌打ちか、嫌みの一つでも吐いてやりてぇけど

んな事してもお前が喜ぶだけなのは経験から分かってる。

 

だから、オレはその減らず口を

オレの口でもう一度塞いでやった。


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