モノクロの旅人達   作:アルカトヌ

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※タイトルに意味はありません


俳人の落語縁

 

『Welcome To ■■■■!!!』という文字とヤギだか羊だかよくわからない生物が前足を上げてウインクをしている。錆びた門につけられたデザインは経年劣化で醜悪なものになっていた。

 

もはや誰も見向きもしないであろうその生き物がアピールをしているのは滑稽に見えてしまう。

 

 

「うん。ここかな」

 

「あっ、着いたんだ。ここがゆうえんち?」

 

「そうそう。管理人がいないから動きはしないけど色々と大規模な遊具があるよ」

 

 

二人の旅人は遊園地の久方ぶりのお客様になりに来た。

黒髪の旅人…ミリアルはボロボロの門につけられた羊っぽい何かに目を輝かせている。

白髪の旅人…アリアルは相方のそんな様子を見て呆れたように声をかけた。

 

 

「ほら、せっかくミリアルが見たいっていうから来たんだ。早く中に入ろうじゃないか。開園時間はもうとっくに過ぎてるよ」

 

「カイエン時間?よくわかんないけどわかった。今行く」

 

「開園時間ってのは開く園の時間。遊園地が運営され始める時間のことだよ。」

 

「なら、運営者がいないから開園も何もないね」

 

 

そう言うとアリアルは笑いながらミリアルを連れて遊園地の中に入っていく。

アリアルに手を引かれたミリアルは門の先にある未知に興味津々でアリアルについていった。

 

久々を客を歓迎するかのように門につけられた非常用の電灯が光をともした。

 

 

「おーー、なんかすっごいね」

 

「うん。思ってたよりも広いみたいだ」

 

 

繁栄人たちが遺した娯楽は錆びてその役割を失っているものの奇怪な造形をした数多の遊具は久方ぶりのお客様を満足させるに至ったらしい

 

 

「アリアル、あの円形の何?あれも遊具の一種?」

 

 

ミリアルはその遊具の中でも一番大きな遊具に興味を抱いた

 

 

「それは観覧車。遊園地っていうのは繁栄人たちが娯楽を得るために自然を犠牲にして作った遊び場だからね。見た目が大きいものが多いんだ。」

 

「なるほど、かんらんしゃかぁ。こんなでっかい鉄の塊で遊ぶなんて繁栄人は怪我とか気にしないのかな。」

 

 

アリアルの説明でこの廃墟がどういう場所だったかを理解したミリアルは心底不思議な様子で言った

 

 

「登ったりするんじゃなくてこの円の部分が軸を中心に回るから、個室の中に入って上からの景色を楽しむのさ。」

 

「あ、そうなんだ。でもこれから落ちたら死にそうだね、危ないや。」

 

「え………あ、まぁ……落ちたら死ぬだろうねぇ………」

 

 

モノをしらないからこその反応にアリアルは苦笑いをした。

 

そんなことを気にも止めず、ミリアルは他の建造物に興味を向ける

 

 

「じゃあ、あのモノレールみたいなのは何なの?角度がすごいことになってるけど…………」

 

 

ミリアルにはその形状は前に一度見たことがあるモノレールのように見えたがその路線は円を描いたり高低差が酷くついていたりしている。

 

 

「あれはモノレールじゃなくてジェットコースターだね。」

 

「じぇっとこーすたーかぁ……なんかあれに乗って移動はしたくないよ」

 

「あれは移動用じゃないよ。体をしっかり固定して、あのレールの上を進む乗り物に乗りながらスリルを楽しむものさ。」

 

「へぇーーー。楽しむ場所なのにスリルを求めるんだね。そのへんの感覚はよくわからないなぁ」

 

 

その言葉にアリアルはにやっと笑う

 

 

「ミリアルは怖いの苦手だもんねw」

 

「そ、そういうのじゃないから!繁栄人みたいに命の危機を娯楽として見れないってだけ!!」

 

「別に昔の人は命の危機を娯楽にしたわけじゃないと思うけどねぇ」

 

「ど、どっちにしてもここじゃまともな物資とかはなさそうかなぁ……。人が住む場所じゃないみたいだし。」

 

 

ミリアルは焦ったように話題をそらす。

アリアルは笑ってからその話題に乗ってあげることにした。

 

 

「そうでもないさ。あっちにはお土産屋さんがある。あそこなら多少はまともなものがあるはずさ。」

 

「お土産かぁ………」

 

「もしかして嫌だったかい?」

 

 

アリアルがそう聞くとミリアルは苦笑いしながら答えた。

 

 

「いや、お土産はクッキーとかばっかりなイメージだからさ。この前行った水族館もお土産、ぬいぐるみとクッキーばっかだったでしょ?」

 

「あぁ、あのときはクッキーをたくさん持ってったね。美味しいって言ってたじゃないか」

 

「いや、いくら美味しくても流石に7日間ずっとクッキーは飽きるでしょ!」

 

 

ミリアルの反論がよほど面白かったのかアリアルは大笑いした。アリアルの笑い声は、喧騒溢れていた遊園地に響き渡った。

 




ミリアルMemo[繁栄人の娯楽]

遊園地:森の中にあった繁栄人のための娯楽施設。たくさんの高い建物のような遊具があって寂れた雰囲気だった。

観覧車:遊園地にある、大きな鉄の輪に個室を無理やり付け加えた遊具(?)。上から景色を見るだけのことが反映人には娯楽になっていたのだろうか?
私の見たものはいくつかの個室が落ちてひしゃげていたが、本来は落ちないらしい。

ジェットコースター:遊園地にある、乗り物であるモノレールから移動要素を取り除きスリルを加えたやつ。繁栄人は命の危機を娯楽として取り入れてたみたい。どれだけ娯楽に飢えていただろうか?それともそれほど安定した暮らしというのは人間を腐らすのだろうか?

遊園地のお土産:やっぱり三分の1くらいクッキー。あとはストラップとかそんな感じ。いくつかストラップで気に入ったのをもらっていった。
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