暗がりの町は廃れており、もはや人がいないであろうことを静寂が物語っていた。そんな静かに眠る街に一つの人影が見えた。
「…予想外ですね。排斥がひどいし売りつけようがない。」
その人影は大きなカバンを背負っておりそのかばんには大量の薬品が詰まっていた。
数時間前、彼女はとある地下集落で伝染病を治せる薬品を配ろうとしていたがその集落は排他的であり、外から来た人間からの薬品は買えない!と突っぱねられてしまったのである。
「うーん。どうすればいいと思いますか?」
「それ聞くためにわざわざうちのとこまで来たん?」
あまりにも売れなさ過ぎて茜ちゃんの家にお邪魔して相談することにしました。結構賢い茜ちゃんや葵さんならきっと素晴らしい案があるはず………!(希望的観測)
「はい。もちろんです。あ、この薬いりま「いらん。」はい……。」ションボリ
「つっても、ゆかりは商売魂盛んやしなぁ。精神論がどうこうって感じではないか。」
精神論ですか……というよりもなんだかんだ言いながら うーんうーん ってうなって考えてる茜ちゃんかわいいですね……。私の相談にまじめに考えてくれる彼女のやさしさは美点です。ゆかりさんの好感度はすごく上がってますよ!あとは薬を買ってくれたら百点ですけど……強要はよくない(戒め)
「精神論でどうにかなるならもっと売れてるだろうしね。あ、ゆかりさん。こちらお茶です。」
「あ、ありがとうございます。」
葵ちゃんがお茶を持ってきてくれました。やっぱり茜ちゃんとうり二つですねぇ……。二人の性格も持ちつ持たれつって感じだし、さすが双子!
「ほなら葵はなんかええ案があるんか?」
「うーん。どっちかというとゆかりさんが悪いっていうよりかは地下に売りつけようとしてること自体がダメなんだと思うよ。繁栄人の墓場なんかに売りつけてる暇があれば地上の人に売ればいいと思う。」
「葵ちゃん辛辣ですね……。」
「葵!ちょっと言いすぎやで」
「あっ………ごめんなさいゆかりさん。そういうつもりでは………」
「気にしないでください。わかってますから」
葵ちゃんの繁栄人嫌いはやっぱり激しいですね……。ゆかりさんも思わず苦笑いが出てしまいましたよ。
「それにしても地上の人ですか……。あんまり知り合いもいないし、そもそも母数が少ないんですよねぇ。」
「か、もしくはしっかりどこで作ったかをいうとかはどうや?」
「それはちょっと………。」
「確かにそれはそうかもね。やっぱり製造元が大事なんじゃないかな?」
「でもぉー………うーん。」
すごい正論でたたかれている…………。ただこれの製造元とか最初から知らないんですよねぇ。衛生状態のまともな薬をいただいているだけですし。まずあの人はそういうのを好まない気がします。
「まぁ、ゆかりにも事情があるやろうしあんまり言わんけれども、売りたいんやったら怪しさ満点の売り方をどうにかせなあかんと思うで。」
怪しさ満点って……。そこまで言います?純情で純粋なゆかりさんが年甲斐もなく泣き散らかしますよ?恥も外聞も投げ捨ててわめき散らかしますよ?
「なら、あの人たちに売るのはどうかな?」
「あの人たち?って誰や?」
「ほら、この前久々に会ったじゃん」
「あーーー!アリアルか!ええやんそれ」
あっあっあ(過呼吸)どんどん話に置いて行かれている………。ありある?というのは人物名みたいですね。お二人の知り合いなんでしょうか?二人は顔が広いですね……。
「あ、ごめんな。ゆかりさんはあったことないか。うちらの知り合いにアリアルっていう変人の旅人がおるんよ。」
「そのアリアルさんがこの前、熱射病になってしまったみたいで、なんともなかったからいいけどほかの病気にかかった時に困るから薬が欲しいって言ってたんですよ。」
ふむ?薬を欲している旅人ですか。すごく商売のにおいがしますね……。先生産のよくわからない薬も売れそうですし、良さそうです。
「なるほど………。アリアルさんでしたっけ?ゆかりさんとてもその人のこと気になります」
「ええで!あいつの気狂いっぷりを聞かせたるわ!」
「ええ!ぜひお願いします」
そのあとたっぷり夜が更けるまで二人の思い出話を聞いていた。
今日はいい日でしたね!当分はアリアルさんを探すことになりますが会えるのが楽しみです!
ゆかりさんメモ Ver.1
アリアルさん:どうやら茜ちゃん曰く気分屋の旅人みたいです。いまはミリアルという方とともに行動しているのだとか。目的はなくふらふらしているだけのやばいやつだとか、論理的に見えて感情の発露が強いバカだとか悪口も結構ありましたけど茜ちゃんたちとの仲はすごくよさそう。
茜ちゃんも葵ちゃんもアリアルさんについて話してるとき楽しそうでしたしね!当分はアリアルさんを探しながらふらつくことにしましょうか。
地下集落:繁栄人たちが未曽有の地上災害を警戒して作り上げた地下帝国とでもいうべき住処。まぁ未曽有の地上災害って言っても実際に起きたわけでもなければただただ繁栄人の立てたものが朽ち果てるだけの結果に終わったんですけどね。
地下の収容人数は一定だと決まっていて毎年20人前後が地下から地上に放り出されています。実際に私も放り出されましたし。
そういう人道から外れた判断を取ることの多い繁栄人は結構地上の人からは嫌われてるみたいですね。