アクロフォビア(高所恐怖症)とは、特定の恐怖症のひとつ。高い所(人によって程度の差がある)に登ると、それが安全な場所であっても、下に落ちてしまうのではないかという不安が生じる。例えば、エレベーター、エスカレーター、ショッピングモールの上階などが怖く、利用を避ける場合がある。
やぁ、そこの白髪のお嬢さん。こんなところまでどうしたんだい?
「……君こそ何をしてるんだい?」
見ればわかるだろ?ちょっくら空を飛ぼうと思ってね。
「この建物は15階建て。もっと上に上がれば楽に死ねるだろうに、ここだと満足な高さじゃないから運が悪いと死ねないかもしれない……。君はそれでいいのかい?」
高いところは昔っから苦手なもんでね。だからここで死のうとしてる。
「高いところが嫌いならどうして飛び降り飲んて選ぶんだい?他にも死に方なんかは……それこそ選びきれずに死んでしまうほどにはあると思うけれど。」
あー……そう言われると痛いな。俺は高いところが嫌いだからな。高いところにいれば恐怖で震えてくる。
「高所恐怖症?」
まぁね。だからこそ躊躇しない。高いところからすぐに低いところに行けるこのルートから飛び降りようって気になれるんだ。死ぬ恐怖より高所の恐怖が勝ったからね。
「なるほど…。私にはわからない感覚だな。生き抜くって気持ちにはなれなかったのかい?」
ははっ、ズカズカと遠慮ないねお嬢さん。
「それはすまない。疑問点は解消したくなるのが性分なんだ。」
まぁ……別にいいさ。生き抜くなんて考え自体はなかったよ。好きでここに来たわけじゃないしな。追い出されて、食いものもなくて諦めた先にここに立ってるんだ。
「なるほどねぇ。世知辛い世の中だ。」
嬢ちゃんは下から来たわけじゃないのかい?
「私はずっと上で生きてるよ。なかなか生きづらいところだけどね。」
それはなんというか……すまなかったな
「別に君を責めるつもりはない。クラスメイトに殴られたからって人間全てを憎むようなやつはいない。気にしなくていいさ。」
そうか。
「そうさ。」
…………お嬢さんはこのあとどこかに行くのかい?
「行く宛はないよ。適当にブラブラと旅をするだけさ。」
そうか。ならここでお別れだな
「…………そのようだね」
「まぁ……何だ。お穣ちゃんとまた会えるのがはるか先であることを祈っているよ」
男はそう言って自然体のまま飛び降りる。
男はビルの下で物言わぬ死体となっている。
そうして、そのビルには白髪をたなびかせる旅人の女性と………
何事もなかったかのように壊れた壁の淵に立つ男の姿があった。
「やぁ、そこの白髪のお嬢さん。こんなところまでどうしたんだい?」
アリアルはその質問に答えずに哀れみの目でその男の足元を見た。
最初から足はなかった。
アリアル's Memo【朗庵の足首フォト】
高所恐怖症は高いところを怖がる恐怖症の一つだ。それなら高い高い空の上なんか怖がって当然なんだよ。
だからこそ彼はそこにいて、いまでも過ちを繰り返している。
上に上がることが嫌で。でも生死の法則には逆らえない。
誰でも嫌いなものや怖いものはある。これは実質的に人間全員が恐怖症を持っていると言っても過言ではないだろうね。
私?私をそういう類で言うならば……クロノフォビアかな。
本当に恐ろしい。私がそう感じるものだよ。