モノクロの旅人達   作:アルカトヌ

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※タイトルに意味はありません


頼んだ死と儒医を。

「いやぁ………壮大だねぇ……。」

 

「うん。こんな大きさは始めてみた。なんでこんなにでかいの?」

 

 

そう言葉をこぼす二人。

眼前には繁栄人が築いた都市群を飲み込んでなお成長を続けたと思われる樹木が鎮座していた。その大樹は二人が頂点を見ようと首を伸ばしてもなお、枝すら見えることがないほどには巨大な大樹であった。

長く旅を続けている二人にとって、繁栄人の残したものによって自然や環境に異常な影響が出ている例は多々見てきたが、その二人をしても感嘆の声をこぼすほどにはそれは異常な光景であった。

 

 

「さぁ?でも、自然の正しい姿が帰ってきたってことじゃないかな?」

 

「うーん……でもなんか違和感があるんだよね、この大樹。まず普通こんなに大きくならないと思うし………。」

 

 

都市を飲み込んだ大樹に対してのんきな感想を言うアリアルに対してミリアルはこの大樹になにか違和感を感じた。

違和感と言ってもなんだかピースが足りないような感覚。特段何がおかしいわけではないのになにかがおかしいように感じたのである。

根拠もなく理論もない。もはや直感とでもいうべきそれが一人で解決されるはずもなくミリアルは首をかしげざるを得なかった。

 

 

「違和感?………うーん、私にはわからないなぁ。でも、どうせ時間はあるし謎解きでもするかい?違和感を当てるためにここを探索しようじゃないか」

 

 

そんな妹の様子を見てアリアルはそう声をかける。気分屋のアリアルにとって平凡な旅なんぞつまらない。疑問を疑問のままにするにはあまり余った時間があるのだから解消すればいいと思っての提案だった。

ミリアルは少し悩んだ素振りを見せて答えた。

 

 

「うん。それも楽しそうかも。」

 

 

こうして旅人の二人はミリアルの違和感の解決と自身の生存のための物資を求めてこの大樹の中へと飲み込まれた荒廃した都市の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

「さて、なんか面白いものでも落ちてないかなぁ」

 

「流石にそんなところに都合よく落ちてるとは思えないんだけど…?」

 

 

二人は無駄口を叩きながら母屋を漁る。

外面がボロボロの割には中の家一つ一つの保存状態はとてもよく、様々な物資が非常にいい状態で放置されていた。

本棚にはよくわからない粒子力学とやらの本が所狭しと並んでいるのが確認できるため、どうやらここはどこかの研究者が住んでいた家のようだ。

 

 

「……あ!」

 

「え?なにかあったの?」

 

 

探索を続けていると急に声を上げたアリアルにミリアルが問う。

 

 

「フフッ。どうやら都合よくなんか落ちてたみたいだね」

 

 

宝探しに成功した子供のような純粋さと悪人のような悪さを含んだ笑みを浮かべたアリアルは自身が調べていた机をどかす。

そこには不自然な取っ手のようなものと床に不自然な切れ目が確認できて、そこに地下の入り口があることを明確に示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

コツコツ歩く音が二人分と白色灯が照らす無機質な通路に響く。

暖かさなんぞみじんも感じられない機械的な通路をただ黙々と歩く二人の顔は警戒と好奇心が混ざったような顔になっており、ここの存在に何らかの期待をしていたようだった。

 

長い通路を超えた先には広い空間があり、アリアルがそこに踏み入ると同時に侵入者の二人を歓迎するかのように部屋の電気がついた。

部屋の中は様々な機械類が並べられており、何らかの研究がここでなされていたことは間違いないだろう。

 

 

「うわっ……びっくりした。」

 

「自動電灯かぁ。かなり金をかけた施設だね。こりゃぁ、なにかありそうだ」

 

 

アリアルとミリアルは研究所らしきその部屋を見渡す。

しかし威圧感すら感じられるこの機械類を素人である彼女らが完全な理解をなせるはずもなく、アリアルはつまらなそうに視線を書類が束ねられている机へと向けた。

 

 

「っと……?何だろこのボタン」

 

「え、アリアル?まさか押したりしないよね?ね?」

 

「面白そうなボタンがあるなら押すしかないだろう?」

 

「繁栄人の作ったものなんかまともなものがあるわけないんだからやめとこうよ。」

 

「いや!私は押すね!」

 

 

退屈で気が狂いそうになっていたアリアルは刺激を求めて勢いよくボタンを押す。長い間使われていなかったであろうそのボタンはその役目を正しく果たすために、研究所の奥にあった鉄の扉を開放した。

ゆっくりと持ち上げられる扉をアリアルとミリアルはじっと見据える。

その奥には繁栄人の実験による身体の異常発達で空腹に飢えることになったネズミが目の前に現れた餌2つを捉えるために赤く大きな目を光らせていた。

 

 

「うっそーん………。」

 

「あのさぁ……。」

 

 

でかすぎるネズミに二人は絶句した、と同時にふたりとも目配せをする。

 

 

「アリアル」

 

「何も言わなくても言いたいことはわかってる。」

 

「「逃げるぞーーーー!!!!」」

 

 

二人はそのネズミから逃げるために猛ダッシュで研究所から逃げた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

夕日に照らされた原っぱ。赤く染まった原っぱから見る巨大樹に取り込まれた都市群は少し影になっていて、遠目からでもその異様さを際立たせている。

そんな場所でアリアルはミリアルに正座ををさせられていた。

 

 

「で?反省の言葉は?」

 

「………申し訳ございませんでした」

 

「はぁ……ほんとにさぁ……。もっと安全に配慮した行動をしてほしいんだけど?」

 

「ほんとに申し訳ない……」

 

 

アリアルが再度謝るとミリアルはため息をついて都市群の方へ顔を向ける。

アリアルも自然とそちらに顔をむけた。

 

 

「はぁ………アリアルの行動で迷惑かけられたことはこれが最初じゃないしねぇ。」

 

「面目ないなぁ……」

 

「まぁ、あの大きすぎた大樹の謎は解けたね。あのでっかいネズミもどきみたいなのを見た感じ、繁栄人の道具に物体をデカくするなんかがあったんじゃない?」

 

「うん。彼らが何を思ってそれを作ったかはわからないし、失敗作だったのかもしれないけど。まぁ、もう彼らは生きてないだろうし問題はないか。」

 

 

ミリアルは少し哀れんだ目で巨大樹の方を眺める。アリアルは少し目を細めた。

 

 

「なんか自業自得って感じがするね。」

 

「うん、まぁ……本当に………。」

 

「それよりも、アリアルのせいで今日の寝床が消えたんだから、いい場所探しといてよ?」

 

「うっ……。わかったよ…。」

 

 

二人は都市群に背を向けて歩いてった。

巨木に呑まれた都市郡は二人の旅人を静かに送り出した




ミリアル'sMemo [都市を呑んだ大樹]

大樹:ものすごくでかい木。どうやら反映人の使った薬によってデカくなったみたい、予想でしかないけど。自分たちが作った薬で自分たちの繁栄の証が壊れるなんてなんだか自業自得って感じがする。

研究所:どっかのアホが化け物開放したせいで探索があんまりできなかった。無機質すぎて少し怖く感じた。

大きなネズミ:ものすごくやせ細っていた。多分大きくなる薬かなんかをかけられたんだと思う。あくまで予想でしかないから違うかもしれないけど。閉じ込めた側は責任も果たさず死んだんだからネズミが可愛そうとも思ってしまう。まぁ、餌になる気はないけど。
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