雨が降りしきる梅雨を超え、少しずつ太陽が仕事を再開し始めた日の夜。ミリアルはビル群を進む途中で急に倒れてしまったアリアルの看病をしていた。
「ねぇ、アリアル?大丈夫?」
「う……?あぅ…」
ミリアルが声をかけるが、発熱による症状なのか言葉になっていない喘ぎをだすアリアル。それを見て心配になるミリアル。
「……失敗だったかなぁ。やっぱり夏場にビル街に行くべきじゃなかったかもね。」
「あ………、うん……。」
そうつぶやきながらミリアルはテキパキとアリアルの病状を確認する。
旅人だからこそその手際は非常にスムーズであり、現役の看護師や医者がいたらきっと驚くことだろう。
「うーん、意識の混濁に目眩と発熱かぁ。……たぶん熱射病だろうね。夏になってるし気をつけなきゃだなぁ。」
「あぇ……?あぁ……」
「はぁ……。アリアルはもう静かにしていて。これ以上無理したら怒るから。」
アリアルの瞳は不安げにゆれており、焦点は合わなくなっているようにも見えるが、ミリアルの声を聴くと眠るかのように目を閉じた
「……ね、アリアル。前に私がインフルエンザ…?にかかったときにさ。アリアルがずっと付ききっきりで面倒見てくれたよね。」
ミリアルはいつもと違ったアリアルの姿をいつくしむように眺めながら話を続ける。
「あのときには食料も少なかったってのにお粥をわざわざ作ってくれて。」
「あのときのおかゆの材料は酷かったなあ……。都市部で拾った香辛料と、古米、あとは山菜だったっけ。」
「お粥って割には味が濃かったイメージがあるんだよねぇ………」
当時出てきた濃い味のおかゆを思い出して、ミリアルは苦笑交じりにアリアルに告げた。
「でも、すっごく嬉しかった。」
ミリアルの中ではずっと記憶の中に残っている大切な思い出の一つ。アリアルの看病を続けていると昔看病をしてくれていた姉の姿と自身を重ねてしまう。
ミリアルはアリアルの頭に手を伸ばし撫でながら話を続けた。
「心配してくれる人がいるのってすっごく幸せなことだって思ったんだ。」
「アリアル。ありがとう。」
「あなたが居るから私は今ここに居れるよ。」
そう告げてアリアルの方を見るとアリアルの胸は規則的に上下していた。アリアルが眠っている証拠だろう。
「寝ちゃってたか。」
眠っているアリアルを横目にミリアルは明かり1つない曇天の夜空を眺める。先ほどは燦燦と照っていた太陽は夜に紛れて消えていた。
「ねぇ………まだかな。」
「…………私もあなたも成長できないね。」
少し震えた声で呟いた言葉は誰にも届かず、寒空の中へ溶けていった。
アリアル's Memo[恋譜の返歌]
私が起きたら、ミリアルが隣で寝ていてね。
正直びっくりだよ。
ぼやけた意識の中、ミリアルに看病してくれていたのは覚えているけど…………さ。
あれは反則じゃないかい?
さすがのアリアルさんもびっくりしてしまったよ。
私が面倒くさい女なのは自覚していたからね。嫌がられているもんだと思っていたから、あんなことを言われると……うん。思い出すだけで顔から火が出そうなぐらいには恥ずかしいねぇ。
まぁ、そろそろ時期は過ぎたけれど、暑い日は反射光とかがひどいから熱中症や日射病に注意しなければね。
……そうだ、いいこと思いつた。アリアルに悪戯してこよう
追記 アリアルに「ゆっくり"熱中症"って言って?」って言ったら、どうやら知ってたみたいで口をきいてくれなくなってしまったよ。悲しい…。