『宝石姫 JEWEL PRINCESS』に登場するキャラの一人、ジンカイトのエピソードを脚色して文章化しました。

ゲームそのものはサービス終了して久しいですが、
彼女の可愛らしさが少しでも伝われば、と。


2022.08.19追記
何の気なしに見てみたらまさかの復活報告!
復活してコケたゲームがあるのもまた事実ではありますが一先ずは喜びです。

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恋する炎姫が抱いた夢

 

「ね、救星主様!知ってる?」

 

ある日のこと、僕にそう話しかけてきたジンカイト。

理由は分からないが、とても楽しそうな表情で僕に近づいてきた。

 

どうしたの、と尋ねると。

 

「近隣の街でお祭りをやるんですって!一緒に見に行きましょうよ!」

 

 

ジンカイトにこうしてお出かけの誘いをされるのは一度や二度の話ではない。だが、こうして祭りに行きたいと言ってくるジンカイトの顔はとにかく明るくて愛らしく、こんな誘い方をされて断ることができる人がいるのか、とすら思ってしまう。

そうしている間にもジンカイトから説明が続く。

 

話を聞いているうちに、僕自身が前に噂を聞いたことがあるものと同じものを指していることが分かった。実際、どんなお祭りなのか少し気になっていた。

 

つまるところ、機会があれば一度見に行ってみたいと思っていたのである。

 

「ね、いいでしょ?」

 

そして幸運にもジンカイトもそのお祭りに興味を持ち、一緒に行こうと誘ってきた。僕は念押しのように言ってきたお誘いに、いいよと答えた。

まさしく幸運と言っていいのだろう。ジンカイトと一緒にいることが嬉しいのは僕も同じなのだから。

 

「救星主様とお祭りに行けるなんて……!」

 

努力家で勉強や武術にも一生懸命なジンカイト。剣の腕は数多の宝石姫の中でも上位に入るほどの実力者だと思うし、実際に戦いになれば愛用の剣で敵を次々に焼き払う勇敢な姿を僕は何度も見ている。だけど、僕と一緒にお祭りに行けることを楽しみにして目を輝かせている姿は純真な少女そのもので―――、

 

「わたくし、とっても楽しみだわ!」

 

 

決して自身を大きく見せようとしない。そんな姿に惹かれているのだと思った。

 

 * * * 

 

「すごい……街全体がお祭りの会場になってるのね……!」

 

当日、約束通りお祭りの会場となる街へやってきた僕とジンカイト。

天気も良く、通りには大勢の人々が行きかっている。少し周りを見渡すだけでもあちこちで人だかりができていて、出店やイベントが街中で行われていた。

 

街全体が会場となっている規模の大きさに驚きながらも

 

―――人が多いから、はぐれないようにしないと。

 

そう言って僕はジンカイトに手を差し出した。

僕の手をジンカイトは一瞬だけ戸惑ったように見つめていたが、すぐに僕の手を取ってくれた。

 

僕の手を握って笑顔を見せてくれる。些細なことであっても、ジンカイトが笑ってくれることが嬉しかった。

 

 * * * 

 

ジンカイトと一緒に街の中を歩き始めて結構な時間が経った。

どこで何をしているのかはっきりとは調べていなかったから、計画はほとんど立てていなかったけれど、ジンカイトはここに行こう、次はあそこに行こうと次々に行き先を提案してくれるおかげで僕の計画性のなさは表に出ずに済んだ。

 

そうしているうち、辺りはすっかり暗くなっており、想像していたよりも長い時間が経過していたことに気が付いた。でも、退屈な時間なんて全くなく、むしろ一瞬で時間が過ぎ去ったと感じてしまうほどに楽しかったと思った。そして、ある時立ち寄った出店で興味深い話を聞いた。

 

このお祭りは夜になってからメインイベントがあるようで、街の中心にある広場で『願いの大焚火』と呼ばれるイベントが行われるというものだった。このお祭りのシンボルのようなもので、吹き上がる炎を眺めながら願い事を思い浮かべることで、願いが叶うというものだそうだ。

 

「……そ、それって、どんなお願いでもちゃんと届けてくれるのかしら……。」

 

僕と一緒に出店の人の話を聞いていたジンカイトがぼそりと呟く。

 

「どんな、お願いでも……」

 

その時のジンカイトは僕が視線を向けても僕の方を向いてくれなかったけれど、少しだけ下を向いていた。頬が普段よりも染まって見えたのはきっと気のせいではないだろうし、お祭りの灯りが照らしていたからでもないはずだった。

 

「ね、救星主様!せっかくだし、わたくし達も行ってみましょうよ!」

 

僕の方を向いたジンカイトと目が合う。せっかく面白そうなイベントの話を聞いたのだ。行かない理由なんてないだろう。

 

 

 * * * 

 

「うわー……人でいっぱいね……。」

 

場所を移動し、大焚火の近くまでやってきた。大焚火の周りは既に多くの人で溢れかえっており、皆が静かに焚火に向かっていた。

それは今までのような賑やかなものではなく、どことなく荘厳な、そんな雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

「救星主様。わたくし達も、願い事……しましょうか。」

 

人が多かったこともあり、僕とジンカイトは大焚火の最前列まで行くようなことはせず、少し離れた場所まで歩いてから立ち止まった。

 

 

 

沈黙が流れる。

 

少し離れた場所で燃えている大焚火を眺めながら、僕は『願い事』を思い浮かべた。

 

僕の願い。それは―――。

 

 

 

「ね、救星主様。あなたは何をお願いしたの?」

 

隣に立っていたジンカイトが話しかけてくる。

僕がお願いしたことは隠すような事でもないし、正直に口にした。

 

―――世界の平和。

 

―――ジンカイトともっと仲良くなれるように。

 

 

 

「へ、へえー……。」

 

ぎこちなくそう答えるジンカイト。

彼女の頬は真っ赤になっており、そっけない返事ではあったけど全く隠せていない照れを頑張って隠そうとしているのだと悟った。

 

 

 

それから少しの間再び沈黙が流れたが、しばらくして。

 

 

 

 

 

          (「わ、わたくしも、その……)           (同じ……だから……」)

 

 

ジンカイトはぼそりと何かを呟いた。でも、それはほとんど聞こえないくらい小さい声で上手く聞こえなかった。

 

だからこそ、何て言ったの、と返したのだけれど。

 

 

「あ、あなたとなら、もっと仲良くしてもいいって言ったの!」

 

身体を震わせながら、怒ったようにそう返されてしまう。

でも、それが機嫌を損ねて言った訳ではないことは分かっていた。

 

―――これからもよろしく。

 

だから、そう言ってジンカイトに手を差し出した。

 

「ええ……よろしく。」

 

差し出した手をジンカイトはそっと握り返してくれる。

お祭りの間握っていた手だったけど、改めて握ってみると彼女の手は柔らかで、その感触に思わず胸が高鳴った。

 

手を握ったまま、今日何度目か分からない沈黙。

 

「これからも、ずっと一緒……だからね。」

 

握った手に少しだけ力が入る。

それから、お祭りが終わるまでジンカイトとの会話の数は少なくなっていた。

ただ、二人で手を繋ぎながら大焚火を眺めていた。

 

 

 

炎を眺めながら願い事を思い浮かべることで、願いが叶う。

 

 

 

大焚火に込めた願いが届いたのかは分からない。

だが、僕とジンカイトが込めた願いの通り、僕たちの距離が近づいた、と思うのは僕の思い違いではないと、そう思った。

 

 


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