屍喰鬼と殺人鬼   作:ユニ@カスリンガー

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心あり鬼

喰う者=捕食者

 

食われる者=餌

 

 

 

 

 ~ シュウ 7歳 ~

 

 

 ガサガサッ

 

「あっ! これなんか良いかも? 『人間的精神論』かぁ」

 

「これから読書か? んじゃ俺は帰るわ」

 

「おう! ミカによろしくな!」

 

「りょーかい! またな、シュウ」

 

 今日もたくさんの本が捨てられて行く。そんな中、俺は捨てられた本をこっそりと拾い、裏路地のダンボールで出来ている小さい秘密基地へ行く。そこで本を読むのが俺の日常だ。

 

「よし、誰も居ないよな? うん、よし急げぇ!」

 

 何故こっそりするかって? そりゃ俺が「奴隷」だからだ。

 俺の家はこの地域の独裁者の家畜小屋だ。今は仕事をサボりここで本を読んでいる。もちろんバレればただじゃすまないが、俺は昔から忍び足が得意だったからバレてない。

 

「へぇ~人間の心ってそうなってるのかぁ、いいなぁ学校の奴らは」

 

 本来、義務教育であるはずの小・中学校にも奴隷は行くことが出来ない。

 勉強どころか寝る時間もまともに取れず、一日中ずっと仕事をさせられる。そんな俺が同年代の人達と変わらない程の知識と常識があるのは、本を読んでいるのと親が優しく教えてくれるからだ。

 

「うわぁ! もうこんな時間か、22分もかかった。この本はページ数多かったからな。早く戻らないと」

 

 そういって基地のテーブルに投げ置かれる300ページ程の本。

 バレ事は無いがもし何か問題があったら連帯責任で体罰が待っている。シュウは自分自身の体罰は意外とどうでもいいのだが、問題は自分以外の人が体罰を喰らうという事だった。だからこそ人一倍速く走れるこの脚と本を他より早く読めるこの眼が好きだった。

 

「よっ そっと ほっ! はい!到着!」

 

 もちろん今日もバレずに飄々と家畜小屋に帰る。多少の食料をもって、奴隷仲間のみんなと食べるのだ。

 

「ただいまぁ~、今日も取ってきたぞ~」

 

 まだ、仕事中なので俺は静かに入って小さな子供にお菓子を渡し、大人の人にご飯を渡す。

 

「今日もありがとうな」

 

「にひひ~!」

 

 ”ありがとう”そう言われて照れる。奴隷は働く家畜、必要最低限以下の食料しか食べる事は出来ない存在。そんな俺たちが飢えをそこまで感じず生きれるのが自分のおかげだと思うと嬉しかったし、褒めてもらえるのは恥ずかしいが、もっと嬉しかった。

 

「シュウおいで」

 

 ビックリして振り返ると、お母さんが呼んでいる。

 

「お母さん、安静にしててよ。俺は大丈夫だから」

 

「違うの、私があなたを撫でたいの、だから来て」

 

 そう言ってお母さんが俺を呼ぶので、俺は近づく。近づいた俺の頭を撫でながら、もう片方の手で大きくなったお腹を擦る。

 

「かっこいいお兄ちゃんですね~、ねぇリョウ?」

 

「見ててよお母さん! 俺もっと頑張るから!」

 

 

 

 ~一月後~

 

 今日もまた本を読む。本は良い物だ。最近では健康の本を読んでる。大人の男性は子供や女性より重労働を強いられている。だから子供の中でも最年長の俺がみんなの健康を守る事になった。

 

「最近、お菓子とかばっかりだけど、野菜も必要かぁ、今度 調達しよう」

 

 しかし時間はかけられない。俺が居ない分は結局誰かが代わりの仕事をやらなければならない。だから早く帰ってみんなに迷惑をかけないようにしたい。特に母さんに負担をかけないようにしたい。

 近々俺の弟が生まれる。俺は3人兄弟の末っ子だった。っと言っても俺が物心を付く前に1人は『捕食制度』により喰われてしまったらしく声どころか顔も覚えていない。2人目は目の前で殺された。俺の犯したミスによってだ。その時「絶対お前を守る」と言われたのを覚えてる。そんな俺にも弟が出来るんだ。

 

(今度は俺が弟を守る。兄貴がそうしてくれた様に)

 

 そう言いながら街をコソコソと徘徊しながら金目の物を集めた。落ちている事はほぼ無く、ほとんどはスリだ。

 

「そろそろ家に帰るか、今日は大量だし、2週間はなんとかなるだろ」

 

 そう言って近くのお店に向かう ご飯を買うのだ。母さんにお腹いっぱい食べて元気な赤ちゃんを産んでもらう為にね。

 

 奴隷の俺が買っても違和感を持たないようだ。会計を済ませて外に出ると自分と同じくらいの子供が4、5人ほど居た。どうやら俺と同じ奴隷の子だ。そして俺の持っているご飯を見ていった。

 

「おい!痛い目見たくなければそれを置いて行け!」

「そーだぁ!置いて行け!」

 

 あぁ、またこいつらか、思わずため息を吐きながら答えた。もう6回目だ。俺がご飯を持っている度に、絡んでくる。

 

「ダメだ。これは母さんにあげる大切なご飯だからあげない!」

 

「んだとぉ!?」

 

「そういう事だからバイバイ」

 

「あっ! 待て・・・・・・」

 

 ご飯を持ちながら全力疾走で逃げる。この時は砂利道を走れる事が嬉しかった。元々脚は速いが、この間捨ててあった『すにーかー』を治して履いているから裸足の連中なんかより全然速い。

 10分も走ると家が見えてきた。まぁ家といっても家畜小屋だけど、俺に取っては雨風を防げる唯一の場所だ。すにーかーを脱いで隠し、こっそりと中に入る。この時間は睡眠時間で仕事は無い。それだからだろうか、みんなが口を揃えて――

 

「「「おかえり」」」

 

 っと、迎えてくれた。そして俺は笑顔で答える。

 

「ただいま!!」っと。

 

 

 

 

 

 

 ~リョウ 0歳~

 

 

「ふぅ~~~~ ふぅ~~~~ はぁ~~~~ はぁ~~~~」

 

 母さんが深呼吸をしている。一時間ほど前から急に陣痛が始まり、この調子だ。昔からここでメイドとして働いているトキコさん(25歳 独身)が出産の手伝いをしてくれている。トキコさんは餌だが適性率が高く奴隷じゃなく『通常種』として生活をしている。

 

「はい、頑張って、頭と肩は見えてるわ」

 

 父さんは作業をしている。妻が出産中だろうと奴隷に心配する権利は無い。

 えっ?俺? 父さんに頼まれて抜け出して見に来た。

 

「うぅ~まだかなぁ?」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 母さんの叫び声が聞こえた。それと同時に・・・

 

「うぎゃぁぁぁ」

 

 小さな命の産声が小屋中に響いた。

 

 ガラッ

 

「シュウくん、無事に生まれたわ、お父さんに伝えてあげなさい」

 

 その瞬間、体にかかる重力が無くなったかのように飛び跳ね。低い天上に頭をぶつけながら走り出した。

 

「おと~~さぁぁ~~~ん!」

 

 早く知らせてあげよう、僕の「弟」の誕生を!

 

 

 

「はぁはぁ、ありがとうございますトキコさん」

 

 完全に疲労困憊の満身創痍だけどお礼を欠かさずに言う。

 

「え、えぇ・・・」

 

 しかし、トキコさんはひどく困惑していた。出産成功した喜びと、理由の分からぬ違和感に恐怖していた。

 そう恐怖だ。

 

(餌と餌の子供は確実に餌になるはず、なのに、この子から感じる恐怖はいったい、まるで『捕食者』に睨まれたかのような恐怖は・・・・・・ いやこれは・・・・)

 

 本来、捕食者であろうと赤子からは、けして放たれない。人間に対する強い喰欲である。

 だが、それは捕食者と言うにはあまりにも優しすぎる名前であった。

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