日本国召喚 ~天照の咆哮~   作:イーグル

5 / 37
お気に入り登録が、53件に行きました!
皆さま、本当にありがとうございます。

実は正直、ここまで伸びるとは思っていませんでしたので、心底驚いています。
これからも、精いっぱい頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。




クワ・トイネ公国編-3

クワ・トイネ公国 外務局

 

最初の日本とクワ・トイネの会談で派遣が決まった後、外務局に勤める職員たちは使節団の人員調整や特命大使の権限についての調整など、日本との国交開設に向けての準備に追われていた。

 

「ヤゴウ!二ホンとかいう新興国に使節団として行くらしいじゃないか。うらやましいよ、何しろあの巨大船を作ってしまう国だからな。俺も行ってみたいよ。」

 

同僚の一人が、話しかけてくる。使節団派遣は、別に珍しいことではない。この世界では、国王が変わると国名が変わる国が珍しくなく、中程度の国ではよくあることである。まれに、大国が分裂していくつもの国になることだってある。

ただ、そういった国々は、政治体制の変更で大きな混乱が起こっていることが多い。つまり、治安が悪いのだ。そういった場所に向かう使節団に被害者が出ることも珍しくない。なので、誰もやりたがらない仕事なのだ。また、衛生環境や食糧事情なども不人気なことを後押ししていた。

ただ、今回は違う。皆々、とても気になっていた国への派遣なのだ。

ヤゴウが目を通した資料によると、使節団が派遣される国は日本国というらしい。初めて見たときは、目を疑い何度も見直した。ワイバーンが全く追いつけない鉄竜、手の中に納まるほど小さな蓄音機、350mという城のような、帆をはらずに航行する巨大船。

 

「信じられないな・・・。」

 

ヤゴウは、思考を巡らす。

 

もし、これらがすべて事実ならばとてつもない技術を持っていることになる。羽ばたかずに飛ぶ飛行物体といえば列強一位のミリシアルか、同じく列強二位のムーしか持っていないものだ。蓄音機もまた、数年前にムーによって開発されたばかりのものだ。帆をはらず、航行できる船も列強二国しか持っていないものだ。

今、マイハーク港に入港している日本艦隊は、明らかにムーの、10年前に来航したムーのグランドフリートを構成していた「ソウコウジュンヨウカン」という軍艦より大きく、洗練されている。

列強を超える国力を持つかもしれない国、日本。彼は、日本という国に大きな興味を持ち始めていた。

 

(もしかしたら、私は歴史に大きく影響する人物になるかもしれないな)

 

「皆、集まったな。これより事前会議を始める。」

 

不意に、彼の思考は号令によって、かき消された。

 

小さな会議室で行われているこの会議は、使節団として派遣される外務局の5名と、軍務局の将軍ハンキの計6名である。軍務局の人間がいる理由は、日本国の軍事力を見抜くためである。

この使節団の団長が説明を始める。

 

「今回の我々の一番の目的は、二ホン国がどのような国であるかを確認し我が国とともに歩むことができるかどうかを、判断することである。知ってのとおり、我が国の防空網が日本の鉄竜に、あっさりと突破された。今のところ、我が国にこれを防ぐすべはない。

二ホン国は、我が国に対し食料を要求し、我が国と国交を結びたいとの意思を示している。技術と防衛力を引き換えにだ。

ただ、どのような目的で我が国と国交を結ぼうとしているのか、真意を調査する必要がある。」

 

皆が頷く。もし、覇権国家だったりしたら。もし、ロウリアのような亜人に対して極端な差別意識をもっていたら。あの鉄竜や巨大船を相手にしないといけなくなったら残念ながら、クワトイネに対応する力はない。だから皆、とても真剣である。

 

「二ホン国がどの程度の国なのかは不明だが、あの巨大船を見る限り途轍もないほどの技術力を持っていると思われる。理解しているとは思うが、我が国の代表として毅然とした態度で接することも必要だが、相手を刺激しないように言動には十分配意すること。

出来るのならば、二ホン国に対して我々が優位に立てる部分を探してほしい。

それでは、皆配布した資料を見てほしい。」

 

新たに配布された資料に皆は目を通す。

 

説明が始まる。

 

「二ホン国側の説明によれば、今回は二ホン国側が、移動手段を提供してくれる。

出発は三日後の昼過ぎ、皆準備をしっかりしておくこと。

出発の二日後の夕方には二ホン国本土の西側に位置する「キュウシュウ」地方の都市「ナガサキ」市に上陸しそこで、三泊する。そこで二ホン国の安全に行動するための常識を教え込まれる。二ホン国の外務省によれば、二ホン国の常識を知らないといろいろと危険らしい。

上陸から五日後の昼12時くらいには、ナガサキ市を出発。リニアシンカンセンと呼ばれる交通手段で移動する。二ホン国首都トウキョウには、15時くらいには到着するとのことだ。翌日日本国政府との会談が行われる。」

 

・・・・・?

 

おかしい、はっきりというなら時系列がおかしい。事前に目を通した資料によれば、日本の本土は我が国から、北東方向に約1000㎞以上の距離がある。船舶がたった二日で到着する距離ではない。さらに、ナガサキからトウキョウまでの距離も、1000㎞を軽く超えている。それにもかかわらず、わずか三時間で到着するとは、一体どういうことだろうか。

マイハーク上空を、まるで雷のごとく飛び去って行った鉄竜ならば話は解るが、資料によれば、「リニアシンカンセン」という乗り物は、地上を走るものだということだ。

 

日本という国はどうやら、我々の基本常識が通用しない国のようだ。

 

会議は、終わった。

使節団の面々は、三日後の出発に備え荷造りを始めた。

 

三日後、マイハーク港

 

使節団の面々は、クワ・トイネ一番の港であるマイハーク港に集まっていた。

天気は快晴で、きれいな青空が広がり、少し涼しく心地よい。

そこに、一人のスーツを着た男性が来て、話し始める。

 

「お集りの使節団の皆様、私は皆様の今回の派遣を少しでも快適に過ごしていただくために派遣された、日本国外務省の田上です。何かご不便な点があれば、どうぞお申し付けください。」

 

日本とはどのような国なのか、大半の団員は期待を寄せていたがそんな中、一人だけ憂鬱な顔をした団員が一人いた。

 

「今から船旅か・・・・。」

 

「ハンキ将軍、顔色が優れませんが、どうされましたか?」

 

「ヤゴウ殿か、いや、今から船旅だと思うと気が重くてな。船旅は良いものではないぞ。いつ転覆するかわからないし、船の中は暗く、湿気が多く、臭い。しかも、疫病にかかるものも出るし、食べ物は、保存食の塩辛い肉や硬いパンしか食べられない。何よりも真水が、船の上ではとても貴重だ。

今回は、船旅は短いと聞いているが、正直2日というのは短すぎる。外務局と二ホン国の間で、何らかのやり取りのミスがあったとわしは思っているよ。

船としては、ありえない速度でいかないと無理じゃよ。」

 

「私も、時系列がいろいろとおかしいと思っています。ただ、鉄竜やあの巨大船を保有している二ホン国なのです。もしかすると我々の常識では図っていけないのかもしれません」

 

間もなく時間になる。

港から少し離れて停泊している、巨大な平べったい軍船の影から、それよりも巨大な白い船が現れる。

 

使節団全員に、大きな衝撃が走る。

でかい!しかも帆がない!!

 

極大に大きな白い船は、軍船の隣に停泊した。

田上が説明を始める。

 

「今回は、今到着した「飛鳥Ⅲ」に乗って、日本国に向かいます。本当は、この港に直接接岸したかったのですが、残念ながら港の水深が不足しているため、あそこに停船しました。皆様には、小舟に乗って移っていただきます。」

 

やがて、飛鳥Ⅲという白い船から小舟が三隻現れ、これまた信じられない速度で港に向かって爆走してきた。その船にも、帆がなかった。

この巨大な白亜の船と爆走する小型船の登場は、使節団の面々のみならず、日本の派遣艦隊を見物しに来た野次馬にも大きな衝撃を与えた。

 

「・・・・・はっ!田上殿、田上殿」

 

余りの衝撃でフリーズしていた使節団のメンバーの内、いち早く現実に復帰したハンキが呼びかける。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「以前から気になっていたのだが、貴国の軍船やあの白亜の船は、帆がないようだがどうやって動いているのじゃ?小舟に関してもだ。まさか、第一文明圏の魔導動力船みたいなものか?」

 

「魔導動力船というのが、どのようなものか存じ上げませんが、皆さまが乗る船はディーゼル機関によって動いています。」

 

「でぃーぜるきかん?」

 

「はい、いわゆるカラクリです。重油と呼ばれる液体を爆発させることによって、そのエネルギーを利用してスクリューと呼ばれる羽を回すことによって、推進しています。」

 

「うーむ、よくわからないがすごいのう。ん?我々の乗る船では?あの軍船は違うのか?」

 

ハンキは、田上の言葉に気づき、いざなみを指さしそのことを聞く。

 

「ああ、いざなみのことですね。あの艦は核融合炉という特殊なものを搭載しています。ディーゼル機関よりも強力なエネルギーを生み出すことができます。ただ、余りに特殊なので一部の軍艦にしか搭載されていません。」

 

「ふーむ、なるほどな。」

 

やがて、皆は小舟に分乗し、大型客船飛鳥Ⅲに向かった。

客船に乗船し、内部に入ると使節団は再び驚く。

 

明るい。光の妖精がいるのか、あるいは小さな太陽があるのだろうか。

 

「こ・・・・この船、信じられんが鉄で出来ている、一体どうやって浮かんでいるのだ・・・・。しかも中が明るく、広い。まるで宮殿だ。」

 

各々に割り当てられた部屋へ案内され、船と思えないほどの部屋に三度驚きつつも、一堂はくつろぎのひと時を過ごした。

 

その日のヤゴウの日記より

 

なんという事だろうか、私は驚きを隠せない。ムーのグランドフリートを構成していたどの軍船より、大きい。二ホン国には、これよりも巨大な船が複数存在しているという。とても信じられない。

しかも、中はとても快適で明るく、温度が一定に保たれている。その快適さといえば、船旅を嫌っていたハンキ将軍が、テラスでカクテルという飲み物を楽しんでいたほどだ。

このような大きな船にも関わらず、海上を矢のような速度で進んでいく。

このようなものを作り出してしまう国、二ホン国とは、いったいどのような国なのか、とても楽しみである。

外務局の同期の中には、新興国の蛮国に違いない。あの大きな船は、どこからか奪ってきたのではないか、と言う者もいたが、いまのところ、言いたくはないし、認めたくないことだが、我々のほうが蛮族に映っているのではないだろうか。

もしかしたら、二ホン国は列強の、それも列強上位のミリシアルやムーに匹敵する力を持っているのかもしれない。

 

使節団を乗せた飛鳥Ⅲとそれを護衛する派遣艦隊は、順調に航行し長崎市に向かった。

 

二日後

 

「皆様、長崎市が見えてまいりました。長崎市は、九州地方有数の都市です。あそこに見えるが長崎港であり、長崎港からは、リムジンバスでホテルまで移動していただき、日本についての基礎知識を学んでいただきます。」

 

長崎港が見えてきた。自国最大のマイハーク港以上の港や長崎の街並みに使節団はとても驚く。

これで、地方都市なのかと。

 

「すごいな・・・。これで地方都市なのか。ん!?ハ、ハンキ将軍!!あれを見てください!」

 

「どうしました、ヤゴウ殿・・・!な、なんだ、あれは!!」

 

ヤゴウが何かを見つけ、大きな声を上げそれを指さす。

ハンキもまた、指さした方向を見て驚く。

 

そこには、まるで城のような船が停泊していた。直前で別れた日本艦隊の巨大艦より、少し小さいがそれを感じないような威圧感があった。

 

「田上殿、あの巨大艦はいったいなんのですか?」

 

「あれは、戦艦武蔵です。いまから、80年前に建造された戦艦で長い間我が国の国防に、寄与しました。25年前に退役し、現在は建造されたこの長崎で博物館船として、保存、展示されています。」

 

その事実に、驚く。あの巨大な軍艦が80年も前に建造運用され、そしてすでに退役してしまったということに。これほどの力を持っていることに、日本に上陸する前に感じることになった。

 

その後、船を降りリムジンバスに乗り、ホテルに移動する。

船の上で、田上から車と呼ばれるものが、内燃機関によって動いているということを聞かされていたがまさか、道路を埋め尽くすほどの量があるとは、思っていなかった。

巨大な船、ワイバーンより早い鉄竜、天を衝くほどの高さの建造物など。

それらで理解する、日本の呆れるほどの豊かさを。

 

到着したホテルで、使節団は日本の基礎知識を学ぶ。具体的に言うと、信号システム、自動販売機、自動改札機に鉄道システムについて。それに、日本で犯罪になってしまうことを学んだ。

この国にあふれているものは、摩訶不思議なものばかりだが、すべて「科学」で構築されている。そして、仕組みさえ理解すれば、誰でも作ることができると言っている。

 

なるほど、信号と言うものがないと、あの車たちが好き勝手動いて、最終的に車は詰まって動かなくなってしまうだろう。と、ヤゴウは理解し、このシステムを自国に導入できないかを真剣に考える。

ちなみに、ハンキ以下他の5名は、日本の技術に驚き疲れてしまっている。

 

「田上殿、田上殿。少し良いか?」

 

クワ・トイネのものとは、比べることすらできないほど、座り心地の良い椅子に深く座ったハンキが話しかける。

 

「何でしょうか?ハンキ様。」

 

「このナガサキ市は、ずいぶん発展しているが、首都はもっと発展しているのかね?」

 

「はい、まず人口が比較になりません。なので、高層建築物もここより高いものが沢山あります。地下鉄も、網の目のように張り巡らせています。広い範囲で都心部が広がった結果ですね。ただ、街並みは地方都市のほうがきれいです。東京は、雑多な感じがすると、言われていますので。」

 

「うーむ、早く見てみたいですな。ああ、それと二ホン軍を見学することは可能かね。わしとしては、鉄竜とやらを見てみたいのだが。」

 

「防衛軍の見学ですね。分かりました、今確認を取りますね。」

 

田上が、すまーとふぉんという光る板を取り出し、独り言を始める。通信用の道具だと聞いているが、あそこまで小さくできるものだろうか。

 

「ハンキ様、ちょうど明日から、海上防衛軍佐世保基地にて、基地祭が開催されます。一般市民向けの防衛軍と市民の交流会のようなものなのですが、それでよろしければ手配できますが。」

 

「おお、すまんのう。たのむ、たのむ。」

 

ハンキは、日本軍の見学の機会を得て、上機嫌だった。

 

「他に基地祭に行きたい方はおられますか?来賓席を手配しますが。」

 

「私も行きます。」

 

ヤゴウが手を上げ、田上がこのことの連絡を取ったあとに、ハンキらは戦艦武藏の見学を今日行いたいと、相談したが、

 

「戦艦の見学ですか、なら大丈夫ですよ。なぜなら、明日の基地祭には現役の戦艦が、公開される予定ですから。」

 

このことを聞き、ハンキとヤゴウは明日の基地祭に、期待を寄せた。

 

翌日

 

ハンキとヤゴウは、絶句していた。

 

(正直、高速道路で目を回しそうになったし、夜明け前に移動開始したから、眠かったがこれを見て眠気がぶっ飛んでしまったわい)

 

一般市民を軍事施設に入れて、軍と触れ合うなど、自分たちの常識では考えられなかったが、そのことが些細に感じられるほどの衝撃が、二人を襲った。

理由は、目の前に停泊している軍艦が、原因だった。

 

BBH-003 ながと

 

400m近い全長を持つ、文字どうりの桁外れの巨大船だった。

 

「た、田上殿。この軍艦は一体何なのですか!?」

 

「この戦艦は、ふそう型三番艦ながとです。全長390mと日本の軍艦としては、二番目に大きく強力な戦艦です。御二人が見た、長崎で保存されている戦艦武藏の代艦として建造された戦艦で現在も、重要な戦力として活動しています。」

 

「ち、ちなみに、二ホン国はこれを何隻保有しているのか?」

 

「ふそう型は10隻建造されて、全艦現役です。」

 

「「10隻!!!!」」

 

この事実に、二人は驚愕し顔を見合わせる。このながと一隻だけで、クワトイネ海軍はおそらく蹂躙されるだろう。それが、10隻。途方もない、そして、圧倒的な実力の差。

二人はただただ、この国がとても平和的な国であることに、神に感謝した。

 

このあと、来賓席で鉄竜ことVTOLF-11のアクロバットパフォーマンスを見て驚き、その性能を聞いてまた大きな衝撃を受けることになった二人であった。

 

その日のハンキの日記より

 

街にあふれる建築物、高速道路という巨大な上空道路、そして鉄道と呼ばれる大規模流通システム。

これらの凄まじいまでの建造物やシステム群を作る二ホンという国が恐ろしい。

しかも、ここナガサキ市は二ホン国の首都ではなく、一地方都市に過ぎないという事実。驚愕、いや言葉に言い表すことができない。

豊か過ぎる国二ホン、彼らはその強力な国力にふさわしい、凄まじいまでの軍事技術を有している。

二ホンは、島国の為海軍に力を入れている。今日見た軍艦ナガトは400m近い全長、20万トンを超える排水量、全てが規格外の存在だ。しかも、同型艦が10隻いるという。

鉄竜もすさまじい。マイハークに侵入したものと準同型機というそれは、音の速さの3倍の速さで飛ぶことができるという。行動可能半径は1000㎞を優に超える、化け物、いや天空の覇者という名がふさわしいと感じる。彼らから見れば、我が国のワイバーンは、止まって見えるだろう。

案内役の田上に聴取したところ、鉄竜は海上攻撃や、陸上支援にも使用されるとのことだ。

彼らとは必ず友好関係を構築しなければならない。

彼らを、二ホン国を敵に回すということは、文明圏の列強国をすべて相手にすることより、恐ろしいことである。

彼らと敵対してはならない。絶対にだ。

 

ホテルの一室にて、

 

「なあ、ヤゴウ殿。」

 

「なんでしょうか。ハンキ殿。」

 

「貴公は、二ホン国をどう思う。」

 

「そうですね、一言で表すなら、豊かですね。我が国とは比較にならないほどに・・・。例えばホテルの中は、温度が一定に保たれている。これほどの建物を暖めるのに、どれほどのエネルギーがいるのか・・・。

他にも捻るだけで、お湯が出る機械もある。トイレも非常に清潔に保たれている。

外に出ると、無人の自動販売機という販売機械があり、冷えた飲み物がいつでも手に入る。

夜間開いている店舗があり、いつでも上質な物が手に入る。

食品売り場では、常に新鮮な食料が手に入る。

夜も街灯によってとても明るいので、街中なら松明やカンテラが無くても歩けるし、治安がとてつもなく良い。

全ての生活レベルが、我が国と比べ、次元がまったく違う。悔しいが、我が国はこの国の足元にも及ばないと感じます。

そして、その国力に見合った軍事力を持つ。

聞いた話では、我々を護衛していた平べったい巨大艦は、航空母艦という、鉄竜を何十機も運用することが出来る軍艦だとのことです。

圧倒的な力の差を見せつけられました。

二ホン国は、絶対に敵に回してはいけないと思いました。」

 

「やはり君も同じ思いか・・・。あの鉄竜の前には、今までのワイバーンの空中戦術は、役に立たないだろうと私も思う。いよいよ明日には二ホンの首都トウキョウに出発じゃな。まったく二ホンは心臓に悪いよ。」

 

「そうですか?私はとてもワクワクしていますよ。このような、夢物語に出てくるような国が突然現れ、しかも自分たち以外を蛮国と見下している文明圏の国々よりも高度な文明を持っている。そんな国が最初に接触した国が我が国とは・・・。

彼らに覇を唱える性質がなければ、これはとても幸運です。」

 

ヤゴウとハンキは、深夜まで日本について語り続けた。

 

翌日の昼過ぎ、ホテルエントランスにて

 

「田上殿、ここからトウキョウまで1000㎞あるが、本当に今日中につくのですか。」

 

「はい、事故や災害の類がなければ、予定通りにつきます。」

 

「解りました。ありがとうございます。」

 

「いいえ」

 

田上は、満面の笑みを浮かべる。

 

使節団が、東京に向かうためホテルを後にした直後、

 

キーーーーっっっドン!!!!!!!!!!!!!!!

 

物と物が大きくぶつかる音が起きた。ヤゴウたちはいったい何が起きたのだろうかと疑問に思う。

ヤゴウは外を見る。

頭から血を流して座り込んでいる女性が1名、その横に黄色に塗られた変な車が止まっている。

 

「ああ、またタクシーによる事故か。」

 

田上は、吐き捨てるように言う。

事故にあった女性は、力なくうなだれている。

 

「まずい!早く治療しなければ!!!」

 

「お待ちください、ヤゴウ殿、すぐに救急車が来ますので、大丈夫です。ヤゴウ殿!」

 

田上の制止を振り切り、ヤゴウは座り込んでいる女性に駆け寄る。

田上は、立場上外国の使節団にけが人の手当てをさせるわけにはいかなかった。

 

女性は、うなだれており頭に負った傷口からは、激しく出血していた。

 

「いかんな・・。,.vmtaiba,eo.,b,a;wsoe4igamoiseo」

 

ヤゴウが何か聞き取れない言葉で唱え始める。すると、彼の両手が淡い光を放ち、女性の頭の傷口がみるみる塞がっていった。

その一部始終を、田上や周りの人々が目撃した。

 

「や、ヤゴウどの。今のはいったいなんなのですか?」

 

「?回復魔法を使っただけですが、なにか?簡単なものを使っただけですよ。」

 

「魔法ですと!?さすが異世界、魔法が存在しているのですか。」

 

「珍しいものではありませんよ、本当にどうしたのですか?」

 

ヤゴウは、田上の驚きや周囲の喧騒に戸惑うことになった。

 

 

リニア新幹線の中にて

 

「なんですと!!!二ホン国には、魔法が存在しないですと!!」

 

「ええ、我が国があった元の世界では魔法と言うものは、おとぎ話の中の存在でした。」

 

「だとすれば、二ホン国は魔法なしでここまで発展したのですか。驚きですな。」

 

使節団は、日本に対してイニシアチブを取ることのできる大きなことを発見できた。

日本に魔法技術が全くないのならば、我が国の魔法技術をよい条件で輸出できるだろう。

つまり、日本国内において魔法を使った治療や、魔法学校、魔法研究でいろいろとクワトイネ側に有利にすることができるだろう。

 

また、この事はクワ・トイネ公国を発展させるうえでも役立つだろう。

魔法を全く知らない日本が、科学のみでここまで発展できるのだから自国に取り入れれば、魔法と組み合わせることで国力向上を大きく期待できるだろう。

 

「田上殿、貴国の科学技術を我が国に輸出することは、可能だろうか?」

 

「我が国には最近、新世界技術流出防止法という法律が出来たので最新技術や中核技術は、不可能かと思います。ただ、既に使われていない、もしくはとても古いものならば可能です。また、基本的なことはその辺にある本屋で売っている本に書かれています。ただ、翻訳作業が全く進んでいないのであなた方の文字に変換することは、とても難しいと思います。」

 

この事を知り、ヤゴウはこの国の技術の基礎たる科学に関する本をなるべく多く持ち帰り、翻訳作業をして自国の発展に寄与することを、心に決めた。

 

東京についた翌日

 

第二回日桑会談が始まった。

 

「そ・・・総トン数年間3500万トン!?」

 

ヤゴウは、日本が要求してきた食料に驚く。

第一回会談の時、日本が食料を要求してきたのは知っていたが、ここまで膨大なものだとは思っていなかった。

 

「貴国は、とても農業が盛んであると聞いています。日本は転移前は複数の国から輸入していたので、一国ですべて賄えるとは思っていませんが、このうちどれほど可能か知りたいのです。」

 

日本から提供された資料を一通り読み終えたヤゴウが話し始める。

 

「水産資源や、こーひー豆と言うものなどよくわからないものなどは無理だと思います。

ですが・・・・、それ以外、3500万トン全て、我が国で賄えますよ。」

 

「!!!それはほんとうですか!?」

 

「はい、ただわが国にはこれらを安定的に提供できるインフラがありません。」

 

「では、それを解決できれば、食糧輸出は可能なのですね?」

 

「カナタ首相や議会の承認が必要ですが、私見では可能だと考えています。」

 

日本側の参加者たちがざわめく。

当初の予定では、クワトイネの他に数か国と交易をおこない、食料を確保するつもりだったのだ。それがまさか、たった一国で解決できるとは夢にも思っていなかった。

実は、クワ・トイネは女神の祝福によって、食料自給率400%に匹敵している超農業国家なのだ。もし、この国が地球にあったら、間違いなくこの国をめぐって大戦争になるだろう。何しろ、種さえまけば勝手に成長するのだから。

そんな農業チート国家と、平和的に接触できた日本はとても幸運だろう。食糧危機を一気に解決できるのだから。

 

「外務省の前島です。クワ・トイネ公国がよろしければ、食料の大規模輸出と引き換えに港設備の増強とクワトイネ公国のインフラ、鉄道設備は我が国の政府開発援助より資金を出し、我が国が整備しますが、いかがでしょうか?」

 

!!!!!!

今度は、クワトイネ公国側がざわめく。ただ同然に手に入る食料を輸出するだけで、国が大きく潤い、さらに、日本が港と鉄道を整備してくれるという。

これ以上の好条件があるだろうか。

会議は良好な終了した。

 

その後、幾度の会議の結果第二回日桑会談の一か月後に、日本国とクワ・トイネ公国は正式に国交樹立した。

 

以下が、両国間の同意事項の一部である。

 

・クワ・トイネ公国は、日本に必要量の食料を輸出する。

・日本はクワ・トイネ公国のマイハーク港の拡充、マイハークから穀倉地帯への交通インフラを、日本の資金により整備する。

・日本、クワ・トイネ間の為替ルートの設定。

・クワ・トイネ公国は、日本に魔導技術の提供と、他国に対しての仲介をする。代わりに日本は、クワ・トイネに、新世界技術流出防止法で許される限りの科学技術の提供と、インフラ整備を行う。

・日桑軍事同盟の締結。

・上記の同盟により、新世界技術流出防止法に違反しない兵器の提供をクワトイネ公国に行う。

などである。

 

こうして、日本とクワ・トイネはとてつもなく良好な関係に至ることになった。

そして、この出来事は世界に大きな影響を与えていくことになる。




一部用語の解説を載せておきます。

ムーのグランドフリート
日本転移10年前に、ムー海軍が国威発揚のために行った巡行で、各文明圏を訪問した。最新鋭艦だけで編成された特務戦隊は、列強国としての印象を与えた。
元ネタは、1923年のフッドを旗艦としたイギリス特務戦隊による世界一周パフォーマンスです。フッドの有名な逸話の一つである、サンフランシスコ市長による「私はこの街をあげて貴艦に降伏します。どうぞお好きなように」は、この時の話です。

装甲巡洋艦
大雑把に言えば、三笠などの前弩級戦艦と同じ時代に海軍の主力艦として活躍していた艦です。史実では、1890年から1910年ごろまで各国で建造されていました。原作で、ラ・カサミが三笠に似ているのでもしかしたら、ムーでも主力艦として使われていたのではないかと考え登場させました。

最後に
次回からは、いよいよロウリア王国編になります。戦闘シーンをお待ちの皆さま、強化された日本による蹂躙をぜひ楽しみにしてください。

パーパルディア皇国について

  • 原作通りに存続する
  • 滅亡一択、慈悲はない
  • 作者が自由に決めて

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。