「僕はラブソングが歌えない」を題材に描いたとき、佐藤と武蔵を直接対決させようとは思っていたのですが、どうしても佐藤と武蔵を絡める話を考えることが出来ませんでした。
その時考えた内容が変質に変質を重ねて…こんな形になりました。 ※同一HNでpixivにも投稿済みです。


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第1話

セックスは、愛するただ一人の相手とすること。

僕とセックスした彼女たちは、みんな僕のことを愛している。

僕とセックスした彼女たちは、みんな僕の言うことを何でも聞いてくれる。

 

彼女たちはみんな、他(・)の(・)誰(・)か(・)で(・)は(・)な(・)く(・)、僕(・)の(・)方(・)を(・)選んだ。

そう…僕(・)の(・)方(・)を(・)、ね。

 

 

 

先週、僕は武蔵とセックスをした。

艦娘の武蔵だ。

その武蔵はN駅近くのパブで、一人で飲んでいた。

そう言えば艦娘とはしたことがなかったなと思って、僕はその武蔵に声をかけた。

 

「艦娘の、武蔵さん…ですよね?」

「そうだが…。」

「うわあ…間近で艦娘を見るのは初めてなんですけど…本当に綺麗なんですね…。」

 

ちょっと拙い声かけだったけれど、武蔵は相席を拒まなかった。

この武蔵は無口な方だったけれど、それだけにこの後の会話では、僕が主導権を取れた。

そして…。

「どうかな?この後、少し…。」

「…かまわんぞ。」

武蔵は僕の誘いに応じた。

そして僕らはラブホテルに行った。

 

武蔵とのセックスは実に素晴らしかった。

艦娘は良い、と聞いてはいたけれど、この話は本当だった。

僕は夢中で腰を振った。

僕は何度も何度も武蔵の中に出した。

武蔵は僕が中に出すだけでイったし、僕も武蔵がイくたびに堪らず中に出してしまっていた。

何より、切なげな表情(かお)と、快感を訴える悲痛な鳴き声が僕を夢中にさせた。

武蔵と言えば(どの武蔵も)何者にも屈しない、武人の中の武人だ。

その武蔵が、切なげな表情(かお)で、悲痛な鳴き声で、快感に屈している。

僕は、あの武蔵をセックスで屈服させた。

これでこの武蔵は僕の物だ。

 

 

ホテルを出て、僕は武蔵に言葉を掛けた。

「武蔵…この次は、いつにする?」

「別にいつでもかまわん。この辺(N駅近辺)で私を見かけたら、まずは誘ってみると良い。都合が悪くなければ応じよう。」

そう言って武蔵はその場を離れた。

 

いつでも構わない…いつでもどうぞ…。

やはりこの武蔵は僕の物だ。

僕はそう確信した。

 

その日、他の女の子と一夜を共にする約束があったけど…その子には急用が出来たと連絡を入れて、僕は帰宅した。

 

 

そう言えば武蔵は、僕に連絡先を教えなかった。

武蔵は電話やSNSがあまり好きではないと言っていたけれど。

この僕に連絡先を教えない、というのはいけないことだと思った。

だって武蔵は、僕の物なんだから。

 

 

それから一週間ほど経ったその日、僕はN駅近くで武蔵を見つけた。

武蔵の傍には、もう一人別の艦娘が居た。

野趣あふれる武蔵とは対照的な、洗練された雰囲気を持つ艦娘。

その艦娘は…戦艦大和だった。

 

やはり僕は、色々な意味で選ばれていると思った。

こんなにも早く、武蔵に続いて大和を僕のものにする機会を得られたのだから。

 

僕はまず武蔵に声をかけた。

「やあ、武蔵。」

「ん…ああ、お前か。」

「いいところで会ったね、会いたかったよ…。」

 

「そうだな…だがあいにく、今日は都合が悪い。…私は今から姉さんにお仕置きを受けるのでな。」

 

…?

お仕置き?

どういう意味だろう?

…意味がわからなかった。

それに武蔵が「今日は都合が悪い」という言い方をしたことにも違和感を覚えた。

 

「本当に残念だが、お楽しみは次の機会に、な。」

「え?…うん…それじゃあ、またね…。」

 

話の流れは、武蔵がこのまま僕から離れていく方向に流れてしまった。

僕としたことが!

大和を僕のものにするどころか、武蔵の連絡先を聞き出すことすら出来ないなんて!

 

しかし…。

 

「武蔵、あなたは先に行って頂戴。私は…ちょっとこの人とお話があるから。」

「…あまり焦らさないでほしいな。」

「すぐ済むから。」

「…わかった。」

 

大和は武蔵を先に行かせた。

…焦らさないでって、どういう意味だろう。

それに大和に視線を向けた武蔵の目…何だか熱を帯びて、潤んでいたような…。

 

武蔵はその場を離れてしまったけど、僕と大和は二人きりになれた。

なんだ、やっぱり僕は選ばれているんじゃないか。

 

チャンスは最大限に生かす、それは僕の主義でもある。

とにかく大和を僕のものにしなくては…。

 

「あっ!す、すみません、ご挨拶が遅れてしまって…!武蔵のお姉さん…大和さん、ですよね?ああ、大和さんをこんなに間近に見られるなんて、僕は何て運が良いんだろう…。」

大和を褒める言葉を含ませて、少しばかり大げさに挨拶をする。

大和はどんな反応を返してくれるかな…。

 

「お褒めにあずかり光栄です。ところで、貴方は誰にことわって私の妻(・)を呼び捨てにしているのですか?」

 

!?

 

「え…つ、妻…?」

「武蔵のことです。」

「で…でも、武蔵も、大和さんも…。」

 

「艦娘は人間の女性とも、艦娘とも子を生すことが出来ます。」

「女性の提督も艦娘と『ケッコンカッコカリ』はできます。」

「正式な法規や制度があるわけではありませんが、艦娘同士がそ(・)う(・)い(・)う(・)関係を持つことも珍しくはないんですよ。」

 

そういえば、そんな話も聞いたことはある。

 

「それで…貴方は誰にことわって私の妻を呼び捨てにしているのですか?」

「あ…えっと…。」

武蔵と大和が夫婦みたいなものだって言うなら、どっちかというと妻(・)にあたるのは大和の方なんじゃないかな…。

…ダメだ、考えがまとまらない。

 

「あの子の中に入って、あの子の中に出したからって、それであの子の所有者気取りですか。」

 

「中に入って…中に出した…って…。」

この大和…何だか変だ…。

 

「僕と武蔵は、そんな…。」

「あの子は私に話してくれましたよ。」

 

…話した?

「話したって、何をですか?」

「決まっているでしょう。先週あの子が貴方とセックスしたことを、ですよ。」

 

どういうことなんだろう?

武蔵は大和の妻(・)で…それで武蔵は先週僕とセックスしたことを夫(・)の大和に話して…。

でも、それって自分が浮気したことを自分からバラしているってことで…???

 

「…貴方にとってセックスは、女の上に自分の所有権を成立させて、女を使用・収益・処分するための行為なのでしょうが。」

「あの子にとってのセックスは、単純に気持ち良くて楽しい遊びなんです。」

「…もしかして、貴方はあの子とセックスできたことで、自分はオスとして優れているのだ、とか思っていますか?」

「だとしたら、残念ですね。あの子は求められれば誰にでも股を開きますよ。」

「だから貴方があの子とセックスできたからって、貴方がオスとして優れているとは言えないんですよ。」

 

「ぼ…僕がビッチに踊らされてるピエロだって言いたいんですか!?」

「そ、そんなことを言うんだったら、大和さんだって、武蔵に裏切られまくっていることになるじゃないですか!」

 

「あの子が誰に抱かれようが、誰を抱こうが…あの子は私の妻です。ついでに言うと、提督と金剛さんの愛人です。」

 

武蔵は…大和の妻で…提督と、金剛(確か艦娘だったよな…)の…愛人?

どうなってるんだ…彼女たちの関係は…わからない…わからない…。

 

「あの子が誰とセックスしようが、提督の、金剛さんの、そして私の、あの子への気持ちは揺らぎませんし、あの子との繋がりは途切れたりしません。」

「セックスすることが裏切りになる?バカバカしい。少なくとも私たちにとってセックスはどこまでも艦娘と艦娘を、人間と人間を、艦娘と人間を結びつける営みです。」

「誰かとセックスしたことで、ただそれだけで他の誰かとの繋がりが途切れるなんて、私たちから見れば不自然な話です。」

「正直、あの子が他の誰かとセックスするというのは、確かにあまり愉快なことではありませんけれど。」

「その時は、改めてあの子の肉体に『あなたは私の妻だ』とわからせてやれば良い。」

「ただそれだけのことです。」

 

大和はそこまで言うと、僕に一歩歩み寄った。

そして左腕を僕の背中に回して、僕を抱き寄せて…右手で僕の股座を、そっと鷲掴みにした。

 

「お…ほうっ!?」

僕は思わず可笑しな声を上げた。

 

大和は、そんな僕に構わず言葉を続けた。

「随分ご立派なモノをお持ちなんですね。」

「少なくとも、提督のモノよりは…。」

「…私ね…男の人が妬ましくて仕方がないんですよ。」

「あの子の中を直(じか)に楽しめる提督や貴方が、あの子の中に挿入れられるモノを持っている男の人が、妬ましくて堪らないんですよ。」

「妬ましくて妬ましくて…。」

「…ちょっと力が入りすぎてしまいそうです。」

 

「ヒィッ!?」

僕はまた、情けない悲鳴を上げた。

 

「…冗談ですよ。」

「でも…貴方のコレが大したモノだということは私も認めますが。」

「世間にはコレぐらいのモノなど、掃いて捨てるほどあるんですよ。」

「あの子は…これぐらいのモノなど、それこそ飽きるほど(実際には飽きてなどいませんが)楽しんできたんです。」

「それでもあの子は、提督の愛人であり、金剛さんの愛人であり、何よりも私の妻でいてくれるんです。」

「…さっきあの子は『今日は都合が悪い』と言ったでしょう?」

「あれはね…貴方とのセックスより、私とのセックスを優先する、という意味なんですよ。」

「わかりますか?あの子は、貴(・)方(・)で(・)は(・)な(・)く(・)、私(・)を(・)選んだんですよ。」

 

武蔵は…僕を…選(・)ば(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)…?

 

「貴方のご立派なモノは、あの子を貴方の物に出来なかったというわけですね。」

「ところで、現に貴方の物になっている女の人はどうなんでしょうね?」

「貴方のご立派なモノで、貴方の所有物になるような女の人は?」

「さっきも言いましたが、コレぐらいのモノなど、世間には掃いて捨てるほどあります。」

「貴方のコレで貴方の所有物になるような女の人なんて、結局他の人のコレでその人の所有物になってしまうんじゃありませんか?」

 

「どれだけご立派なモノを持っていようと、貴方のモノに惹かれて貴方の物になるような女の人なんて、そんな人ばかりでしょう。」

「貴方より凄い人を知ったら、その人の方に流れてさっさと貴方を捨てるような人ばかりでしょう。」

「そしてしつこいようですが、貴方より凄い人なんて、世の中には掃いて捨てるほど居るんですよ。」

「貴方がどれだけ自惚れていようと、貴方の未来には敗北に次ぐ敗北が待っているというわけです!」

 

大和はこれだけ言うと、僕を解放して一歩下がった。

 

「先週、貴方とセックスして帰宅したあの子は…とても満たされて、色めいて、艶めいていました。」

「そんなあの子を、私は思わず…。」

「…素晴らしい一夜でした。」

 

「よければ、これからもあの子とセックスはしてください。」

「そしてあの子を艶めかしく、美しくしてください…私のために、ついでに、提督と金剛さんのために。」

「よろしくお願いしますね…嫪毐(ろうあい)さん?」

 

すれ違いざま、気品のある顔に冷たすぎる嘲笑を浮かべて、大和はその場を離れていった。

 

 

 

僕は…何かが、信じられなくなった…。

今まで信じていた、何かが…。


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