ONE PIECEの世界に転生した一般タコ魚人 作:タマネギ日光浴
バレットが海賊団を去ってから、1年が経過した。
15才になったおれは心身ともに成長し、そこそこ強くなったと思う。
武装色の覇気を剣に纏わせることができるようになったし、腕だけなら黒く硬化させられるようにもなった。
見聞色はまだ意識しても半々の確率でしか発動しないが。
どうやらおれは武装色が得意なタイプらしい。
しかし、師匠の教育方針はどの色も満遍なく鍛えていくようだ。
新世界の見聞色の使い手には、相手の感情を読み取ったり、未来を先読みする猛者がいるらしい。
それに対抗するためには見聞色もある程度は使えないと話にならないようだ。
…マジ?
新世界ってそんなに魔境なのか。
以前の航海ではおれのレベルが低すぎたせいで全然わからなかった。
これからも修行あるのみだな。
ただ、覇気の修行に入ってから師匠のスパルタ具合がどんどん過激になっており、いまや真剣で打ち合うので生傷が絶えない。
おれの身体がもてばいいのだが。
そんな風に、とある上陸した島で師匠と修行をしていると、どこから嗅ぎ付けてきたのか海軍が襲ってきた。
中将を含めた海軍将校が複数いたが、ロジャー船長には物足りなかったようだ。
おれも大佐レベルなら問題なく倒せたことで成長を実感した。
やはり覇気のアドバンテージは大きい。
これなら准将以上にも通じると思うが、強そうな敵は船長達が率先して倒しに行ってしまうため中々経験をつめないな。
そう思っていたことがフラグだったのか、海軍とはまた別の巨大な勢力が島に上陸したことを感知した。
いや、まじで強大な気配だな。
見聞色が比較的得意でないおれでもはっきりと感じ取れるくらいヤバイ奴らが近づいて来ている。
その内の1人が先陣をきって襲いかかってきた。
なんだアレは……‥。
和服……侍か?
ロジャー船長は先ほどまでとは異なり、嬉しそうに迎え撃っていた。
そのすぐ後に相手のリーダーがやってきて、ようやく何者なのかがわかった。
白ひげ海賊団だ。
そのままなだれ込むように白ひげ海賊団との交戦が始まった。
この戦闘は今までにないくらい長期戦となり、三日三晩続いた。
おれはエッドウォーでの反省もあり、継続戦闘能力を鍛えてきた。
具体的にいうならば、スタミナ向上とより剣に負担のかからない振り方だ。
昔よりはるかに増したおれの馬鹿力で考えなしに剣を振るっていたらすぐに剣がダメになる。
武装色で剣を硬化するにしても、体力を消費するので常にというわけにはいかない。
そこで師匠や剣士のクルーの太刀筋から見て学び、地道に素振りで剣のフォームを改善してきたのだ。
これまでの修行では、動きの無駄や隙をなくすことで、6本腕の効率的かつ効果的な運用という側面で六刀流を鍛えていた。
それがそれぞれの腕1本による剣技の洗練という次の段階に入ったのだ。
おかげで、おれはこの長い戦闘でも最後まで戦い抜くことができた。
ただ、また別の課題も明らかになった。
おれが相手をした敵の中でダイヤモンドの身体の奴がいたのだが、それを切ることができなかったのだ。
向こうもおれの堅牢な六刀流の防御を突破することができずにいたので膠着状態に陥った。
おれにも何か攻撃の決め手となる必殺技が必要だと痛感した。
基本的なおれの戦法としては、六本腕の手数を活かして攻めまくるか、守りに徹して相手の攻撃を受け止め、あるいは受け流して隙を作るの2パターンだ。
いずれにせよ特に奥義のような特別な技はない。
一撃に頼るよりも流れるような連続攻撃に重きを置いてきたからだ。
だがそれでは単純に固い相手には通用しないことがわかった。
これを解決するにはより強い武装色の覇気と筋肉が必要だ。
つまりやることはいつも通りの鍛練だな。
3日の戦闘でも決着がつかなかったので戦闘はおひらきとなった。
そしておれたちは宴を始めた。
お互いの宝や食糧を戦利品として差し出す姿は、ただのプレゼント交換会のようだ。
3日も争っていたのに今では仲良く騒いでいるのは不思議な気分だ。
おれもダイヤモンドの奴とお互いを称えあい、仲良くなった。
他にも白ひげ海賊団のシェフとレシピを交換しあったりして親交を深めた。
サッチというらしい。
また、見習いだというのに一際戦闘で目立っていたマルコという少年とも気があった。
そして、一番気になっていた和服の侍はなんと、家族ごとおれたちの船に乗ることになったようだ。
どうやら原作のロビンのように古代文字が読めるため、ロジャー船長が白ひげに頼み込んで1年だけ借り受けたらしい。
光月おでん、か。
あのギャバン先輩と互角に打ち合っていたし、なにより二刀流の使い手だ。
ぜひ手合わせしてみたいな。
そうしておでんとその細君、赤子を乗せて出航したら、他にもおでんの家臣だというネコとイヌがついてきていた。
そうはならんだろ。
てか動物系の能力者ではなく、こういう種族なのか。
しかも14才とはおれより1つ年下か。
よし、はじめての年下の新入りだ。
可愛がってやろう。
思う存分もふもふした。
煙たがられた。
(´・◎・`)ショボーン
それからおでんはすぐさまおれたち海賊団に馴染んだ。
その持ち前の強さと明るさと破天荒さはおれたちにとってもいい刺激となった。
おでん(料理名の方)の腕も抜群で、ジャヤのモックタウンで振る舞ってくれたそれはとてもおいしかった。
しっかりレシピは覚えたぜ。
細君のトキさんは素敵な人だし、赤子のモモの助はかわいいし、皆でお世話した。
特におれは、はっちゃんや魚人街のみなし児達の世話で赤子の扱いには慣れているからな。
意外だったのは他の古株のクルー達も赤子に手慣れている様子だったことだ。
それでも、おれの6本腕はだっこの安定感が違うし、抱き上げながら他の腕であやしたり、ミルクを作ったり作業もできる。
6本腕最強!
とはいえ、一番安心できるのはトキさんの腕の中のようだったが。
さすがお母さんだぜ。
…おれの母親は今どうしているだろうか。
両親ともに生きてくれていたらいいのだが。
さて、ロジャー船長によると古代文字が読める人材が手に入ったことで、ポーネグリフを巡る旅に出るそうだ。
そのために、またグランドラインから航海を始めるらしい。
今度はそこまで急ぎではなかったので、普通に魚人島を経由する逆走ルートをとることにした。
どうやら、前回の反省を踏まえて、去年シャボンディ諸島でコーティングしてもらった際に師匠がその技術を見て盗んだそうだ。
加えて、新世界側でシャボン玉文化がある島の目星もつけているらしい。
いや、師匠が有能すぎる。
これが伝説の海賊団の副船長か。
そんなわけで、魚人島だが今回はコーティングした島で充分な補給ができていたので、そのまま上陸せずに通過した。
遠くから見聞色の覇気で、魚人街にいるはっちゃんが元気なことだけは確認できたからよかった。
そうして戻ってきたグランドライン。
まず最初に目指すポーネグリフには船長に心当たりがあるようだ。
それでやってきたのは、なんとジャヤ島だった。
ということはもちろん行き先は空島だ。
全員死ぬ可能性もあるノックアップストリームで空島へ向かうのだ。
赤鼻先輩がずっとビビりっぱなしで面白かった。
キャッキャと笑っているモモの助を見習ってほしい。
無事に空島スカイピアにつくと、そこは夢のような光景だった。
一面の雲の海。
見たことない服装、食事、建物、そして文化。
特にダイアルは興味深い。
空島のお金はもっていなかったが、あらかじめ持ってきていた地上の土や石と交換でいくつか手に入った。
今日のおれは我ながら冴えているぜ。
その後、神という名の国長であるガン・フォールの協力もあり、黄金郷ジャヤにも足を踏み入れることができた。
そこで目当てのポーネグリフをみつけた。
早速おでんに読んでもらったようだ。
その後ロジャー船長はおでんにお願いして、黄金の大鐘楼の横に古代文字で一文を残してもらっていた。
これが原作のあのシーンに繋がるのか…
一ファンとして感無量だ。
空島から戻ったおれたちは、水の都ウォーターセブンにも立ち寄った。
空島から落下した際に船が傷ついたからだ。
いや、上空1万mから落ちても全壊しないのはさすがなのだが。
数年ぶりに会ったトムさんは元気そうでよかった。
…それとあれはフランキーか?
このショタがあんな変態になるなんて時間とは恐ろしいものだ。
次の目的地は魚人島だ。
またかよ、って感じだが、空島のポーネグリフが指し示していたのが魚人島で、その在処にもロジャー船長は心当たりがあるらしい。
その道中でおでんやイヌアラシたちからも、自分たちの国にも赤い石碑があるという驚きの証言があった。
これで、以前に船長達がビッグ・マムから奪った写しと、魚人島、そして先程おでんたちが話したワノ国、ゾウにそれぞれ存在する赤い石碑で4つが揃う。
いよいよ最後の島への道筋が現実味を増し、ロジャー船長は子供のように大喜びした。
シャボンディ諸島でコーティングして再度魚人島へ向かう途中、海底で何者かの声を聞いたおでんとロジャー船長。
海の生物と会話できるおれでも聞こえなかったが、いったい何者の声なのか。
…やめてくれ、おれはホラーが苦手なんだ。
魚人島リュウグウ王国の門まで着くと、そこには厳重な警備があった。
国王のネプチューンまで出てきておれたちに武器を突きつけてきた。
どうやら門が壊される予言があったようで、警戒しているみたいだ。
ロジャー船長はネプチューン国王と知り合いのようで、誤解だと弁明していた。
実際、ほどなくして大人しいはずの海王類が門を破壊したので、おれたちへの疑いは晴れた。
国王から冤罪の詫びもかねて、2つのポーネグリフまで案内してもらった。
その情報と国王の証言と、シャーリーの予言を照らし合わせると、10年後国王の子供に海王類と会話ができる人魚姫が生まれ、それが古代兵器のポセイドンかもしれないことが判明した。
…最近、おでんが航海に加わってからどんどん重大な情報が集まってきているように感じる。
クロッカスさんによると、船長の余命もあと1年だというし、この楽しい冒険の日々が加速度的に終わりへと向かっているようだ。
しかし!
そうだとしてもおれにできることは最後まで自由を楽しむことだけだ。
この冒険に悔いだけは残してはならない。
不思議とそう感じた。
そのあとは新世界に入りまた様々な冒険があった。
雷の降り注ぐライジン島に上陸したり、とある島でポーネグリフを発見したりだ。
トキさんが第二子を産むというめでたい出来事もあった。
しかしそんな時、事件が起こった。
ワノ国近海でトキさんが倒れたのだ。
トキさんの念願だったワノ国が目前となり、長年の航海による疲弊と悲願の成就による安堵から体調を崩してしまったのだ。
船医のクロッカスさんからもこれ以上の航海は危険だと診断され、ワノ国に到着次第船を降りることを勧められた。
彼女の身を案じたおでんも共に船を降りようとしたが、トキさんは夫の夢を尊重し、こんなところで断念するようなら離縁を申し出ます、とまで言い放った。
あっぱれだ。
結局、トキさんと子供達、彼女らの連れ添いと同心たちへの仲介役としてイヌアラシ、ネコマムシが下船した。
仲良くなった仲間と別れるのはいつだって寂しいが、これもまた冒険なのだろう。
ワノ国ではロードポーネグリフを写したら数時間で出航した。
幻の島ゾウに上陸した。
なんだここは。
もふもふ天国か…?
フフフ…10数年ぶりにわたくしの6本腕の奥義、NADENADEを発動するときがきたようですね。
さて、まずは手始めに、あそこにいるうさぎのもふもふさんからいかせてもらいましょうか。
…
……
………
その後、おれはこの楽園から出禁をくらった。
おかしい、同意の上でしかヤってないのに…
ここは、いわゆるファンタジー世界における獣人のような見た目のミンク族達が集った国家、モコモ公国である。
ロジャー船長達は、この国のまとめ役であるひつギスカン公爵にイヌネコからの手紙を渡して、無事にロードポーネグリフを見せてもらったようだ。
これで最後の島への条件が揃った。
後は冒険に出るだけだ!
…だからお願いだ、ロジャー船長。
笑っていないでおれをこの牢屋から出してくれ!
そして年が明け、ついに最後の島への航海が始まった。
しかし、最後の島への航海を前に赤鼻先輩が高熱を出してしまった。
それを看病するために赤髪先輩も航海を断念した。
………おれは悩んでいた。
なんやかんや船で一番仲良くしていたのは、同年代で同じ見習いだったこの2人だ。
それなのにおれだけ抜け駆けをするなんてしたくない。
しかし、ワンピースが目の前にあるかもしれないのに、それを見逃すだなんて、前世でこの世界のファンだった身としては耐えられない。
いったいどうしたらいいんだ…。
そう葛藤していると、息も絶え絶えで寝込んでいた赤鼻先輩が起き上がりこう言った。
バカやろう、おれ様は天下無敵のバギー様だぞ。
舎弟のお前に心配される筋合いはない。
さっさとハデにお宝さがしに行きやがれ!
…やれやれ。
弟分にそこまで言われちゃあ、しょうがない。
おれは残ることにした。
それが一番悔いが残らないと思ったからだ。
それに、おれが冒険で得たお宝はどうやらここにあるみたいだしな。
そうしてバギーをシャンクスとともに看病していると(というかおれがいないとお粥ひとつ作れないのにどうやって看病するつもりだったんだ)、ロジャー船長達が最後の冒険から帰ってきた。
話によると、最後の島へ上陸し、莫大な宝を発見したそうだ。
そこで世界の全てを知った船長達は大笑いしたらしい。
なんせ最後の島に「ラフテル」と名付けるくらいだからな。
こうしてグランドラインを全制覇したロジャー船長は海賊王と呼ばれるようになった。
꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂꧁⍤⃝꧂
なっちゃん:はっちゃんの感知だけ見聞色がずば抜けているブラコン。
もふもふに対して異様に手×6が早い。
なんだコイツ、変態か。
実は身長もすくすくと伸びており、鍛え上げたその筋力は、ロジャー海賊団の中でも上位に入る。ただし覇気の習熟はまだまだであるので総合的に見たら中堅くらいの実力だろう。
師匠:武装色の覇気の伸びがいいのは、6本腕を疑わないアホさも然ることながら、教えを乞うた相手を完全に信じきっていることの影響も大きいと考察している。
11才で船に乗った時からここまで強くなるとは思っていなかった。
それにここまで変態だとも思っていなかった。
モコモ公国で1人でふらふらと何処かへ行ったと思ったらまさかなでなでのせいで捕まっていたとは。
正直ドン引きである。
ミンク族:実はなっちゃんはその証言の通り、もふもふをなでなでする際はきちんと同意をとっていた。
そのため、セクハラなど法を犯して捕まったわけではない。
そのなでなでの幸福感があまりにも強すぎたために、骨抜きにされたもふもふ達が気絶してしまうことが相次いでしまったのだ。
彼は男も女も見境なくなでなでの魔力で籠絡していった。
そしてその毒牙がついに国一番のもふもふであるひつギスカン公爵にまで及び、残った家臣達から、このままでは国が崩壊すると判断され、御用となった。
要するにミンク族にとって、危険人物だったので隔離されたのだ。
まさに過ぎたるは猶及ばざるが如しである。
バギー:ーーー…あんなに言ったのに、このハデばかやろうめ。
シャンクス:ーーー頼れる兄貴がいたらこんな感じなのかもな。
↑色々醜態も見ているのに器が大きいやつである。
ロジャー船長:ーーー最後の航海も仲間達のおかげで楽しい冒険になった。もはや悔いはない。
今回は割りと原作沿いです。
あとモコモ公国のみなさん、うちのなっちゃんが迷惑をかけてごめんなさい。
それと、誤字報告をしてくださる方々のおかげで非常に助かっています。
ありがとうございます。