ONE PIECEの世界に転生した一般タコ魚人 作:タマネギ日光浴
毎日更新することの大変さを思い知りました。
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おれはタイガー大兄貴のためにタイヨウの海賊団に加入した。
船長のタイガー大兄貴以外は明確な上下関係がある訳では無いが、ジンベエ兄貴と船医のアラディンさんは元ネプチューン軍の兵士ということもあって、タイガー大兄貴と並んで一目置かれている。
実質幹部のようなものだ。
またアホサメやマクロも自前の手下を連れてきており発言力があった。
おれは憎い人間の下に付いていたとして、最初は腫れ物のような扱いをされていた。
まあ、美味しい料理を振る舞っている内にわだかまりも解けたのだが。
魚人は海について感覚的に詳しい上に、冒険の経験が豊富なタイガー大兄貴や、操舵の得意なジンベエ兄貴がいたので、航海で困ることはそうそうなかった。
船の軽い修理や点検くらいなら白ひげ海賊団で船大工の仕事も手伝っていたおれなら可能なことだしな。
船医としてもおれより凄腕のアラディンさんがいた。
何より、海上戦において魚人の集団に勝てる者はいない。
おれたちの航海は順調であった。
おれたちは海賊団と名乗っているが、結成の経緯が行き場のない脱走した魚人や人魚奴隷達の受け皿であったため、海賊行為もそれほど行わなかった。
自分達は野蛮な人間達とは違う、というタイガー大兄貴の信念から不殺を貫いていたのだ。
おれは人間自体に恨みがあるわけではないが、人攫いや奴隷を使っている奴らは許せない。
そうした相手についついやりすぎてしまうことがあった。
ジンベエ兄貴が止めてくれるおかげで命を奪うまではいかなかったが。
アーロンを筆頭に構成員の一部は、不殺を手ぬるいと言っていたが、タイガー大兄貴はその意見に耳を貸すことはなかった。
おれも次第にその気持ちと覚悟を汲み、自分の感情を優先してやりすぎることはなくなっていった。
海軍はひっきりなしにやってきたが、おれたちは毎回軍艦を破壊してやって返り討ちにしてきた。
一応一隻は残すようにしているので、溺れて全滅することはないだろう。
頑張って救助するんだな。
その間に時間も稼げるしな。
こうして海軍を撃退している内に、海上戦において右に出るものナシ、とおれたちの名はどんどん売れていった。
世間的には魚人海賊団と呼ばれることもあるが、おれら自身は一貫してタイヨウの海賊団と名乗っている。
太陽は暗い海の底に住む魚人達にとっての憧れだからだ。
しかし、その事が何かの逆鱗に触れたのか、一時期世界政府直属のCPが頻繁に暗殺にやってくることもあった。
なぜタイヨウの海賊団と名乗っているのかを執拗に詰問してきたり、タイヨウについて何か知っているなら吐けと言ってきたり、あれは何だったのだろうか。
しばらくしたら、おれやジンベエ兄貴にぶっ飛ばされ続けて諦めたのか、やって来なくなったが。
他にも有名になったおれたちを倒して名を挙げようとする輩が後を絶たなかった。
まあ、今さらグランドライン前半の海で苦戦するようなおれではない。
それでも中には光る原石のような奴や、磨けば厄介になりそうな能力者はいた。
おれやタイガー大兄貴やジンベエ兄貴以外の船員にはキツい相手もいたが、そんな奴らも船を壊されたらどうしようもない。
おれらが敵の主力と戦っている間にあまり戦闘が得意でない船員達が相手の船底を攻撃する。
これが必勝法というものだ。
そうしていると人間達も馬鹿ではないので、情報網を引いている海軍はおれたちの航路を推定して先回りして、補給に寄るであろう島で待ち伏せしてくるようになった。
その場合もおれが先行して上陸すれば見聞色で見破れるし、なんなら全員そのまま倒してしまうこともあった。
おれはタイヨウの海賊団でも珍しい地上の方が強いタイプの魚人だからな。
中には少将もいたが、もう鍛えて12年以上になるおれの武装色と、白ひげ海賊団で花剣のビスタといった剣士達と切磋琢磨して磨いた六刀流に敵う程ではなかった。
そうして航海を始めて1年も経過すると、おれたちにも余裕ができてきた。
元奴隷で衰弱していたクルー等も船医のアラディンさんのケアやおれの栄養のある料理のおかげもあってすっかり元気になっていた。
…今はまだいいが、元々この海賊団は逃亡者として始まっている。
そのため、終わりがみえないし、航海の目標もない。
未だに海軍の追跡は必死で、心休まる時も少ない。
こんな状況では素直に冒険を楽しむこともできない。
これではその内にリタイアしたがる船員が増えるだろう。
こうした懸念をタイガー大兄貴も感じていたのか、時には未開の島に赴き冒険を楽しむことがあった。
それがいいガス抜きになったように思う。
せっかく航海に出てるんだから、冒険を楽しんでもらいたい。
その間の海軍の追っ手などは、おれが引き付けておいた。
これも船員の心のケアだと思えばさしたる苦労でもない。
これでも医者の心得があるからな。
個人的に嬉しいニュースもあった。
ロジャー海賊団の恩人であるトムさんが、海列車を完成させたのだ。
おお、やったなトムさん。
夢を叶えたんだ!
流石だぜ。
新聞によると、海賊王の船を造った罪で処刑される所を10年の執行猶予を与えられて、海列車の開発をしていたらしい。
これで海列車が問題なければ、処刑の罪はその功績と相殺されるそうだ。
…しかし、たしか原作でトムさんは亡くなっていたはず。
細かい流れは忘れたが、確か裁判でハメられたんだっけか。
オーロ・ジャクソン号は偉大な船だった。
その恩人を死なすわけにはいかない。
おれはエニエス・ロビーやウォーター・セブンのニュースに目を光らせておくことにした。
また、1年が経過し、おれは28才になった。
ちなみにアホサメも同い年である。
2年も同じ船に乗っていれば避けられていてもそこそこ関わることがある。
どうやら、おれは恐れられているようだ。
…何故?
まあいいや。
他にもマクロ一味などおれにビビっている船員はいるが、大多数の船員とは仲良しだからな。
やっぱり胃袋を掴んでいるのはでかいな。
怪我人には応急処置をしてやることがあるし、たまの贅沢で酒盛りをする時は楽器(私物の持ち込み)を弾いて盛り上げたりしてるので、好感度は上々だろう。
おかげで、色々学ぶこともあった。
戦闘力でいえば正直差がありすぎるわけだが、それでも魚人達が使う様々な技は見るだけで参考になったし、教わることもあった。
例えば泳ぎ方1つとっても、おれより遅い奴でもフォームはキレイだったりといった感じだ。
おれの泳ぎ方は力任せが10割だからな。
魚人は体格や体型がそれぞれ違うので、自分の身体に合った最適な泳ぎ方を自分1人で模索しなければならないのが辛いところだ。
他にも学ぶことはあった。
それもはっちゃんの幼なじみ達にだ。
まず1人目はチュウというキスの魚人だ。
彼は水鉄砲という水分を口から発射して攻撃する技術をもっている。
おれの場合は墨だが、飛ばす時の口の中の形や呼吸方法を工夫することで、まだまだ強化できるとお墨付きをもらった。
練習あるのみだな。
2人目はクロオビといった。
彼は二刀流を使う傍ら、魚人空手も修めている。
おれから剣術を教える代わりに魚人空手の基礎を教わった。
魚人空手の基本にして真髄は、周囲一帯の水の制圧、だそうだ。
水中や水面などは勿論、大気中や物質内に存在するあらゆる水を利用する、とのこと。
…全くわからん。
水中で威力が落ちないのもそれが理由らしい。
また、ジンベエ兄貴クラスの実力者になると、例えば大気中の水に振動や衝撃を伝える事で触れずに敵を倒す、といった芸当さえ可能となるそうだ。
確かにそんな光景を見たことあるな。
あれはそういう原理だったのか。
おれは魚人空手の水を制圧するという感覚がうまく掴めず苦戦したのだが、クロオビの教えはわかりやすかったため、1年かけてようやくその基礎を修めることができた。
途中ジンベエ兄貴にもコツを教わりに行ったのだが、あまり効果がなかった。
理論の教え方は理路整然としてわかりやすいのだが、肝心の実践になると、出来ない人の何がわからないのかわからない、といった天才タイプだったのだ。
一方でクロオビ、いやクロオビ先生(年下)は努力タイプだったので、不出来なおれにも寄り添って根気よく教えてくれた。
ありがとう、先生。
この恩は忘れないぜ。
おれは魚人空手の技術をどうにか六刀流の剣術に活かせないか研究(修行)をはじめた。
そしてまた時が経ち、おれやアホサメが29才になった頃、とある島でコアラという少女を預かった。
どうやら3年前にタイガー大兄貴が解放した奴隷達の中の1人らしく、故郷のフールシャウト島まで連れていくことになったのだ。
船に乗った当初は、奴隷の生き方が体に染み付いていた為に、怯えながらも常に笑顔を絶やさずにいるという異常な状態だった。
しかし、タイガー大兄貴がコアラの背中にあった天竜人の烙印を太陽のシンボルに変え、おれたちは天竜人とは違うと叱咤して以降は、徐々に子供らしい本来の感情を取り戻しつつある。
よかった。
子供が笑うことは良いことだが、それは怒ったり泣いたりできる中での笑いだ。
決して強制されるべきものじゃない。
天竜人、許すまじ。
…っと少し殺気が漏れたせいでコアラを怖がらせてしまった。
ここはおれ特製のデザートと演奏で機嫌をとるしかないな。
子供からは好かれたい。
なにせまだ20代のお兄さんだからな!
その後、無事にフールシャウト島にたどり着いた。
しかし、これは何か嫌なカンジがするな。
そう思って見聞色で島を探っても強者の気配はない。
…勘違いか?
それでも心配だったおれはコアラを見送りに行くタイガー大兄貴に付いていくことにした。
コアラを無事に送り届けて、さあ帰ろうかとしたその時、途轍もない強者の気配が超高速でこちらへ向かってくるのを感知した。
なんだ取り越し苦労か、と安堵していたおれは咄嗟の反応が遅れ、タイガー大兄貴への攻撃を許してしまった。
タイガー大兄貴の身体に穴が空いてしまった。
ようやくその下手人に反撃できたおれはその姿を見て驚いた。
…こいつは未来の大将黄猿だ。
ボルサリーノ中将と名乗ったその男はおれに降伏を呼び掛けてきた。
どうやらおれを警戒して、おれの見聞色の感知範囲外から、光の速さで襲撃してきたようだ。
しかもその狙いがおれではなく、タイガー大兄貴だったために反応が遅れてしまった。
…確かにこの男の言うように降伏の交換条件として重傷を負ったタイガー大兄貴の手当てを望むことは現状の最適解なのかもしれない。
それでも、おれはもっといい答えを知っている。
それは今ここでこの男を斬ることだ。
ーーー六刀流、奥義、蛸足鬼剣
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
おれがタイガー大兄貴を担いで船に戻ると、ボルサリーノ中将の部下の部隊が襲撃してきた所だった。
その部隊のリーダー、ストロベリー少将はおれ達がいち早く戻ってきたことに驚愕していた。
早く助けに行かないとそっちの中将も出血多量で死んじゃうかもな。
おれの脅しが効いたのか、はたまたぐったりしたタイガー大兄貴を見て最低限の仕事は果たしたと判断したのか、すぐさま撤退していった。
おれもすぐさまタイガー大兄貴をアラディンさんに診てもらった。
おれの応急処置による止血がよかったのか、何とか一命は取り留めた。
まさか、覇気で固めた墨でケガの穴を一時的にでも塞げると思いもよらなかった。
墨に物質を弾く武装色を纏わせたことが、止血の役割になったらしい。
もちろんおれの墨は液体なので、すぐ出血に押し流されてしまうが、少なくとも、アラディンさんの治療が間に合うくらいには、止血に役立ったようだ。
しかし、アラディンさんによると、血を流しすぎた後遺症で、もう航海に耐えることはできないかもしれないらしい。
後日、半身が痺れる後遺症が残ったタイガー大兄貴は海賊団を引退することを告げた。
ただ、引退といっても生きてる限りは海軍や世界政府に狙われるだろう。
そうおれたちが頭を悩ませていると、船員から報告があった。
どうやらアホサメが1人で勝手に密告したであろうフールシャウト島に復讐に行ったのだ。
よほど、敬愛する大兄貴が人間の裏切りによって半身不随にされたことが頭にきたらしい。
怪我人のタイガー大兄貴を乗せたまま戻るわけにも行かないおれたちは、アホサメが無事に戻ってくることを願った。
しかし、その願いも虚しく、アホサメは捕まったようだ。
だが、あいつはただでは転ばなかった。
逮捕された先でタイガー大兄貴が人間達に輸血を断られたせいで死んだと証言したようだ。
世界経済新聞でも魚人海賊団の船長が死んだと喧伝している。
…もう戦えない身体になった大兄貴のためにそんな嘘をつくとは考えたな。
やるじゃないか、アーロン。
おれたちはタイガー大兄貴を魚人街に匿った後、世間の目を逸らすために、ジンベエ兄貴を二代目船長として派手にアピールしながら暴れまわった。
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なっちゃん:医者の心得といっても、正式に学んだわけではないので、病気などには対処のしようがない。一方で外傷への治療に対しては熟練の腕×6をもっている。
昔は必殺技がないことで頭を悩ませていたが、白ひげ海賊団での空白期間中にどうやら色々開発していたようだ。
その詳細はいずれ語られるだろう。
アーロン:自分とは異なり人への恨みを晴らすための圧倒的な力をもっているなっちゃんに複雑な思いがある。
同じ年ということもあって劣等感を感じている一方で、魚人街でのことを英雄視している面もある。
マクロー:種族に関係なく人攫いにぶちギレるやベー奴を間近で見ているので、もう人攫いをすることからは足を洗おうとこっそり決意した。
ジンベエ:二代目船長の座はタイガーを救ったなっちゃんに相応しいと思っているが、当の本人から年功序列だと言われたため仕方なくその座に就いた。
タイガー:何とか生存したが後遺症が残った。アーロンのことは残念だが、2人も後を任せられる人材がいるので心配はしていない。
人間に奴隷にされていた過去を暴露して、その恨みが消えないせいで助かる命なのに人間の血を拒み死んでしまうなんて残酷なことにならなくて済んだ人。
その闇はこれからも抱えていかなければならないが、生きていれば良いこともあるだろう。
原作死亡キャラ生存タグを追加しました。
魚人を主人公にすると決めた際に最初に思い描いたシーンをようやく描くことができました。
この物語はある意味ここを目指してスタートしました。
無事にタイガー生存ルートまでたどり着けてよかったです。
とはいえ、なっちゃんの物語はもう少し続きます。
最後までお楽しみください。