こういう注意書きをしないといけない己の力量不足が歯痒いですわ。
あれから、どうなったんだろう。
ホメロスと名乗った男にトドメを刺されかけた瞬間に、グレイグや勇者様達が現れて助けてくれたのは覚えている。
その直後に自分を守るように4人の人が囲んでくれて、すぐさま回復魔法が掛けられたのか温かくて心地よい何かに包まれてすぐに意識を失ったから分からない。
「……っ、ぅ?」
閉じた瞼に当たる光から太陽が登っているのは間違いなくて、体を動かそうとしても言う事を聞いてくれない。
何とか力を込めて目をゆっくりと開いて行くと、自分が寝かされているのはいつものベッドの上で翼と腕はちゃんと治療してもらえたのか、あらぬ方向に曲がっていた翼の骨はちゃんと矯正されていた。
ただ翼のある人の寝かせ方が分からなかったというか戸惑った様子が幾つかあったけど、ベッドの傍ではシルビアがウトウトとしていて、どうやら勇者様達が交代で看病をしてくれていた様子だった。
「ぁ、ぅぁ……」
「っ、アリシアちゃんっ、良かった!起きてくれたわぁっ」
どうやら彼は寝るつもりはなかったのにウトウトとしてしまったようで、慌てた様子で起床して俺の様子を確認すると目が開いているのを見て、涙ぐみながら安心した様子で優しく声をかけて来てくれる。
「はい、アリシアちゃんお水をゆっくりと飲ませるわね、大丈夫かしら?」
「…… ぅ」
すぐに口内が乾いていて俺が喋ることが出来ないということに気が付いたのか、シルビアは近くにおいてある水差しからお椀に水を注ぐと小さなスプーンで水を掬い、優しく唇を濡らしてから確認しつつゆっくりと少しずつ口の中に入れてくれる。
それを何度か繰り返してくれて口の中が完全に潤って、喋ることが出来る程度には回復出来た。
「あの、ぁれからどうなって……?」
「貴女をギリギリの所で助けることが出来たの、アリシアちゃんが頑張ってくれたおかげで光の鎧も無事よ」
「良かった……」
「本当に光の鎧を身にまとったイレブンちゃんが凄くて、ホメロスも撤退するしかなかったんだから!」
一番気になるのは自分が意識を失ってからの事だ。
ゆっくりと俺の治療をしてくれたということは奴を退けることが出来たのだろうけど、光の鎧がどうなったのかが一番気になっているので、彼もそこを俺が聞きたいことは分っていたようで優しく話してくれた。
彼の口ぶりからすると勇者様は光の鎧に認められて身にまとい戦ったのだろう、自分の使命だと思っていたことの一つが無事に完遂出来たことにホッとしてしまう。
「…… あぅ……」
「アリシアちゃん、あんなに酷いケガをしていたから、今はゆっくりとおやすみなさい」
「ぅん」
安心した瞬間に強い眠気が来てしまったために瞼が閉じていくが、シルビアはそんな俺を優しく見つめると大事なものを扱うような手つきで頭を撫でてくれた。
それと同時に自分の意識は抗いようもない眠気に包まれて、夢の世界に旅立ってしまうのだった。
☆☆☆☆
あの戦いから3日、この間ずっと眠り続けていたアリシアちゃんが起きてくれたけれど、アタシが居眠りをしてしまったために彼女を余計に苦しめてしまったと思うと心が重くなる。
だけどアタシが飲ませていくお水を安心した様子で飲んでくれる様子を見たら、少しだけ救われたような、そんな不思議な気分になった。
魔王ウルノーガの手によって世界が闇に覆われて、みんなを笑顔にしたいと思ってパレードもしていたけれど、アリシアちゃんはたった一人で空に浮かぶ重要な施設を守っていたことと、他の建物が全壊していることからも彼女の身内も犠牲になったのは間違いないし、アリシアちゃんと初めて出会った時の言葉でも察せられることだった。
「あの、シルビアさま……」
「セーニャちゃん、だめじゃないの昨日は全然寝ていなかったんでしょ?」
「確かに昨日までは寝れていませんでしたけど、今はシルビアさまが変わってくれたおかげで眠れました」
「もう、貴女ったら……」
静かに扉が開いてセーニャちゃんが音をなるべく立てない様に室内に入ってくると、ぐっすりと寝ているアリシアちゃんをおこさない様にするためか小声で話しかけてくる。
アタシがアリシアちゃんの看病を変わってから10時間が経つか経たないか、その位の時間しか経過していないのにセーニャちゃんが看病を変わろうとしていることに、心配になるけれど見た限りだと目はハッキリとしているし体にふらついた様子もないので、無理をしていると判断できる様子はない。
だけどセーニャちゃんは普段からため込みやすい気質だと分かっているので、よく観察していかないとと思っていた。
「それに、マルティナ様がアリシアちゃんの衣服で気になることを言っていたので……」
「どういうことなの?」
「あの、アリシアちゃんの服があと2着くらいしかなかったんです、それに下着も少なすぎて……」
「こんなに可愛い女の子なのに、下着だけじゃなくてお洋服も不足していたなんて……」
セーニャちゃんからの言葉を聞いたアタシは、後悔と同時に自分自身への酷い怒りに包まれる。
今までアリシアちゃんと会っていた時に彼女が着ていた衣服にほとんど変化がなかったこと、これに気が付けたはずなのにアリシアちゃんが笑顔を浮かべてくれたことが嬉しくて、気にしていなかった自分が許せなかったし許せないとも思えた。
アリシアちゃんは今までにアタシが出会った人たちの中でも、一番綺麗で将来が楽しみと言える女の子なのに、そんな彼女がおしゃれを気にしていない状況をアタシが気が付けていなかったのは愚かとしか言いようがない。
彼女が起きて体調が戻ったら、まずはアリスちゃんやパレードの皆に頼んでアリシアちゃんが綺麗になるための色んなことの手はずを整えないと!と考えながら、セーニャちゃんと一緒に看病をしながらアリシアちゃんのおしゃれ計画を練っていく。
ちなみに、この計画にはセーニャちゃんだけじゃなくてマルティナちゃんもノってくれたので、色んな街を巡ってアリシアちゃんに似合う衣装を探すと決めることが出来たのは良かった。
グレイグも年頃の女の子が着飾ることも知らないと聞いて、悲し気な表情を浮かべていたけど、同時にアタシを含めた女性陣にアリシアちゃんが満足するコーディネートをしてほしいと言って軍資金を渡してくれたから、アタシとセーニャちゃんにマルティナちゃんが張り切るのは無理もない事だと思ってほしい。
ちなみにカミュちゃんが呆れていたので、アタシの持っている衣装の中で一番可愛くて彼に似合いそうな服を着せたりする一幕もあったけど、割愛せざるを得ないのが悲しいわねぇ。
なぜシルビア視点だったのかと言えば、私自身が彼の事が気に入っているからです。
ドラクエ11は仲間キャラの全員が魅力的過ぎて、今回の話しで誰の視点にするか凄い迷いました……
当初はセーニャの予定でしたが、上手く表現できていないと思った上に、シルビア視点の話がすっと浮かんできたので、形にした次第です。
なお、次回以降においてこのTSロリは女性陣から着せ替え人形みたいな目にあいます(ネタバレ)