あれから翌日、体が普通に動けるようになった俺は勇者たちによって連れ出されて、ケトスへと乗せられてから一路ソルティコの街へと向かっていた。
「空、飛んでる!!凄い凄い!!」
「はしゃぐのも良いけど、そっちには危ないから行かないようにね?」
「はーい!!」
「羽持ってるのに飛べねぇってのも不思議なもんだな……」
空飛ぶクジラなケトスは天空の民の間でも伝承に語られる存在なのだが、コレに乗った経験があるのは長老を含めた過去の勇者と一緒に活躍した天空の民くらいなので、ついついはしゃいでしまいぴょんぴょんと体を跳ねさせてしまう。
そんな俺の様子を全員が微笑ましそうに見ているが、シルビアは端っこに行かない様に優しくも厳しく見守ってくれているが、ケトスの方も何やらヒヤヒヤとしている様子なので自重した方が良いかな。
こんな感じに過ごしているのだがカミュは不思議そうな顔をして、俺の背中についている羽を見て飛べないことに疑問を抱いている様子なのだが、羽ばたき方も分からんのに飛べるわけなかろう!とツッコミを入れたくなる。
何しろ意識して動かそうと思えば確かに羽は大きく広がるし、羽ばたきみたいな動きも出来るけど、これらを無意識にやれるかと言えば無理なのだから仕方がない。
「羽があるから飛べるかもって思って建物から飛び降りたことあるけど、地面に落ちて痛い思いしただけだし」
「や、やっちまったのかお前……」
「もぅ、そういう無茶は駄目よ? 貴女はちゃんと淑女として学んでいけば絶対に綺麗になるから、私が保証する」
「マルティナ様の言う通りです、アリシアちゃん、そういう練習はちゃんと安全を確保してからしましょうね?」
「あぃ……」
だが過去の己は、翼があれば空も飛べるはずだ!と考えた結果、神の里の建物の建物の一つの屋根から飛び降りて、地面にべしゃぁっ!と叩きつけられた経験を持っていたりする。
これを言ったらカミュはドン引きした様子になり、マルティナは呆れた様子を見せつつも窘めてくれて、セーニャは練習を否定しなかったのだが安全を確保しろと言ってきたので、まさしくその通りであると思うほかに無い。
あの時にお母さんを含めた里の皆が大騒ぎになって、回復呪文をかけて治療してくれたり大人たちからの大説教大会が開催したのだから、温かくも懐かしい記憶となって少しだけ鼻の奥がツンとなってしまう。
あんなに温かくて優しかった皆がもういない、その現実が辛いけど勇者様達と出会えたことにも絶対に意味があるのだと思いたいし、みんなから教えてもらったことを彼らに伝えないといけない。
「じゃが、練習をしようと言う気概や良し、ワシらは翼の扱い方は分からぬが他の事ならば教えてやれるでな、アリシアや無茶はするでないぞ?」
「はい!」
これらの言葉を聞いて、ロウは俺が昔から無茶をしやすい性格だと察したのか難しい表情をしつつも、優しい微笑みを浮かべながら言っている彼の言葉を聞くと長老に色々と言われた時みたいに背筋をピンと張ってしまう。
力のある言葉を言えるという時点で、ロウはどこかの国で重鎮とかかなり重要なポストにいた経験があるのかもしれない。
そんな風に思わされる威厳と威風に満ちた言葉と彼の表情だった。
「うむ、良い返事だ、アイツを相手に立ち向かったのは光の鎧を守るためとはいえど無謀だったが、君が頑張ったからこそ守られたものがあること、これを誇りなさい」
「誇っていいの?」
「ああ、俺が光の鎧を身にまとえたのもアリシアがギリギリまで頑張ってくれたおかげだ、だから感謝しているよ」
「……っ、ぅ?」
俺の目線に合わせてグレイグがしゃがんで優しく微笑みながら、誇っても良いことを言ってくれたのだが、俺自身としては強力な呪文を幾つも習得していながらもホメロス相手にはほとんど通じずに、逃げ回りながら時間を稼ぐ事しか出来なかったし、撃退も出来なかったことを恥じていた。
だけど、グレイグの言葉と今も光の鎧を身にまとう勇者様の言葉を聞いて、私のしたことは無駄にならずにちゃんと次に繋がったんだと思えるのは十分だった。
じわり、と浮かんでくる涙を手でぬぐおうとしたら、優しい微笑みを浮かべたシルビアがハンカチで優しくぬぐってくれているけど、彼は泣きかけた私に何も言わずにハンカチをポケットに入れる。
「さぁ!そろそろソルティコの街に着くわよ!アリシアちゃんのお洋服に関してもパレード隊の皆に伝えてあるから!張り切っていくわよ!!」
「はい!!」
「ええ!!任せておいて!!」
そうして気を取り直すように言ったシルビアの言葉に、今までのシリアスで重苦しい空気が全て霧散する光景が物理的に見えた気がしたが、これは私の気のせいと言って良いようでマルティナとセーニャの二人が張り切って目を輝かせている状況から、自分が今から着せ替え人形になるのは明白と言える事実が待っていた。
「まぁ、お前はこれから大変だろうが、頑張れよ」
「…… 頑張りたくない……」
「女子は着飾ってこそ華となる、おぬしは今でも綺麗な華であるが、それをより昇華させることができるのじゃ、この老骨は楽しみにしておるぞ」
「うぅ……」
逃げられない。
そう思うのには十分だったが、衣服や下着は全然足りないという物理面から自分の選択の余地が消えているのだが、実際の所は楽しみでもあるのだ。
今のロリといえる状態でも美少女であると言い切れる素敵な外見をしているので、人間が住む街のおしゃれな衣服を身にまとったら、どれほどの美少女となるのかを確認できるのが本当に楽しみではあるのだけど、セーニャを含めた3名の空気と言うか、テンションがおかしすぎて楽しみよりも恐怖が勝ってしまうのは当然としか言いようがない。
そうしてソルティコの街に一番近い位置にケトスを停止させてから降りると、
なにしろ転生してから10年近くの間、空中に浮かぶ里で暮らしていたのだから地に根付いたところと言うのが新鮮になってしまっていたのは、前世のことのほとんどを忘れてしまっているのだろうか? と考えるのには十分だった。
今回の話のついでに私が妄想し捏造したドラクエ11仕様の光の鎧のステを下に載せます。
こんな鎧を勇者は身にまとっている状態です。
光の鎧
守備力:155
特性
全属性ダメージ50%軽減
戦闘中HP&MP20自動回復
呪文封印100%回避
混乱、魅了、睡眠、一回休み、50%の確率で回避
呪い20%の確率で回避
ダメージ床無効
これでも光の鎧&ロトの鎧からの性能を考えると控えめになるだろうというのが、ガチで恐ろしいと思っちゃいますわ……
なにしろ初代ドラクエだとあれほど長い時代に渡って放置され、更には碌な整備もされてないのにあの性能なんですから……