不老不死で永遠に終わることの出来ない僕と妻の永遠の終わりのお話。

このお話は小説家になろう様にも投稿させて頂いています。
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永遠の終わりを君と

僕と妻、メイドは不老不死だ。

首を切られてもすぐに繋がるし、高いところから落ちてぐちゃぐちゃになってもすぐ元の形に戻る。

もちろん切られれば痛いし、高いところから落ちたら死んでしまう。

けど生き返るのだ。

 

 

姿も不老不死となった22歳の青年のままだ。

初めは不老と言うのを感じなかったが10年くらい経つと周りとの差で気付いてしまった。

 

今となっては見れば10年なんて一瞬に感じるが、なったばかりの頃はこんな長い時間容姿が変わらないなんて...と驚いたものだ。

 

え?不老不死になった原因?

たぶん魔法の事故だよ。

 

よくわからない宗教集団に怪しい儀式で不老不死にされたのさ。

狙いは公爵令嬢だった僕の妻だけど、公爵家のメイドと庭師だった僕は巻き込まれた訳さ。

 

そこからは庭師の僕と公爵令嬢の彼女が結婚したり、不老不死の研究のために狙われたり、国中から迫害を受けたり...

いろいろ苦労することがあった。

 

でも今となっては見れば遠く昔のことのように感じる。

 

人類の繁栄とともにこの世界は狂い始めた。

森や湖が無くなり始め、そこに住む野生動物が消え始める。

植物が育ちにくくなって、次に人類が滅びた。

それだけでは終わらず恐怖の対象だった魔獣やドラゴン。

精霊様や聖獣様達も姿をくらました。

 

そして最後に乗ったのは不老不死であった僕たち3人と寿命が長いエルフ族で料理長をしていた彼だけとなった。

 

そのエルフの彼も2100歳とエルフにしては長生きをしては死んで行った。

こうして僕たち3人だけが終われないで永遠にこの世界に残された。

 

 

____________________________________________________________________________

 

 

 

初めて永遠の終わりに気付いたのはメイドのルーシアが眠ったまま目を覚まさなくなったからだ。

 

彼女は毎朝同じ時間に僕と妻を起こしにくる。

僕たちは彼女の声で1日が始まっていた。

 

だが、少し前...100年?300年ほど前だっただろうか?

その日は彼女がなかなか起こしに来なかった。

昼前近くなり僕と妻が目を覚ましておかしいと思い、心配しながら本館とは離れたところにある使用人の館の彼女の部屋を覗いてみると彼女はベットでぐっすりと眠っていた。

 

 

彼女を起こして話を聞いてみると

「最近、夜しっかりと眠っているのに眠気によく襲われまして...

本日は申し訳ありませんでした。以後このようなことがないよう注意致しますのでお許し下さい。」

とのこと。

 

もちろん僕たちはいつも彼女にはお世話になっているし、こんなことで怒るようなことはなかった。

むしろ疲れているのでは?と心配したが彼女は大丈夫です。としか言わなかった。

 

 

 

だが、それから彼女は寝坊の回数が多くなって行った。

初めは寝坊だけだったが居眠りが酷くなり、ついには2,3日の間ずっと目を覚まさなくなってしまった。

 

さすがの僕や妻はおかしいと思ったが、医学に明るい訳でもないし医者も頼れる人も誰1人いない。

だから無理はしないようにしっかりと休むようにとしか彼女には言えなかった。

彼女も無理をせず起きていられる時に掃除や家事をするようになった。

僕たちも自分たちの暮らす範囲くらいは掃除をするようになっていった。

 

 

 

そんな日々が続いて30年前...

僕と妻は少し遠出し、自生している調味料を採取しに2週間ほど家を空けた。

メイドの彼女は体調が不安定な自分では足手まといになってしまうからと、屋敷で待っている。

 

採取を終え、屋敷に帰ってくると、屋敷全体にうっすらと埃が積もっていた。

どこかおかしい屋敷の様子に慌ててメイドの彼女の部屋に向かった。

 

昔に比べると建て付けが悪くなって開けるのにコツがいるような彼女の部屋のドアを開けると

 

 

「うっ、げほっ!げほっ!」

 

 

使用人の館に入った時に予想はしていたがつもりにつもった埃がドアを開けた拍子に舞い上がりむせてしまう。

 

埃が落ち着くのを待って、蜘蛛の巣を払いつつ部屋に入ると寝相よく肩までシーツをきっちりかぶったまま微動だにしないメイド、ルーシアの姿があった。

どれだけ大声をあげても、体を揺すっても一切反応はなかった。

 

 

僕は急いで本館の一室に彼女を移して妻と一緒に彼女の様子を見ているがそれ以来目を覚ましたことはない。

 

手荒だが一度殺して見たこともある。

僕達の不老不死は1度死ぬと全てリセットされた状態で蘇る。

だから彼女には悪いと思ったが包丁で首をはねた。

 

傷口はすぐにふさがり生き返るが目は覚まさない。

儀式のせいで僕たちの肉体や魂は絶対に死なない。

 

だから、たぶん...

 

 

が死んでしまったのだろう。

 

 

僕と妻はそう思った。

 

 

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僕と妻は毎日のようにルーシアの様子を伺ったが遂にこの100年、目を覚ますことはなかった。

 

そうして時は過ぎて今日。

 

 

「ねぇ一緒に月見をしましょ?」

 

 

目を覚ました僕に告げた妻の一言目がそれだった。

 

彼女に連れられて庭に出るとベンチとテーブルが置いてあり、そこには湯気をたてて作りたてというのがわかる料理が並んでいる。

 

 

空には真ん丸な満月が浮かんでいた。

怖いくらい大きな月が辺りを白く照らしていた。

 

 

ルーシアが眠りについてから妻も僕も料理や洗濯などを分担して行うようになった。

公爵令嬢だったせいか初めはそれはもう酷いものだったが、今は家事ならなんでもござれな人妻となっていた。

 

 

僕と彼女は何も言わずともに大きなベンチの真ん中に隣り合って座った。

用意されていたワインを開けてグラスに注ぐ。

 

 

チンッと小さく音を鳴らし僕たちは乾杯した。

彼女はワイングラスを傾け酒を口に含んだ。

何気ない仕草に気品を感じ、彼女は公爵令嬢なのだと感じさせる。

 

 

僕もグラスに口を付け彼女お手製の酒を口に含む。

うん、美味しい。

残りを一気に口内に流し込んだ。

 

見れば妻のグラスは全然減っていなかった。

 

 

「ん?どうしたんだ?全然飲んでないけど」

「酔いたくないの...」

「そっか...」

 

 

それから僕たちは他愛のない話をしながら2人で月見を楽しむ。

 

 

「ねぇ、一個聞いていい?」

「どうしたんだ?そんな改まって」

「私といて幸せだった?」

 

 

酷く抽象的で曖昧な質問だったけれどそれを聞いてくる妻の顔は真剣でこちらも居住まいを正して答える。

 

 

「ずっと幸せだった....とは言えないな。

なんで僕がこんな体にって思ったことはあるし、八つ当たりってわかっているけど君を恨んだこともあった。

 

けど、僕は君と一緒に入れてよかったよ。うん、今はすごく幸せだ」

 

「そっか...私もあなたと一緒にいられて幸せだわ」

 

 

彼女はそう言うと甘えるように僕の肩に頭を乗せ、体重を預けてくる。

 

彼女は不安だったのだろう。

自分のせいで僕やルーシアを巻き込んでしまい恨まれているんじゃないかと。

 

 

「なんだか安心したら眠くなってきちゃったわ」

「じゃあもう寝るか?」

「んーやだ...もう少し起きていたい...」

「じゃあもう少し」

 

 

僕も少し眠くなってきていたが、いまこの時間を終わらせるのは惜しく感じた。

 

 

「なにかお話して?」

「何かってなにさ」

「あなたのこと全部。私が知ってても知らなくてもいいから全部お話しして?」

「何千年分あると思ってるんだ。ま、いいけどね」

 

 

それから僕は今までの人生のことをゆっくり噛みしめるように語り出す。

 

初めて庭師として働き始めた頃のこと

初めて君を見かけた時のこと

初めて死んだ時のこと

初めて知人の死を感じたこと

初めて君と情を交わしたこと

初めてケンカした時のこと

 

時系列はぐちゃぐちゃで、ただただ思いつくままに過去を語っていた僕だったが、いつからか相槌の声が聞こえなくなっていることに気付いた。

 

妻は瞼を閉じ、僕の体に委ねるようにもたれ掛かっている。

 

 

「...眠ったか」

 

 

僕は妻の頭を自分の膝に乗せ、彼女の柔らかい髪をそっと梳いた。

穏やかな寝顔が、体を揺すれば今にも寝惚け眼で起きくるのではと思わせる。

 

 

でも、もう目を覚まさない。

僕も妻も限界だったのだ。

 

 

メイドのルーシアが眠りについてから100年ほど経つと、僕も妻もルーシアと同じように朝起きられなくなり、日中も急に眠気に襲われるようになった。

起床時間が合わず、2人分の家事を済ませて相手の寝顔を見つめるだけの毎日。

徐々に睡眠時間が増えていき、最期には会話をすることもないまま眠りについてしまうことを僕たちは恐怖していた。

 

だから今日のこの様に顔を見て会話できたことがどれだけ幸運だっただろうか。

 

 

「おやすみ、 エミリア。」

 

 

エミリアの寝顔は幸せそうに微笑んでいる様に見えた。

それが僕を安心させた。

 

 

安心した途端にこれまでに無いような睡魔に襲われる。

この睡魔に身を委ねると、もう二度と目を覚ますことは無いだろう。

でも恐怖はなかった。

 

 

瞼を閉じる。

それだけで意識はすうっと深い闇の中に引き込まれていく。

 

 

 

 

 

 

完全に意識が無くなる直前。

僕は最期にもう一度。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長年連れ添った愛しい妻、エミリアの笑顔を思い浮かべた。

 

 




いつかくる人生の終わり、自分の大切な人と一緒にいられたらどれほど幸せなんでしょうね


パッと頭に浮かんだ単発ネタです
タグに何を付けたらいいかわからなかった、、、

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