新たなスフィア合成獣達が生まれる僅かに前。テンペラー星人とファムは必死でデルピューニのゾーリムからの火炎放射からバリアで身を守っていた。
「クソッ!! あのデカさではこちらがいくら攻撃しても大したダメージにはならん!!」
テンペラー星人がバリアの中で嘆く通り、四凶3体が必死で飛び道具を撃ちまくって反撃をするも、如何せんゾーリムが巨大すぎて攻撃が通らない。
ファムの喚び出した大量のガマス達も、ゾーリムの大きさでは同じく焼け石に水である。飛んで逃げ回っていたところで火炎放射に被弾し、まさに飛んで火に入る夏の虫の諺の如く焼け死んでいく。
「キャハハハハ! 残念、残念、残念だねぇ~~!!
ルール違反者達はここでミジメにゲームオーバーだよぉ~~!!」
そんな敵の絶望的な状況を愉快そうに嘲笑するデルピューニ。
「キュー」
「キィィィィィィ」
「グオオオオ……!?」
だがそこで、ゾーリムの頭部の両側面にベムスターとブリッツブロッツがそれぞれ光弾を叩き込む。ゾーリムの巨大さ故にダメージは全然大したことはないが、邪魔が入ったことでゾーリムは一旦攻撃をやめた。
「アァ!? あーしのゾーリムちゃんに何すんだよロック!!」
「何すんだじゃないんだよクソボケ爬虫類が!! アタシ達まで巻き込みやがって殺す気かっての!!」
ゾーリムの攻撃を止めさせたのはなんとロックフォーヌ。それもそのはず、確かにガマス達の掃討はゾーリムの攻撃によりほぼ完了していたが、一応は味方である彼女と使役怪獣達にまで攻撃は及んでいたからである。
無論、デルピューニは誤射での事故を名目にロックフォーヌまでまとめて始末しようとしていた。その暴挙に目を吊り上げて激怒する魔女は、ネオバトルナイザーを介して蛇女と口論になった。
「あ~~ごめんごめん。ついウッカリしてたわ♡」
「どうやらアンタの知能はアタシが思ってたより相当低かったみたいねぇ~!! 敵と味方の区別もつかないなんて、まさか想像してなかったわぁ!!」
わざとらしくシラを切るデルピューニ。それに対しロックフォーヌの怒りは増すばかりである。
「………オオオオオオ!!」
「「ン?」」
敵そっちのけで口論する2人。そんな中、轟く咆哮に2人がその方向に振り返ると、機能停止して倒れていたレゾリウムがよろよろと起き上がるのが目に入った。
「おっ、まだ壊れてなかったんだぁ~。ちょーどいいや。あーしの手持ちにしよっと♡」
デルピューニは最近戦力を大分失っていたため、復活したレゾリウムを手持ちに加えようと考えた。そう考え、凶暴冷酷で邪悪な気性に似合わぬその可愛らしい顔をほころばせる。
「なっ…!」
当然、それに反応するエンディール星人。頭を抑えて地面に伏せていたが、さすがに最強戦力を奪われようとしているのは看過できず、抗議しようと立ち上がった。
「オオオオオオオオ!!!!」
「――グオオ!!??」
しかし、ちょうどそのタイミングでレゾリウムは右手からレゾリューム光線を発射。ゾーリムの顔面に直撃させる。
「アァ!? いきなり何すんだよお前ぇ!?」
「えっ!?」
ところがまずいことに、エンディール星人が立ち上がったタイミングとレゾリウムの攻撃はほぼ同時だった。そのため、デルピューニには彼が不可解かつ生意気にもゾーリムに突如攻撃を指示したように映ったのである。
「ナメたマネしてくれるじゃんね!」
「い、いや私は攻撃しろとは…」
デルピューニに睨まれ、しどろもどろになるエンディール星人。ただでさえバトルナイザーが今使えないというのに、試験官に喧嘩を売る事態になってしまった。ここはどうにか切り抜けないと、今度こそ本当に殺される。
「オオオオオオオオ!!!!」
「ああああ!!??」
しかし、エンディール星人が弱々しく弁明するも、暴走状態のレゾリウムは攻撃してきたゾーリムを完全に敵として認識してしまっており、レゾリューム光線を乱射。上空の巨獣に浴びせまくる。デルピューニへの完全な敵対行為を配下が使役ロボットがやってしまったことに、エンディール星人は絶叫する。
「ハァ~~!? もういいや全員死ね!」
「ちょっ!? アンタふざけんじゃないわよ!!!!」
「ついでにこいつも殺りなゾーリムちゃん!!」
エンディール星人にどういう意図があったかなど、デルピューニは最早どうでもいい。1つ確かなのは、こいつがいる限りレゾリウムはデルピューニの物にはならないということだ。
故にエンディール星人、さらには敵より邪魔な味方のロックフォーヌも含めた自分達以外の全てを焼き殺すべく、デルピューニは再びゾーリムに攻撃を命じる。
「グオオオオオオ」
咆哮を上げながら、再びゾーリムは火炎放射を地上に行おうとする。しかし、レゾリウムの放ったレゾリューム光線がベストタイミングで下顎に直撃。思わず口を閉じてしまったゾーリムの口内で吐こうとしていた火炎が留まって爆発。
思わず悶絶したゾーリムの身体というか首は地上に落下し、もがき苦しんだ。
「オオオオ!!」
「グボオオ!?」
そこで素早く飛び込んできたレゾリウムが追撃。渾身の右正拳突きをゾーリムの頬に叩き込み、巨獣の頭部を吹っ飛ばす。
いくらレゾリウムがロボット怪獣らしく怪力といえど、圧倒的な体格差がある巨獣の頭部がこれほど吹っ飛ぶほどの威力の打撃を叩き込むのは恐ろしい話である。
「グオオオオオオ!!」
とはいえ、桁外れの巨体だけあってゾーリムの耐久力は並の怪獣とは比べ物にならない。レゾリウムに殴られ頭部が吹っ飛びながらも途中で留まり、反撃に転じる。素早くロボットへと首を伸ばしたかと思うと、そのままレゾリウムに齧りついたのだ。
しかし、レゾリウムはなんとそれでも抵抗。閉じようとする上顎と下顎を必死で両手で押さえ込み、噛み砕かれまいと耐えている。だがそれでも段々牙が迫り、ついには暗黒魔兇機の装甲にまで突き刺さって削られ始める。
そしてついにはレゾリウムが押し負け、致命的な噛みつきを受けた。それでも半壊にすらいかなかったのはさすがだが、胸部装甲が大ダメージを受けて損壊し、砕けた装甲部から内部のレゾリューム・コアが露出。元々暴走状態で制御出来ていないレゾリューム・エネルギーが噴き出し始める。
(チャンス!)
歓喜の余り、エージェント・ファムはその桃紫色の双眸を妖しく光らせ、彼女らしからぬ獰猛な笑みを浮かべる。
当然、いくらレゾリウムが怪力といえど、噛み砕かれるのは時間の問題。そしてファムにとって、レゾリウムもゾーリムも共に動けず、敵の試験官2人も勝ちを確信したが故に愚かにもこちらを半ば放置して味方同士で争っている。それらが上手く噛み合った今のこの状況は、まさにこれ以上無い絶好のチャンスであった。
「……分かっておるわ」
試験官2人がこちらへの監視を怠る中、ファムが鋭い目つきで目配せをすると、テンペラー星人は筒状の黒い容器を出現させる。ファムが手に持ったギガバトルナイザーの先端を向け、極悪宇宙人の右の鋏に持ったそれにくっつけると、そこから紫電状のエネルギーが棍棒に注がれる。
「このカプセルには、かつて地球で敗れた皇帝の怨念が封じられておる」
「これで全ての準備は整いましたね」
そうして、禍々しい赤い光を帯びたギガバトルナイザー。ファムがそれをテンペラー星人に渡すと、彼はテレポートでそのまま消える。
「頼みましたよ……」
そう祈るように呟くファム。ここまでお膳立てした以上、失敗は絶対に許されない。
「フン!」
それからすぐ、ゾーリムの口の中で必死に抵抗するレゾリウムに取り付くべく、自らもゾーリムの口の中に現れる極悪宇宙人。
「………………」
皇帝を思わせる歪な似姿。そのレゾリューム・コアよりエネルギーが激しく漏れ出す中、テンペラー星人はそれに構わず飛んでいく。
「――――さぁ、甦り給え!!!! 我等が皇帝!!!! 我等が支配者よ!!!!」
テンペラー星人は絶叫し、大上段に振り上げたギガバトルナイザーをレゾリューム・コアに叩きつけ、突き刺した。
「オォォ………………ッッ!!!!」
途端、レゾリウムは一瞬だけボディを震わせ、そのツインアイから光が消える。力なくうなだれる姿は、一見ついに壊れて活動停止に至ったかに見えた。
「……おぉ………!」
しかし、テンペラー星人が歓喜の声を上げる通り、突き刺したギガバトルナイザーはコアにズブズブと呑み込まれていき、やがて完全に一体化する。
すると、機能停止したかと思われたレゾリウムの双眸に再び赤い光が灯ったかと思うと、激しく痙攣を起こし、コアからはさらに凄まじいエネルギーの奔流が発せられた。
「おぅっ!?」
「グオオオオ!?」
テンペラー星人はそれに巻き込まれてゾーリムの口内から押し出される。ゾーリムも突如口内に異変が起き、慌てて口を開けて頭部も引っ込めた。
「アァン!? 何が起きたじゃんね!?」
「こっちが聞きたいわよ!!」
「奴等、私のレゾリウムに一体何を……!?」
デルピューニとロックフォーヌも敵のロボットに何が起きたか分からず、警戒する。エンディール星人も遠方から異変を窺うことしか出来なかった。
「ヌウウウウゥゥゥゥァアアアアアアッッッッ!!!!」
レゾリウムは天に向かって咆哮。すると、空で暗雲が急速に広がっていく。
それと共に、皇帝の歪な似姿となっていたレゾリウムのボディが、さらなる奇怪な変貌を遂げていく。
「なっ………あの姿は……!?」
そうして、天地は暗黒の闇に包まれる。そんな中で明滅し激しく撒き散らされるレゾリューム・エネルギーの奔流に、誰も手出しが出来ない。だが、それも短い時間の話で、やがてレゾリウムの異変が止まる。放出されたエネルギーの渦により周囲は破壊され尽くし、もうもうと煙に包まれていた。
そして、エンディール星人の単眼の持つ優れた視力は、その中から現れた者の姿を鮮明に捉えていた。
それには見覚えがあるどころの話ではない。レゾリウム、いやこの変貌の果てに、既に
「成功だ……!」
「ついに…! ついにやりましたね!」
一方でテンペラー星人とファムは悪党らしからぬ素直な歓喜の声を上げる。
「キュー!」
「キィィィィィィ!!」
レゾリウムを巡って様々な反応が出る中、静寂を破ったのはロックフォーヌ。ベムスターとブリッツブロッツに光弾でレゾリウムを爆撃させたのだ。
「アァン!? おい、ロック! あれはあーしの獲物だよ!」
「アンタ危機感バグってんの!? あーいうのはさっさと始末した方が後々ラクなのよ!!」
蛇女の抗議を退け、魔女は攻撃の手を緩めさせない。空から降り注ぐ2体怪獣の光弾がさらにレゾリウムの周囲を破壊していった。だが――
「……鬱陶しいな………」
ふと、そう聞こえたかと思うと、煙の中から赤黒い色の強力な破壊光線が2条放たれる。
「ハッ! 面白いじゃなぁ~~い!」
残忍な笑みを浮かべたロックフォーヌはカッと目を見開き、レイオニクスパワーを放出する。
「キュー!」
宇宙大怪獣 ベムスター(レイオニックバースト)
「キィィィィィィ!!」
破滅魔人 ブリッツブロッツ(レイオニックバースト)
「そんなショボい光線、吸い取ってやりなさいっ!!」
「キュー!」
「キィィィィィィ!!」
2条の光線がベムスターとブリッツブロッツが直撃するも、ベムスターの腹の口と、ブリッツブロッツの胸の赤い結晶体がそれを吸収する。
「んなっ………!?」
ところが、光線はいつまで経っても途切れない。始めこそ平然と吸い取っていたベムスターもブリッツブロッツもあまりのエネルギー量に段々吸収しきれず――
「キュー………!!」
「キィィィィィィ………………」
2体はやがて吸収量の限界を遥かに超え、共に体が膨張したかと思うと、ついには爆散してしまった。
「!! ハァッ、ハァッ………!! 嘘でしょ………!?」
狡猾なロックフォーヌは2体の手駒の死を察知した瞬間、リンク及びレイオニックバーストを切っていたため無事であったが、疲労から肩で息をする。
「キャハハハハ!! だらしないねロックゥ!! しょうがないからアンタのそのだらしないケツはあーしが拭いてやるよ!!
じゃあ、今度こそしっかり殺りなよゾーリムちゃん!」
そんな同僚の醜態を唾棄嘲笑し、今度はデルピューニがゾーリムに再び攻撃を命じる。ゾーリムは咆哮し、再び火炎放射を地上に投下する。
「グオオオオオオ!!!!」
本気でゾーリムが吐いた爆炎は着弾箇所で大爆発し炎上。地獄のような光景を作り出す。
そして、炎が光を失った天地を照らし、その姿は浮かび上がった。
「「なっ………!!??」」
蛇女と魔女は同時に声を失う。炎に照らされ浮かび上がったシルエットは、暴走したロボットの物ではなかった。
「――――グオオオオオオアアアアアアアアアアアア!!??」
先ほどの2体を殺した物より、遥かに極太で威力の高い光線。ゾーリムの頭よりも巨大な直径を誇るそれが巨獣を呑み込んだ。
そうして、ゾーリムは断末魔と共に頭から首の大部分にかけてが一瞬で蒸発・消滅。残った部分も血を噴き出しながら地面に墜落し、落下箇所を大規模に破壊・崩落させた。
「なっ……なんで
「あ…あいつは1万年前にウルトラマンメビウスに殺されたはずでしょ!? なのになんでこの星にいるのよ!?」
デルピューニは目に見えて狼狽していた。奴が
ロックフォーヌもまた、
「ア、アンタ、さっさとシラリーとコダラー、いやもう怪獣全部出しなさいよ!! アタシ達がここで仕留めるしかないわ!!」
「仕留める!? あの化け物をあーし達で殺れると思ってんのかよ!?」
恐怖狼狽しながらも敵を倒そうとするロックフォーヌ。しかし、それは無理だとデルピューニは即座に否定する。敵の実力は、かつて姉のパイトンが殺された時点でデルピューニには嫌というほどよく分かっていた。
如何に自分達が最強の怪獣をレイブラッド星人から与えられ使役していようと、果たして止められるような相手か。
「それでもやるしかないのよ!! やらなきゃ今度はアタシ達が御主人サマに消されるわ!!」
「ッ!! う、うぅ……!」
ネオバトルナイザーを介して魔女にそう必死に訴えられ、言葉に詰まる蛇女。ここで何もせずに逃げ帰ったところで、結局レイブラッド星人に粛清されるだけである。
主人は寛容だが、それでも敵に怯えて逃げ出す役立たずをわざわざ生かしておくほど優しくはない。それは2人とも理解していた。
「………………」
余裕の表れか。敵は腕組みし、言い争うデルピューニ達に特に何もせずに眺めていた。
『バトルナイザー、モンスロード!』
そうしてデルピューニとロックフォーヌは持っている全戦力を投入。直ちに全力での排除にかかった。
「遊んでやるか」
レゾリウム、いや復活した男はそう告げて、強力なる怪獣の群れを迎え撃った。
――その結果は惨憺たるものだったのは言うまでもない。
ベムスター、ブリッツブロッツ、ゾーリムと同じく、試験官達の誇る怪獣軍団は瞬く間に皆殺しにされた。三幹部筆頭のソテイラには数こそ劣るが、最強怪獣クラスも全部投入したにもかかわらずだ。そして、相手には文字通り“つまらない”相手、
自慢の怪獣達を簡単かつ迅速に虐殺されたことで、改めて相手は想像以上の怪物だと思い知らされ、2人は大いに震え上がる。
そして、今この場で怪獣達同様惨たらしく殺されるよりはと、粛清免除への一縷の希望を懸けて主人のレイブラッド星人の元へと逃げ帰ったのだった。
その直後、同じく竦み上がっていたエンディール星人だったが、改めてかつての
「陛下! 此奴は我等が軍だけでなく他の組織まで裏切り続け、その度資金と物資を大量に持ち逃げした不届き者!
今まで散々逃げ回っておりましたが、この星で今ようやく捕らえることが出来ました! よって、この場で今すぐ処刑いたします!!」
主君にそう説明するなり、テンペラー星人は今まで散々煮え湯を飲まされてきた罪深き裏切り者を処刑すべく、両手の鋏を光らせ、破壊光線を撃とうとする。
……しかし、そこで主君は不可解にも待ったをかけた。想定外の主人の反応に訝しむテンペラーだが、そもそも主君はエンディール星人が造ったレゾリウムを元に復活が出来た。よって、復活出来たことで大層機嫌の良い主君はそれを“功績”としたのである。
さらには、今は人手が欲しいため、また自分に忠誠を誓って働けば今までの罪を不問にしてやっても良いと宣ったのだ。
「あ、あ、ありがとうございます!!!! このエンディール星人、これからは陛下のために誠心誠意働き、命を賭して仕えることをここに誓います!!!!」
エンディール星人は平伏、いや最早体を地面に投げ出して突っ伏していた。
命を長らえるためには降伏しかない。ここで逆らっても一瞬で消されるのみ。しかしながら、主君はエンディール星人の裏切りを罪に問うどころか帳消しにしてくれるというのだ。
主君の気まぐれは今に始まったことではない。そして、主君の機嫌が良いというのはこの破格の条件での寛大な降伏勧告を見れば本当だろう。
計算高いエンディール星人は時勢を読み取り、主君に改めて忠誠を誓ったのである。
「陛下、次はこの
私はヤプールの元でエージェントとして働いておりました、ファムと申します。
この度、陛下にお仕えさせていただきたく、陛下の復活に尽力いたしました」
エージェント・ファムは主君の前に胸に右手を当てながら跪き、笑みを浮かべながら恭しくそう口上を述べた。
元はヤプールの手先である彼女だが、主人の復活までにはまだ大分時間がかかる以上、今の彼女の身分はフリーランスとなっている。ならば、めでたく首領が復活した悪の組織の最大手にここで一時的に身を寄せるのも悪い選択ではあるまい。
「当面の給金だ。口座を確認しろ」
気まぐれな主君はファムからの臣従の申し出もまた、人手不足という理由からかあっさり承諾し、テンペラー星人に当面の給金を支払うよう命じた。テンペラー星人に促され、早速ファムが左手首に装備した腕時計型ガジェットで自分の預金口座を確認する。
「こ、こんなに!?」
口座に振り込まれていた金は、なんとヤプールから1回の任務で支払われる平均的な報酬の十倍もの金額であった。これにはさすがのファムもその桃紫色の目を見開いて驚愕する。
さすがは悪の組織最大手。如何に凋落すれども、部下や協力者への金払いは非常に良い。同じ悪の大組織のグア軍団が吝嗇なのとはえらい差である。
「さすがは陛下。これから誠心誠意お仕えさせていただきます♪」
ファムは金に目が眩んだのか。非常に機嫌良く新しい主君に忠誠を誓ったのだった。
「ガオオオオオオ!!!!」
真っ暗闇の中でも構わずスフィア合成獣の群れに孤軍奮闘するスーパーグランドキング。
惑星滅亡の危機にアシヨシ三大最強怪獣は各自立ち向かっている。ギラ・ナーガ、ガタノゾーアもまたスフィア合成獣の群れの殲滅やスフィアバリアの破壊へと動いていた。
「ギュウウウウリリリリリリ!!」
「キュイイイイガアアアア!!」
「ゴウオオオオオオ!!」
「キュイイオオオオ!!」
しかし、多勢に無勢なのは変わらず。ただの怪獣の群れなら超怪獣はこれほどの苦戦などしやしなかった。だが、スフィアジオモスを複数擁する敵の群れは、いくら殺しても未来の時間軸からまたスフィア合成獣を召喚してしまう。これではいたちごっこであり、さすがの超怪獣も大分疲弊を見せていた。
「あれか」
だが、ここで
「キュイイオオオオ!!」
しかし、敵対者だとすぐに判断し、すぐそばのスフィアジオモスが襲いかかる。しかし相手は突進してきた相手の頭を無造作に掴み、その巨体を右手だけで軽々持ち上げると、スフィアオベリスクまで投げつけた。
「ギャウ!!」
飛んでいったスフィアジオモスは3本の尖塔にぶつかり悲鳴を上げるも、オベリスクはビクともしない。やはり惑星吸収の要だけあり、それなり以上の硬度はあるらしい。
そして新たな敵の目的が尖塔の破壊だと判断したスフィア合成獣の群れは疲弊したスーパーグランドキングを放置。今度はこの漆黒の宇宙人へと襲いかかった。
「――――鬱陶しいわぁぁッッッッ!!!!」
そう絶叫し、怒りのままに宇宙人は
周囲に放たれた破壊の渦は、かつてウルトラマンヒカリやザムシャーを(遊び半分で)攻撃した時よりも遥かに強力であった。それが強力なスフィア合成獣を次々に押し潰し、断末魔も上げる暇もないまま粉々に爆砕していく。
スフィアオベリスクも当然巻き込まれるも、それでも全体に細かいヒビが入るだけで済んでいた。
「ガ……ガオオ……」
そして同じく巻き込まれたスーパーグランドキングだったが、こちらは生きていた。しかし疲弊状態で避けることも出来ずモロにくらい、大ダメージを受けていたのであった。
「堅いな」
スフィア合成獣が一瞬で全滅するも、スフィアオベリスクは尚壊れておらぬことに、呆れ気味に感心する男。しかし、3本の尖塔が無事でいられたのもここまでである。
「ガオ!?」
空だけでなく、(スーパーグランドキングまでも含めた)男の周囲までもが一瞬で暗黒に染まる。その直後、暗黒エネルギーの巨大な塊が空から落下し、スフィアオベリスクに直撃する。
着弾点では核爆発を思わせるほどの凄まじい衝撃が起き、スフィアオベリスク、いや着弾箇所の全てを一気に破壊・消滅させた。
……いや、スーパーグランドキングだけはその圧倒的な硬度の装甲からそれでも生きていたが、こちらもまた巻き込まれてしまう。そうして、その21万5000tの巨体ですら、木の葉のように遥か遠くへと吹っ飛んでいった。
「ふむ」
空中に浮かぶ男はここでようやく満足した。着弾箇所はまるで巨大隕石の衝突を思わせる、穴の底が見えないほどの凄まじい大きさのクレーターが出来ていた。当然、スフィアオベリスクなど影も形もない。
「………………」
だが、男にはもう1つやることが残っていた。空を覆い尽くすスフィアバリアの除去である。
男は右手を天に掲げ、赤黒いエネルギーを収束させる。
「ぬぅうぅ!!!!」
気合と共に放った【ギガレゾリューム光線】。極太の直径を誇るそれはウルトラマンの必殺光線をも遥かに上回る威力と規模を誇り、あまりの巨大さ故に全く攻撃が通用しなかったあの巨獣ゾーリムすら一撃で殺害した。
それが天に放たれ、やがて大気圏のスフィアバリアに衝突。照射されている内、ついに誰も破壊出来なかった最硬のバリアをぶち抜いた。
さらにはレゾリューム・エネルギーがバリア内を侵蝕。バリアのエネルギーに変わっていた内部のスフィアを次々と汚染・絶命させ、ついにはスフィアバリアを消滅させたのだった。