女ヶ島を追い出されたので外海でハーレム王に私はなる   作:覚醒サイダー

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第1話 復活

 海王類がどんな生活を送っているのか、専門の研究者も私程詳しくは知らないのではないだろうか。そんなどうでもいいことを考えてしまうのも私、セラギネラがとんでもなく暇だからである。

 今の私の状況を簡単に説明すると、『石になって海王類の腹の中』だ。意識を失っていたからどれくらい時間が経っているのか正確なところは分からないけど、何年もの間こうして石になって、海王類に食われたり、海底を転がったりして、海を彷徨っている。

 

 こうなってしまった原因は、我が故郷アマゾン・リリーに帰還したボア三姉妹、その長女であるボア・ハンコックだ。長らく旅に出ていたらしく、ゴルゴンの呪いだとか訳の分からないことを言ってはいたが、何らかの悪魔の実の能力。彼女のそれによって私は石にされ、凪の帯(カームベルト)に突き落とされたのだ。

 

 別に恨んでいる訳ではない。アマゾン・リリーでは強さこそが正義、勝者こそルールだ。何をされてもそれは負けた私が悪いのだから。ただ、こうして海を彷徨いながらも、絶対に忘れられない未練があるのだ。

 

 ――ボア・ハンコックを一度で良いから抱いてみたかった。

 そう、あの信じられない程に瑞々しく実った2つの果実を揉みしだいて、柔らかそうでムッチリとした尻を鷲掴み、滑らかで靭やかな足に頬擦りをして、艶やかな黒髪を嗅ぎながら、勝気で高貴な美しい顔を羞恥に歪めるのを見たかった!そしてあわよくば、その先まで行って、朝まで寝かせず愛でたかった!

 

 あふぅ、興奮してきたのでどうしてこうなったのか、一回冷静に過去を振り返ろう。

 

 私の故郷、アマゾン・リリーは、凪の帯に存在する女ヶ島の国家。男子禁制であり、外海へ出た者が子を作って帰ってきても生まれてくる子は必ず女の子という不思議現象によって、女のみで構成された世にも珍しい国家だ。ここで生まれた私は、物心ついた頃には自らの恋愛対象が女であったため、女だけの国なんて楽園でしかなく、戦士として認められるような年齢になる頃には、片っ端から顔の良い女の子を漁る幸せライフを送っていた。この国では強いもの程美しいという風潮があるが、私は顔重視だ。顔が良ければ強さなんて全くいらない。

 そんな私であるが、ちょっとばかし派手にやりすぎたのか皇帝にキレられて、九蛇海賊団の選抜から外された上にほぼ投獄されるようにして、島の端っこに追いやられた。『女同士で恋愛することに、とやかく言いはしないが、お前のように手当り次第に食い荒らされては、ただでさえ低い出生率に影響する』ということらしい。出生率が下がって、この女だけの楽園が無くなってしまうのは嫌なので納得した私は自粛して、かなり大人しくしていたと思う。その代わり、九蛇海賊団が持ち帰った本などの書物はかなり優先してもらった。この国でこれ以上女の子漁りが出来ないとなると、外海に出ようかと考えていたからだ。だから私は、外の情報を入手して着々とこの国から出る計画を進めていた。そんな時だ、ボア三姉妹が先々代皇帝に連れられて国へやってきたのは。

 

 三姉妹の長女、ボア・ハンコックは抜群のスタイルと、長い黒髪に、意志の強そうな瞳と、全てが最高な、とんでもない美少女で、そのあまりの美しさに思わず何も考えずに手を出しそうになった程だ。どうしても彼女を抱きたくなった私は、『ベッドで交友を深めましょう、後悔させません』と欲望を隠しながら誘って、ハンコックが手でハートマークを作ってきたから、OKなんだ、やったーと興奮してたら――石になってましたね。ええ。意識が戻ったときには海の底、石になった体は動かず、解除は気合で出来そうだったけど、海の中で生身になるのはまずい。仕方なく私は石のままで脱出できるチャンスを窺うことにしたというわけだ。あー、あれから何年経ったか分からないけど、ハンコックの美貌はさらに磨きがかかって、大人の色香が溢れる感じになっているに違いない。次は絶対抱いてみせる。そのために石になりながらも脳内で出来る鍛錬はしてきた。今度は何としてもベッドインだ!

 

(うぎゃああ!?馬鹿でかい海王類だ!凪の帯から入ってきやがったのか!)

 

 煩悩で胸を膨らませていると私の見聞色によって、何年か振りの人の声を捉えた。どうやら私を食べた海王類が人の乗っている船を襲っているらしい。これは千載一遇のチャンスだ。私は気合を込めて脱出を開始する。

 

(慌てるな!俺がいく!)

 

 外ではこの海王類と戦闘になっているみたいで、慌ただしく気配が動いている。船を沈められる前に助けてやるかと考えながら、パキパキと剥がれ落ちるように石化から解放されていく。それと同時に海水に触れたことで、体の力が抜けていくけど、海王類が体を外へ出した瞬間に、気合で海王類の腹を掻っ捌き、随分と久し振りな太陽の下へ飛び出した――瞬間。

 

「――“火拳”っ!!」

 

 

 目の前には、とんでもない炎が広がっていたのでした。外海、波乱万丈過ぎない?

 

 

 

 ◆

 

 

 ――女ヶ島近海、九蛇海賊団の船上。

 

姉様(あねさま)、どうかなされたのですか?」

 

 王下七武海、【海賊女帝】ボア・ハンコックは海を眺めていた。遠くを見つめるその横顔は美しく、妹であるボア・サンダーソニアでさえ見惚れそうになる程であるが、このように意味もなく海を眺めるような行為は珍しい。

 

「――あやつのことを唐突に思い出してな」

 

 ハンコックの言う、『あやつ』という存在にはすぐに見当がついた。当時、まだアマゾン・リリーでの立場を作れておらず、これからのことに不安を抱いていた時、その怪物(・・)は現れたのだ。

 

「『白雷』のセラギネラ、ですか?」

 

 ハンコックの呟きに答えたのは、末の妹である三女、マリーゴールド。彼女の答えは正しかったらしく、ハンコックは忌々しげに顔を歪めた。思い出されるのは白髪に赤い瞳の恐ろしき戦士の姿。

 

あれ(・・)は噂通りの化物じゃった。不意を打てねば当時の妾達では相手にならなかったかもしれぬ。今でさえ勝てるとは断言できぬわ」

 

 二人の妹は姉のハンコックの美しさを、強さを、気高さを、疑うことはない。それでも、あの化物に確実に勝てると断言は出来ず口を噤んだ。

 今は亡き先代皇帝曰く、外海に出ていれば『四皇』すら狙えていたと豪語した程の化物は、誇張でもなんでもなく、正しく化物であったことを確信していたからである。

 

「そうだとしても、彼女は石となり海の底。何ら気にかける必要などありはしません」

 

 とんでもない覇気を纏って迫ってきた怪物も、姉の能力によって石となり、そのまま海へ捨てた。どんな強者も姉の美しさの前には無力。目の前で見ていたサンダーソニアには姉が勝ったという事実こそが結果であり全てだと思えた。

 

「そうじゃな」

 

 ハンコックとて理解している。全くもってその通りであり、実際、ハンコックはセラギネラを破ったことで一気にアマゾン・リリーでの地位を向上させ、皇帝にまで上り詰めた。王下七武海の地位も手にし、九蛇海賊団の船長として世界中にその名を轟かせている。勝者はハンコック。既に過ぎ去ったことでしかない。

 

「――じゃが何故じゃ?再びあの獣のような赤い瞳が妾の前に現れるような気がするのは……」

 

 この時、遥か先の偉大なる航路(グランドライン)にて、爆炎を纏いながら、災厄の化物が復活の時を迎えていた。

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