女ヶ島を追い出されたので外海でハーレム王に私はなる   作:覚醒サイダー

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第5話 バラティエ

海上レストラン・バラティエは魚の形をした船で、嗅覚の鋭い私には、その姿が見えたくらいから美味しそうな匂いがして堪らなかった。もう美味しいの確定なので、ワクワクが凄まじい。

 

「槍を飛ばして、先行ってて良いですか!」

 

「良いわけないでしょ。もうすぐ着くから」

 

頭をぽんぽんとされて宥められる。

ゆっくり口説いていく作戦で好感度を積み上げていったら、妹みたいな扱いをされてしまっている気がする。黒檻部隊の皆も飴くれたりするし、なんでこうなったんだ。

 

にこにこと私達を見守っている部隊の人達の生温い視線が、どうにもむず痒い。アマゾン・リリーでは、九蛇海賊団として遠征に一度行って以降、化物みたいな扱いされてたからちょっと対応に困る。

 

「良かったなぁセラちゃん、いっぱい美味しいもの食べてきなよ」

 

「ヒナ嬢みたいな立派な大人になるには、もっといっぱい食べないとな」

 

あの、私もう17歳なんですけど!何なら石になってたし、精神的には+10歳くらいになるからねっ!九蛇じゃ立派な戦士だし、お酒だって飲めるんですけど!

 

釈然としない気持ちになりつつ、私は大人なので仕方なく受け入れることにする。

私はちょっと強いんだぞ!っていうのをもっとアピール出来る機会があれば、この扱いも払拭できる気がするし。

 

まあ、今は仕方なく、本当に仕方なく、受け入れることにしているのだ。

 

 

 

 

 

女だけの国って言うと華やかでお淑やかなイメージがあるかも知れないけど、アマゾン・リリーはそんな夢みたいな場所ではない。コロシアムでの賭け試合が1番人気の娯楽で、口より先に手が出るような戦士ばかりの殺伐とした国だったりする。そんなお国柄だから料理屋も、早い旨い多いで売ってるお店ばかりなのだ。

 

「これが外海のレストランっ!」

 

ワクワクが抑えられず、ヒナさんを引っ張るようにして店内へ足を踏み入れると、そこはアマゾン・リリーでは見たことがないくらいキラキラとしたレストランだった。

 

落ち着いた調度品の店内は装飾も最低限で、丸い机と椅子が等間隔に並んでいる。でもそれは、店自体が円形になっていて、海上レストラン故にどの窓からも海を一望できる最強のロケーションを活かすためにあえてそうしているのであろう。波の音と美味しい食事が最大限に楽しめる内装は、オーナーのこだわりを感じる。これは期待が高まる!

 

「ああ、今日はなんて日だ!こんなところに二人も女神が舞い降りるなんて♡」

 

店に感動していると店員さんなのか、くねくねしながら男の人が話しかけてきた。

黒いスーツに青いワイシャツ。何より特徴的なのは今まで見たこともないぐるぐるの右眉毛。アシンメトリーな前髪で左目は覆い隠されているからか余計にその印象が強い。喋りながらも咥えたタバコを落とさないのは地味にすごいと思う。

 

「客を口説くなって言ってんだろーが、ナンパ野郎!」

 

「副料理長を敬え、クソコック」

 

坊主頭に鉢巻きをした料理人が文句を言うものの、ぐるぐる眉毛の人はあっさり流して、私達にだらしない笑顔を向けてきた。この人、私と同い年くらいで若そうなのに副料理長だったんだ。

 

「聞いてた通り、面白いお店ね」

 

ヒナさんの反応を見るに、これは外海のレストランだからということではなく、この店特有のものらしい。

 

「失礼しました、マドモアゼル。コートをお預かりしましょう」

 

何か何言ってるのか良くわからない人だけど、くるくる回ったり、キリッとしたり、動きが奇妙で面白い。副料理長がやってるってことは、これもレストランの演出なのかな。言われるがままにコートを渡してしまったのは、そんな考え事をしていたからだろう。私は自分のコートが特別製だということをすっかり忘れていたのだ。

 

「いぃっ!!??」

 

コートを受け取った瞬間、ぐるぐる眉毛の人は腕に引っ張られるように前のめりに倒れた。ドシーン!という音はその重量を如実に表しており、床に穴が空かなくて安心した。

 

「ごめんなさい!そのコート、ちょっと(・・・・)重いから」

 

今、収納している(・・・・・・)物だと、ゾウ一匹分はないくらいだろうか。

 

「だははは、何してんだよサンジ!お客様申し訳ありませんね、うちのヘボコックが失礼を、お?おおおお!?」

 

先程の鉢巻坊主コックさんが、床にべったり倒れているぐるぐる眉毛さんを指差して爆笑すると、引き攣ったヘンテコな笑顔を向けながらコートを拾おうとしてくれる。けど、屈強な膨れ上がった筋肉を持つ彼が、顔を真っ赤にして必死に持ち上げようとしても、固定されているようにコートは動かない。

 

「なんだぁこいつは!?死ぬほど重ぇぞ!?」

 

興味を持ったのか、ヒナさんもコートを拾おうとしてみるけどすぐに諦めたので、ちょっと確かめたかっただけみたい。呆れたような顔でこっちを見てきたので、何食わぬ顔でコートを拾い上げて、畳みながら近くにあった頑丈そうな鉄製の棚の上に置いた。何か、ありました?という顔をしておけば、何事かとこちらを見ていた他のお客さんの視線は散っていった。

 

「店員さん、ここ座ってもいいかしら?」

 

未だコートの衝撃から立ち直れていなかった料理人二人を促すように、近くの席を指すヒナさん。

 

「あ、ああ勿論ですともお美しいお姉様♡お姫様もどうぞこちらへ」

 

ヒナさんが座った後、その正面に座る。ちょっとやらかしちゃったけど、これでやっと食事を楽しめるよ。

 

「先程は失礼。料理をお待ちの間、食前酒にシャンパンをどうぞ」

 

良く冷えた淡いピンク色のシャンパンは、グラスに注がれただけで一つの芸術のように美しい。爽やかでフルーティーな香りを裏切らない、コクと深みのある味わいながら爽やかで、これから食べる食事を邪魔しない最適な食前酒だ。シャンパンにうるさいヒナさんも満足げに飲んでいる。

 

「お、美味しいぃ……」

 

お任せのコース料理を注文し、小前菜、前菜、スープ、サラダと順に食べたけど、どれも食べたことがない料理で全部美味しかった。特にスープはやばかった。澄んだ琥珀色のコンソメスープは、見た目こそシンプルながら、多くの食材を繊細なバランスで時間と手間をかけて作られているのが良く分かる一皿。

じんわりとおいしさが広がって、メインディッシュを食べるのに体が最高の状態になっている。あくまでコース料理としてメインディッシュに繋ぐことを想定した味付けなのに、この一皿でも完成されているのが素晴らし過ぎる。コース料理って初めて食べてるけど、一巡することで本当の意味で料理になっているんだ。一品、一品の完成度だけでなく、全てを一番美味しく食べられるように組み合わされている。アマゾン・リリーにはない考え方で、私は心底感動していた。

その後はメインディッシュのメニューが続く。魚料理、レモンシャーベットを挟んで、肉料理。

淡白な魚を先に食べて、シャーベットによって口の中に残った魚の風味をリセットしてから肉料理を楽しむのだ。メイン中のメインである肉料理は、牛フィレ肉のロティ。量こそ多くないものの、牛肉の甘みと赤ワインのソースが堪らない。少量でしっかり満足できる味付けで正にメインといえるだろう。

 

「ご満足頂けましたか、麗しき女神方」

 

これまでずっと料理を運んでくれていた副料理長、サンジさんがデザートである、季節の果物パフェを配膳すると、膝を付いて見上げてくる。

 

「美味しかったわよ。ヒナ満足」

 

「最高でした!特にスープは衝撃でしたね」

 

「なんと、美しいだけでなく良い舌をしてらっしゃる!そのスープは俺が丹精込めて仕込んだもの!天上の女神達に捧げる俺の愛さ♡」

 

面白い人としか思ってなかったけど、あのスープを作ったのがこの人だったなんて。副料理長っていうのは伊達じゃないってことか。若そうなのに凄い腕だ。私じゃ全然敵わない。これだから料理は面白いんだよねぇ。私の場合、ほぼ隔離生活をしていたから教えてくれる人もいなかったし、食材も限られてたし、本と勘だけでやってたから家庭料理感が否めない。能力を使った(・・・・・・)料理にはちょっとばかし自信があるけども、やっぱりちゃんとした調理を学びたい。自分で美味しいものが作れるって最高だと思うんだよね。好きなときに好きな料理を食べ放題だもん。外海を回りながら美味しい食べ物があったら作り方を習得するようにして、食を学んで、いつか私もこんなフルコースを作ってみたいなぁ。

 

「え?」

 

「どうしたの、セラ?急に立ち上がったりして」

 

サンジさんに料理のことを質問したりしながらデザートを食べていたのに、唐突に立ち上がった私に、ヒナさんが不思議そうな顔を向けた。

 

私は、常に見聞色で自身に危険が迫っていないか警戒している。これは意図的にしているというより、もうこれが自然体になっているのだけど、とにかく、その見聞色が相当の強者を感知したのだ。正体が分からない以上、戦闘を想定して、棚に置いてあったコートを私が羽織ったのと同時に、慌ただしく黒檻部隊の海兵さんが店内に駆け込んでくる。

 

「ヒナ嬢、ガープ中将が近くにいたとかで、突然訪ねて来ました!」

 

「ガープ君らしいわね、何の用かしら?」

 

突然訪れた強者の正体は、海軍本部中将ガープ。

その数々の功績から『海軍の英雄』として称賛される伝説の男だったのである。

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