女ヶ島を追い出されたので外海でハーレム王に私はなる 作:覚醒サイダー
バラティエに停泊させていたヒナさんの軍艦の横に、馬鹿でかい犬の船首がちょっと可愛い独特な軍艦があった。
「ヒナ、とんでもないの連れてるのう」
犬の被り物をした老兵がおせんべいを食べながら笑っている。格好も態度もふざけているけど、この人相当強い。少なくとも九蛇の戦士で彼より強い者はいなかった。間違いなく、彼こそが『海軍の英雄』ガープ中将だろう。
「ガープ君、どうして
「孫の顔を見に来たんじゃ。全く成長しとらんかったがな」
ガープ中将が大した海賊もいない
「お前さんこそどうした?
「
アマゾン・リリーの出身とは言ってないけど、悪魔の実の力で体の自由を封じられた上で海に突き落とされて島流しにされた、と伝えてある。思えばこの頃から妹みたいに扱われ始めて、黒檻部隊の皆がより甘やかしてくるようになった気がするけどなんでだろう。
「東の海って穏やかだって聞きますし、1番栄えてそうなローグタウンから新しい生活を始めようかなって」
外海を見て回りたいけど、ひとまずローグタウンに滞在して勉強をしようと思っている。外海へ出るための準備期間って奴。アマゾン・リリーでも勉強はしていたけど成果は微妙だ。特に航海術が壊滅的。泳げもしないのに、こんな知識で海に出たらいつ死んでもおかしくない。航海士を雇うにしても自分に知識がないのは怖いし、暫くは勉強かなぁ。最初は、海賊王の処刑台が見たいっていう観光気分で選んだ街だけど、
「それ程の力量があって呑気なことを。どうじゃ、
ふざけているような口調でありながら、言葉には確かな力があった。間違いなく本気で言っている。私が戦っているところを見たわけでもないのに。
「とっくに私が誘ったけど断られたわよ。ヒナ不満」
ヒナさんが膨れっ面でジト目を送ってくるけど、こればっかりは譲れない。
海軍というのは当たり前だけど軍だ。詳しい内部事情は知らないけど、組織である以上、上からの命令によって動くことになるんだろうし、そんなの全然楽しくない。私は今、自由を満喫したい気分なのだ。
「立場には責任が伴うっていうのは分かってますから、私は暫く自由にやらせてもらいますよ」
アマゾン・リリーの皇帝なんて大変そうだったな。海賊行為だけで成り立ってるから物資は偏るし、女だけしかいないから出生率は低いし、力こそ全てみたいな国だから、飛び切り強くなくてはまとめられない。そこに私みたいな問題児もいたわけで全くやりたいとは思わなかった。どんな組織でも上にいくほど下が増えて、それはそれだけの人を背負うということだ。私は私の好きな人しか背負いたくないね。
「なら、自由を謳歌する前に、この老いぼれに付き合ってもらうとするかのう」
にっ、と笑ったガープ中将の背後。そこから人が音もなく接近してきた。武器は刀。迫る刀の斬撃を避けつつ、覇王色をぶつけるが怯むことなく構えを取ってくる。
「ワシの部下、ボガードじゃ。ちとお前さんの力を見せてくれ」
いきなり襲わせといて悪びれた様子もなく笑っているガープ中将の迷惑行為に付き合う必要もないのだけど、食後の運動と、ちょっとヒナさん達に私が強いってところを見せたかったので付き合ってあげることにする。
相手は豪快なガープ中将の印象とは真逆の寡黙そうな男の海兵、ボガードさん。ハット帽にブラウンのスーツを身に纏い、肩に羽織った海軍のコート。刀を構える姿に隙はなく、覇気の使い手でもあるようだ。立ち回りからして能力者ではないと思うけど、動きに若干の癖がある。恐らくは体系化された技術、何らかの体術を学んでいるのだろう。いいねぇ、面白そうだ。
「刀には刀でね」
コートから刀を取り出す。九蛇が持ち帰った戦利品の中にあったのを貰った奴だ。結構良い刀らしいけど、九蛇ではあまり使われないから死蔵されていた。料理に使えないかなーと思ってちょっと試して断念してからは私も死蔵してたんだけど。お魚を捌くにはちょっと不便だったよ。
「ほぉ、剣を使えるのか」
ガープ中将が意外そうに呟くけど、私の武器の扱いなんて適当だ。私的に武器は、気分で使い分けて、戦いを少しだけ楽しくするために使うもの。遊び道具みたいなものだ。今だって、普通にやるより面白くなりそうだから刀を使ってみることにしただけで深い意味もない。要は真似っ子遊びだ。
「剃」
私が刀を構えると、即座に動き出すボガードさん。独特の歩法で一気に距離を詰めて斬り込んでくるのを、見様見真似の剣術で受けて力任せに押し返す。
「その体術、面白いですね」
この人の動作の起点となっているらしい動き。瞬時に足場を何度も蹴りつけ、爆発的な推進力を生み出して移動する術のようだ。見聞色で移動先が読めているのでどうということはないけど、一瞬でトップスピードになって移動してくるのは結構厄介なものだろう。簡単そうなので、これも真似してみる。
「こんな感じ、かな」
「なっ!?」
早速真似してボガードさんの背後に回り込むと、驚愕した様子で刀を振ってきたので、見様見真似剣術で逸らす。うん、刀の扱いにも大分慣れてきたかな。
「あれは剃!?あんな簡単に!?」
「……恐ろしいのぉ。剃だけじゃない。丸切り素人だった刀の扱いも既に堂に入っておる。ボガードの動きを模倣し、そこから自分にとっての最適解を生み出しとるんじゃ」
ヒナさんとガープ中将がなんか言ってるけど、そんな大それたことはしていない。昔から、戦闘技術は見てればすぐ使えるようになった。弓を持って5日で国一番になったし、槍も剣もただ見ていればすぐに一番になれた。でもそれはアマゾン・リリーという小さな国での話だし、そんなに凄いと思っていなかったのだけど、もしかしてこれってレアな技能?確かに億超えの海賊も弱かったし、それよりマシとしても、このボガードさんだって、いつでも倒せる程度に感じてる。
私、ちょっと強いかなくらいに思っていたけど……。
「あの、私ってもしかしてかなり強い方なんですかね?」
「そいつが御惚けじゃないんなら、とんだ
呆れたように言われても仕方ないじゃないですか。まともな比較対象が国内の身内しかいなかったんですから!国では一番強い自信があったけどハンコックに負けてるし、私、井の中の蛙だったんだと思っていたのに。ただハンコックが強かっただけらしい。ま、まあ、ハンコックと戦ったときはめっちゃ油断してたし?全然本気じゃなかったし?……いや、油断し過ぎて本気出す前にやられちゃっただけなんですけどね。だから慎重になってたってのもあるし、私強いっぽいけど油断しないようにしよう。
「技を見せてもらってばかりでも悪いので、私もちょっと見せますね」
折角ガープ中将という、私でも知っているレベルの強者がいるのだ。戦闘においては能力とか技はなるべく隠しておく派の私ではあるけれど、自分の技がどのくらいのレベルなのか知りたい気持ちが抑えられない。
「あ、ボガードさん。無理だと思ったら避けてください。真っ直ぐ突っ込むので」
ボガードさんが見切れる程度の加減で技は打つ。
私が本気を出すと、どうしてかお腹が空いて燃費が悪い上に、こう、戦いたい!という衝動が強くなってしまって、ちょっと凶暴な性格になってしまうので元々、本気でやる気はない。だから、完全な状態ではないけれど、それでも今まで誰にも防がれたことのない必殺を披露しよう。ちなみに、九蛇ではこの技を見せれば大抵女の子を口説き落とせたので、そういう意味では自信がある必殺なのだ。ヒナさんにかっこいいとこ見せちゃうぞ。
刀をしまって槍を取り出す。適当に武器を使い分ける私だけど槍はお気に入りだ。九蛇だとこれが一番モテたからね。技が派手だし、分かりやすいから。実際、私の異名もこの技から付けられたものだし。
「行きますよ」
左手を地に付いて身を低くし、右手の槍を弓を引くように大きく仰け反らせる。この技の原理は至ってシンプル。ただ槍を持って突撃する、本当にそれだけ。ただこの技は――
「“白雷”」
――雷のように速い。
「避けるんじゃぁ!!」
私の技が放たれる瞬間、ガープ中将の叫びが届いたのかボガードさんが、あの素早く動く体術で僅かに左へ避けた。弾けるような
「あ」
気がついたらガープ中将の軍艦を正面から貫いていた。うん、どや顔で振り返ったら船に大穴空いていて、尻餅ついてるボガードさんとか、頭を押さえて天を仰いでいるヒナさんとか、おせんべいを袋ごと落としてるガープ中将とか見えて。
「さ、流石はボガードさんっ!私の攻撃をかわしながらこの威力!まさか剣による突きでこんな大穴を開けるとは!すごい!つよい!おしゃれ帽子を被っているだけのことはありますねっ!!」
「「「「「いや、やったのお前だよっ!!!?」」」」」
全海兵さんからツッコまれた。