女ヶ島を追い出されたので外海でハーレム王に私はなる 作:覚醒サイダー
アイスクリーム。
アマゾン・リリーにもあったけど、こんなに沢山の種類はなかったし、何より何段も違う味を重ねるだなんて、そんな素敵な手法はなかった。しかもアイス買っただけでおもちゃの剣まで貰えてしまった。
「食べづらいでしょ」
「夢とロマンの分、この方が美味しいんですよぉ」
10段。
高く積み上がったアイスはカラフルで、私の頭をすっかり追い抜き、天空に突き刺さんばかり。究極に食べづらいのは間違いないけれど、そこは見聞色を駆使して人混みをすり抜け、武装色でコーンと下段のアイスを強化することで解決している。10段にしたことによって美味しさが増しているはずだ。
「今日はちょっと寒いのにアイスなんて食べて大丈夫なの?」
「確かに最近にしては珍しい気候ですけど、私は美味しいものではお腹を壊さない自信があるので」
「ただの食い意地じゃない」
呆れられたけど、私は当たり前のことを言ったと思っている。美味しいんだから、お腹は喜ぶに決まっている。つまりお腹を壊すなんてありえない。完璧な理論である。
途中、小さな女の子に、どうやったらそんなにアイスを積めるのか訊ねられたので、ドヤ顔で武装色の覇気だよと教えてあげた。ヒナさんには呆れを通り越した馬鹿を見る目で見られたけど、女の子はやる気を出して嬉しそうに走っていった。まずは3段くらいから始めると良いと思う。
なんて話しながら、アイスを味わいつつ歩いていると、見えてきた海軍の基地。そのまま基地を目指しながら10段アイスを食べ終えてご機嫌な私は、アイス屋で貰ったおもちゃの剣を振りながら、次は何を食べるか考えつつ、そこへ足を踏み入れた。
「ヒナ大佐、お待ちしておりました!」
ヒナさんと共に入ると、そこには海兵が何人も整列していて、皆が皆、ヒナさんに憧れの目を向けていた。そりゃこんなに綺麗で、階級も高いヒナさんは人気だよね。まあ、ヒナさんとそういう仲になりたかったらまずは私を倒さないと許さないけどね?本気中の本気でやりますのでそこのところよろしく。
「
基地の奥から、白髪の恐い顔をした人が出てくる。葉巻をくわえて煙をふかし、上裸にジャケットを羽織った姿は完全に海賊寄りのビジュアルだけど、背中には『正義』の文字が刻まれており、
「この娘を
「海軍はいつから
もしかしなくてもガキとは私のことですよね?これはキレちまいましたよ。セラギネラさん17歳をガキだと?お酒も飲めるし、夜更かしもする、このセラギネラさんにそこまで言うとは許せん!
「言ってやって下さいヒナさん!」
「なんで私なのよ」
ヒナさんに前へ突き出されたので、仕方なく胸を張っておく。すると、何故か鼻で笑われた。私がご機嫌じゃなかったらここでもうぶちのめしてましたね。
「ガープ中将から貴方をボコボコにしていいと許可は貰っています。謝るなら今のうちです」
「おいヒナ、このガキはなんだ?」
私をガン無視してヒナさんに質問するなんて酷い。ドヤ顔してる私が馬鹿みたいじゃん。
「ガープ君は彼女が海兵になるなら即中将、すぐに大将にもなれるって言ってたわよ?」
「……今日は随分と冗談が過ぎるじゃねーか、ヒナ」
「あら、それは心外ね。ヒナ心外」
疑うように私を睨んできたので、これはもう私の強さって奴を教えてやらねばなるまい。
「戦えば分かりますよ。きちんとハンデは考えてありますので安心してください」
一方的にボコボコにするのは簡単だ。でもそれじゃ何も楽しくない。ただの弱い者いじめは良くないと思うのだ。だから私はアイスを食べながらハンデを必死に考えてきた。
「ハンデだぁ?止めとけ、そんなものいくらつけても一緒だ、俺にはガキをいたぶる趣味なんざ――」
「私の武器はこのおもちゃの剣にします。これ以外では指一本触れませんので安心して攻撃して下さい」
「ああ?」
アイス屋さんで貰った子供用のおもちゃの剣。短いし、軽いし、柔らかいし、これならそんなに怪我もさせない。これ以外で手を出さない、というのは中々良いハンデな気がする。
「子供のママゴトに付き合ってられる程、俺が暇そうに見えるか?」
「あ、すみません。確かに私は凄く手加減しますのでママゴトと思われるかもしれませんけど、殺すわけにはいかないので」
ブチッ、と何かがキレる音がしたと思った瞬間、私の目前に十手が突きつけられていた。この先端、軍艦で見せてもらった海楼石って奴と同じ素材かな?
海と同じエネルギーを発するとかいう不思議石で、これに触れていると、能力者は悪魔の実の能力を一切使えなくなるとか。海軍の軍艦は、これを船底に敷き詰めているから、海中を通る動物たちからは海水と同一に認識され、
「海軍は託児所じゃねーんだ、殴られる前にさっさと帰れ」
もしかしてだけど、覇気が使えないと相手の実力を感じ取ることも出来ない?えっ?私、本当に子供だと思われてる?この溢れ出る強者感が伝わってない?
あー、うん。別にね?怒ってるわけじゃないよ?まあそりゃヒナさんと並んでればね、まだまだ大人の魅力ってやつは足りてないかもしれませんよ?私、大人だけどね?戦士だけどね?そういうこともあるよね。
だから、今からやるのは八つ当たりとかじゃなくて、ノック的なね、気付いてくださいって意味だから。ブチギレてやっちゃったわけじゃないから。
まあ、よく考えたらこのときの私って、おもちゃの剣握りしめて、ヒナさんにくっついて回っていたわけで、それ傍から見たら子供じゃん!ってことに後で気がついたりする。客観的視点って大切だねぇ……。
「仕方ないので、ちょっと攻撃しますから頑張って防いで下さい」
武器はおもちゃだけど覇気で強化すれば、それなりの攻撃力にはなる。九蛇の戦士を相手にするときよりもさらに威力を抑えれば、たぶん良い感じの手加減になるんじゃなかろうか。
おもちゃ剣を、突きつけられた十手の横でスモーカー大佐に向ける。そしてそのまま腕の力だけで剣を突き刺す!喰らえ必殺技!
「“白雷”風おもちゃ剣パーンチ!」
「ぐっ!?」
込めた覇気を認識できなくても本能的に察したのか、咄嗟に十手で防いだみたいだけど勢いを殺し切れずに吹き飛んでいく。ギリ防げたし、大きな怪我もしてなさそうだし、私の手加減、天才過ぎないか?後、剣なのにパンチってところに私のセンスが光っている。剣で攻撃したけど、おもちゃなので切れ味も何もないし、覇気で強化しただけの打撃だからね。
「“ホワイト・ブロー”!」
スモーカー大佐が吹き飛んでいった先から、明らかに自然現象ではない量の煙が噴出され、そこから拳が2つ飛んでくる。スモーカー大佐の能力は煙の自然系の様だ。気体ということは浮遊も可能で、重さも軽く出来るなら高速での移動が出来そう。直接的な火力は無さそうだけど、機動力に長けた能力っぽい。
「よっ」
拳は、バットを振るようにおもちゃ剣で弾けば、煙へと変化して消えていく。覇気使い相手に、こんなに自身の体を伸ばしたりしたら、弱点を晒すようなもの。強い自然系の人はこんなに自分の体を広げたりしないよ。まあ、私もそんなに自然系と戦ったことないけど、私でもそうするし。
「能力の使い方が格下相手の対応になっていますね。早く確実に逃さずに倒す、そういう使い方です」
自然系能力者からしたら、この街に来るような海賊相手にはまず無敵だ。そうなると海賊の発見と拘束の素早さ・正確さに重きを置く技になってしまうのも無理はない。ただそれは自身が反撃をされないことを前提としている故に、覇気使いからすれば隙だらけのカモになってしまうわけだ。まあでも、それはこの環境に適してしまっただけのことで、この人は普通に優秀なんだとは思う。
そもそも、このローグタウンから海賊を逃したことがない、とまで言われるのはとても凄いことだ。たぶん、私に出来るかと言われれば無理だろう。どんなに強くても結局、体は一つ。活動できる時間には限界はあるし、この広く人口の多いローグタウン全てを常にフォローし続けることは出来ない。つまり彼はそれを補えるくらい部下の扱いが上手いのだろう。きちんとした環境に彼を配置してやれば、すぐにでも強くなれると思うんだけど、確かにこのローグタウンで、海賊が成長していない内に、自然系能力者が確実に捕らえて、
「“ホワイトランチャー”!」
周囲を煙で覆い隠した中から、十手を突き出したスモーカー大佐が突っ込んでくる。煙の能力を活かした潜伏と、高速移動、良い技だけど、見聞色の使い手には、普通の目くらましはそんなに効果がない。後ろからの奇襲だったけど、普通にかわして、おもちゃ剣ではたき落とす。
「くっ、何故てめぇは俺に触れられるッ!?」
「逆に何故触れられないと思ってるんです?自然系がそんなに無敵なら貴方が大佐なんて地位にいるわけないでしょ」
自然系は確かに強い。
広範囲且つ強力な自然現象は適当にぶっ放してもかなりの攻撃力だ。そして何より、自身の肉体をその自然物自体に変えることができる。これによって基本的には覇気以外ではまともに触れることも出来ないのだから強いに決まっている。ただ、覇気使いの格上相手には立ち回りが難しい能力でもあるのだ。下手に体を自然物にしてしまえば良い的になってしまうし、能力の性質は初見でバレる。そこをどうバランスとって使いこなすかが、自然系能力者の格ってやつだろう。
「良く言うと伸び代がある、正直に言うと典型的な自然系のカモってところですかね」
能力は使いこなしているし、戦いのセンスもあるけど、環境が悪い。ここでいくら雑魚海賊を狩っていても強くなれるわけないし、そもそも覇気を学ぶ環境がないと中々強くなれる余地なんてない。
これ以上戦っても面白いこと無さそうだし、適当に手加減した新しい必殺技でぶっ飛ばして終わりにしよう。
武装色で強化したおもちゃ剣で気絶するまで殴り倒すという新必殺技を、スモーカー大佐が再び突っ込んできたタイミングで放つ!
「ボコボコおもちゃ剣殴り!」
瞬間――
「あらら……嬢ちゃん、あんまり俺の友達イジメんなよ」
やけに冷たい空気と共に、強大な覇気を纏った男が、私の剣を掴み、ダルそうに立っていた。