シン・エヴァンゲリオンのラストを色々と妄想して行間を埋めてみました。
基本的には原作準拠ですが、一部設定を妄想でいい感じにしたり、心情をこねくり回しています。

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I need you

長い、長い昔の夢を見ていた。

少し懐かしい、今思い出しても全て現実ではなくて、自分の妄想としか思えないような昔の話。

エヴァンゲリオン、使徒、サード・インパクト、赤く染まった世界...

それら全てと別れを告げて今自分が存在している。

あったものが無くなるのはとても不思議な感覚だ。確かに僕の中にあったはずのものなのに、今の僕にはそのおぼろげな輪郭しか思い出すことができない。

結局のところ人間は欠けた部分からそのカタチを思い出すことしかできないのかもしれない。それだけ存在というものはあまりに主観的すぎるのかもと思った。

けれど、僕がしてきた全てのことの結果は僕自身に刻まれている。

あの日、僕の首に装着されたコレはずっとそのままだ。

罪の象徴。僕が葬った生きとし生けていた全てのモノへの罪とそれに対する僕の意識だ。

きっと僕が外す日は永遠に来ることはない。

僕にはそうすることしかできない。

 

ピース。そうやって今生きている。

 

 

目を覚ます。

 

もうセミの音は聞こえない、涼やかな風が僕の肌を撫ぜる。

首のDSSチョーカと首の間に人差し指を挟み込む。そのまま指をチョーカに沿って動かし、風を通す。

うん、涼しい。チョーカの通気性は良くない。もう少し気を使って作ってほしかった。

 

聞き慣れない音楽と共に列車が来ることを伝えるアナウンスが聞こえる。

ここは知らない駅で、知らないホームのその赤いベンチの上だった。

僕はこの場所を知らない。

なにせ唐突に届いた「来い by 真希波・マリ・イラストリアス」と書かれた一枚のチラシの裏紙と切符に誘われてこの宇部新川に居るからである。

きっと彼女の悪ふざけだ。と決め込んでいたら懐かしい顔ぶれを集めたグループラインが作成されて、日時を書きなぐるように送られてきたのだ。

 

「9月14日の12時に集合だよーん」

「何?」

「何なのマリ?」

「一体どうしたんだい?」

「ハ?」

「みんなに招待状は送っておいたにゃー」

「かーならず来るように!以上!」

 

...以降、全てに反応なし。既読こそついているものの完全に無視を決め込んでいる。

こうなったわけだし、絶対に当日、現地までなんの反応もないだろう。

 

「本当になんなんだろう...でも、こういうのも久しぶりだな。」

腕時計を見る。集合時間まで少し時間がある。

 

前を見る。綾波、カヲルくん、アスカが向こうのホームに見える。キチンの集合時間前に集まっているようだ。

口では行く気はない!なんて言っていたアスカも結局来ると思っていた。(しかも、こういうときに遅刻は絶対にしないタイプだ。)

大人になったアスカは物事のシガラミには随分ドライになったけれど、こういった人には甘いところはずっと変わっていない。

そういうところが僕は好きだ。

 

綾波は少し背が伸びた。服装にも気を使うようになった。しかも、笑うようになったし、話すようにもなった。もちろん、昔に比べて、だけれど。

けれど、その引き込まれるような赤い瞳は変わっていない。

 

視界が暗転する。

 

「だーれだ」

 

思い出す。眼鏡を掛けた彼女のことを。

 

「胸の大きいいい女」

「御名答」

 

すらりとした彼女は手が外れ、また眩しい昼の日差しが目に入る。

彼女の匂いだ。

 

猫のようにヌラりと僕の首元に頭を寄せて、匂いを嗅いでくる。

すこし汗ばんでるからやめてほしいんだけど...

 

満足すると眼鏡から溢れる瞳が僕を覗き込む。挑発的な視線だ。

 

「相変わらずいい匂い。大人の香りってやつ?」

 

僕としては何も変わりはしない。けれど、そう言われるとうれしいし、恥ずかしい。

多少は言い返せるようにもなったってことをわからせる必要がありそうだ。

 

「君こそ相変わらず、可愛いよ。」

 

精一杯の抵抗だ。彼女の眼鏡を弄くりながらこう返した。

 

 

「ほほーう」

「いっぱしの口を聞くようになっちゃって」

 

彼女は僕の首元に手を伸ばす。

正直キスでもされるのかと思った。頭が一瞬で沸騰して、それで

 

機械音

 

首元がスッとした。うまく状況が理解できない

 

けれど、目と耳、そして肌は現実世界の刺激を淡々と告げてくる。

汗ばんだ首元を風が撫ぜる。涼しい。

彼女はくるくるとソレを指で回している。

 

人は誰かと共に人生を歩み、何かを分かち合って生きるしかない。

僕はあまりに幼かった。

誰かに小突かれて泣くだけの子供だった。

公園で誰かが居なくなってからひっそりと遊び、泣いているだけの子供だった。

ただ、寂しかっただけなのだ。

誰かに自分からぶつかることができなかったのだ。

 

「さぁ、行こう!シンジくん」

 

彼女が手を伸ばす。

僕が手を伸ばす。

彼女のすらりとした手を握る。思っていた以上に柔らかい女性の手だった。

きっと昔の僕ならコレで終わりだ。

余計なことを考える。何もしない。

 

けれど、

 

「うん、行こう!」

 

体が動く。

僕に手を差し伸べてきてくれた人々を思い出す。

そうだ。確かにそこにいつでも誰かが手を差し伸べてくれていたんだ。

ただ、それを受け取ることしかできなかっただけなんだ。

ただ僕には、差し伸べられた手を引くこと、そして一言が足りなかったんだ。

 

「I need you」


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