蕃神   作:名無しの海

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3ー2 綾波レイと名付けられた道具

 本日NERV本部での諸々が終って今はシンジと一緒にミサトさんの出待ちだ。

 今日は一緒に帰れるっていうからミサトカーで楽々帰宅予定なのさ。

 

 「ふんふんふ~ん、はらへった~」

 「今日は夕飯何にしようか」

 

 夕飯なぁ。

 あー、葉っぱ食いたい葉っぱ。

 薄味にしてバリバリ食いてぇ。

 成長期の身体は肉を求めるお年頃だけどメンタルが葉っぱ求めてるんじゃ。

 

 「もう時間も遅いし簡単なものでいいっしょ。確か野菜室に葉物があったから適当にサラダ作る」

 「ご飯は炊けるように予約しておいたからあとは干物でも焼こうか」

 

 神かな。

 しかしそれだと汁物欲しくなる。

 

 「あ、それなら味噌汁欲しいなぁ~。豆腐とワカメ……は無いから油揚げと大根で」

 「ミサトさんにはビールと枝豆と適当に野菜スティックでご飯まで我慢してもらおっか」

 「上等でしょ」

 「それじゃ後は帰りにミサトさんがスーパーの御勤め品を買い込むことを阻止するだけだね」

 「おうよ」

 

 あ、けど刺身類だったら欲しーかな?

 てへ。

 

 「いやーすっかりご飯当番やってもらっちゃって助かるわ~」

 

 台所立ち入り禁止令を食らったミサトさんご登場である。

 共同生活で最初に問題となったのは家事の分担だった。

 とりあえず副指令の仕事で多忙極まる冬月さんは出来るタイミングでご飯を作ってもらうことにしてパージ!

 ミサトさんは一度料理してもらった後、台所に立ち入り禁止にして、風呂トイレ掃除といったお掃除系がメインである。

 ご飯とゴミ出しは俺とシンジで分担。

 ホントはゴミ出し分担にミサトさんも混ぜ込みたかったけど「てへ、わすれちゃった」を乱発されてゴミ屋敷化される事を避けるため、俺とシンジだけで対応することにした。

 冬月さんもタイミング合えばやってくれるっていってたなぁ……おじーちゃんってお呼びしたいぜ。

 ちなみにミサトさんが掃除系メインなのは、料理やゴミ出しより取返しがつくかもしれないという結論からだ。

 

 あと大事なルールとして、家では職位つけるべからずとなった。

 これは冬月さん案で、家でまで副指令と呼ばれたら気の休まる時がないそうな。

 そら確かにね。

 

 「ミサトさんの健康管理も俺らの仕事なんで」

 「あれ?なんか立場違くないかしら?」

 「そういう事は他人が食べれるものを作れるようになってから言ってください」

 「失礼ね、作れるわよ。皆の味覚が遅れてるだけなんだから!」

 

 シンジ君の容赦ない突っ込みに擁護しようがない謎理論を展開するミサトさんである。

 手遅れなのはミサトさんだよって誰か言ってあげて。

 

 「あ、そういえばリツコから新しいセキュリティカード預かってるわよ。古いのと交換するから今持ってるの渡してくれる?」

 

 忘れてたわ~というように話題を変更してくるが、セキュリティカードの交換は確かに大事だったので、シンジと揃ってジト目で手持ちのセキュリティカードをミサトさんに渡す。

 

 「あら~、2人ともどうしたのそんなお姉さんのこと見ちゃって!ひょっとして好きになっちゃった?」

 

 やっぱミサトさんの心臓は毛ぇ生えてるよなぁ!

 

 「あ、そういえばレイのセキュリティカードもシンジ君達から渡して欲しいって頼まれてたんだったわ」

 

 鞄からもう一枚セキュリティカードを取り出すとシンジに手渡した。

 

 「明日の朝、レイに渡しに行ってあげて」

 「綾波に僕たちからですか?」

 

 ミサトさんセキュリティカードの渡し方ガバすぎん?

 NERV大丈夫か??

 展開を知っていたとはいえシンジが受け取ったセキュリティカードを見て思わず目が点になる俺。

 

 「んー、リツコさんが『セキュリティカード渡すの忘れちゃった』なんていって俺らに手渡し頼むなんてミサトさんじゃあるまいし本当は忘れたわけじゃないんですよね。俺らに同じパイロットの綾波さんと交流しろって事です?」

 「『ミサトさんじゃあるまいし』って何よ!まぁ、確かに意外とは思ったけどそうね。そういう事じゃないかしら」

 「分かりました。では綾波レイが持っている期限切れのセキュリティカードと交換で新しいセキュリティカードを交付。その後は同じエヴァパイロットとして交流しNERV本部へ向かう。綾波レイの旧セキュリティカードは赤木博士……いや、赤木博士にそんな仕事させているわけないですよね。どこに持っていけば良いですか」

 「わ、私で良いわよ……カイ君、別にそんな言葉使いしなくてもいいのよ?」

 「お、確かに。ついついぼんやりしてたっす」

 

 元社会人としては少し不思議エヴァ話じゃなくて普通の仕事っぽい話だとつい。

 てへぺろーって舌出してみるとミサトさんに呆れた顔をされてしまった。

 

 「あ、そういえば冬月副指令から、レイも家に引っ越させるように言われてたんだったわ。ついでに伝えておいて~」

 「え?綾波も僕たちと一緒に住むんですか?」

 

 ミサトさんからまさかの爆弾発言がありシンジが反応する。

 若干嬉しそうなのはレイだからなのか、女の子だからなのか気になるところ。

 デバガメしたいわけじゃない……いやしたい、だってファンだし、主人公たちの恋愛模様気になるし!

 シンジレイなの!?シンジアスカなの!?ミサトシンジなの!?まさかのマリシンジなのー!?

 俺はオネショタも美味しくいただけるんで後ろ2つもお勧めしてるぜ。

 おっといかんいかん。

 つい目をぐるぐるさせながら妄想の世界に旅立ってしまった。

 

 「14歳の男女が同棲だなんて間違えがあったらどうするんですか!主にシンジに!」

 「なんで僕だけなんだよ!それを言ったらカイもだろ」

 「ざんねーん、俺はロリコンじゃないんです~」

 

 現実に復帰しつつシンジを揶揄うと速攻反撃してくる。

 元気があるシンジ君は大変宜しいですね。

 

 「カイ君も同い年でしょ。それに同棲じゃなくて同居といいなさい」

 

 「ロリコン」と言った部分をミサトさんに指摘されてしまった。

 レイって魂を肉体に入れた年齢だけで計算するなら一桁歳じゃね?

 魂年齢だと計り知れない年齢になりそうだけど。

 

 なにはともあれレイとの会話頑張るかぁ~……いや無理だ。

 シンジに頑張ってもらおっと。

 

 ■■■

 

 朝もはよからレイの住んでるマンションに突撃です。

 

 「ブザー鳴らねぇなぁ」

 「うん、壊れてるのかな」

 

 シンジが「綾波」と表札の掛けられた部屋の呼び鈴を押すがスカスカとしていて反応が無い。

 痺れを切らしたシンジがドアノブを回すと、鍵は掛けられていなく扉がガチャリと開いた。

 

 「ちょ!シンジ君!大胆!!」

 「え!?ち、ちがっ!居ないのかなって!!」

 

 思わず声を上げるとシンジは慌てて扉を閉める。

 いや、いきなり開けんなや。

 ほんとびびるわ。

 シンジは基本繊細だと思うけど大胆なとこもあるよな~。

 

 「鍵もかかってないし家にいるっしょ。風呂とかその他かもしれないしちょっと待ってみようぜ」

 「う、うん。そうだね」

 

 正解は命の洗濯です。

 華麗にシンジとレイのイベントスキップを決めました!

 けどあれ別に好感度上がるようなイベントじゃなさそうだしいいよね?

 むしろレイが貰ったゲンドウパパの眼鏡を勝手に触ったりしてレイの不況を買う場面だよ。

 

 下がってから上げるのが重要という説もある事は認めよう。

 だがしかし不法侵入は俺が気持ち的に嫌だしシンジにもさせたくない。

 結論!スキップ!

 

 シンジと2人で玄関の前に座って駄弁るという迷惑極まりない中二男子ムーブをかましていると、玄関の扉が開き、制服姿のレイが出てきた。

 レイはそのまま俺達を一瞥することもなくマンションを出ていこうとする。

 うん、知ってた。

 

 「あ、綾波待って!えっと、カード頼まれて……ってちょっと待ってよ!」

 

 シンジは声をかけるも無視されてしまい、マンションの階段を降りようとするレイを慌てて追いかけていく。

 

 「止まりなさい綾波レイ。赤木博士の指示で来ました」

 

 俺が座ったままリツコさんの「命令」で来たことを宣言すると、綾波が動きを止める。

 よっしゃ正解!

 

 「え?ど、どういこと??」

 

 シンジくーんちょい待ってーな。

 

 「綾波レイのセキュリティカードは有効期限を超過しています。碇シンジへ現在所有しているセキュリティカードを提出し、新しいセキュリティカードを受け取りなさい」

 

 俺の言葉を聞いたレイは、鞄の中からセキュリティカードを取り出し、シンジの前に移動した。

 

 「あ、ちょっとまって!今出すから」

 

 シンジは慌てて自分の鞄にしまっていたレイのセキュリティカードを取り出すと、古いセキュリティカードと交換で手渡す。

 そしてまたレイは何も言わずにマンションを出ていこうとし、シンジがまた慌てて声をかける。

 

 「だからちょっと待ってってば!」

 

 まぁ、そうなりますよねー。

 

 「綾波レイ、葛城一尉からパイロットは交流をしながら本部へ向かうように指示がありました。単独で先行しないでください」

 「わかったわ」

 

 俺が再び声をかけると、綾波レイは呟くように答え、俺達を待つように足を止めた。

 これ、めっちゃ疲れんすけど。 

 

 ■■■

 

 根が面倒くさがり屋の俺、速攻会話戦線から離脱する。

 シンジが一生懸命話しかけてるいるが、レイの反応は「そう」「わからないわ」「……」の3パターンだ。

 最後の「……」は無視というより「わからない」という結論を出すまで思考時間なんだろうけど、シンジは気にしないで次の話題を振っている。

 ん-、これは気になる女の子というより、ゲンドウパパと仲良さげに話してたから気になってる感じかなぁ。

 俺だったら女の子からこんな塩対応受けたら速攻萎えそう。

 いや、レイ自身は塩対応してるっていうより、感情表現の方法が分からなかったり、その出自、環境も原因なんだろうけどね。

 

 正直な話、俺もレイとは仲良くなっておきたいけど、現状のレイとは事務的な対応しか出来る自信がありません!

 ひぃん!

 なので、シンちゃんがレイの感情を育ててくれたら少しずつお近づきになりたい大作戦!

 

 しっかしこのエスカレーター長すぎじゃね?

 折れそうで怖いし掃除も大変そう。

 俺はシンジの方を見向きもしないレイと、めげずに話しかけるシンジをぼんやり眺めていたが、会話に加わる気もなかったので、エスカレーターの移動によりゆっくりと移り変わる景色を監視する作業に専念することにした。

 

 「あんな奴、父親ってだけで信じられるものか!」

 

 突然シンジが怒ったように叫んだことにより、俺は意識を2人に向ける。

 今までシンジの方を見向きもしなかったレイが振り返ってシンジを見上げていた。

 振り返ったレイはこれまでのような無表情ではなく、眉はつり上がり、大きく開かれた瞳からは怒りの感情が溢れていた。

 そんなレイに気圧されるようにシンジは顔を背けると、悔しそうに言葉を続けた。

 

 「僕は……綾波みたいに、父さんから笑いかけてもらったことなんてないんだ……」

 

 絞りだすような吐き出されたシンジの言葉を聞いたレイは、一瞬驚いたような表情を浮かべる。

 

 「そう……私にはわからないわ」

 

 レイはそれだけ呟くと、また正面を向いた後、続けて一言だけ呟いた。

 

 「私は身代わりだから」

 「なんだよそれ……わけわかんないよ。ごめん、僕……先に行く」

 「お、おう」

 

 シンジはエスカレーターを駆け降りるように俺達を置いていってしまった。

 エスカレーターは止まって手すりを持たないといけないんだぞー。

 うーん、レイと2人。

 気まずいんだが。

 

 しばらくの沈黙の後、レイが振り返ると、シンジがいなくなって空いてしまった俺との距離を詰めるように、エスカレーターを一段登ってくる。

 

 「ファーストはエヴァに乗る事が、戦って死ぬ事が恐いと言っていたわ。貴方も恐いの?」

 

 んー。

 なんで俺話しかけられてんだ?

 

 「自分から話しかけてくれるんだ」

 「貴方から、『葛城一尉からパイロットは交流をしながら本部へ向かうように指示がありました』と言われたわ」

 

 はぁん。

 なるほど。

 これは命令だから実行してるって事ね。

 さっきまではシンジがずっと喋ってたからレイは応答するだけで良かったけど、今は俺が何も言わないから命令を実行するためにはレイが自分から喋るしか無いわけだ。

 

 「そうだな、俺も死ぬのは恐いねぇ」

 

 俺は笑顔で答える。

 そんな俺を見上げるレイは相変わらずの無表情だ。

 

 「貴方はファーストの代わりにエヴァのフィードバックを受けていると聞いたわ」

 「そうだな」

 「それなのにどうしてエヴァに乗るの」

 

 俺の中では決まりきった事を聞かれて思わず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまう。

 まぁ、そりゃそうか。

 周りから見たらわっかんねぇよな。

 

 「死ぬのも恐いけどなー……シンジが俺より先に死ぬほうが、シンジが居ないこの世界で生きていくほうがもっと恐い」

 「そう」

 

 話はそれで終わりかなと思ったんだけど、今度は学校の話とか昨日の夕食とかの話題を振ってきた。

 ちょっと待て。

 これってさっきシンジにされてた質問をそのまま俺にしてきてるだけだよな?

 

 「あ、忘れてた」

 「何?」

 「今、俺とシンジとミサトさんと冬月さんで一緒に暮らしてるんだけど、綾波さんの事も誘うように言われてたんだった」

 「それは命令なの?」

 

 だよなぁ。

 実はあの家の扱いが良く分かってないんだよね。

 

 「ん-、すまん。命令かは分からん」

 「そう、なら私もわからないわ」

 

 迷いなく「わからない」と答えるレイ。

 この「わからない」はプラスもマイナスも無く「わからない」って事でいいんかな。

 

 「その『わからない』は俺達と一緒に暮らすのが嫌とかじゃなくて『どうしたらいいか』わからないってことか?」

 「そう」

 

 簡潔に答えるレイ。

 うーん、まぁ確認するのが一番か。

 

 「それじゃミサトさんか冬月さんに命令か俺から聞いておくよ」

 「わかったわ」

 

 ……しんどぉぉぉぉぉぉぉ

 この無表情一言会話レイさんマジ疲れるっす。

 いや、シンジはよく話しかけ続けてたな。

 やっぱこの世界はシンジレイなのくあぁー!?

 

 この際誰でもいいから、好きな子とくっついていちゃいちゃしてるシンジ君をニヤニヤ眺めながら茶ぁでもしたいぜ。

 

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