蕃神   作:名無しの海

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3ー3 鳴る神

 ここまで順調に現実逃避してきたけどさ。

 次の使徒ってやっぱあれだよね?

 青い正八面体。

 ミョウバン。

 そう、みんな大好きラミエルさん!

 俺も大好きですとも。

 

 初号機が出撃した即加粒子砲で狙撃。

 あの初号機さんを出撃即撤退に追い込んでシンジ君のメンタルをぽきぽきに折ってくれた使徒さん!

 

 いやー、俺なんて遭遇前に心折れてますよ!

 さすがラミエル先生!

 イヨッ!お会いしたくない!

 

 ラミエル戦自体は初戦出撃即撤退からのヤシマ作戦で撃破とシャンシャンで進むのだろうさ。

 俺がびびってるのは初戦で受けるフィードバックなわけですよ。

 テレビ版なら1発、新劇なら2発でしょ?

 あー、病むわ。

 

 TV版は尺の関係かスムーズに回収してたけど、新劇では発令所がまごついてる印象が強いんだわ。

 エントリープラグ射出案はパイロット不在になったらエヴァのA.T.フィールドが消失ということで却下されてたけど、もし許可されたとしてもさ、射出してたらその瞬間エントリープラグもエヴァもラミエルの加粒子砲で蒸発したんじゃね?

 というかどちらにしろエントリープラグの強制射出の選択肢なんて無かったんだから、発令所で茶番繰り広げてないでさっさと爆砕ボルト点火して区画ごと落としてあげてほしいぜって何度見ても思ってた。

 ちなみに何回も見てたのはラミエルが好きだからだ!

 特に新劇で出てきたラミエルがいきなり変形した時の衝撃と興奮は……いや、新劇ルートだと2発が……駄目だ……考えるとお腹痛くなる……考えたくねぇ……。

 

 近接強化としてシンクロ率の高いシンジ向けのマゴロク・E・ソード、シンクロ率が低い俺向けのチェーンソーが完成したばっかなんすけど次は完全遠隔戦なんですよね本当にすみませんでした!

 けどどうせ戦自研から陽電子砲借りるからいいでしょ!!

 

 「はぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ」

 

 思わず頭を抱えながら、深い溜息をついてしまう。

 今更なんでこんな事を考えているかというと、大絶賛ラミエルが進行中のため、俺とシンジは待機中なのだ。

 エヴァ初号機の中で待機中なう。

 そう、既に逃げ場無しなのだ。

 

 「だ、大丈夫?」

 「あー、だいじょばない……いや、大丈夫だ」

 

 シンジが心配そうに問いかけてくるから思わず本音がぽろりするが、なんとか取り繕う。

 俺のメンタルはヤダヤダ言いながら絶賛心の中で駄々こねまくってる。

 必死に「痛いのは数秒!痛いのは数秒!運が良ければ死ねる!運が良ければ気絶できる!」と自分に言い聞かせてる。

 

 『シンジ君、カイ君、出撃命令が出たわ。準備は良い?』

 「いつでも行けます」

 「無理です。あ、嘘です、一思いにお願いします」

 

 ミサトさんからの通信へのシンジの素直な返事とは対照的に俺はやけっぱっちだ。

 

 『ちょっと、カイ君しっかりしなさい。リクエストしたチェーンソーが活躍出来なさそうで拗ねてるの?』

 

 いいえ、ラミエルさんの加粒子砲を思うと憂鬱で吐きそうなだけっす。

 そんな俺の心情は、使徒が飛行型のため新しい玩具を試せなくて拗ねてると勘違いされたらしい。

 

 『第7使徒も前回の第6使徒と同じく浮遊しながら移動をしているわ。まずは兵装ビルで目くらましをするから、エヴァは使徒に接近し、A.T.フィールドを中和しつつパレットライフルで攻撃。中和を確認したら兵装ビルもフル火力で支援をするわ』

 「はい、わかりました」

 

 うぉーんシンジ様が眩しい。

 

 『カイ君、頑張ったらあとでリツコがご褒美くれるっていってたわよ!』

 「ぶは!まじっすかうぇいっす頑張りまっす!」

 

 リツコさんを餌に俺のやる気をださせようとするミサトさん。

 ミサトさんが映し出されたモニターから『ちょっと何言ってるのよミサト!』とか『不潔です!』とかそんな声が聞こえてきてちょっと笑えてしまった。

 まったく、ミサトさんは俺をなんだと思ってるんだ。

 

 うん、まぁ若干緊張は解れた……かなぁ。

 どうせ逃げ場は無いし今更覚悟も何もないんだけどね。

 あとはその時を待つだけだ。

 

 『発進準備よろし!』

 

 ああ、眼鏡オペ君の声が聞こえる。

 とうとうか。

 

 「なぁ、シンジ」

 「ん、どうしたの?」

 「頑張れよ」

 『発進!』

 

 俺にとっては死刑宣告にも感じるその言葉と共に、カタパルトが射出される。

 『高エネルギー反応』とか『避けて』とか、そんな声が聞こえたような気がした。

 

 目の前に広がるのは青い空と白い雲。

 空に浮かぶ、青く美しい正八面体。

 「神の雷霆」の意を持つ天使の名で呼ばれた使徒。

 お前が「神の慈悲」ならどうか……どうかその一撃で俺を殺してくれ。

 

 そして俺の意識は眩い光の本流と、ソレが齎す激しい痛みに飲み込まれた。

 

 ■■■

 

 『がぁあああああああああああああああああああああ!!』

 

 正八面体状の第7使徒がその頂点から放つ加粒子砲の直撃を受け、発令所内には淡島カイの悲鳴と初号機の異常を示す警告音が鳴り響いた。

 

 「作戦中止!エヴァ初号機を緊急回収。急いで!」

 「駄目です!カタパルト融解。初号機回収できません!」

 

 日向マコトは葛城ミサトの指示を受けてカタパルトの回収を試みるが、初号機を直撃する加粒子砲の余波により、カタパルトが融解しており、コンソールから出した指示はエラーを返していた。

 

 「シンクロ率最小まで落として」

 「はい、先輩」

 「目標内部のエネルギー反応、増大していきます!」

 

 赤木リツコはオペレーターの伊吹マヤに駆け寄り、フィードバックを軽減するための措置を指示するが、第7使徒の放つ加粒子砲は衰えるどころか、光の本流はその勢いを増していく。

 その余波を受け、直撃を受けていない周囲のビル群も融解していった。

 

 『ミサトさん!早くしてください、このままじゃカイが!!せめてカタパルトから外せないんですか!?これじゃ動けない!!』

 「初号機のリフトオフ出来そうなの?」

 「駄目です。カタパルト融解によりリフトオフも出来ません!」

 「シンクロ率を最小までカットしてるから初号機は動けないわよ。今シンクロ率を戻したらカイ君が耐えられないわ」

 「っく……仕方ないか……」

 

 カタパルトによる回収もリフトオフも不可能。

 また加粒子砲のフィードバックからパイロットを守るためにシンクロ率を制限しているためパイロットは初号機を動かす事も出来ない。

 手詰まりとなった葛城ミサトは爆砕ボルトを点火することにより、区画ごと地下に落とすことで初号機を回収する事を決断する。

 区画を支えている爆砕ボルトに点火することでこれを破壊、都市の一区画を地下へと落とすこの手法は復旧にも莫大な費用がかかるため、ここまで追い詰められなければ決断できない手段だった。

 

 『カイ!カイ!!嫌だ、嫌だ!!動け、動けよ!動いてよ……また失くしたくない……僕が……僕が守るんだ!!』

 『グゥオオオオオオオオオオオオォォォン!!』

 

 葛城ミサトが爆砕ボルト点火の指示を出そうとした時、碇シンジの叫び声に答えるように、突如エヴァンゲリオン初号機が獣のような咆哮を上げる

 同時に新たに展開されたA.T.フィールドが、エヴァンゲリオン初号機に照射され続けていた第7使徒の加粒子砲をせき止めた。

 

 「そんな……シンクロ率が上昇していきます。制御できません!」

 「目標内部のエネルギー反応、なおも増大中」

 

 初号機は身体を捩り背面装甲に接続したカタパルトを強引に引き剥がしていく。

 第7使徒もまた、初号機のA.T.フィールドを打ち破ろうと、さらに加粒子砲の出力を増していく。

 カタパルトから解放された初号機は、カタパルトの床面部分に膝を付くと、両手で拳を作りカタパルトの床面に勢いよく振り下ろし、カタパルトを破壊し地下へ落下していく。

 

 「初号機カタパルト破壊!射出口へ落下していきます」

 「第7使徒、攻撃を中止」

 

 落下する初号機は空中でゆっくりと態勢を立て直し、地面へ激突する寸前にA.T.フィールドを展開し、落下の威力を殺すとふんわりと四つん這いの態勢で地面に着地し、その動きを止めた。

 

 「初号機、完全に停止しました」

 「救護班急いで!パイロットを回収次第初号機は救急ケイジへ搬送」

 「プラグ内のL.C.L冷却、パイロットの状態は?」

 

 葛城ミサトと赤木リツコがパイロット救助のための指示を出していく。

 

 「フォースチルドレン、心停止!」

 「プラグの生命維持機能を最大にして、心臓マッサージ!シンジ君は!?」

 「サードチルドレン意識不明。高温のL.C.Lに晒されたことにより各所に火傷が発生していますが、その他の異常はありません」

 「フォース心停止回復しません!心臓マッサージ継続します」

 

 1分回に30回の胸骨圧迫による心肺蘇生を実施するも、モニターに映し出された心電図には心音による波形が計測されなかったため、心臓マッサージを再開する。

 

 「救護班到着しました!」

 「フォースチルドレン心停止回復」

 

 再度の心臓マッサージの結果、淡島カイの心停止回復。

 その報告を受け、発令所内のオペレーターたちは安堵の表情を浮かべるが、赤木リツコは予断を許さない状況に対応していくために指示を続けていく。

 

 「プラグ排出、L.C.L緊急排水」

 「排水が終ったらすぐにハッチを開けて!救護班はハッチが開いたらパイロットの救護措置!」

 

 赤木リツコが発令所内のオペレーターに指示を行う傍らで、葛城ミサトは現地に到着した救護班への指示を出していく。

 意識を失ったままの碇シンジと淡島カイは救護班によりプラグスーツを脱がされ、救護ベットに乗せられると、それぞれ救急処置室へ運び込まれていった。

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