蕃神   作:名無しの海

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3-幕間或いは舞台裏2 淡島カイという道具 side Kai

 混乱

 

 恐怖

 

 怒り

 

 嘆き

 

 悲しみ

 

 絶望

 

 喪失感が生み出す飢餓

 

 長い時の果てに摩耗した魂

 

 長い時の果てに変質した心

 

 郷愁

 

 帰りたい

 

 ………………………………………………………………………………………………どこへ?

 

 帰らないと

 

 ………………………………………………………………………………………………どこに?

 

 苦しい

 

 苦しい

 

 辛い

 

 どうして

 

 どうしてこんな事に

 

 父さん……母さん……

 

 

 ■■■

 

 

 どろりと渦巻く感情が緩やかに停止する。

 停止した感情が水面のように揺らめくと一粒の泥のような球体が落ちた。

 ソレは緩やかにヒトの形に姿を変える。

 

 「俺は……誰だ……俺は……自分が何か名乗ることは……出来るか?」

 

 泥の人形はごぼごぼと泡立つ口を動かし、自らに問う。

 

 「俺の名前は■■■……」

 

 ■■■と不明瞭な音が響く。

 泥人形はしばらくの間、静止したのち首を傾げた。

 

 「俺の、名前は、■■■■■■■だ……」

 

 泥人形は気を取り直して、ゆっくりと喋ってみるが■■■■■■■と不明瞭な音が響いた。

 

 「あれ?おーい……せっかく中二病患者みたいに、お気になゲームの真似っこしてみたんだけど?え?何これ羞恥プレイ?苛め?カッコ悪いよ??」

 

 泥人形は上を、自身の上方で静止したままの巨大な球体を見上げるが、ソレはすでに静止しており反応は無い。

 

 「んー……俺は誰だっけか……おっもいだっせ~出来る!おれ~なら~でき~る~うた~っておど~れ~」

 

 泥人形は突如歌い、踊りだした。

 やがて体力が尽きたのか、膝に手をつき息切れしたような動作をする。

 

 「ひー、久しぶりに歌うと喉がきっちぃ……イヤ、今は喉は無いか……気力だ気力……あ、そっか■■■はこの世界存在しないから名乗れないのか。はぁ~、めんどいルールだな」

 

 泥人形は漸く辿り着いた答えに項垂れた。

 

 「俺の名前は淡島(カイ)。偽物の世界に相応しい、出来損ないの名前だよ……」

 

 ソレは自嘲するように呟いた。

 

 

 ■■■

 

 

 「俺の名前は淡島(カイ)。偽物の世界に相応しい、出来損ないの名前だよ……」

 

 今の俺のセリフ、我ながら中二病っぽくね?

 そんな事を思ってると、黒い泥で出来た身体が淡い光とともに少年の姿に変化していく。

 

 「ちょ!まって!これ裸族!!」

 

 泥成分オンリーの身体から肌色成分マシマシの身体に変化しようとしていることに気が付き、慌てて叫んでみたものの変化は止まってくれるはずもなくあっという間に少年(裸族)となってしまった。

 うー……俺は裸族じゃないんだゾ!

 これは大変お恥ずかしい。

 てか、ちっちゃい?

 そっと下腹部よりちょいしたのモノをチラ見。

 ん、んーーー!

 

 鏡ヨ鏡!!!

 俺は姿見を作り出すとそこに映し出される自分の姿をチェックする。

 

 ちょい癖ッ毛

 幼さの残る顔立ち

 

 んー……そこそこ筋肉ついてる?

 運動部??

 

 そして……んん!

 

 いや、10代前半ぐらい?

 うん、まぁこんぐらいでしょ!

 今大事なのはソコに着目することじゃない!

 

 俺が裸族では無いという証明の為に文明の衣を纏わねばならぬ。

 急いで服をイメージする。

 イメージするのは最強の堕落!

 

 すぐに真っ裸だった俺は、いつも家で来ていたような着古した白い半袖Tシャツにだぼだぼのトランクスになる。

 う~ん、快適。

 ちなみにTシャツは表に「布団から出たら負け」と筆文字ででかでかと書いてあり、背中には「働きたくないでござる」と同じくでかでかと筆文字で書かれている。

 

 「とりあえず屑クッションにえびす様!」

 

 俺が叫びながらイメージをすると、人をダメにすることで有名な巨大なビーズクッションと、えびす様が描かれた缶ビールが積み上がった。

 

 「ん~!愛しの~えびす様~」

 

 缶を一本手に取り口付けると冷え冷えの冷えでまさに飲み頃って感じ。

 俺は急いでプルタブを押し上げると、一気に喉に流し込んだ。

 

 「かぁーーーー!生きてるぅぅぅぅぅうううう!この為に生きてるよぉぉおおおおお」

 

 これは叫んじまうのも仕方ないってものよ。

 ご近所迷惑も関係ない空間なのでやりたい放題である。

 

 「あ、ところで俺が起きたって事はもう本編始まってる?」

 

 手にリモコンを作りボタンを押すと、暗闇の中に巨大なモニターが浮かびあがる。

 

 「ん-……けど途中寝ぼけて何回か起きた気がするんだよな……夢か?……ガバった?」

 

 どうだっけかなと首を傾げてると、モニターは夜空に浮かぶ青い正八面体を映し出した。

 

 「うっそ!ラミエルさんじゃーん!!!え?リアタイ?マジ?ていうか待って、俺どうなってるん??」

 

 屑クッションに腰掛けると、良い感じで身体が沈む。

 良き。

 俺が屑クッションに腰掛けると、傍にローテーブルが現れ、漫画本が積み上がる。

 右手にビールを持ったまま、左手で一冊手に取りパラパラと捲った。

 

 「え?俺……思い出してる??ガバガバのガバ?」

 「ん~~~~……トラックに跳ねられた影響でちょっと記憶が読み込まれた感じか?」

 「ちょ!ナニコレ、シンジ君と幼馴染ってマジ?ビールが進むわ~」

 「え?パイロット???馬鹿なの??」

 「え、フィードバック全受けってギャグ?俺そんなの絶対嫌なんだけど。コイツ正気?」

 「リツコさん……わかる、俺タイプ……エロイよな。ゲンドウパパのお手付きじゃないならお付き合いお願いしたいぜ」

 

 時間も無さそうだし概要が理解出来ればいいっしょと、パラパラとページを捲り、白と黒で絵が描かれた漫画本を読み進める。

 

 「んー……あー……なるほど」

 

 俺は腕を組み思いを巡らせる。

 これ、ラミエルさんに殺されてるな~あはは~。

 身体は何とかなったみたいだけど中身がおじゃんでこのザマコースでしょ。

 まぁ、淡島カイの身体もう問題無さそうだな。

 後はいつ戻るかって所か……。

 

 「えー、けどフィードバックやだよー、愛しのラミエルさんの雄姿だってみたいし……」

 

 とりあえず新しいビールを開ける。

 プルタブの音が心地良い。

 どっしよっかな~と思いつつビールをちびちびしつつしばし思案の後、決断する。

 

 「ラミエル戦はここで観戦します!ヨシッ!」

 

 ここに淡島(カイ)はラミエルさんの雄姿を見届ける事を宣言する!

 

 「では堕落のお供のポテチよここにあれ!」

 

 そう叫ぶと、ローテーブルの上にガサガサと音立てながらポテチの袋が積み上がる。

 

 「んっふっふ。ビールとポテチさいきょー」

 

 俺はさっそくポテチ袋の山から一袋引張りだしオープンすると、一枚摘まんで口に運び、咀嚼する。

 すかさずビールをグイっと呷りぃぃぃぃぃぃいいい至福の瞬間を嚙みしめた。

 

 「んんんんんんん……もーずっと全部……全部無かったことにしてココに引きこもってたいー」

 

 やっば、欲望口走っちゃった。

 落ち着け俺!

 ここはS(少し)F(不思議)俺空間。

 誰にも聞かれてないはずだ!

 うむ、モニターだ。

 モニターに注目しよう。

 

 レイとシンジ君がいちゃいちゃ……じゃなくてラミエル戦前の会話だなコレ。

 

 『さようなら』

 

 きゃー!

 レイさーん!!!

 好きー!

 抱いてー!!!

 ここで茫然と立ってるシンジ君も良いよな~。

 やっぱエヴァ好きだわ。

 体験とかマジ勘弁だけどな!!

 

 お、戦闘始まるぞー!

 いけいけいラミエル!

 お前の圧倒的実力を見せつけてやれ~!

 

 ミサトの指示で無人機が攻撃って事は新劇だな!

 これは圧倒的カッコヨラミエルさ……あれ?

 変形しないの??

 う、うむ。

 まぁそういう事もあるよね。

 ラミエルさんは変形しなくても圧倒的。

 オレ、シッテル。

 

 そうそう、ポジトロンライフルのチャージ中に初号機に気が付くラミエルさん素敵ー!

 やはりイケメンは気が利く。

 いけ!

 ぶっぱなせ!!!

 俺もノリノリでビールをガンガン呷っていく。

 

 「っは?」

 

 そんな俺の気分を台無しにするように初号機のポジトロンライフルがラミエルさんに突き刺さった。

 マテや、おかしくね?

 

 「いや、『パターン青消滅』じゃねえよ……『目標、完全に停止しています』じゃねーだろ……」

 

 思わず手にした缶ビールを握り潰してしまう。

 缶が凹み、中から溢れだした琥珀色の液体が俺の手を濡らしていく。

 なんであのラミエルさんが、こんな一撃で倒されねーといけねーんだよ。

 

 沸々と不満が、怒りの感情が湧き上がり、俺の理性を磨り潰していく。

 その時、本当だったら初撃は外れるはずのポジトロンライフルが命中した理由に辿り着いた。

 

 「あ、そーいう。淡島カイね。シンクロ率の水増し……なるほどなー、台無しだわー」

 

 うん、本当は存在しないはずの淡島カイが悪かったのか。

 それなら仕方ない。

 そう、仕方ないよな。

 本当は存在しないはずの俺が、ラミエルさんのお手伝いしても仕方ないよな?

 

 それがフェアってもんだろ。

 俺は淡島(カイ)用に存在をスケールダウンさせた制御装置を取り出す。

 

 「右手にビール、左手に制御装置。二つが合わさって最強に見えるな」

 

 そういいつつビールを一口。

 

 「やるか!」

 

 俺は、リリン共がロンギヌスの槍と呼ぶ制御装置を起動する。

 まずはラミエルさんの壊れたコアの修復。

 あと新劇版のラミエルさんっぽくなるよう性能を修正。

 

 うん、いい感じ。

 仕上げはコアが破壊されたことにより、コアに留まれなくなったラミエルさんの魂を回収し、コアへ封入。

 完璧な仕事だ。

 

 を、ラミエルさんからは警戒と疑問の意思を感るぞ。

 そりゃそっか。

 しかし憧れのラミエルさんと意思疎通とかドキドキしちゃうな。

 

 「初めまして。俺は、君のキャリアとは別のキャリアの設計者だ。君たちは先にこの星に着床し、新たに生まれ直した。それなのに、与えられた知恵の実だけでは満足できず、生命の実も欲した恥知らずがいたんだ。ソイツが君たちのキャリアを追い、この星に着床した」

 

 俺は言葉を区切る。

 恥知らずとは勿論、リリスの事だ。

 

 「そうだ、俺たちは故郷の滅びから逃れ、新たに生きる星を探して旅に出た。数少ない、残り僅かな資源を託され、送り出して貰えた」

 

 そうそう、涙の別れ……ん?

 あ……これ、あかん。

 言葉を紡ぐ中で■■■に引きずられて、俺の中に怒りの感情が溢れてくる。

 

 「それを、私欲のために奪おうと、君たちを圧し潰し、君たちからこの星を奪い、我が物顔で支配する虫けら共を許せるわけないだろ!!」

 

 怒りに呑まれた俺は最後にはそう叫んでいた。

 頭の片隅で理性が、ナニかが叫んでいるがもう止まれない。

 

 「とは言え、俺も制限が多くてそこまで干渉できるわけじゃない」

 

 ラミエルさんは理解と共感の意思を示すてくれた。

 

 「良し、それじゃ始めよう」

 

 修復が終わり、ラミエルさんがその躯体を再起動させる。

 その形状を、絶えず動き、変形する複数の正方形が組み合わさったような姿に変化させると、その中心部から初号機に向けて加粒子砲を放つ。

 加粒子砲は二子山を大きく削り取り、リリスの模造品を露わにする。

 

 「よっしゃいい感じゃね。ん?羽虫が鬱陶しいから梅雨払い?」

 

 俺の言葉にラミエルさんが、無数の針で形成された雲丹のような球形に変化させて針の一つ一つから光線を発射し、起動前の要塞システムすら破壊していく。

 

 「を、索敵能力凄いじゃん。ん-……今のでリリスモドキの防御範囲わかったっしょ?あそこの奥にある奴……そうそう、そこ破壊しようぜ」

 

 ここでミサトやリツコが退場するルート。

 それはそれで面白そうじゃん。

 そんな俺にラミエルさんから否定の意思が伝わって来た。

 

 「ん?あそこは狙えない?よっしゃ、俺に任せとけ。君の性能調整するわ」

 

 了承の意を返してきたラミエルさんは、その形状を変化させてリリスモドキのA.T.フィールドに阻まれない上空に狙いをつける。

 その間に制御装置を用いてラミエルさんに干渉、その性能を変化させる。

 

 ん?

 待て……理性が息を吹き返してきたか?

 落ち着けそう?

 いや、思ったより暴走してないからこれはこれでいいんじゃねって感じか。

 とりあえず新しく開けた恵比寿様を一気飲み。

 あーしゃんとしてきた。

 

 「あ、そうそう。君は光線を撃ったら、すぐに紫のリリスモドキを全力で潰してくれ。たぶんねー、奥にある奴狙えば盾もった奴がそっち行くんだよ。そしたら丸見えになった紫のリリスモドキを潰して君の勝利だ」

 

 ラミエルさんがリリスモドキ共の上に向かって無数の光線を放ち、いい感じの高度まで到達すると、その軌道折れ曲がり、仮設発令所に流星雨のように降り注ぐ。

 こ、これはカッケェ!!

 さすがラミエルさん!

 

 まぁ、予想通り盾持ちが仮設発令所を守ってる。

 つまり紫のリリスモドキは丸見えの丸裸!

 

 「よっしゃ今だぶっぱなせ!!」

 

 ラミエルさんすでに全力攻撃に構えに……ってあれ俺の制御装置の形してね?

 え?強そうだから攻撃イメージに良いって?

 ア……ハイ……ナンデモナイデス。

 

 そして放たれる最大火力の加粒子砲。

 青い槍から放たれた光の本流が紫のリリスモドキを飲み込もうとする。

 

 「よっしゃー!びくとりぃ~!!!」

 

 俺は歓声を挙げると新しいビールをオープンし、一気に煽る。

 

 「くあぁぁぁーってあれ?盾持ち間に合ってんのかよ!しかも盾2枚ってまたどうして……いや、今の君ならいける!いけ!侵略者共を吹っ飛ばせ!!」

 

 俺はすっかり応援モードに移行しペンライトでも振る気分で制御装置をぶんぶん振り回す。

 

 「盾1枚破壊……2枚目も破壊!いける!気張れ!!」

 

 俺の言葉にテンション上がったのか、ラミエルさんがさらに出力を上げようとした時、紫のリリスモドキのポジトロンライフルの充電が終わってしまったのがわかった。

 

 もうテンションがた落ち。

 ぽっきり折れたよね。

 はい負け確、クソゲー。

 

 見るのが辛い。

 リリスモドキが放ったポジトロンライフルの砲撃がラミエルさんに突き刺さって……ラミエルさんのコアを砕いた。

 ……殺された。

 

 「はぁ……」

 

 俺はため息をつくと、この空間に生み出したものすべてを消す。

 

 「食うか……」

 

 このままラミエルさんの器をリリン共に取られて生命の実を回収されるのも癪だしな。

 目の前には魂の消えたラミエルさんの器が浮かび上がる。

 サイズを調整したせいで、串にささった飴細工みたいに見える。

 俺は両手を合わせて目を瞑る。

 

 「頂きます……」

 

 青い飴細工のような正八面体を丸ごと口に含み、咀嚼する。

 残った串も3口で平らげた。

 咀嚼が終り、俺は再び両手を合わせて目を瞑る。

 

 「ご馳走様です」

 

 それから俺は、目を瞑って気持ちを落ち着ける。

 俺のやるべき事を考える。

 

 今は……淡島(カイ)から淡島カイに戻ろう。

 淡島(カイ)のままだと怒りと憎しみに呑まれそうだし、演技は得意じゃないから気が付かれそう。

 あとフィードバックは絶対ヤダ。

 

 こんな偽物の世界がどれだけ壊れようと俺には関係ない。

 本来は居るはずの無い俺が存在している時点でこの世界は狂ってる。

 けど、こんな狂った、偽物の世界でも、俺には為さなければいけない事がある。

 それだけを希望に存在を続けてきた。

 

 エヴァの世界は何れ補完計画の発動でリリン共は原初の姿に戻る。

 魂の戻る先がリリスでも初号機でもどっちでもいい。

 黒い月の生命が一つになれば、それで目的は果たしたようなものだ。

 シンジが……他の誰かがソレ阻むようなら……殺す。

 

 よし!

 淡島(カイ)爆睡します!

 俺は宙に浮かぶハンモックを生み出すと、乗り込み、横になる。

 ん-、けどバルディエル戦はリアタイしたいなー……。

 観戦モードみたいのあるといいのにさすがにそんな便利な事ないよなー……。

 

 星も輝かない虚空を眺めながら、ぼそぼそと口ずさむ。

 遠い昔、俺が好きだった宮沢賢治の「星めぐりの歌」。

 

 大ぐまのあしを きたに

 五つのばした  ところ。

 小熊のひたいの うへは

 そらのめぐりの めあて。

 

 最後の言葉を吐き出し、本物の星を見る事も出来ない今の自分が、星の歌を口ずさんだことを自嘲する。 

 この歌の通りに、小熊の額の上に北極星が輝いていたらどれだけ素敵だろうか。

 

 現実の天の北極に位置する星、ポラリスはこぐま座の尻尾に位置している。

 どうして、賢治が「空の巡りの目当て」を「こぐま座の尻尾」ではなく「こぐま座の額の上」としたのかは分からなかったけど、当時の俺は例え現実では無くても、小熊が額の上の北極星を見つめていて、空が巡っていたら幻想的で素晴らしいと思っていた。

 

 けど、今は夢でも、幻でもなく現実が欲しい。

 

 碇シンジは「小熊のひたい」だ。

 エヴァンゲリオンという作られた物語の北極星。

 彼を中心に宙は巡る。

 

 「あぁ……本物の星を見てぇなぁ……帰りたい……帰りたいよ……」

 

 目頭が熱くなり、液体が、涙が溢れだす。

 俺は涙を拭うこともせず、故郷の星を想いながら瞼を閉じる。

 そして、自分をさらにスケールダウンさせるために制御装置を起動した。

 

 

 ■■■

 

 

 淡島(カイ)が制御装置を操作すると、その胸から小指の先ほどの小さな光が浮き上がった。

 制御装置はその内から、光に合わせてスケールダウンさせた自己の複製を生み出すと、小さな光の内へと埋め込む。

 制御装置は、淡島(カイ)が消したモニター、この空間と世界を繋ぐ窓を再び生み出すと、そこへ光を送り出す。

 光が淡島カイの器に収まる様子を見届けると、世界を繋ぐ窓を消した。

 そして制御装置は、ハンモックで眠るように目を閉じた淡島(カイ)を見守るように、その傍に控えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えびす」と呼ばれる神は「戎」とも表記する。

 

 それは流れ着くモノ

 

 即ち寄り神

 

 それは外から来るモノ

 

 即ち蕃神

 

 そして海から来るモノである「えびす」は「水蛭子(ヒルコ)」と同一視される。

 

 「水蛭子(ヒルコ)」とは淡島(アハシマ)と同じく不具の神として生まれ、子とは認められず流されたモノ。




2022/09/30 21:37
投稿前の修正漏れにより、えびす=ひること断定してしまってたので、修正記録として残しておきます。
時代の移り変わりでえびすとひるこを同一視する説が出てきたという理解です。

修正前  
 そして「えびす」とは「水蛭子(ヒルコ)

 淡島(アハシマ)と同じく不具の神として生まれ、子とは認められず流されたモノ

修正後 
 そして海から来るモノである「えびす」は「水蛭子(ヒルコ)」と同一視される

 「水蛭子(ヒルコ)」とは淡島(アハシマ)と同じく不具の神として生まれ、子とは認められず流されたモノ
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