俺はサーフパンツを履いてで浮き輪を手にしていた。
そう、ポテチの砂浜とビールの海で休暇を堪能してるのだ……てなんじゃこりゃーっ、とそんな風に突っ込むほど俺は野暮ではない!
こんなん夢落ちって決まってんだろ~。
ならやるべき事は唯一つ。
ビールの海で呑んだくれて~、ポテチのビーチで食べ放題~。
あぁ~幸せで脳が蕩ける~~。
あらかた堪能し、ポテチの砂浜に敷いたシートで一休みしてたら、顎に冷たく硬い物が当てられ、強引に上を向かせられる。
上を向かせられた俺の視界には、教鞭を持ち、スーツに眼鏡姿の女性が映っている。
教鞭が伸びる先は俺の顎の下。
「あら、そんな食べて呑んでばかりで先生とは遊んでくれないのかしら」
こ、これは女教師設定!?
返事をする間もなく、俺の背中に弾力があり人肌的に暖かいものが押し付けられる。
「うわっ」
振り向くと、裸に白衣だけ羽織ったおねーさんが!!!
「ねぇ、カイ君。私達とイイことしまショ」
白衣のおねーさんが俺の耳に息を吹きかけると、俺のなけなしの理性が吹き飛んでいくのを感じた。
こ、これ夢だし何も問題ないよな?
……な?
……ヨシッ!
「お願いしますーーーってうわっ」
元気よく叫びながらまずは裸白衣のおねーさんに伸し掛かろうとしたら、シートの上に転がされてしまった。
女教師が仰向けになった俺の胸に、素足で乗せて押さえつけてくる。
手に教鞭を持ち俺を見下ろす姿が……とってもエッチです!
い、いや俺はドエムじゃないからそういう趣味は無くてですね。
今度は、裸白衣のおねーさんが俺の上にのしかかって……てー!!!
「ひょっとして起きたのかい?」
……ん?
裸白衣のおねーさんの声が男の声に聞こえ……?
まぁ夢だしそんなこともあるだろう。
俺は白衣に隠されたたわわに手を伸ばし……か、固い???
「この子、どんな夢見てんだ……」
男の声……。
視界がぼやけ、徐々に明瞭になっていく。
うん?
おねーさんじゃなくて男!?!?
ナンデェ!?
三十路前ぐらいの男の顔が目の前に。
近くね?
ん?
肌がすーすーする。
あれ?
おれ、はだ、裸!?
身体が動かなって、よく見ると俺の両肩が抑えてるぅぅぅ。
あ、これ襲われてますね。
「だ、誰か!!!たす、タスケ、助けて!やめて!初めては女教師か女医って決めてるんだーーーーーーーーー!!!!」
俺はつっかえながらも叫び、どこかにいるかもしれない助けを求める。
勿論何とか逃れようと暴れるが、男に押さえつけられて身動きが取れない。
男は何か言ってるが、大混乱の俺は全く聞き取れん。
「カイ!!!!」
聞きなれたこの声!
シンジ様!!!
「シンジ!助けて!犯される!!!」
「カイ!!」
シンジが俺に駆けつけてきて、抱きしめられた。
俺の顎がシンジの肩に乗る……じゃ、若干首が痛いっす。
思いっ切り抱きしめられてシンジの顔が見れんけど、肩を伝って背中に液体が……これは……。
「泣いてる?」
「煩い」
「あ、はい。すみません」
理不尽かな?
俺は仕方無しにシンジの背中に肩腕を回しなでなでぽんぽんとしてやる。
もう片腕は肌布団を搔き集めて股間ガードだ。
いや、見ていた夢のせいでだな、男の子の止むを得ない事情的なことになってるのだ。
そして俺の事を襲ってると思っていた男は呆れたような顔でこちらを見ている。
うん……白衣来てますね。
ひょっとしなくても看護師のおにーさんかな?
「カイく~ん、初体験の願望が廊下まで響き渡ってたけど大丈夫?」
新しい玩具を見つけたような顔をしたミサトさんがニヤニヤ顔で入口に立ってる。
「全然大丈夫じゃないんで、今度誰か紹介してください」
「いいわよ。カイ君がイイ男を紹介してくれるなら」
「中二男子で良けりゃいくらでも。ミサトさんなら本性知られなければ入れ食いっしょ」
「本性って何よ!ほら、シンジ君もそろそろ離してあげなさい」
ミサトさんが笑いながら部屋に入ってくるが、シンジが離れる気配はない。
ミサトさんも笑顔だが何やら疲労が蓄積されてそうな感じではある。
「そいや、あれからどうなったんですか?エヴァで地上に出てお空が綺麗だなーって思ったらイマココみたいな感じなんすけど」
いやなんか滅茶苦茶痛かった気がするけど思い出したくないから省略!
ようやくシンジの腕から解放されて、第7使徒は既に撃破、俺が意識不明で初号機に搭乗してたこととか聞かされたけど……意識不明で乗せられたといわれても全然実感無いなぁ~。
「いやー、意識不明でもシンクロ率のバフは出来るって便利道具っすね~」
思わず本音がぽろり。
ミサトさんは呆れ顔で俺のこと見ておる。
なんだよぅ。
泣きはらして目元を赤くしたシンジは何故かこっちを睨んでるぞっと。
俺なんか地雷踏み抜いたった?
「馬鹿!僕たちはカイを……意識の無いカイを道具みたいに……」
「別にいいけど」
そういう約束だし。
「よくない!」
打てば響くようにすぐ怒られてしまった。
「シンジがさ、そうやって怒ってくれるから良いんだよ」
うーん、目が怒ってます。
シンジの頭に手を乗せ、そのままわしゃわしゃと撫でる。
うーん……怒気満々って感じから不満気な顔に緩和してきたぞ。
ニカっと笑ってみたら目を逸らされてしまった。
俺、ショック。
ん?
いや待って?
レイが部屋の入口で無表情のまま突っ立ってんですけど。
ひょっとしてずっとそこにいたのでは。
「ところで綾波さんがずっとそこに立ってるみたいんだけど?」
「綾波、そんな所で立ってないで入ってきなよ」
シンジの言葉を聞いたレイは、部屋に入ってくる。
ミサトさんは「それじゃ後は若い人たちで~」と仲人さんみたいなことを言いながらレイに場所を譲ると、看護師の人から俺の身体の状況について話を聞いている。
レイは俺達の傍まで来ると、俺に頭を撫でられてるシンジをじーっと見ている。
ラミエル戦でシンジと関わってレイも変わってくるんだよなぁ~。
あれか?
満月の下で「僕たち死ぬかも」的な奴はやったのかな~。
くぅー、見たかった!!!
「碇君、また泣いてたわ。今のはフォースが起きて嬉しかったから?」
「綾波……そ、そうだよ。カイが起きて嬉しかったから。後、フォースじゃなくて、『淡島』だろ」
「淡島君」
「うん、同じ家に住むんだからちゃんと名前で呼び合おう」
「わかったわ」
えっ!
予想外のレイからの「淡島君」呼びに胸がときめいてしまった。
お、俺はロリコンじゃねぇ!!
け、けど……今のは良かったな、うん。
正直「貴方」とか「フォース」以外の呼び方はされないと思ってたたもの。
しかし、シンジのいう事をこんなに素直に聞くとは。
「命令があればそうするわ」じゃないんだなぁ。
いや待て、重要な発言あったか?
綾波が家に来るとかなんとか。
「んぁ。綾波さんも引っ越すことにしたんだ」
「ええ、碇君に誘われたから」
…………いや、何も言うまい。
俺が声かけた時は命令かどうか確認するまで保留だったからな!
ほら、シンジと色々あったのだろう。
しかしなんだろうな、俺のこの微妙なお邪魔虫感。
看護師と話を終えて戻ってきたミサトさんが、シンジとレイの後ろに立ち、生暖かいと形容するのが相応しいような眼差しで2人を見ているので、ミサトさんに話をふる。
「で、ミサトさんこの2人の進捗報告お願いしたいんすけど」
「そうね~、まだよちよち歩きの赤ん坊ってとこかしら」
俺はミサトさんの答えを聞き、顎に手を添えながら思案する。
「ほーん。ミサトさん的には青い春の入口的な?なるほどなるほど。けどそういうのじゃなくて、おにーちゃんが天然な妹をお世話するみたいな構図にも見えなくないっすか」
「そういう見方をするなら、親鳥と雛鳥に見えなくもないわね。シンジ君、凄い頑張ってるのよ~。肉を食べれないレイの為に別のおかず用意してあげたりしてるの」
「やだ!シンちゃん献身的!」
いや、ほんと。
レイが家に来たのは良いとしよう。
だが、お台所戦力が増えたわけではないのだ。
そんな中、手間暇かけて品数増やすなんて想像もしたくない。
というかアスカを考えるとこの先、増える見込みは無い。
うーん、地獄かな?
「ミサトさんは兎も角、カイまで何言ってるの?」
「ちょっとミサトさんは兎も角って、あたしの評価酷くないかしら」
ミサトさんは不満そうに抗議するも、シンちゃんジト目である。
対してシンジの隣のレイは、いつもの無感情な目でこちらを見ていらっしゃる。
いや……その目ぇ恐いんで出来たらこっち見ないで欲しいっす……。
メンタルよわよわな俺はレイの直視に耐えきれずに目を逸らしてしまう。
「赤木博士からは私が碇君をサポートするように言われているわ」
「うん?」
あの?
話の流れが?
ミサトさんもシンジも突然のレイの言葉にぽかんとしてるじゃないか。
「だから、例えるのであれば私が姉で碇君は弟。私が親鳥で碇君が雛鳥となるわ」
「お、おぅ……」
「そ、そうね……」
「綾波……たぶんそういう事じゃないよ……」
ホント、事実の訂正って感じで言うのやめて貰っていいですかねぇぇぇ!
遊び心の分からない正論ぶん殴りで俺とミサトさんは一撃ノックダウンだよ……。
シンジの気遣いで追加ダメージ貰うわ。
まぁネタにして遊んでたので俺もミサトさんもギルティだけどな!
良し、無かったことにしよう。
「それは兎も角、俺ってもう帰れそうなんですか?」
「今日は様子見の為にここに泊まって何もなければ明日退院できるわ」
「だ、そうだ。シンジ、台所が大変そうだけど今日明日は2人のお世話頼むわ」
「うん、大丈夫だよ。カイはゆっくり休んでて」
「ちょっとぉ。保護者はあたしなんだからね」
いやそれは事実だけど今は台所の家事事情の話をしてるんですよ。
台所出禁のミサトさんにそれを言われるとは思わなかった。
俺とシンジは思わず顔を合わせた後、ミサトさんをジト目で見る。
「そういう事は」
俺が言葉を区切りシンジをチラ見すると、シンジが心得たというように口を開く。
「他人が美味しいと思えるご飯を」
シンジも同じように言葉を区切り俺を見てくる。
そして2人でニヤリと笑いながら口撃を始める。
「作れるようになってから言ってください」
「ま、ガサツで」
「ズボラな」
「「ミサトさんに出来るとは思いませんけどね」」
最後は2人で一緒に〆た。
シンクロ率100%です!
決めたったぜ。
「う、うぐ……煩いわね!」
ミサトさんの負け惜しみでオチが付き、思わず三人で笑うが看護師のにーちゃんから「病室内では静かに!」と怒られてしまった。
レイはそんな俺達……いや、シンジを無表情で見つめている。
まぁ、見てるって事はシンジの事が気になってるってことだよな。
これから変わっていくレイを見ていけるのかと思うとそれはそれで楽しそうかも?
というかリアル無表情は恐いので早くなんとかして欲しい。
何はともあれ、早く家に帰りたい。
明日よ、さっさと来いや!