蕃神   作:名無しの海

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4-2 昼飯戦線異常無し!

 授業終了を告げるベルが校舎中に鳴り響く。

 俺は鞄にしまってある弁当箱を引っ掴んで屋上へ向かってダッシュする。

 同じようにベルが鳴ると同時に財布を引っ掴んで購買に向かって駆けだそうとするトウジと目が会った。

 

 「先いってるぜ~」

 「おう、直ぐに行くで!」

 

 お互い足を止めずに言葉を交わすとそれぞれの目的地に向かう。

 教室をチラ見すると、一足二足遅れたケンスケも財布を持ってトウジを追うように走り出していた。

 俺と同じく弁当持ちのシンジは、鞄から弁当箱を取り出して、立ち上がろうとしている。

 まぁ、どうせ先に屋上についても後からくる連中を待つから走る必要ないんだよな。

 けどこういうのは気持ちの問題っしょ!

 俺は早く屋上に行ってノンビリ空でも眺めてたいのでダッシュする!

 委員長ことヒカリが何か叫んでた気がするけどきっと気のせい。

 たぶん「廊下は走らない!」とかな気がするけど、聞こえてないから何を言われているのか分からんし。

 つまり俺が言われているとは限らない。

 きっとトウジ。

 よって俺は無実。

 ハイ、ダッシュ!!

 

 階段も一気に駆け上がり、屋上に出るとルンルン気分でお気に入りの角地をゲット!

 雲一つ無い青空を眺めながら昼飯仲間を待つ。

 昼なんて教室で食ってさっさと寝てれば良いとも思ってたけども、第3新東京市立第壱中学校は屋上が施錠されてないんだよね。

 最初は屋上で食べる昼飯イベントを興味本位でやってみたんだけど、教室から解放されて青空の下でご飯を頂くというのはやっぱいいもんで、なんだかんだと続けている。

 最初は俺1人でふらふら~っと屋上に行ってたんだけど、すぐにシンジがついてくるようになって、気が付いたらトウジとケンスケも屋上に来るようになった。

 

 ちなみに弁当は、シンジと俺で分担しながら皆の分も作ってる。

 元々は俺達2人の分だけ作ってたんだけど、レイが来てから3人分になって、後はついでとばかりにミサトさんと冬月さんの分も作るようになった。

 最近、シンジは冬月さんから、シンジの母親である碇ユイから預かってたというレシピノートを貰っていて、レシピを全部再現しようと、料理熱が上昇しているので、色々積極的になってて有難い限りだ。

 ちなみにレシピノートといっても手書きじゃなくてテキストエディタで書いたのを紙に印刷した奴なんだけど……エヴァ作品で碇ユイのレシピノートなんて出てきたっけか?

 うーん、改めて考えるとなんかおかしい気も……とか真剣に考えようとしたところで空腹を訴えるように盛大に腹が鳴った。

 

 あぁ、空腹で何も考えられねぇ……中二男子腹減りすぎじゃね……。

 三馬鹿早く来いよ~~。

 屋上に寝っ転がって何処までも広がっていくような青空を見上げる。

 は~……穏やかな夏日。

 ってか万年夏か。

 春秋冬が恋しいーぞーっと。

 俺が神様だったら日本に四季を復活させるね、等と頭を使わなそうなどうでも良い事を思い描き空腹を紛らわす。

 うん、紛らわん。

 

 しかし、今日はいい天気だよな。

 風も穏やかだし、ホント良い屋上飯日和だ。

 

 「本日は快晴也。い~い天気だなぁ~、縁側でぼーっとしながら茶でも呑みてぇ」

 「何いうとんねん、おっさんぽいで」

 

 声の方に視線を向けると、購買で買い漁った戦利品のパンを両腕に抱えたトウジが立っていた。

 後ろには同じくパンを手にしたケンスケと、弁当を持ったシンジが居る。

 

 「おいおい、少年は何れおっさんになるのだよ。俺は時代を先取りしてるのさ」

 

 あれ?

 三馬鹿トリオがなんかジト目でこっち見ながらひそひそ話してんぞ。

 

 「あいつ、ほんまおっさんぽいこというよな」

 「僕もそれ思った。碇、淡島の奴って前からそうなの?」

 「うん、なんか時々ああいう感じ」

 「あの、皆さん。そういうのは本人のいないととこで言って欲しいなと……泣くぞ!?」

 

 青少年たちは俺から滲み出るおっさん臭でも嗅ぎ取ってんのかよぉ!

 地味に傷つくんだがー。

 こちとら見た目は本物のぴちぴち14歳だぞ!

 ええい、てめーら笑うんじゃねー!

 

 

 

 「んまっ。んまっ……むぐ……ん……うま……んむ……」

 「ほんま、うまそうに食うやっちゃな」

 

 一心不乱に弁当をもぐもぐ搔っ込んでる俺を、笑いながらトウジが評してきた。

 口の中がおかずで一杯になってた俺は、箸を持った方の手でブイサインを返しておく。

 あれだ、空腹故詰め込まずにはいられないって奴。

 理性がゆっくり食べろと囁くんだけど本能というか手と口がとまんねぇ……まさか……暴走!?

 ハムスターのように、頬を詰め込んだ食べ物で膨らませながら、1人脳内突っ込みを繰り広げると、眼鏡をきらりと光らせながら、シンジの弁当を羨ましそうに見ているケンスケが視界に入る。

 

 「そういえば淡島と碇っていっつも弁当だね。まさかミサトさんの手作り弁当だったり!?」

 

 やめてくれケンスケ……ミサトさんの手作り弁当だったら俺は一口も手をつけんぞ。

 万が一その時が来たらお前に全部やるから米粒一つ残らず完食してくれい。

 

 「まさか、僕とカイで作ってるんだよ」

 「え!そういえば最近は綾波も弁当持ってきてるって聞くけど……ひょっとしてそれも?」

 「そうだよ。あれ?綾波も一緒に住んでるって話してなかったっけ?」

 

 シンジやレイ、俺がエヴァのパイロットって事は、なんかもう公然の秘密というか、クラスの連中みんな知ってる。

 シンジと俺は隠してたんだけど、速攻トウジとケンスケにバレたし、その流れでクラスの連中には知られるし、レイは吹聴してないんだけどNERVの呼び出しとか全く隠さないし!

 みんなNERV関係者の子供なんだろうけど……やっぱ隠す気ないんだよなぁ。

 どうせ補完でみんな仲良くL.C.Lコースだから頑張って秘密にしなくていいやとか思ってるよね?

 そっちにコスト割くなら補完計画邁進すればいいやって思ってるよね!?

 

 「お、お前らミサトさんだけじゃなくて綾波とも……この裏切りもん!」

 「クラスメイトと同棲だなんて、イヤ~ンな感じ!」

 「いや、パイロット用の宿舎みたいなもんだから。それに俺はお子様興味無いし」

 「せやな。カイは熟女趣味やんな。じゃミサトさんはどうや」

 「熟女じゃねーよ、大人の女性だ。ミサトさんはなーちょっとなー保留?」

 「我儘な奴やな」

 

 そう、断じて俺は熟女趣味ではない。

 人間、中学生、女に興味が無いだけだ。

 というか犯罪っぽくてマジ無理。

 あとミサトさんはほら、加持さんいるじゃん。

 またくっ付くんだろうし、寝取りは趣味じゃないんでとりあえずは無しで!

 

 「それじゃシンジはどうなんだよ」

 

 おっと、ケンスケ選手、シンジ選手に切り込んでいきます。

 

 「綾波とはそんなんじゃないよ。引っ越してくる前の家とか必要最低限の物しか無くて酷かったし、なんか放っておけないんだよね」

 「それ、恋じゃないの?」

 「どうなんだろ。良くわかんないや。そういうケンスケはどうなんだよ」

 「ミサトさん」

 「え?」

 

 予想外の言葉にシンジがはてなマーク浮かんでそうな顔してるよ。

 というかケンスケの奴、人の事を熟女趣味と言いながら自分だってミサトさん挙げてんじゃねーか。

 

 「あ、そっちじゃない?それじゃ今はAK-47」

 「えーと??」

 

 あん?

 俺もはてなマークだぞ。

 

 「自動小銃!かっけぇーよな!」

 

 突然立ち上がってエア小銃の構えを取り「ズダダッ」と撃ち真似始めやがった。

 こりゃ駄目だ。

 なんで突然そっちに振り切れるんだよ!

 

 「ミリオタは置いといて、鈴原君はどうなんだよ」

 「ワイか~。せやな~、ワイもやっぱミサ」

 「いや、洞木さんだろ?」

 

 もうこの2人はミサトさんにぞっこんだからな~。

 ハイハイ洞木ヒカリですよねって感じでぶった切る。

 

 「はぁああ!?どうしてそこで委員長がでてくんねん!」

 「メンドイからさっさとくっ付けよ。毎日夫婦喧嘩しやがって」

 「な、なぁーにが夫婦喧嘩や!」

 「はいはい」

 

 俺はヒカリがトウジの事を好きだって知ってるから気が付いたのかもしんないけど、本当にヒカリはトウジの事をよく見てるんだよな~。

 まぁ、だからトウジは口煩く感じたりするのかもしれないけど。

 口喧嘩とかやりとりもほんとじゃれてるみたいで微笑ましくて一生見れる。

 なんかアニメでアスカとシンジがじゃれてるのを見てた時みたいな心境になったわ。

 いいぞ、もっとやれ。

 

 「そんなことより!エヴァのパイロットって募集したりてないの?」

 「あん?」

 「エヴァの建造進んでるんだろ?な~お前らから推薦してくれよ~~」

 

 ケンスケの言葉に思わず低い声が漏れてしまうが、ケンスケは気にせず捲し立ててくる。

 いや、ケンスケのこの反応は、まぁケンスケらしいというか、これがケンスケだよな。

 

 「憧れるじゃん!あんなカッコイイロボットのパイロット!」

 「憧れだけなら、やめたほうがいいよ。それに、友達には乗って欲しくないな」

 

 おっと、俺が何か言う前にシンジから否定のお言葉。

 ちょっと困ってるというか戸惑ってるような……まぁ、友達に進めたいお仕事じゃないよな。

 痛いし、痛いし、普通に死にそうだし。

 

 「えー、綾波だってカイだって乗ってるんだろ?」

 「綾波は僕より前にパイロットだったから。カイだって、本当は乗って欲しくない……けどカイとは一緒に乗るってもう決めたから」

 「なんだよそれー、なぁ頼むよ~」

 

 俺もなんか飛び火してんな~。

 まぁ、一緒に乗ることには納得してるみたいだしいっか。

 ケンスケも諦めないだろうけど、静観してても後味悪いし援護射撃しとこ。

 

 「相田君、俺達からミサトさん達に頼んでも無理だと思うよ。それにそういう事、まずは保護者に相談してみたらいいんじゃないかな。NERVの関係者なんだろ?」

 

 あとは自分で調べるとかな。

 ケンスケはコアの秘密に辿り着くし情報収集能力ヤバイ。

 というか早めに父親と話をして、諦めるところまでいって欲しい。

 ケンスケがパイロットに選定される状況って、バルディエルが3号機搭乗前に発見、処理されてトウジがパイロットになるルートだ。

 んで、その後にトウジが使徒との戦闘で死んでケンスケがパイロットに選ばれる。

 しかも、たぶんケンスケがパイロットになる事を反対するであろうケンスケの父親が事故にあうというイベント付だ。

 あれも本当に後味が悪すぎる。

 

 「え~、パパに相談か~」

 「コラ、大概にせぇ」

 「あいた」

 「2人とも困っとるやろ。この話はここまでや」

 

 まだ不満そうなケンスケにトウジがチョップを決めて話を打ち切ってくれる。

 さすがトウジ、略してさすトウ。

 実は気が利く良いヤツだよな~。

 ここら辺はやっぱ妹がいるお兄ちゃんキャラと一人っ子の違いなのかね。

 

 「あ、それじゃ明日の土曜日は新湯本行かない?欲しいゲームがあるんだよね」

 「欲しいCDもあるし行こうかな。午前は用事があるけど、午後からなら大丈夫だと思うんだ」

 「それじゃ、シンジの用事が終ったら連絡くれれば迎えに行くよ」

 「うん、宜しく。カイはどうする?」

 「ん-、明日は午前はお仕事だよな……」

 

 確か明日は朝からハーモニクステストだっけか。

 しかもプラグスーツの補助無しでやるヤツ。

 オートパイロット用のデータ収集っていってたからダミープラグの為かと思うと気も乗らん。

 あと、果てしない減菌処理工程を考えただけでもうやるきゼロ。

 それになぁ……シンジの、トウジやケンスケとの交流も邪魔したくねぇよなぁ……。

 あー、断る理由ばっか探してるから今回はスパっと断ろう。

 明日は午前お仕事頑張って午後はだらだらビールです!

 ペンペンと呑みかわすぞーっ。

 酔いつぶれるまでが俺にとっての一缶だっ。

 

 「俺はパス。たぶん疲れきってるから家でだらだらしたい」

 「やっぱオッサンだよ……トウジはどうする?」

 「ええで」

 「おうおう、三馬鹿で行って来い」

 「「「誰が三馬鹿だ!」」」

 

 ご唱和有難うございます。

 俺だってオッサンじゃねーよ!!

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